「それで…具体的には一体どういう事なんでしょうか?」
公爵様から衝撃的な事実を聞き俺達は驚いてすかさず聞く。
「それなのだが…今思えば恐らく先日のスゥの誘拐未遂事件といい、犯人が同一犯であり奴等の本当の標的が私ではなく国王である兄上を狙った可能性の方が高いかもしれぬ…」
「それはまたどうして?」
冬夜の問いに公爵様が答える。
「うむ、それについては国家の成り立ちについて語らねばならん。
我がベルファスト王国は三つの国に囲まれている。
西のリーフリース皇国、東のメシリア山脈を挟んでレグルス帝国、南のガウ大河を挟んでミスミド王国だ。
この内の一国のリーフリース皇国とは長きに渡る交流があり友好を結べておる。
一方のレグルス帝国とは今より二十年前に起きた戦争以来は一応の不可侵条約を結んではおるが何時又我が国へ攻め込んで来ても可笑しくないのだ」
「ならそのレグルスっていう国からの刺客の仕業では?」
「いや今回の件には恐らく帝国は関係無い筈だ…」
となると残りは限られてくる…
「ミスミドの方にはまたちと別の問題があってな…」
「別の問題…ですか?」
「ああ、ミスミドは獣人を王としている亜人の新興国なのだよ。
亜人はかつて下等生物とされ侮辱の対象だったのだ。卑しく野蛮な種族としてね。
だが私達の父上、先代ベルファスト国王は親亜派でな…その認識を改める法を制定し段々とその忌まわしい風習は廃れていった。
だからこそ亜人達も現在は普通に街を出歩けているのだ。
だが…」
「ま、待って下さい?まさかその亜人達に未だ差別という迷惑極まりなく下らない固定観念しか持とうとしない老害貴族達が蔓延ってミスミド王国との親交を妨害しようとしていると輩がいると!?…」
「い、一誠それは流石に言い過ぎだと…」
「冬夜、お前は甘い!
法まで制定されたというのに亜人だからといって見た目でしか人を判断しようとしない奴等を老害と言って何が悪い!
実際、その不敬な輩のせいで王様が犠牲になりかけているんだぞ!
それだけじゃないこのままこの問題を放置していたら俺達が先日出会ったあの子達も苦しむ結果を招いちまう!…」
「あ…わ、悪い…一誠がそこまで思っているとは思わなくて…」
俺は数日前に出会った凄く仲の良い獣人の姉妹、アルマとオリガさんの事を思い出していた。
もしこのまま問題が改善されないままでは亜人差別主義者の下らない主張がまかり通ってしまう。
それでは当然、彼女達も差別対象にされてしまう。
そんな事が許されて良い筈が無いんだ。
「俺も言葉の過激が過ぎたようだすまん…だが冬夜、お前は周りに流され過ぎだ…少しは自分の考えで行動した方が良い」
「善処するよ…」
問題を改善する為にも早く王様を助け出さなければいけない。
「…とにかく兄上に毒を盛った犯人はまだ分かっておらぬ…詳しい事は私もよく分かっていないのだがね…早く解毒せねば危ない状態であるという事は明白らしい…そこでだ」
「俺のダ・カーポもしくは冬夜がリカバリーをかけて解毒すれば良いんですね?」
「その通りだ!」
「分かりました!」
「なあ一誠、どっちが王様に術をかけるんだ?」
冬夜が俺とどちらが王様に術をかけるかを聞いてくる。
「今回の治癒は冬夜、お前がやってくれ。
国王暗殺なんてそんな大それた事、余程の用意周到でなければ下手に決行なんて出来ない筈なんだ。
俺の力はリカバリーのそれよりも消費が大きいんだよ…だから想定外の事態が発生した時の為の保険だ」
いくら俺達が神様パワーを持っていても動ける状況が限定されてしまったらそれはそれで面倒な事に発展してしまいかねないからな。
「分かった!」
詳しい事は公爵様でも分かっていないようだから後は早くベルファスト城に着いてからだな。
馬車を飛ばさせ約十分後には城に到着していた。
「公爵様!」
「はあはあ…兄上の容態は如何なのだ?!」
真っ先に城に一目散に駆け込んでいった公爵様がメイドに様子を聞こうとすると
「おや?これはこれはオルトリンデ公爵様ではないですかお久し振りでございますねえ」
「ッ!…バルサ伯爵か」
上の階からいかにも「私は偉いんです」と過剰な自己アピールをしたハゲのオッサンが降りてきた。
後一文字ついたら殺虫剤になるな…ぶふっ!
少し下らないギャグで吹き出しそうになる。
「ご安心下さい公爵様。
陛下に毒を盛り暗殺を謀ろうとした輩はとうに捕らえましたのでね!」
「「は?…」」
「なんだと?一体何者が!?」
バルサ伯爵がそう言ってきて俺達は一瞬驚いた。
いくらなんでも犯人の特定が早過ぎる…こいつは凄く嫌な予感がするぞ…。
「犯人はミスミドの大使だったんですよ。
陛下はミスミド大使が贈ったワインを親睦の会食でお飲みになってすぐ倒れられたのですよ。
そのワインに毒が混入していたという事ですな!」
「そんな馬鹿な!?…」
伯爵からそう聞いた公爵様はそんな筈はないといった表情をしていた。
俺達もそんな事は信じねえぞ!
大体親亜派である国王様を暗殺なんてしようものならそれこそミスミド王国にはデメリットしかないのに…それをするのは只の馬鹿かそれか差別派の人間しかいない…。
「いやはや驚きですよ全く、獣の亜人風情が大それた事をしたものですなあ」
!コイツも差別主義者の老害か!
そして俺はこのハゲ伯爵が次に言った言葉に切れそうになった。
「ですから即刻大使の首を刎ねてミスミドへと送りつけてやりましょうか」
「!?…」
ミスミド大使の首を刎ねて国へ送りつけようだと?…このハゲは自分が何を言っているのか分かっているのか!?
まだ断定…というか絶対に真犯人のスケープゴート、濡れ衣を被せられただけである罪の無い人の命を奪おうだなんて!
「…」
冬夜もハゲの言い分には可笑しいと感じているようだ。
「絶対にならん!全ては兄上が決める事!勝手な事は許さぬぞ!」
「獣人如きには勿体無いお言葉で…でも良いのですね?
もしもこのまま陛下がお亡くなりになれば我々貴族は流石に黙ってはおられませんぞ?
はっはっは!」
公爵様が刑を執行しないように言うがハゲは意に介そうとせず嘲笑うかのようにその場から去ろうとする。
「スリップ!」
「ゲッ!?…」
そこにいい加減に冬夜が切れたのかスリップをハゲにかけて盛大に転ばせた。
んじゃ俺も
「スリップ!」
「ヌオッ!?…」
俺も便乗して魔法をかけてまたハゲを無様に転ばせた。
ちなみにこの様子を見ていた城の人達は爆笑していた。
どうやら良識の人達には酷く嫌われているみたいだなハゲ伯爵は。
「こうしてはおれん!一誠殿、冬夜殿も早く!」
「「ええ!」」
公爵様に急かされ俺達は急いで王様の部屋へと向かうのだった。