Lv60になった私はそれにふさわしい新たな力が
生じます!
それは先制対潜爆雷攻撃…です!!」
☆綾波る 艦娘!!
「駆逐艦、潮、帰投しました」
「同じく曙、帰投したわよ」
「あぁ、ご苦労。成果は聞いてるよ。お疲れ様」
「ホントよ、この次はもうちょっとマシな作戦立てなさいよ、このクソ提督!」
「アハハ、ごめん。次はもう少し楽できる様に気をつけるよ」
司令室で潮と曙の二人を労う提督。曙は相変わらず歯に衣着せぬ物言いで提督を責める。
だが、それが照れ隠しと分かっている提督は柔軟に受け止める。
「じゃあ、今日は入渠してゆっくりしてくれ」
「そのつもりよ、じゃあね。行きましょ潮」
「…あ、うん。それじゃ失礼します」
そう言って潮はチラッと提督に視線を送る。その視線に提督は目を閉じて答える。
「……」
その二人を横目で見ながら曙は部屋を出た。
〈ウチの鎮守府の提督は、指揮は確かだ〉
皆の評判も悪くないし、曙もそれは認めている。些か優柔不断な面はあるが、そんな所も含めて提督の魅力だと思っている。口ではクソ提督と言っているが、そんな曙の毒舌も柔軟に受け止めてくれるのは、曙自身ありがたいと思っている。
曙や潮達がこの鎮守府に着任してから、早一年。
提督本人も初めて鎮守府を任された新米だった。最初は右も左も分からず、こんな事でやって行けるのか?と不安に思った物だ。曙は生来の性格からか、アレはこう!こっちはこうよ!と激を飛ばし、彼女なりに提督を助けた。
潮は不安げに、「そんな言い方じゃ提督さん、怒っちゃうよ」と助言したが、幸いにもこの提督は心の広い人間らしく、子供の様な見た目の曙に文句を言われても受け入れる度量があった様だ。
そんなやり取りを見て、潮や漣も提督に心を開く様になった。…朧はどっちなんだかいまだに分からなかったが。
そんな提督だが、最近は表情が固い事が多くなった。いつもなら報告に行けば、ちょっとした会話の一つもするのだが、ここ数日はそれも無い。書類に目を通すと「…ご苦労」と素っ気ない態度が続いた。
確かにここ最近、深海棲艦の出現頻度が多くなったのは曙も感じている。提督も何かと気苦労があるのだろう。そう分かっていても割りきれないのは、曙なりに彼の事を心配しているからなのかもしれない。
「今日は何もなく帰れそうだね~」
海を滑る小さな彼女達の一人、潮が胸を撫で下ろす。
最近は、この海域にも深海棲艦の出没頻度が上がり、駆逐艦の彼女達にとっては、例え遠征だろうと命懸けだった。
「早く帰って寝たいな」
潮の横を走る朧が、やる気無さげに呟く。
「そう言えば最近、ご主人様機嫌悪い時あるよね~」
並走する漣がため息を付く。
そんな漣に潮が困った顔で答える。
「提督さんも大変なんだよ。今日は大丈夫だったけど、この間みたいな戦闘多いし…」
「ん~でもさ?それってアタシらのせいじゃないじゃん?文句があるなら向こうに言ってって感じ~」
〈それが出来たら苦労はないよ…〉
「ん、何か言った潮?」
「う、ううん何も」
と、漣が急に黙り込んで潮を見つめる。その視線は顔から徐々に下へと…。
「な、何?漣ちゃん」
「潮だったらご主人様も怒んないって。ちょっと屈んで胸の谷間アピールすればイチコロっしょ?」
「たっ、谷間なんて無いよぅ//」
「な~に言ってんの、こんないいモン持って、アタシにもよこせ~♪」
「あっ、やっ止めて。揉まないでぇ///」
そんな会話を聞き流し、前方を駆ける曙。いつもなら突っ込みの一つも入れるのだが、今日は大人しい。彼女も提督が少し焦っているのを感じ取っていた。
鎮守府が見えてきた。
報告書を出し終えた曙がドアノブに手を掛けようとしたが、手を止めた。
クルッと向き直って提督に何か言いたげに見つめる。
「…何だ?報告は終わったろ。今日はもう下がってもいいぞ」
「アンタ、最近ちょっと余裕無いんじゃない?」
「どうしたんだ急に」
「別に。前のアンタだったら冗談の一つでも言ったのにって思っただけよ」
「…冗談か。いっそ今の状況が冗談だったらって思うよ」
提督は少し剥れて言葉を返した。
だが言った瞬間後悔した。今までにも何度か曙が、自分を思って彼女なりの言い方で諭してくれる事はあった。
それを素直に受け止めないと、途端に「アンタねぇ!」と説教が始まるのだ。
提督はしまった、と思ったが曙は至って平静だった。
「…まぁ、最近忙しいし、アンタも頑張ってるのは分かってるわ。でも、ちょっと深呼吸でもしたら?」
曙は部屋から出ていった。
〈…上からは大本営の侵攻命令、下からはお前達からの不満。このぎゅうぎゅう詰めの状態で、どうやって深呼吸すればいいんだか〉
提督は苦虫を噛み潰した様に呟いた。
と、司令室のドアが再び開く。
曙が言い足りなくて戻ってきたのか?と苦々しく思っていると、入って来たのは潮だった。
「あ、あのさっきの報告書の事で来たんですけど…。何かあったんでしょうか。曙ちゃんが怖い顔してましたけど…」
「…」
提督は平静を装って答えた。
「あぁ、それなんだが…」
それから暫くの間、曙の言葉に頭を冷やしたのか、以前の穏やかな提督に戻りつつあった。
戦況は然程変化は無いのだが、そんな状況を何とかしようとする姿勢が伝わっているのか、曙も小言を言う事もなく提督を見守っていた。
そんなある日、司令室から出てきた潮を見かけた曙が声を掛けようとした。
「潮…」
だが曙の声が聞こえないのか、潮は走ってその場を立ち去ってしまった。
「ちょっ、潮?」
潮は何か辛そうな表情をしていた。それに、気のせいか涙を溜めていた様にも見えた。
ある夜、ふと部屋に潮がいない事に気付いた。その時は、どこに行ったのかと思いはしたが、特に気にする事も無かった。
ところが、数日に一度、皆の目を盗んでは、コッソリ部屋を抜け出す潮に曙は気付いた。
流石に何度もそんな事があったので、曙は気になって後を付けてみる事にした。
そして潮がたどり着いたのは…司令室だった。
〈なんで、こんな時間にアイツの所に?〉
曙は潮からは見えない様に壁に隠れながら、聞き耳を立てていた。
コンコン。潮がドアをノックすると、部屋に入っていった。
〈提督に呼ばれたにしても、何でこんな夜更けに?〉
曙はそう疑問に思いながらも、部屋に帰った。
それから一時間程過ぎて、潮が戻ってきた。もう寝ている漣や朧を起こさない様に、静かに自分の布団に戻っていった。
そんな潮の気配を耳で探りつつ、曙も眠りに付いた。
「ねえ、潮。昨夜どこに行ってたの?」
ある日曙は何気なく潮に聞いてみた。本当はどこに行っていたか等とっくに知っているが、まさか後を付けてた等と言える訳もなく、さも知らない風に聞いてみた。
「えっ?特に、どこって訳でも…。ただ…うん、気分転換かなぁ。エヘヘ…」
「ふ~ん…」
怪しい…。
正直、潮が素直に提督に呼ばれたと言えば、理由はどうあれ納得したはずだった。
ところが、それを隠す事で、曙は返ってなぜそんな嘘を付くのか疑問を持ってしまった。
提督に呼ばれただけなら、隠す理由は無いはず。にも関わらずそれを隠すのは、知られたくない理由があるからなのか…。
〈知られたくない理由?〉
曙は考えたが、思い当たる理由等一つしか無かった。
提督に何かを強要されている…。
潮は同じ駆逐艦だが、同じ姉妹艦とは思えない程、胸が大きいのは曙の嫉妬の種だ。
時々、提督が潮の胸に視線を送っているのは、曙も気付いている。曙の軽蔑の視線に気付いて、慌てて目を反らすのは一度や二度ではない。
〈ホント、いやらしいんだから!ただちょっと…、そうあたしより一回り大きいだけじゃない!私だってあるんだからね!〉
最後は何故かその目線が自分に向かなかった事に腹を立てるのだが。
まあ提督も男だし、それは仕方ないと思っている。長門や金剛を目で追っているのはしょっちゅうだ。
だから、仮に…。曙の考えている様な事があっても、それは自分達とではなく彼女達とだろう、と無意識に思っていた。
だからこそ、そんな事がある訳が無いと思いたかった。
それから数日後、同室の漣や朧がすっかり寝付いた深夜、潮は音を立てない様にゆっくり布団から出ると、いつもの様に部屋を出た。
曙は部屋のドアが静かに閉まる音を聞くと、目を開けた。
「潮」
司令室から出てきた潮はハッと声の方に振り向いた。そこには曙が立っていた。
「あ、曙ちゃん…!」
潮は動揺を隠せないでいた。いたずらがバレた子供の様に、曙の目を見れずにいた。
「アイツに用?」
「え?う、うん。そ、その…提督さんに呼ばれて…」
「こんな夜更けに?」
「えっ、そ、それは…その…」
「潮、アンタ最近よく部屋を抜け出してるけど、クソ提督に呼ばれて来てたのね?」
「…」
「それに、何で服が乱れてるの?」
潮はハッとして、よれた服を正そうとした。
「潮、アンタ、アイツに何かされたのね?」
「えっ?そ、そんな事…」
そんな潮の様子を見て、曙は司令室のドアに手を掛けた。
「あ、曙ちゃん何をするの!?」
「潮、アンタは部屋に戻ってて。あたしはアイツに話があるわ」
曙はドアを開けた。
「どういう事?」
「な、何がだ?」
「とぼけないでちょうだい。最近、潮が夜中にいなくなる事があったわ。ここに来ていたのね」
「あ、あぁ。少し相談する事があって…」
「ふぅん、それって服を脱がなきゃできない事なの?」
「な、何を言って「提督!!」
曙は提督の言葉を遮る様に、両手で机を叩いた。
「…潮に手を出したのね?」
「…」
「…最低ね。アンタは頼りないとこもあるけど、指揮は確かだし、信頼していたわ。なのに…」
「…曙、俺からも話がある」
「何?言い訳でもするつもり?」
「潮に…もう来ない様に言ってくれないか?」
「…はっ?」
曙は提督の言葉に混乱した。てっきり醜い言い訳でも始めるのかと思った所にこの言葉。一体どういう意味なのか、曙は理解出来なかった。
そんな曙の様子を見ながら提督は話を続けた。
「もし、俺の言う事が嘘だと思うなら、憲兵に言うなり好きにしてくれ。だから先ずは、俺の話を聞いてくれ。
「まず俺は、潮を呼んだ事は一度も無い」
「はあっ?アンタ何を言ってるの!?そ、それじゃあ何?潮が自分の意志で勝手に来てるとでも言うワケ!?」
提督は返事をせず、暫く俯いていた。
「なっ、何とか言いなさいよ!」
「お前が怒るのは理解できるよ。姉妹に手を出したんだ。怒って当然だ。それについては言い訳はしない。だが、何故こうなったのか俺にもよく解らないんだ。…曙、最初から話すから、聞いてくれないか?」
曙は最初は提督を言いくるめてやろうと思っていたが、その提督が自分の行為を素直に認めた事、何故か潮に来ないでくれと自分に頼んだ事から、毒気を抜かれた気分だった。
「…分かったわ。話を聞いてあげるわ」
そう言うと、提督は話し始めた。
「あれは一カ月程前だったか。あの時は、あまり鎮守府の運営が上手く行っていなかったんだ。上からのノルマと財政的な理由で、毎日イライラしていたんだ。そんな時、たまたま報告にきた潮に大人気無いが少し怒鳴ってしまったんだ。
「潮の大人しい性格をいい事に、お前達は何も気にせず戦っていればいいんだから気楽なものだなと、嫌みを言ってしまったんだ」
「…」
「何度か愚痴ってる内に、潮は涙目になっていた。その顔を見て、ハッと我に帰って謝ろうとした。だが、その前に潮は部屋を出ていってしまったんだ。
「そして、その夜の事だったよ。潮が深夜、司令室に来たのは…」
「えっ?」
曙は驚いた。てっきり潮は提督の命令で司令室に来ているのだとばっかり思っていた。
提督は話を続けた。
「仕事も終え、潮には明日にでも謝ろうと思っていた矢先、その潮が部屋に来た。何でこんな時間に、とは思ったが良い機会だからさっきの事を謝ろうと思った。
「俺は潮に大人気ない真似して済まなかったと謝った。…そこからだ。潮の様子がおかしくなったのは。
「俺はもう夜も遅いから部屋に帰りなさいと言ったが、潮は何故か帰ろうとしない。そして急に…服を脱ぎ始めたんだ」
「!!」
曙は提督が嘘を言っているのではと疑ったが、声には出さず、話に聞き入った。
「潮が言うには、提督の苦労も知らず、自分はお役に立てない。だから、せめてこんな形で提督を癒して上げたいと言って俺に抱きついてきたんだ。
「最初は俺もバカな事を言ってないで、部屋に戻りなさい、と追い払おうとしたが、潮は頑なに離れようとはしない。そんな潮を見て、俺もつい出来心で…」
「潮に、手を出したのね…」
「…ああ」
提督は頷いた。
「そこは否定しない。俺は潮を傷物にしてしまった。だが、話はそれだけじゃ終わらなかったんだ」
「…どういう事?」
「それから数日後、何故か潮が深夜に俺の部屋に来たんだ」
「潮が?なぜ?」
「俺もそう思ったから聞いたんだ。だが言う事は前と代わらない。提督の役に立ちたい、その一点張りだ。
「恥ずかしい話だが、俺は…その度に…潮を…」
「…嘘よ」
「曙?」
「嘘言わないでよ!潮がそんな事する訳ないでしょ!大方、適当な事を言ってるに決まってる。えぇ、そうに決まってるわ!!」
「曙…」
「あたしの名前を呼ばないで!…アンタの事は悪く思ってなかったわ。でも姉妹を悲しませるヤツの下では働けないわ。…サヨナラ」
そう言い残すと、曙は何か言いたげな提督に目もくれずその部屋を出た。
その曙の前に、まるで幽霊の様に無言で立つ黒い影。
「潮!?」
さっきからその場を離れていなかったのか、潮が暗い表情で立っていた。
「話、聞いてたの?」
「……」
曙は潮を優しく抱き締め、慰める様に頭を撫でた。
「今まで気付いてあげられなくてごめんね。でももう大丈夫よ。明日にでも憲兵にこの事は報告するわ。
「行きましょ。今日はゆっくり休んで「ダメだよ」
…
… …
「え?」
曙は潮の言葉が何を言ったのか、一瞬理解できなかった。
「曙ちゃん。提督さんをどうするつもり?」
「ど、どうするって憲兵に報告してあんな奴首にしてもらうのよ」
「そんな事させないよ…!」
「ヒッ!」
先程迄の無表情から一転、潮は目の前の曙を睨み付けていた。曙は初めて見る潮の怒った顔に、思わず彼女から離れた。
「曙ちゃん、提督さんを捕まえるなんて許さないよ」
「な、何を言ってるの潮!アナタ、提督に乱暴されたんでしょ!?何か弱みでも握られてるの!?」
「…違うよ、これは私の意思でやってる事だよ」
「そんな、そんなの嘘よ。そうでしょ。提督に脅されてるんでしょ?バラしたら解体するとか。そうなんでしょ?」
潮は曙の肩に手を置いた。その手に目を向けた曙が次に潮の顔を見ると、いつもの穏やかな表情に戻っていた。
「私ね、優しい提督さんが大好きだったの。私や曙ちゃんに優しくしてくれる提督さんが。
「だからいつも提督さんに何かしてあげられないか考えていたの。そんな時だったわ。提督さんがとても困っているのを見たのは。
「私、何かしてあげられないか考えたの。でも私にできる事って何だろうって思ったら…こんな事しかできないって気付いたの。
「提督さん、たまに私の胸見てたからきっと喜んでくれると思ったわ///」
そう言って潮は頬を赤らめた。
「う、潮」
「なに、曙ちゃん」
「アンタ間違ってるわ!」
「…そんな事ないよ、曙ちゃん。提督さんは、私を受け入れてくれたわ。私ね、とっても嬉しかったの。…だってそうでしょ?それって私の事を女として見てくれてるって事だもん。
「提督さんは疲れてるの。だから、誰かがこうやって提督さんを慰めてあげなきゃいけないの。…これは私にしかできない事なの」
〈どういう事?潮は提督に脅されていたのではなかったの?提督の言う通り、本当に自分の意志で提督の部屋に行っているの?〉
「…だから曙ちゃん」
「痛っ!」
曙の肩を掴んだ潮の手が、ギリッと音を立ててめり込んだ。
「この事、憲兵さんに言ったら、私怒るよ…!」
「い、痛いっ、潮っ!」
それから先の事はよく覚えてない。
どうやって部屋に帰ったかも覚えてない。
潮は今日も提督の部屋に行くのだろう。
そう、結局あたしはこの事を憲兵に、大本営に報告する事は無かった。他の艦娘達にも二人の仲は内緒にしてある。
もし、この事を誰かに話したら、潮は絶対あたしを許さないだろう。そう思うと、誰かに言うのが怖かった。
「も、もうっ、漣ちゃんったら♪」
今、潮は目の前で漣と談笑している。その無邪気な笑顔を見るたびに、昨日の事は夢だったんじゃないかと思う。
同じ部屋に居ても、あたしは無意識に潮を避ける様になっていた。潮は以前の様にあたしに接してくる。でもそれは、自分と提督の関係を誰かに喋ったりしないか見張っているのでは…。
そう思うと、どうしても潮の目を見る事ができなかった。
「ねぇ、曙ちゃんも…そう思うでしょ?」
ふいに話し掛けられ、潮と目が合った。だが、その瞳にあたしは映っていなかった。
何もかも塗り潰す様な黒い闇に、あたしは飲まれていた。
最初は提督、潮視点で進めてこうかと思ったんですが、何も知らない曙の視点から進めてった方が面白いかな~と思ってこうしました。
提督さん、羨ましス。