艦娘症候群   作:昼間ネル

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「紅茶しか無かったんだけど…いいかな?」



たった一人の冴えたやり方

私の名は、明石型工作艦1番艦、明石と言います。

この鎮守府で主に修理や兵器の改装等を手掛けてます。

戦闘は…あまり得意ではありませんが、簡単な修理ならお手のものです。

そんな事もあり、皆さんには重宝してもらってます。それは私も自慢だったりします。

 

そんな所を認めてもらったのか、提督さんのご好意で工廠とは別に、ちょっとしたお店も出させて貰ってます。

こちらは装備関連とはまた違った、便利屋みたいな物ですね。日用品から嗜好品迄、大体の物は手に入りますよ。艦隊の皆さんは勿論、提督さんもたまに利用していたりします。

 

ただ、最近ちょっと困ってると言いますか、皆さん、私が何でも作ってくれると思ってるみたいで…。そりゃ、多少の事は用意できますが。

でも、限度があると思うんですよ…。

 

『運が上がる改装をして欲しいのだけれど…』

 

すいません、私が出来るのは改装だけで、そっちは神様に頼んで下さい。

 

『睡眠薬を取り寄せてもらう事できる?』

 

…誰に使うの?イヤ、出来るけど。まさか提…

 

『若くて結婚適齢期の男性がいないかしら?』

 

結婚相談所に行って下さい。…って言うか、私が紹介して欲しいですよ…。何で、ぜ〇しぃ買ってくんです?相手いないですよね?

 

とまぁ、こんな感じで最近は皆さんの趣味に走ってる気がします。

そしてもう一つ、たまに一部の皆さんに頼まれる物があります。それは…。

 

『『惚れ薬、作れる?』』

 

主に提督さんを慕っている方々がほぼ間違いなく聞いてきます。

こちらの提督さん、意外と人気あったりするんですよね。顔は悪くないと思いますし、無茶な命令も出したりしません。

実は私も密かに好きだったり…///。戦闘ではあまりお役に立てない私にも、活躍の場を与えてくれたのもあります。改装が上手くいった時に〈明石のお陰だ。ありがとう〉と言われると、本当に嬉しいです。

でもそれだけじゃ無かったりします。

以前、珍しく艦隊に編成された時、やはり練度の低い私だけが、大破してしまった事がありました。

私は申し訳ない気持ちで一杯だったんですが、提督さんは私を叱りもせず、無茶をさせて済まなかったと逆に謝ってくれました。期待に応えられなかったのは私なのに…。

この人は、本当に私達の事を大事に思ってるんだなぁ、と思いました。

…それに、服がボロボロの私を照れた顔で見てました。普段、同じ艦娘としか接しないので、そんな事気にもしませんでしたが、あ~そっか、私が女の子だからか、と急に恥ずかしくなっちゃいました。

 

思えばその時からかなぁ、提督さん、どんなタイプが好みなんだろって気になり出したのは…。

 

愛宕さんの胸を見てた事があったから、胸は大きめが好きなのかなぁ。私も結構あると思うんだけど。近代化改修で大きくならないかな…。

あ、そう言えば大淀が、「提督ったらスカートの切れ目チラチラ見てるのよ///イヤらしいんだから!」って言ってたっけ。…その割には顔赤くして、嬉しそうだったよね?何でその後、高そうな下着注文したの?

私も大淀と同じスカートだから、提督さん悩殺できるかな。…私も下着注文しよっかな。

 

…でも、惚れ薬か。

妖精さんに協力してもらえば、出来るかな?

試してみるか…!

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、思ったよりも早く出来ました。

これも妖精さんのお陰です。約束の間宮さんの羊羮あげないと。

早速、試してみたいけど、自分で飲んだらデータが取れないし。どうしよう…。

 

「He~y、明石~♪頼んでた紅茶葉、届いてますカ~?」

 

「あ、金剛さん。ええ、届いてますよ。今出しますね」

 

……

 

「あれ?どこに置いたかな?…あっ、この中に仕舞ったんでした。…よっと」

 

「Thank-you~明石!アナタも飲んでみる?とっても美味しいヨ~」

 

「い、いえ。今回はいいです。それに私がのんだら、妹さん達の分、無くなっちゃいますよ」

 

「oh~、それもそうネ~。じゃあ、今度は明石の分も頼んであげるヨ~」

 

「あ、ありがとうございます。楽しみにしてますね」

 

「それじゃ、See you♪」

 

「…」

 

上手く行きました。紅茶葉の中に惚れ薬を少し垂らしておきました。あの薬は飲んだ後に見た者に愛情を抱く効果がある筈です。まぁ、雛鳥の刷り込みみたいな物ですね。

どんな結果になるのか、今から楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ明石、知ってる?」

 

「あ、大淀。どうしたの?」

 

次の日、大淀が私の店に来るなり聞いてきた。

 

「金剛さん達の事」

 

「金剛さん?」

 

それから大淀に昨日、金剛姉妹が起こしたちょっとした騒動に付いて聞かされました。

何でも昨日は、霧島さんが任務で出撃予定だったそうです。ところがいつまで経っても姿を表さず、提督が直接呼びに行ったそうです。

そこで見た物は、姉妹仲良くむつみ会う姿、と言えば聞こえは良いですが、実際は何故か姉妹揃ってずっと抱き合って動こうとしなかった様です。

一番驚いたのは、あの提督への愛情を隠そうともしない金剛さんが、提督には見向きもしなかったとの事です。

最初はふざけていると思った提督も、何やらただ事ではないと感じたのか、長門さんや他の艦娘達に一旦引き離す様に命じたそうです。

引き剥がされた霧島さんと金剛さん達姉妹は、それはそれは大泣きして、提督をまるで親の仇の様に罵ったそうです。

しかも何とか出撃した霧島さんも、任務を途中で放棄して、勝手に鎮守府に帰ってしまったとの事です。

これには他の艦娘の皆さんは勿論、提督も怒ったそうですが、当の霧島さんはどこ吹く風、自分達を引き離した提督に逆に食って掛かったそうです。

本来なら懲罰の一つも言い渡されそうな物ですが、提督もあまりの剣幕に何も言えなかった様です。

ところが、今朝になって金剛さん達が4人揃って司令室に出頭し、昨日の事を謝りにきたそうです。

当の霧島さんも、どうしてあんな事をしたのか自分でも分からないと困惑していた様です。

 

「へぇ~っ。あの金剛さん達がねぇ。想像も付かないわ」

 

「そうでしょ。私も一部始終見てたけど、いまだに信じられないわ。特にあの冷静な霧島さんが、あんなに泣きわめくなんて初めて見たわ!」

 

大淀は何やら興奮冷めやらぬ、と言った感じだ。それにしても、あの霧島さんがねぇ…。見てみたかったかも。

 

「…明石、もしかしてアナタこの件に絡んでたりとかは…?」

 

うっ。流石、大淀。鋭いなぁ。

 

「なっ、何を言ってるのよ大淀っ。そんな事ある訳ないじゃない。そ、それに艦隊の運営に支障を来す様な事したら、ただじゃ済まないわ」

 

「…う~ん。まぁ、言われてみればそうかもね。あぁそう言えば前に頼んでいたアレなんだけど…」

 

大淀は注文の品を買って帰って行った。

 

今回の件で分かった事は、惚れ薬の効果時間は約一日、と言ったところか。

金剛さん達は、おそらく姉妹全員で紅茶を飲み、結果、姉妹同士で惚れあってしまった、と言った感じかな。

なるほど。薬自体は問題無かった様だ。効果時間が一日しか持たなかったのは、量が少なかったからだろう。

よし、もう少し調整して効果を高めてみよう。

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい曙ちゃん。月刊釣りガール入ってるわよ」

 

「ありがと、大淀さん」

 

曙ちゃんは月に一度、この雑誌の発売日によく来ます。何でも最近釣りにハマったとかで、たまにそれ関連の物も取り寄せられないか聞かれた事もあります。

 

「曙ちゃん、最近は忙しいみたいね」

 

「えぇ、本当はもっとゆっくりしたいんだけど、クソ提督が次はこっちも頼むって言ってくるから、仕方なくよ。お陰で釣りに行く暇もありゃしない!」

 

と、一見提督に不満を持っている様に見えますが、その割には嬉しそうだったりします。う~ん、これがいわゆるツンデレってやつですね。提督さんが曙ちゃんを重宝するのも案外こんな所だったりして。

曙ちゃんも提督が好きなのは常連の駆逐艦、漣ちゃんからよく聞いてます。漣ちゃん曰く、もう少しデレを見せないとご主人様は落とせない、ツンデレ道は奥が深いそうです。私もちょっと真似してみようかな?

 

……

 

「あ、そうそう。金剛さんに貰った紅茶葉、少し余ってるから、良かったらどうかな」

 

「紅茶?そうね、たまには飲んでみるのもいいかも。じゃあ貰うわ」

 

曙ちゃんは雑誌と〈紅茶葉〉を抱えて帰って行きました。

さぁ~て、今回は少し効き目が強い筈です。曙ちゃん、期待してますよ。

 

 

 

 

 

 

それから数日後、工廠に立ち寄る駆逐艦の娘達は、何やら深刻そうな顔をしていました。そう言えば曙ちゃん見ませんね、とたまたま側にいた陸奥さんに聞いても「私の口からは…」と、言葉を濁して教えてくれません。

曙ちゃん、早速何かしたみたいですね。

私は工廠にいた潮ちゃんと漣ちゃんに何かあったのか、詳しく聞いてみました。

な、何と曙ちゃん提督に、あろう事か夜這いを仕掛けたそうです!

いつもは提督に食って掛かる様な感じですが、ここ数日は妙に大人しかったそうです。提督に任務報告しても顔を赤くして目も合わせず、皆に話し掛けられても心ここに在らず、と言った様子だったそうで。

提督さんも、自分が何か怒らせる様な事をしたか、潮ちゃんに聞いたそうです。

そして昨夜、曙ちゃんは提督の私室に忍び込み、提督に自分と関係を持つ様に迫ったとの事です。

驚きました…。まさか、いきなり最終手段に打って出るとは…!

何でも曙ちゃんはそのまま提督に取り押さえられ、軟禁状態だそうです。

 

「いや~、私も驚いたよ。まさか、よ、夜這いするなんて!」

 

「うん、曙ちゃん、どうしちゃったのかなぁ。あ、あんなエッ…チな事するなんて///」

 

漣ちゃんと潮ちゃんは曙ちゃんの行動に少なからず驚いている様です。無理もないか。二人とも曙ちゃんが提督を好きな事は知っていた様だけど、こんな大胆な行動に出るなんて、思ってもみなかっただろうし。

まぁ、原因は私なんだけど。

金剛さんから分けて貰った紅茶葉に、改良した惚れ薬を入れて誰かで試そうと思った所にたまたま曙ちゃんが来たので実験に付き合ってもらいました。

う~ん、今回は少し効き目が強すぎましたね。まさか、そんな強硬手段に出てまで想いを叶えようとするとは。

でも、効果はまだ続いてるみたいだし、量はだいたいこんな感じかな。

ただ、私の予想では一緒に紅茶を飲んだ駆逐艦仲間の誰かを好きになると思っていたんですが、曙ちゃんの場合はその場にいない提督に愛情が向いていました。

これは少し修正の余地ありですね。

曙ちゃんのお陰で貴重なデータが取れました。惚れ薬はほぼ完成です。

 

 

 

 

あれから数日、細かい調整をして一度飲めば約一週間は効果が持続する様にしました。

ただ、私は大事な事を失念していました。

…どうやって、提督に飲ませるか?です。

提督が私のいる工廠に来てくれれば、あっさり解決ですが、提督がこっちに来てくれるのは、月に一度位です。

私が司令室に行って、何も言わずにこれを飲んで下さい、って訳にもいかないし…。

それに提督に飲ませる事ばっかり考えてましたが、仮に上手くいったとしても、後をどうするか…。

私とはほとんど接点の無い提督が、いきなり私にベタ惚れって状況は、幾らなんでも不自然過ぎます。私が何かしたってバラしている様なものです。

困ったなぁ…。

せっかく惚れ薬は完成したのに。

 

 

 

 

 

 

あれから数日、霧島さんも迷惑を掛けた艦娘達に謝り、曙ちゃんも我に帰った様で、すっかり元通りです。

うん、仲が良いのが一番ですね。戦場では、辛い事もあるでしょうし、せめて鎮守府にいる時位は仲良くしてたいですよね。

こんな日常を見てると、わざわざこの平穏を壊してまで提督と結ばれようと思ってた事に罪悪感を覚えます。

やっぱり私は提督とは結ばれない運命なのかな…。

提督を好きな艦娘は他にもいるし、彼女達が諦めるとも思えない。考えれば考える程、道は険しいんじゃ…。

 

うん…?

 

彼女達が、提督を諦める?

アレ?確かにそんな事はないだろうけど、これってやり方によっては…。

 

そうか…!何でこんな事に気付かなかったんだろう!

 

フフ、アハハハ。

そうだ、そうなんだ。考えてみればとても簡単だ。

もし私の考え通りに行けば、私と提督は結ばれ、皆もそれを祝福してくれる筈。

そうだ、皆が幸せになる、こんなすばらしいやり方があるじゃない!

幸い惚れ薬は完成してるし、充分な量がある。

私は早速、この考えを実行に移す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、明石。今日も可愛いよ」

 

「も~///提督、変な所触んないで下さい。皆が見てますよ」

 

今日も提督は、私の工廠に用も無いのに入り浸っては私に抱き付いてきます。

周りには他の艦娘達も何人か居ます。ところが、彼女達は目の前でイチャつく私達に文句を言うどころか、微笑ましく見守っています。

 

「oh~、提督と明石、今日も仲良いネ~♪」

 

「本当ですねお姉様。まるで私達姉妹の様ですわ」

 

金剛さんと霧島さんがまるでカップルの様に寄り添いながら、私と提督を見つめています。

その横では、曙ちゃんと潮ちゃんが手を握ってモジモジしています。

 

「あ、曙ちゃん、皆の前で恥ずかしいよ///」

 

「いいから黙って私の手を握ってなさい。離したら承知しないわよ」

 

私は工廠にいる彼女達に軽く咳払いして言った。

 

「みんな、そろそろ席を外してくれないかな?」

 

「イエース,明石の頼みなら断れないネ~。霧島?」

 

「はい、お姉様」

 

「明石お姉様がああ言ってるわ。潮、私達も行くわよ」

 

「う、うん…♪」

 

皆は寄り添いながら、幸せそうにその場を後にした。

残るのは私と提督だけです。

提督は、待ってましたとばかりに私をお姫様抱っこします。

 

「明石、ようやく二人きりになれたね」

 

「て、提督っ。まだ昼間ですよっ///」

 

「構うもんか。明石がこんなに可愛いのが悪いんだ。あぁ、明石。僕はもう君無しじゃ生きていけないよ」

 

「わ、私もです、提督っ///」

 

私と提督はどちらからともなく、熱いキスをしました。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、私は惚れ薬を使いました。

と言っても、相手は提督ではありません。

仲間の艦娘にです。

私がした事はとても簡単です。

まず、艦娘姉妹の長女や旗艦を務める娘に上手く惚れ薬を飲ませ、私を好きにさせます。そうなれば彼女達は、私の言う事には何でも従います。私は彼女達に命令して、自分の姉妹や部下に惚れ薬を飲ませる様に命令しました。そうやってこの鎮守府にいる全ての艦娘に惚れ薬を飲ませ、私に惚れさせる事に成功しました。…まぁ、姉から薬を飲まされた艦娘は、微妙に私よりも姉の方が好きな様ですが、これは私の予想の範囲内です。その愛情が提督に向きさえしなければ、問題はありませんからね。

その後、私は彼女達に一つの命令を出しました。

 

〈私と提督の仲を祝福する事〉

 

と言っても、彼女達はいまやすっかり私の虜。提督の事はもう眼中にありません。

これで、私と提督が結ばれても誰一人不満は言いません。…いえ、私を好きになった艦娘からは勿論不満は出ましたが、私達を祝福しないとアナタの事嫌いになるかもと言えば、皆迷わず従いました。

 

これで私と提督の邪魔をする者は誰もいません。

ホントは、ゆっくり私を好きになってもらいたかったんですが、もう我慢しなくていいんだと思うと、ついつい惚れ薬を使っちゃいました。

お陰で提督は、いまや私しか頭にありません。実務を放り出してまで、私に会いに来てくれます。

ただ、艦娘達と提督が私を巡って対立する事があるのは予想外でした。その度に間に入って宥めなきゃいけないのは、毎回苦労しますが。

 

でも、今の私はとても幸せです。

大好きな提督に愛され、周りの皆も祝ってくれます。勿論、薬が切れる迄と言う制限はありますが、その時はまた薬を飲ませればいいだけです。

ホントはこんな事したくなかったんですが、皆が幸せなら、問題無いですよね?

 

私達も幸せになりましょうね、

 

提督さん♪

 

 

 




泊地修理拳
南方泊地海域第一、第二作戦のボスに勝利すると仲間になる明石の必修技。彼女を艦隊に加える事で利用が可能。また、彼女がいると通常工廠の他に改修工廠が使える様になる。彼女に改修された艦娘は、あたかも水を得た魚の様であったと言う。
余談ではあるが、彼女の名前は道具を取ってもらう時に「あ、貸して」と言ったのが訛り、明石に変化したと言う説が支配的である。
民明書房 刊「猿でも分かる艦これ入門(通称サル艦)」より

惚れ薬の話は一度はやってみたかったので、明石でやってみました。他の人とネタ被んないか考えた結果、このオチにしました。大丈夫だよ…ね。

次は〇〇で、正統派ヤンデレです。
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