Side?
~ベルファスト国王の寝室~
「お父様…どうしてこんな事に!?…」
「ユミナ…」
お父様がミスミド王国との親睦を深める会食の最中に突然倒れられてしまった。
お医者様が仰るには何らかの毒物による中毒症状の一種を発症してしまったらしくすぐにお父様がお飲みになっていたワインを魔法で調べるが検出されなかった。
「ユミナ、ユフィナ…母さんと一緒に国の事を頼む…」
「貴方!…」
解毒の魔法をかけようにもどの様な物なのか分からないままではかける事すら出来ずにお医者様にも手の施し様が無く、未だ苦しんでいるお父様のお姿に私達は絶望していた。
だが、その時希望の光が差し込んで来ていたのだ。
「兄上!」
勢い良く扉を開けてやって来たのはアルフレッド叔父様と彼が連れてきたであろう二人の男性だった。
「おお、アルフレッドか…お前にはすまないな…どうか国と妻達の未来を頼むぞ…」
「諦めてはなりませぬ!頼む、冬夜殿!」
弱弱しく告げるお父様に叔父様は一喝し、連れてきた男性の一人に声をかけた。
「ええ、『リカバリー』!」
「り、リカバリー!?どんな状態異常も治せるといわれる無属性魔法の!」
「ええ!?」
トウヤと呼ばれた男性がお父様に向かって手を翳し魔法を唱えていた。
彼が発動した魔法に王宮魔術師であるシャルロッテさんも私達も驚いていた。
まさか使い手がこの場を訪れてくれるとは思いもしなかったからだ。
「う…ううーん?…」
「あなた!」
「「お父様!」」
「…ご健康そのものです。
まさかこんな事が…」
「ああ、先程迄の苦しみが嘘のようだ!…」
トウヤの魔法によって解毒されたお父様の意識が戻り私達は喜び安堵する。
お医者様は茫然としていたけど。
「!…」
ふと私はもう一人の男性の事が気になっていた。
Side一誠
よかった!…解毒が間に合った様だな。
俺も冬夜も一安心する。
「アル、この者達は?」
「ああ、我が妻の目と肌荒れを治して下さった者達の一人、望月冬夜殿だ。
尚、妻の件は此方の兵藤一誠殿の方なのであるが。
彼等なら兄上を救ってくれると思いお連れしたのだ」
「そうであったか!…なんと礼を申したら良いか…」
「いえいえ、そんなに畏まらなくてもいいですよ?!」
「そうですよ、人の命がかかっていると聞いたら無視出来ないですから!」
俺達は王様にお礼を言われ思わず謙遜してしまう。
「はっはっは!よくぞ陛下を救ってくれた!気に入ったぞ!」
控えていた近衛兵であろうか?なオッサンに俺達は背中をバンバン叩かれる。
ちょ痛え!?
「レオン将軍、その辺で。
しかし、興味深いですね…トウヤ殿、イッセー殿と申されましたか。
あ、私は王宮直属の魔術師のシャルロッテ・
リカバリーを使えるとは驚きです!」
「ど、どうも!…」
黄金の杖を持ったグラマーな女性、シャルロットさんがレオン将軍と呼んだオッサンをたしなめたか思うと今度は俺達に詰め寄ってくる。
近い、近い!けど御馳走様です!
「あはは…僕なんかよりもイッセーの方が凄い魔法を使えますよ?
リカバリーの上位互換魔法を彼は使えますから」
「あ、コラ冬夜!おま!…」
「あ…」
「リカバリーの上位互換魔法!?それは真にございますか!?」
冬夜が爆弾発言し女性が俺に詰め寄ってくる。
お前ちょっと後で覚えておけよ?
「え、ええ…エレンさんは目の他に二次症状があるかなと思って現状俺しか使えない固有魔法で治したんです。
他にも俺達はまだ使用を試してない魔法がありますが全属性の魔法が使えます」
「…こ、今度詳しいお話を聞かせて頂いても?!」
諦めて復元する世界の事を話すと彼女は凄く食いついて目を輝かせていた。
「シャルロッテ、そこまでにしておきなさい」
「は、はい…」
「そうですね。まだもう一つの問題が片付いていませんから」
「そんな馬鹿な!ミスミドが私を殺して何の得がある!?」
公爵様が王様にあのハゲ伯爵が暗殺未遂の容疑者としてミスミド王国大使を拘束してしまっている事を告げると彼は激昂していた。
「レオン将軍、とりあえず今すぐに大使の拘束を解き、呼んでくるのだ!」
「はっ!」
「冬夜」
「うん、分かってる」
レオンのオッサンが大使を呼びにいくまで俺達にはやる事がある。
「王様、ちょっとよろしいですか?」
「ン?何用かね?」
「一度、事件現場を見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「現場を?」
「ええ、真犯人が分かるかもしれません」
俺達は真犯人を炙り出す為に事件現場を見させてもらう事にした。
~王宮大食堂~
「『サーチ:毒物』」
「『サーチング』」
現場に来た俺達。
どうやら発生直後で放置してあったようだ。
王様が使っていたグラスは検証の為に持ち出されていたのを一度持ってきてもらったが。
冬夜が毒物の検知、俺は他に何か無いかサーチングで探りを入れる。
!…コレは!…
あの野郎!そんな保険もかけていやがったのか…。
ある物を検知した俺は思わず歯ぎしりする。
「思っていた通り毒は検知出来たよ。そっちは?」
「ああ、こっちは予想以上の物が見つかった!」
後は大使の証言を聞いて判断だ。
~王宮の間~
「オリガ・ストランド、参りましてございます」
「「え!?」」
「え!?貴方方は!…」
ミスミドの大使の姿を見て俺達は驚く。
先日出会ったオリガさんだったのだから。
「大使と知り合いだったのかね?」
「ええ、先日彼女の妹さんが迷子になってましてそれで少し」
「そうだったか。
では単刀直入に申す。
オリガ殿、そなたは余を殺す為にこの国へ来たのか?」
「そのような事は誓ってございません!」
「そうか、そなたを信じよう」
そうだ、オリガさんが国王暗殺なんて事をする筈が無い。
「冬夜」
「うん、十中八苦あの人が真犯人でまず間違いはなさそうだね!」
小声で互いの推理を照らし合わせると一致する。
これで俺達の中で真犯人が確定しつつあった。
「だがどうする?
素直に罪を認める様な奴だとは到底思えないぞ」
「そこはほら…一芝居打つのさ!」
冬夜が何かを思いついたようだ。
「…そうかその手が!…よっしゃ乗った!」
「レオン将軍、王様ちょっと頼みたい事が…」
冬夜の提案に乗り彼と俺はレオン将軍と王様に声をかけた。
「?も、もしや!…」
「真犯人が分かったのかね!?」
「ああ、その中でちょいととんでもない物を見つけてしまったので確証を得る必要があります」
「ええ、その為にも現場に皆さんを呼んで下さい。
あ、後バルサ伯爵もね」
さあてと、一生あるかないかの推理ショーの開幕だ!
戻って大食堂
「皆さんは此処で食事をしていた所、王様がワインをお飲みになられて倒れられてしまった。
でも僕のリカバリーでなんとか窮地から回復した。
此処まではよろしいですね?」
「ええ…」
十分後、皆を大食堂に呼び出して交互に俺達の考察を話していく。
「でも結局、いくらワインを調べても毒物は検出される事はなかった。
何故ワインから毒は検出されなかったのか?…そしてこの国王暗殺未遂事件の真犯人が一体誰なのか?
それについて今から俺達の考察を述べていきます。
あーえっと、あのハゲ…じゃなかったバルサ伯爵はまだ?」
「ええい!私をこんな所に呼び出して一体何の?…!?」
来たよ、来たよ。
ハゲ伯爵はそこに居る筈の無い姿を見て明らかに動揺していた。
「へ、陛下!?お体の方は!?…」
「うむ、この通りなんともなくなったぞ。バルサ伯爵。
いやはや冬夜殿達がいなければ今頃私はどうなっていたか考えただけでも鬱になりそうだ…」
「さ、左様でございますか…それは何よりでございまして…」
ハゲ伯爵は引き攣った表情で王様に必死にゴマすりをしながら俺達の方を忌々しげに睨み付けてくる。
それを冷めた目で見る王様。
ああ、これでは流石に殺られかけた本人も気が付いているのだろうな。
そしてハゲはもう少しポーカーフェイスってものを覚えろよ…逆にコイツ以外の犯人が思い当たらないわ!
ハゲの反応を見て予想が確信に変わり俺達は続ける。
「それで容疑者として疑いがかけられてしまったオリガさんはバルサ伯爵に拘束されてしまった…そうですよね?でも僕は犯人は貴方じゃないと信じていますから」
「ええ…私は決してその様な事はございません!」
「黙れこの獣人風情が!さっさと罪を認めたらどうだ?!」
冬夜がオリガさんを庇う発言をするとハゲが怒号を上げる。
五月蠅いな!…
「推理の邪魔なんでちょっと黙っていてくれないか!」
「ヒィッ!?…」
俺が黙らせる為殺気を飛ばすとハゲは気を失いそうになる。
やっぱコイツ小者中の小者だな。
「ですから…真犯人はオリガさん以外のこの中にいる!」
「「え!?…」」
冬夜の一言で皆驚いている。
「此処に一本のワインを御用意しました。僕達はまだ成人していないので飲む事が出来ないのですが…レオン将軍お一口どうですか?」
冬夜が元の世界では名酒であるボジョレーヌーボの名を騙った酒瓶を取り出し別のグラスに注いでレオン将軍に勧めた。
本人も飲みたかったらしいが流石に止めた。
未成年の飲酒は駄目だぜ?
「頂こうか…うむこれは良い味だ!」
「毒が無い事と評価を頂いた所で国王陛下にも…と思っていたのですがまだ体調は優れないようですのでそうですね…バルサ伯爵に代役をお願いしましょうか」
「!?…」
冬夜がそう言い、俺が王様の席にあったグラスに注ぎ、ハゲに差し出すと彼はまた明らかな動揺を見せた。
「う…私は…」
「王という大役に大変ご緊張なされているみたいですね」
「どうした伯爵?
どれ一人で飲めんというのなら儂が飲ませてやろう」
「や、やめ…やめてくれー!毒が!毒が回るー!た、助けてくれー!」
レオン将軍が強引にほんのちょびっと口にさせただけでハゲ伯爵は無様にのたうち回っていた。
「毒なら今は入っていませんよ?」
「え?…」
冬夜の一言でハゲもようやく異変に気が付いていたがもう遅い。
「そのグラスは新品です。それで?バルサ伯爵、貴方はなんでこのグラスを見て毒が入っているなんて思ったんです?」
「そ、それは…深い事情がございましてですね…」
「へえ…」
まだこの状況で言い逃れが出来ると思っているのかハゲは見苦しい言い訳に走ろうとしているみたいだがそうはいかない。
「一体どういう事だ?」
「支極簡単なトリックですよ。
実際はワインではなくグラスの内側に毒は塗られていたのだからな。
皆に少しでもワインに入っていたとそう思わせる為のな…まあそれでもワインに少し混ざっていても可笑しくはないのですが検出されなかったのは恐らく極微量でも即効性の効果があり尚且つ何かに混ざれば物の数十秒~数分で浄化されてしまうような性質を持つ毒だったからでしょうかね?
時間も倒れられてからすぐですから無理はありませんね。
実行犯は恐らく王宮のコックさん達の誰かでしょう。
でないと王族の食事には触れられませんからね」
「な、成程!…」
レオン将軍の疑問に俺がそう答えると納得したようだ。
「後はこの事件の真犯人、そう貴方ですよバルサ伯爵!」
「クッ!?…捕まってたまるか!」
ありがちという程でもないトリックを完全に看破され追い詰められたハゲはその場から逃走を図ろうと駆け出す。
だがそうはいくか!
「スリップ!」
「ゲッ!?…」
冬夜がかけたスリップで盛大に転んだハゲは気絶し取り押さえられた。
だが…
「オイ…コイツに知恵をつけた奴等及びに差別主義者共、何処かに隠れているんだろ?
いい加減出てきたらどうだ?」
トリックの穴に気が付かない所を見るとこんなハゲに思いつくとは到底思えなかった。
他に示唆した奴が居る筈だと踏んだ俺は先程から探知魔法で探りを入れていたら見事にビンゴした。
「クッ!?…亜人共を追い出し我等の悲願を達成する筈の計画が…」
今迄隠れていた兵士が一気に姿を現した。
およその数は百、いや二百といった所か。
「ぬっ!?…この者達は!城の…」
「下がって下さい!
恐らくバルサ伯爵の失敗を見越して送り込んできていた刺客でしょう。
どうせこの場の皆を消そうという算段なんだろ?」
「バレているのなら仕方ありませんね…愚かな王共々この場に居る皆さんには消えて頂きましょう!」
俺達は急いで王様達を下がらせる。
「冬夜いくぞ!」
「うん!」
「私も戦います!」
「儂もだ!」
「ありがとうございます!でも無理はしないで下さい」
魔術師であるシャルロッテさんと腕っぷしの強いレオン将軍が加勢を申し出てくれ正直有り難いと思った。
「かかれー!」
刺客のリーダーらしき人物の号令で一斉に飛びかかってくる裏切り者の兵士達。
「「コード解放!」」
「ウッ!?……」
「ゲッ!?……」
俺と冬夜はすかさずタライを召喚し削る。
っとそうだ。
「アポーツ!」
もう一つの問題を片付ける為に急いでアポーツを使用、食堂のグラスを回収する。
これは王妃様達が使用しようとしていた分だ。
「手筈通りにやってくれ!」
「OK!」
「そらこれでも飲んでおねんねしてな!」
それぞれ二つずつのグラスを持ち、襲ってきた兵士を拘束し飲ませると眠ってしまう。
「イッセー殿、これはどういう?…」
「それについては後で!今は!」
「は、はい!」
シャルロッテさんがこの様子を見ていたようで疑問を問いかけてきたが今はそれ所ではない。
「「火焔拳のレオン」、押して参らせてもらう!アアッタァー!」
「うわあああー!?…」
レオン将軍が自慢の拳を振るい兵士を蹴散らしていたがまだ半数近くが健在している。
その時…
「『闇よ来たれ 我が求むは蜥蜴の戦士 リザードマン』!」
「何ッ!?…」
しまった!これは召喚魔法の!
兵士に扮した魔術師がいやがったか!
召喚されたリザードマン達は一勢に王様達に狙いを付けて今にも襲おうとしていた。
「『我求めるは悪夢の祖 666のナイフ』!」
俺は急いで一本だけの本体が壊れない限り無限に再生するという666本のナイフを召喚しリザードマン群に向けて一気に解き放った。
間に合えぇー!
Side?
「く、来るなら来い!娘達に手出しはさせんぞ!グッ!?…無理が祟ったか…」
「クッ!?…」
襲い来るリザードマンの魔の手から必死に私達を庇おうとお父様と叔父様が前に出ますがまだ体調が良好ではないお父様は膝をついてしまい叔父様も追い詰められていました。
ですが
「グギャアアァー!?……」
突如として背後に無数に降ってきたナイフによって斬り裂かれたリザードマンは悲鳴を上げ消失した。
「間に合ったか!…」
「!…」
私達の窮地を又もや救ってくれたのはもう一人の男性であるイッセーさんだった。
Side一誠
「ば、馬鹿な!だ、だがもう一度!…リザードマン!」
「馬鹿はそっちだ!
同じ手は二度も通用しねえよ!」
魔術師が性懲りも無く再度リザードマンを召喚しようとしたものの出てはすぐに消えた。
「な、何故!?…」
「知りたいか?何、簡単な事さ。
アンタの魔法は俺の固有魔法で封じられた、只それだけだ!」
そう、俺は「解除」のコードを発動して奴の魔法をさも封じた様に見せた。
ちょいと誇張したけどな。
「こ、こんな筈では!…」
「見逃がすと思っているのか?!
『雷精よ紫電の一閃以て打ち果たせ』!」
「あばばばっ!?……」
逃げ出そうとする魔術師を俺はショックボルトを六十%の出力で撃ち出し気絶させた。
本当なら九十%といきたい所だが加減が難しいので控えめにしてやったが…。
「アンタ達みたいな他人を見てくれでしか判断しようとしない差別主義者の老害が居るから国が良くならないんだ…」
捕縛した襲撃者達を睨み付け俺はそう言い放った。
「あ、あの二度も私達を助けて頂いてありがとうございます!」
「ン?困ってる人がいたら放ってはおけないのが普通だろ?」
「聡明な方ですのね」
娘さんの一人に声をかけられたかと思うと彼女はキラキラした眼差しで此方を見ていた。
もう一人の娘は冬夜の方をまじまじと見つめていたが…アレ?…
「…ちょっと食堂が散らかっちゃったけど…まあ全ては襲撃者のせいだしな」
「あはは…そうですね」
「まあ、やりすぎなくらいが絶望を吹き飛ばして希望を取り戻すには丁度良いからな!…」
「え?」
「ああ、俺が好きなヒーロー、英雄が言った言葉だよ」
「そうなのですか!」
俺は不意にこの言葉を思いだし呟くと彼女はより一層目を輝かせていた。
ン?…本当に何かしたかな俺?
「イッセー殿、先程のお話の事ですが…」
俺が頭を悩ませているとシャルロッテさんが先程の事を聞いてくる。
「ああ、俺考えていたんすよ。
もしも王様の暗殺に成功したとして差別主義者達が自分の息子さんを娘さんに嫁がせるにしても王妃様の存在がそれを許さないだろうしどうするんだろうなって。
そこで冬夜が毒の検知をしている間、俺は別の検知をしていたんですがコレが見事にビンゴしましてね。
王妃様達が使用・食す筈だった全ての食器、食材には極少量ですが睡眠薬らしき物が混入されていましたよ」
「なっ!?…」
「それは本当か!?」
「ええ、そこのハゲ伯爵と襲撃者達を叩き起こして尋問にでもかければすぐに吐くと思いますよ?」
俺の推理を聞き皆驚く。
先に言ってしまえば王妃様達を睡眠薬で眠らせて、男であるレオン将軍ら近衛兵には勿論用は無いので王宮の何処かに幽閉、王妃様とシャルロッテさんは得体の知れない所に売り飛ばし、娘さん達には無理矢理に夜這いをかけ既成事実でも作らせて結婚を迫り、政権を手中に治めようという下衆な画策でも張り巡らせていたのであろう。
ま、それも俺達という不確定要素のおかげで阻止、今回の事で差別主義者達には本格的に王家から捜査の手が入るであろう。
全ては他人を傷付ける事しか出来ない身勝手な思想のせいで自業自得でしかないのだから。