ピピピ…。ピピピ…。
寝ぼけながらに布団から手を出して、枕元に置いたスマホを手に取る。時刻は午前5時30分。総員起こし30分前だ。私は布団から起き上がり着替える。あぁ、眠い。昨日は夜遅くまで書類作成だったからだ。とりあえず制服に着替え歯を研き、顔を洗うと総員起こし10分前だ。外を見ると国旗掲揚担当の艦娘達が走っている。
「艦隊総員起こし!」
長門の掛け声で皆が起きてくる。
「提督!おはよっ!」
執務室で声をかけてきたのは秘書艦の飛龍だ。私がこのラバウル鎮守府に着任してからお世話になっている正規空母だ。オレンジ色の弓道着にショートカットの髪形にぴょこんと跳ねているクセッ毛。我が鎮守府で一番の練度を誇っており提督のよき理解者である。そんな飛龍と私は他の艦娘には言えない秘密がある。それは…。
付き合っていることである。
初期艦娘の吹雪と、正規空母加賀は知っていることだが…。それ以外の艦娘達は私と飛龍が付き合っていることは知らない。ケッコンカッコカリ…。という絆を深める儀式はあるものの、ケッコンカッコガチとなると一人しか出来ないのである。将来的なケッコンカッコガチも視野に入れてのお付き合いという形で、飛龍と私は付き合っているのである。飛龍と付き合い始めたきっかけは、飛龍が着任したときに私が一目惚れしたところもあるが…。一番は、北方海域艦隊決戦の時である。
空母同士の決闘の最中、飛龍が大破したのだ。あと一歩で打破する事は勿論可能だった。だが、私の鎮守府からは戦死者は絶対出さない。と、私は決めていた。よって、敗退となったが艦隊全員を無事に帰投させた。ダメージが酷かった飛龍はそのまま入梁、数日間検査入院となった。入院期間中、私は飛龍の所へ毎日お見舞いした。最初は、何で敵空母を打破出来なかったのか後悔していた飛龍だったが…。私が「君たちは大切な人間だ。生きて帰還することが一番大事だよ。」と、声をかけると飛龍は涙を流した。このご時世、深海棲艦に対抗できるのは艦娘という女の子達だけだ。だが、兵器として扱われる場合もあり…。非人道的な扱いを受ける艦娘が居ると聞く。そんな現状に私は失望していた。艦娘達だって、人間だ。私は絶対に戦死者を出さないと幹部候補生の時から誓っていた。飛龍が大破した時、勝機はあった。しかし、手負いの状態…。撤退は妥当な判断だったと思っている。戦闘とは、その場の判断で運命が変わるから怖い。今現在我が鎮守府からは戦死者は出ていないが、この先戦闘が酷くなれば出る可能性は十分にある。攻めの姿勢を取ることも大切だが、撤退する勇気も大切だと思っている。飛龍は明るく素直で優しい艦娘だ。そんな彼女から笑顔を奪いたくない。日々の出撃では無事に帰れるように心の中で祈っている。明日も彼女の笑顔を見たいがために…。