艦娘症候群   作:昼間ネル

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旨いわぁ!
旨すぎて、ふりかけが欲しいわぁぁぁ!!





誰が為に彼女は泣く

一人の女が、海を前に立ち竦んでいた。

眼前の海には人であって人では無い者達が、彼女を取り囲んでいた。その数は二十~三十はいるだろうか…。目の前に立つ女に今まさに襲い掛かろうとしていた。

そんな異形の敵に囲まれた彼女の心中にあるのは恐怖だろうか、それとも諦めだろうか…。

彼女は後ろを振り向くと、一人呟いた。

 

「あなた…すぐ会いに行きます。どうか私を見守って下さい」

 

彼女は未練を振り切る様に頬を叩き気合いを入れると、矢を弓につがえる。強く引き絞られた矢が空に放たれた。

杖を付いた女が右手を掲げた。それを合図に異形の者達は一斉に躍り掛かった。

 

彼女は海へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、提督…」

 

「何だ赤城…」

 

「いえ…とても美味しそうだなと思いまして」

 

提督と呼ばれた男は、目の前の女の視線に箸を止める。

 

「…やらないからな?」

 

「ムッ!私、そんなに意地汚くありません!」

 

「と言いつつ視線が箸から離れないのは何故?」

 

「索敵は大事です!」

 

「焼き肉船団は俺が守護(まも)る!」

 

「航空戦ですか?負けませんよ!」

 

「くっ!手強い。加賀!救援を!」

 

「了解。赤城さん、加勢します」

 

「お前そっちかぁ!」

 

「一航戦の力」「見せて上げます」

 

肉無(ニクナ)シヤァァァアッッ!!」

 

「うっさいわよ!クソ提督!」

 

「あ、すんません」

 

「やりました」

 

「やりましたじゃねえよ一航戦、思わずノッたけど人の肉、横取りしてんじゃねぇよ」

 

「まあまあ、いいじゃないですか提督。じゃあこうしましょう!半分こと言う事で…」

 

「…しょうがないな」

 

「ハイ、加賀さん、こっちどうぞ♪」

 

「って、お前らで分けるんかーい!!」

 

提督との制空権争いに勝利し報酬(焼き肉)を手に入れた赤城は、自分を睨む彼の視線はどこ吹く風、ほくほくと舌鼓を打っていた。

 

 

 

 

 

 

私、正規空母の赤城がこの鎮守府に来て一年。もうそんなに経つのね…。

 

私の居る鎮守府は、あまり評判が良くないみたいです。と言っても提督が酷い人だとか私達が言う事を聞かない訳ではありません。何でもこの鎮守府は深海棲艦の出現頻度の高い危険な海域らしく、一度この鎮守府は深海棲艦に攻め込まれ壊滅寸前になったとか。

当時の提督は生死不明、それからも何度か目と鼻の先に深海棲艦が現れ、何度も打撃を被ってきました。

その度に提督が怪我をする事もあり、聞いた話ではこの鎮守府に着任するのを皆嫌がる様です。

無理もありませんね。私も着任してから何度か沈みかけた事もあります。艦娘の私でさえこの有り様なんですから、私達と違って修復の効かない人では命が幾つ有っても足りません。前任の提督も怪我をしたのをこれ幸いと、逃げる様に辞めて行きました。

それから1ヶ月、提督の指示の無いまま私達は戦い続けました。

大本営は私達を見捨てたのだろうか…。誰もがそう思った時でした。あの人がやって来たのは。

 

『今日からここで提督をする事になったから』

 

第一印象は…あまり良くありませんでした。何と言うか飄々としていて、とても軍人には見えませんでした。

それは皆さんも同じ様で、中には『自分達は見捨てられた』『ここであの人と沈むんだ』と嘆く娘達も。…かく言う私もですが。

確かにあまり優秀な人、とは言い難いですね。

長門さんや天龍さんによく怒られていましたし、曙さんにもク…オホン!よく貶されています。

 

それから数ヵ月。よく見れば鎮守府が活気に満ちている事に気付きました。

最初は私もこんな人に提督が勤まるのかしらと思っていました。でも、ふと気づけば以前の様な厭戦気分は無くなっていました。

これは提督の人柄なのかもしれませんが、私達艦娘と話す時も上官と部下ではなく、まるで姉妹とでも話す様な気さくさがあります。

長門さんや那智さんも『しょうがない奴だ』と一見呆れている様に見えます。その実、まるで手の掛かる弟にでも接するかの様に微笑ましい目で見ています。

もしかしたら提督は最初からこんな雰囲気を作るのが狙いだったのかしら…。

後に知りましたが、提督は自分からこの鎮守府に来る事を望んだとか…。

ある時、私はどうしてこんな危険な鎮守府に来たのか尋ねました。すると提督は、いつもの呑気な笑顔で答えました。

 

『誰かがやらなきゃいけないだろ?それが俺だっただけだよ』

 

怖くないんですか?

人間のあなたでは死ぬかもしれないんですよ?

 

『俺と一緒に心中はイヤかい?』

 

この時、初めて私は気付いた。

この人は死ぬ覚悟でここに来たのだと…私達と共に沈む気なのだと。

 

…それが、この人の事をもっと知りたいと思ったきっかけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ提督さん、どうして翔鶴姉えは出撃できて私は演習なの?」

 

「ず、瑞鶴!すいません提督、どうしても聞くって聞かなくて…」

 

ある日、提督と私の居る執務室に五航戦の二人、翔鶴型正規空母の翔鶴さんと瑞鶴さんがやって来た。

瑞鶴さん、少し怒ってるわね。

無理もないかしら…最近は瑞鶴さん、ほとんど待機ですものね。

 

「そんな怒るなよズイズイ。せっかくのお休みだ、ゆっくり羽伸ばせよ」

 

「誰がズイズイよ!私が言ってんのは、その事じゃないわよ。どうしてそこに居る赤城さんや翔鶴姉えは出れて私はお留守番なのかって聞いてるのよ!」

 

「お前、鎮守府を守るのも大事な仕事だぞ?お前が居てくれるから俺も安心して昼寝…じゃない「昼寝?今、昼寝って言ったわね!?」

 

「言ってないズイ」

 

「だからそれ止めなさいよ!駆逐艦の娘が真似すんのよ!」

 

「悪い悪い。でもお前をノケモノにしてる訳じゃ無いって。お前も大事な戦力(フレンズ)だよ。よ!ツインテ!幸運艦!マリアナターキー!」

 

「フレンズって何?あと最後のマリアナターキーって何!?絶対褒めてないでしょ!?」

 

「関係無いけど瑞鶴と鹿島って髪型似てない?」

 

「鹿島って誰よ!?…ハァ、もういいわよ。全く、何でこんなふざけた人が提督に成れたんだか…」

 

「強いて言えば顔かな?」

 

「あんたが成れるんだったら世の中提督だらけよ!」

 

「翔鶴姉え~、瑞鶴が苛めるよ~」

 

「何でアンタが翔鶴姉えって呼ぶのよ。翔鶴姉えは私のよ!」

 

「瑞鶴…お前、こんな昼間っから///」

 

「ず、瑞鶴…気持ちは嬉しいけど…お姉ちゃん、ちょっと恥ずかしい…かな///」

 

「なっ!そ、そんな意味じゃ無いわよ//」

 

「あ、1時間位…席、外そうか?」

 

「お姉え!この人、爆撃しちゃっていいかな!?」

 

「だ、駄目よ瑞鶴!提督は人間だから修復に時間掛かるのよ?」

 

「爆撃するのはいいんかい!」

 

「もう!行こう、翔鶴姉え!」

 

「待って瑞鶴。じゃあ提督…」

 

フフッ、瑞鶴さんも随分元気になったわね。提督が来る前は翔鶴さんが心配する位、元気無かったのに。

…ところで鹿島さんって誰かしら?

 

「提督…もしかして翔鶴さんには話してあるんですか?」

 

「ああ…元々、翔鶴の提案を俺が飲んだ様な物だからな」

 

そう…翔鶴さんも覚悟を決めたのね。

 

瑞鶴さんには黙っているけど…今、この辺りの海域に大規模な深海棲艦が集まりつつある。恐らくこの鎮守府の総力を懸けても勝てるかどうか分からない位の。

それを聞いた時、私も加賀さんも、翔鶴さんもここで刺し違える覚悟を決めた。

でも提督は、翔鶴さんの嘆願もあり誕生して一年にも満たない瑞鶴さんを自分達に付き合わせたくなかったのかもしれない。少し先だけど、この鎮守府に瑞鶴さんの後輩に当たる葛城さんが着任するみたい。提督は今の内に瑞鶴さんを鍛え、葛城さんと共に後を託すつもりなのでしょう。

 

「俺達に何かあっても瑞鶴なら大丈夫だ…多分

 

どっちなんです…?

 

「勿論、鹿島もな」

 

だから、鹿島さんって誰ですか!?

 

 

 

 

 

 

「ただいま、赤城さん」

 

「あ、お帰りなさい」

 

あ、そうか。今日は加賀さん、瑞鶴さんの演習に付き合ってたのね。しばらく秘書艦していたから忘れてたわ。

フフッ、曙ちゃんもどうして私まで?って怒ってたわね。

 

「調子はどうですか?」

 

「あの娘は集中力が無いのよ。ちょっと褒めると天狗になって…。曙の方がよっぽど根性あるわ」

 

「ウフフ、そんな事言いながらも後輩の指導を買って出るんですから、加賀さんも優しいですね」

 

「茶化さないで下さい。…でも心配なのよ。もし私達に何かあったら、あの娘一人でやっていけるかしら…」

 

「大丈夫ですよ。翔鶴さんの妹ですもの、すぐに私達を越えますよ」

 

「…それはそれで、気に入らないわね…」

 

加賀さん、もしかして瑞鶴さんで日頃の鬱憤張らしてるのかしら…。

 

「小耳に挟んだんですが…深海棲艦の大攻勢は、約一週間後だそうです」

 

「…本当ですか、赤城さん」

 

「ええ…。さっき鳳翔さんから聞きました。鎮守府海域に現れるのはその位みたいです」

 

「そう…。いよいよですね」

 

「だ、大丈夫ですよ加賀さん!まだ私達が負けると決まった訳じゃありません!案外、皆さん沈まずに済むかもしれません!」

 

「…そうですね。私達は沈んでもどこかの鎮守府で、また生まれ変われるかもしれません。でも提督は…あの人はそうは行きません」

 

「そ、そうですね…」

 

「赤城さん、これが最後かもしれません。想いを伝えてもいいんじゃないですか?」

 

「な、何の事ですか?」

 

「提督ですよ」

 

「んなっ!!な、何ですか加賀さん、急に///」

 

「ハァ…普段の赤城さんを見ていれば解りますよ」

 

「わ、私は別に…その…」

 

「もし何かあっても、また生まれ変われるか分かりません。ここで言わないと悔いが残りますよ?」

 

「う…うぅ…///」

 

「…実は私も提督の事が好きでして。赤城さんが言わないなら私が貰いますね」

 

「だっ、駄目です!提督は私の…///」

 

「冗談ですよ。でも、それが赤城さんの気持ちなんでしょう?これが最後かもしれません。思いきって伝えてみては?」

 

「そ、そう思いますか?」

 

「ええ。それに瑞鶴も提督の事を慕ってる様ですし」

 

「ず、瑞鶴さんが?」

 

「あの娘、口ではあぁ言ってるけど、提督と話してる時、生き生きしてるもの。今までの提督の時はあんな顔しなかったわ」

 

「…そうですね」

 

「大丈夫、提督はちゃんと答えてくれますよ」

 

「加賀さん…」

 

「でも、曙ちゃんたちも居ますから、いかがわしい事は人目の付かない所でお願いしますね」

 

「い、いかがわしい事って何ですか///?」

 

「え、そ、その…せ…」

 

「せ!?」

 

「接吻とか…///」

 

「え?…は、ハイ!接吻ですね?」

 

「何だと思ったんです?」

 

「加賀さん!明日も早いです!早く寝ましょう!」

 

「は、はぁ…」

 

あ~びっくりした!

か、加賀さんってたまによく解らない時があるわね…。

 

それにしても…確かにこれが最後かもしれない。加賀さんの言う通り悔いを残したまま沈むのはイヤね。どうせ最後なら…駄目元で気持ちを聞いてみるのも…いいかもしれないわ。

そうね…それがいいわ。

 

フフッ、ありがとう加賀さん。

もし沈んでもまた一緒の場所に生まれたいですね。

その時はちゃんと話しますよ。どうなったかを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈…何だと思ったのかしら…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふわぁ…。

加賀さん、早起きね。もういないわ。昨日はグッスリ眠れたし、今日も秘書艦頑張りましょうか!

…あら?この声は…曙さん?それに翔鶴さんも…。

どうしたのかしら?何か揉めてる様だけど。

 

「おはようございます。…あの、皆さん、どうかしたんですか?」

 

「あ、おはようございます赤城さん。そ、その…」

 

「…翔鶴さん?」

 

「ねぇ赤城さん!深海棲艦がもうすぐ鎮守府に攻めてくるって本当なの?」

 

「あ、曙さん…どうしてそれを?」

 

「さっき翔鶴さんと加賀さんが話してるのを聞いたのよ!どういう事!?」

 

「ご、ごめんなさい赤城さん!加賀さんと話してるのを聞かれてしまったみたいで…」

 

どうも姿を見ないと思ったら…加賀さん、逃げたわね。

 

「曙、赤城を責めるな。俺が黙ってろって命令したんだ」

 

「そんな事どうでもいいわよ!どうして私に黙っていたワケ?…まさか私が怖じ気付いて逃げるとでも思ったの?馬鹿にすんじゃないわよ!!」

 

曙さん、本当に勇ましいわね。駆逐艦にしておくのは勿体無いわ。…この娘、前世は戦艦だったんじゃないかしら?

 

「そうじゃない曙。今度の戦いは正直勝てるか分からない。だから瑞鶴やお前みたいな生まれて間もない連中だけは残そうって考えたんだ」

 

「…イヤ

 

「曙…?」

 

「赤城さんや翔鶴さんが戦ってるのに私だけ逃げろっての?私も戦うわよ!!」

 

「曙ちゃん…」

 

「曙…本当にいいのか?下手をしたら沈むかもしれないんだぞ?」

 

「そこを何とかするのがアンタの役目でしょ!このクソ提督!!」

 

「…フッ、確かにな。こいつは一本取られたな」

 

「え?提督、じゃあ曙さんも…」

 

「あぁ。赤城、お前の護衛にでも着かせるさ」

 

「提督…」

 

「フン!当然よね?私は「確かに曙さんは駆逐艦の中ではトップクラスです。きっと力に成ってくれますよ」

 

「そ、そうよ!私は「そうだぞ赤城。何しろ最初に言ったセリフがクソ提督だからな。大した玉だ」

 

「…それに駆逐「確かに曙ちゃんは駆逐艦ですが、戦艦並に頼もしい「わせなさいよーー!!

 

「何なのよアンタ達!人のセリフ取るんじゃないわよ!!」

 

「え?」「別に」「取ったり」

 

「「してない「ですよ」」ぞ?

 

「それがムカつくって言ってんのよ!!しかも最後合ってないじゃない!ちゃんと揃えなさいよクソ提督ッ!」

 

「なぜ俺だけ!?」

 

「とにかくっ!私を置いて出撃なんて許さないからね!分かったわね?赤城さん、翔鶴さん!!」

 

「フフッ。ええ、頼りにしてるわ曙さん」

 

「…フン」

 

 

 

 

 

結局…曙ちゃんも巻き込む事になってしまった。

駆逐艦の娘は少しでも多く残して置きたかったけど、一人でも戦力が欲しいのも事実。これで良かったのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、提督。鳳翔さんから聞きましたが…そんなに大きな戦いになるのでしょうか?」

 

「あぁ。何度も話してるが、良くて引き分けだろうな。正直お前達には悪いと思ってるよ。沈めと言ってる様な物だから」

 

提督の顔が暗くなった。やはり無茶な戦いだと言うのは提督が一番解ってるのだろう。そして、それを伝えなければいけない事も。

例え私達に恨まれようとも…。

 

「その事で提督を恨んだりはしませんよ。でも、今回の戦いはこの鎮守府も危ないんですよね?その…せめて提督だけでもここから離れては?」

 

「そうもいかないだろ?前も言ったけど、お前達が沈むなら、俺も付き合うよ」

 

「で、ですが!提督は人間です。私達みたいに修復は出来ません!もし何かあったら、それこそ命に係わります!」

 

「…もう最後だから、言ってもいいかな。この鎮守府は捨て駒みたいな物なんだ」

 

「捨て駒…?」

 

「聞いた事無いか?二年程前、深海中枢に攻め行った艦隊がいたろ?」

 

「…!そ、そう言えば聞いた事が…確か深海泊地にまで達したとか…そ、それってもしかして…」

 

「ああ。この鎮守府の艦隊だ。結局、親玉の中枢棲姫を倒すには至らなかったらしいが…。それが原因か分からないが、この鎮守府はやけに狙われてね。連中はこの鎮守府を落とす事に躍起になっているみたいなんだ」

 

「…余程、恨まれてるみたいですね」

 

「自分ちに土足で踏み込んで好き勝手暴れたんだ。そりゃ怒るだろ。だが大本営はそれならそれで、ここに敵を引き付けてその間に戦力を建て直そうと思ったみたいだ。早い話が時間稼ぎさ」

 

やはり…。そんな事情があったのね。戦いはあまり思わしくないみたいね。

 

「でもなきゃ、俺みたいな冴えない奴が着任する訳ないさ」

 

「そ、そんな事は…」

 

「いいって。自分が一番解ってるさ。赤城、お前達には本当にすまないと思ってる。…それで考えたんだ。せめて一人位、お前達に付き合う馬鹿がいてもいいんじゃないかって」

 

「じゃあ…提督は、私達に付き合ってここで死ぬつもりなんですか?」

 

「ハハッ、もうちょっとイイ男の方が良かったかな?」

 

「そ、そんな事ありません!て、提督はとってもイイ男の人だと思います!」

 

「やっぱり?実は俺も顔には自信が…」

 

「そ、そんな意味じゃありません!」

 

「…ありがとう赤城。お前もイイ女だよ」

 

「え?な、何ですか急に///」

 

「こんな無茶な戦いに文句一つ言わず…。幾ら艦娘だからって怖くない訳ないだろうに」

 

艦娘…か。

やっぱりこの人も、私の事はあくまで艦娘としてしか見てくれないんだろうか…。

 

「確かに怖くないと言ったら嘘になります。…でも提督、理由はそれだけだと思います?」

 

「それだけって…他に理由があるのかい?」

 

「…艦娘である前に私も女です。女が好きでもない人に命を預けると思います?」

 

「…赤城?」

 

「き、今日はもう遅いですし、上がりますね!お、お休みなさい!」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ~っ!言っちゃった!

さ、流石にあんな言い方したらバレバレよね?

どうしよう…明日も顔会わせなきゃいけないのに。

どんな顔すればいいのかしら…。

加賀さんに言われて、ついその気になっちゃったけど…言うんじゃなかったわ。

 

でも…

どうしてだろう。笑うのを止められない♪

い、いけない!栄えある一航戦の私がこんな…み、皆に示しが付かないわ!

で、でも…今日位は…い、いいわよね?

ウフフッ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、鈴谷…あれ、赤城さん…ですわよね?」

 

「う、うん。熊野…赤城さんもあんなニヤケ面するんだね…ちょっとキモい…」

 

 

 

 

 

 

 

翌日、執務室に来た私は提督に何を話せばいいのか分からなかった。提督も昨日の事を聞こうとはしなかった。

今日一日、こんな気まずい雰囲気が流れると思ったが、それは彼女の訪問で一変した。

 

「ねぇ…提督さん。この鎮守府が落とされるかもしれないって…本当なの?」

 

瑞鶴さん…。

まぁ曙さんですら知ってしまったし、今更隠すのは無理だと思っていたけど…少しショックだったかしら。

 

「瑞鶴…どうしてその事を?」

 

「加賀さんに聞いたのよ。それに私は戦いに参加させないつもりだって。本当なの?」

 

「あぁ…本当だ」

 

「どうして私だけ「あなたがいても足手まといだからよ」

 

「!?」

 

「加賀?」

 

「ごめんなさい提督。翔鶴にしつこく尋ねるものだから、つい言ってしまったわ」

 

「て、提督さん!どうして私だけ?」

 

「これは翔鶴とも話したんだが、まだ戦闘経験の浅いお前達には、この鎮守府から離れてもらおうと思ってたんだ」

 

「な、何で!?」

 

「お前はまだ誕生して1年にも満たない。人間だったら赤ん坊だ。まだ沈みたくないだろう?」

 

「くっ…そ、それは…」

 

「それに少し先だが、お前の後輩に当たる葛城もこちらに来る事になってる。敵討ちはお前達に頼むとするよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃ皆、沈むみたいじゃない!」

 

「勝手に沈めないでちょうだい。戦うとは言ったけど、負けるとは言ってないわ」

 

「じゃあ私が居た方が…!」

 

「あなたが居ちゃ勝てる戦いも勝てないわ。五航戦の面倒まで見れないわよ」

 

加賀さん…。

本当は一番、瑞鶴さんの事を気に掛けているのに。最後まで素直じゃないんだから。

 

「…馬鹿にしないで」

 

「瑞鶴?」

 

「私だって艦娘よ!沈むのが怖くて戦いなんてやってらんないわよ!」

 

「ず、瑞鶴さん、提督も言いましたがあなたは生まれて間もないわ。こんな所で私達に付き合う必要は無いのよ?」

 

そうよ、こんな負け戦に付き合うのは私達だけで充分よ。…それに、あの人も私と来てくれるなら…私だけでも充分よ。

 

「…確かに私は赤城さんや加賀さんに比べたら赤子みたいな物だけど。この一年で私だって強くなったわ!すぐ加賀さんなんか追い抜いてみせるわ!」

 

「言ったわね瑞鶴。なら次の戦いでどちらの撃墜数が上か勝負しましょう」

 

「お、おい!」

 

「加賀さん!?」

 

「提督、赤城さん。この娘は私達と同じよ。一人で逃げろって言っても聞きはしないわ」

 

「当たり前よ!」

 

「ハァ…曙と言い瑞鶴と言い…何でこの鎮守府には沈みたがりが多いのかね…」

 

「ため息を付きたいのはこっちです。私達がこうなったのも提督、あなたの所為ですよ」

 

フフッ、確かに。やっぱり私と加賀さんは似てるわね。

 

「お、俺の…?か、加賀、それはどういう…」

 

「人間のあなたがここから逃げないって言っているのに、艦娘の私達が逃げられると思って?」

 

「え?て、提督さん、ここに残るの…何で?」

 

「あなたと同じよ瑞鶴。変な意地張ってるのよ」

 

「そ、そうなの…提督さん」

 

「…まぁ給料分は働かないと将来、退職金貰えないしな」

 

「呆れたわね。お金の為に命捨てるなんて…」

 

「人間は欲深いんだよ」

 

「…でも、あなたのそんな所、嫌いじゃないですよ」

 

「俺も加賀のそんな所好きだよ…美人だし」

 

「か、からかわないでちょうだい///」

 

加賀さんの照れた顔なんて初めて見たわ。…昨日の私もあんな顔してたのかしら?

それにしても提督は加賀さんみたいな感じが好みなのかしら?

私も…負けてはいないと思うんだけど…。

 

「…じゃあ瑞鶴、いいんだな。まず無事には帰れないぞ?」

 

「…もし帰って来たら、一つお願い聞いてくれる?」

 

「お願い?何だ、欲しい物でもあるのか?」

 

「デ、デートして…///」

 

へ?瑞鶴さん、何を…。

 

「瑞鶴、あなた何を言って…!!」

 

「そ、そうよ瑞鶴さん!て、提督の都合もありますし!!」

 

「い、イイじゃない、その位!わ、私だってさ、艦娘だけど女の子だし…そ、そういうの…してみたいじゃない」

 

そ、そうだけど提督にも都合が…じゃなくて、わ、私だってデートなんかした事無いのに、ず、瑞鶴さんズルい!

 

「あ~…俺でイイんなら付き合うけど…」

 

て、提督!?

いいんですか!?言ってみるものね!

 

「ま、待ちなさい!五航戦が一航戦より先にデートなんて生意気だわ。ここは私が…」

 

か、加賀さん?

どうして張り合うの!?

 

「な、何でアンタまでしゃしゃり出てくんのよ!アンタ関係無いじゃない!」

 

「ここは譲れません」

 

「譲りなさいよ!何ドヤ顔で決めゼリフ言ってんのよ!」

 

「ふぅっ…提督、この部屋暑いですね。胸当て外してもいいかしら?」

 

え?か、加賀さん、そんなに胸元はだけて…だ、駄目です、はしたない!こ、溢れちゃいますよ!?

 

「ちょ、ちょっと卑怯よ!胸見せるなんて!」

 

「私はただ暑かっただけよ。何ならあなたも…アラ、ごめんなさい、見せる程も無いわね」

 

「何ですってぇ~!…や、やぁね~年を取ると。自分を安売りしちゃってさ。その点?私は一航戦の先輩達と違って若いから?このままでも勝負出来ますけどぉ?」

 

瑞鶴さん…それ、もしかして私も含まれてます?

 

「ちょっと待ちなさい。若いって…それは私が年寄りって事かしら?」

 

「言ってないわよオバサンなんて」

 

ハッキリ言いましたね!?

 

「頭にきました…」

 

「な、何よ!」

 

「おい、お前達、その変に…」

 

「「あなたはってて!!」」

 

「サーセン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…翔鶴さん、空母って皆あぁなの?」

 

「そ、そんな事無いわよ曙ちゃん!た、多分…」

 

〈あ、危なかった…!曙ちゃんに会わなかったら参戦する所だったわ…〉

 

〈何よ!ちょっと胸が大きいだけじゃない!…胸だけでも戦艦サイズにならないかしら?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、鎮守府にけたたましくサイレンが鳴り響いた。それまでの平穏な日々は、文字通り音を立てて終わりを告げた。

遂にその日はやって来ました…。

 

「て、提督!哨戒部隊が攻撃を受けたと言うのは…」

 

「ああ。曙が攻撃を受けたらしい。二~三日先かと思ったんだが、案外せっかちみたいだな」

 

曙さんが…無事だといいけど。

 

「敵にも都合があるんでしょう。そんな事より提督、当初の作戦通りでいいのね」

 

「そうしてくれ加賀。赤城、今から出れるか?」

 

「はい、勿論です」

 

「あら、赤城さん、艤装の整備がまだ出来ていないんじゃないかしら?」

 

「え?そ、そんな事はありませんが…」

 

「そう、でも自分一人じゃ気付かない事もあるわ…そうね、提督に確認してもらったら?」

 

「え…あっ、か、加賀さん…///」

 

「加賀…」

 

「先に行ってるわ。でも皆戦ってるんだから…間違っても()()だけにして下さいね?」

 

「か、加賀さんっ…///」

 

「お前も点検したいな~」

 

「結構よ…でも、そうね。無事帰ってこれたらお願いしようかしら?」

 

「ええっ!?」

 

「フフッ。赤城さん、ご武運を」

 

もう、加賀さんったら…!

で、でもこれが最後かもしれない。い、言わなきゃ…。

あ、赤城っ、勇気を出すのよ!

て…

 

「赤城…」

 

「は、はいっ!!」

 

「もう最後かもしれないし、思いきって言うよ。俺、お前の事が好きだったよ」

 

て、提督…?

 

「正直、ここに来た時は何もかも諦めようって思ってたんだ。でも赤城の笑顔に随分励まされた。気が付いたら毎日赤城と話すのが楽しみになってたよ」

 

提督も…私の事が…。

 

「赤城…もし、生き残ったらケッコン前提に付き合ってくれないか?カッコカリじゃない。本当の所帯を持って、俺の子供を産んで欲しい」

 

…。

 

「はは、まだ付き合ってもいないのに気が「そんな事ありません!!」

 

「あ、赤城…?」

 

「わ、私も…私も提督の事が好きです!その…ケッコンしたら食事は出来るだけ減らします!だ、だからこれからも…よろしくお願いします!!」

 

「ありがとう。その…大事にするよ」

 

「…はい」

 

「でも食事か…すっかり忘れてたよ。こりゃもっと出世しないといけないな」

 

「もう、それは忘れて下さい!出撃しなければ人並みしか食べませんよ」

 

「そうしてくれると助かるよ。子供も生まれてくるだろうしな」

 

「こ、子供?て、提督、気が早いですよ///」

 

「ハハッ、艦隊が組める位作るか?」

 

「提督がもっと出世してくれたら考えます」

 

「…こりゃこんな所で死んでられないな」

 

「大丈夫ですよ。私が居ます。死なせたりはしませんよ」

 

「…頼りにしてるよ、赤城」

 

「あっ…」

 

提督は私を抱き締めると…唇を重ねた。

何だろう…体の芯が熱くなる様なこの感覚は…。

大丈夫です。どんな時も一緒に居ます。

約束しますよ…提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、赤城さん。思ったより早かったのね。もう少しのんびりしても良かったのに」

 

「も、もう…!今はそんな時じゃないって言ったの加賀さんじゃないですか」

 

「その顔だと…想いは伝えた様ですね」

 

「ええ…。もう思い残す事はありません。加賀さん、行きましょうか!」

 

「ええ。お供しますよ、赤城さん」

 

私は加賀さんと共に海を駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀さん、長門さんは?」

 

「駄目です、連絡が取れません。無線は通じてる筈なのだけど…」

 

戦いが始まって数時間、もう日も落ち始めたが、敵の数は一向に減らない。鎮守府に戻ろうにも私と加賀さんの二人では、活路を開く事も出来ない。

と、そこに敵の隙間を縫う様に一人の駆逐艦が近付いて来た。

 

「あれは…曙さん?」

 

「あ、赤城さん、大変よ!鎮守府が!」

 

「どうしたの?曙さん」

 

「翔鶴さんの部隊が突破されて、鎮守府が攻撃を受けてるって!!」

 

「なっ…!?」

 

「…曙、翔鶴は…瑞鶴はどうなったの?」

 

「瑞鶴さんは行方不明、翔鶴さんはもう…」

 

「…そう。赤城さん、あなたは鎮守府に戻って」

 

「加賀さん?わ、私はまだ…」

 

「そうじゃないわ。私達も補給に戻るつもりだから、鎮守府に張り付いてる敵を倒して欲しいの。お願い出来る?」

 

加賀さん…私が提督の事を心配しているのを気遣って…。

 

「大丈夫よ赤城さん。私と加賀さんが居ればこの程度の敵なんかあっと言う間に倒してみせるわ!だから、赤城さんはアイツの所に行ってあげて。今頃一人で震えてるかもしれないわ!」

 

「曙さん…わ、分かりました!加賀さん、曙さん、ごめんなさいね」

 

私は無我夢中で海を走った。後ろで大きな水柱が上がるのを気にも止めずに。

やがて数分もすると、馴染みの鎮守府が目に入る…筈だった。私は鎮守府の変わり果てた姿を見て愕然とした。

建物は半壊し、至る所から煙が上がっていた。かつての面影は消え失せ、周囲には敵の駆逐艦や軽巡が味方達と撃ち合っていた。

建物の中に入った私は執務室を目指した。

 

「て、提督っ…!!」

 

ど、どこですか?ま、まさか建物の下敷きに…!

お願い、返事をして!

 

「あ、赤城…」

 

「て、提督っ!だ、大丈夫ですか!?」

 

「まだ死んじゃいないが、足をやられて…」

 

足?た、確かに右足が血だらけだ。おまけに軍服も所々破れている。瓦礫の破片にでも当たったのかしら。

 

「それに赤城…来てくれたのは嬉しいが、まずい時に戻って来たな」

 

「…?ど、どういう意味です?」

 

「実は今、鳳翔から連絡があって、この鎮守府は完全に包囲されたからすぐ逃げる様にと…」

 

「鳳翔さんから?で、ですが今は加賀さんも曙さんも戦っています。きっと救援に来ます!」

 

「いや、もう無理だろう。長門や翔鶴からの連絡も途切れている。おそらくもう…」

 

「…」

 

「赤城、お前だけでも逃げろ。お前なら何とか突破出来るだろう」

 

「な、何を言うんです!提督を置いて逃げるなんて…そんな事出来ません!!」

 

「気持ちはありがたいが、俺はここに居て、皆からの連絡を待たなきゃならない。それにこの体じゃ逃げる事も出来ない」

 

「では私もここに居ます」

 

「赤城!」

 

「言いたい事は解ります。でもさっき提督も言った通り、ここは囲まれています。私も必死に戻って来ましたが、流石にもう一度突入するのは…」

 

「…そうか」

 

「ですが、ここなら多少の補給は出来ます。救援が来る迄、提督を御守りします」

 

「赤城…本当にすまない」

 

「死なばもろとも、ですよ…あなた」

 

もし、今一つだけ幸せがあるとしたら、隣にあなたがいる事…かしら。

ええ、そうよ。

あなたがここで死ぬと言うなら、私もここで沈みましょう。

絶対…絶対に離れてなるもんですか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから五日が過ぎました。

日に何度か敵が鎮守府の港にやってくる。私はそれを撃退、次の襲撃に備えて補給を取る。その繰り返しでした。

艦娘の私でも食事を取らず、不眠不休で五日も戦い続けるのは正直辛い。それでも耐えれたのは、偏に提督を…あの人を守りたいと言う想いがあったからでしょう。

だが、それも限界の様です。

艦娘の私と違って提督は…あの人は人間です。五日も飲まず食わず…まして怪我で衰弱しきっている。

それに資材は底を尽き補給は効かない。今ある艤装の矢はあと三本。これを打ち切ったら後は無い。多分、次の出撃が最後でしょう。

加賀さん、曙さん、瑞鶴さん…あれから五日経つのに誰一人戻って来ません。皆、沈んでしまったのでしょう。鎮守府に引き返した私だけが生き残ってしまった。

 

あぁ…出来ればあの人と結婚して、家族を持ってみたかった。艦娘の私でも子供は作れるのかしら。

子供は…男の子と女の子が一人ずつ欲しいわね。

名前は…そうね、女の子だったら加賀にしようかしら。

曙…ぽっちゃりさんになりそうな気がするのは何故かしら?

 

それにしても…身体に力が入らない。もう三日も何も口にしていない。足元がふらつく。いけない…これじゃ出撃する前に倒れてしまう。もし海に出ても弓を弾く事も…。

だ、駄目よ赤城。

お腹が空いて沈みましたなんて…笑い話にもならないわ。

立ちなさい赤城。立って戦うのよ…。

大丈夫よ…きっと救援が来るわ。私もあの人も助かるに決まってる。

 

あなた…この戦いが終わったら…

二人で暖かい家庭を築きましょうね。

私、きっと良い妻になってみせます。

そうよ…私はこんな所で…

沈む訳にはいかない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…私です。赤城です…分かりますか?」

 

「…あぁ。だが目も霞んできた。俺はもう駄目だ」

 

「そんな事言わないで下さい。まだ助からないと決まった訳じゃありません」

 

「だが…今日で五日だ。味方は一人も戻って来ない。恐らく…」

 

「だ、大丈夫です。きっと救援が来ます。だから…そんな弱気な事は言わないで…」

 

「…そうだな」

 

「…」

 

「…行くのか」

 

「はい…う、うう…」

 

「そんな足元がふらついて…戦えるのか?」

 

「私は艦娘です…沈むなら海で…」

 

くっ…だ、駄目…足に力が…。

動いて…お願いだから…。

 

「待て…赤城」

 

「何です?」

 

「赤城、確か空母は艦載機を飛ばす為に、他の艦娘の倍のエネルギーが必要な筈。せめて何か食べていけ」

 

「フフッ…そうしたいですが…もう食糧はありません」

 

「あるだろう…ここに」

 

「…え?」

 

「赤城…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を喰え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…え?

 

「あなた…何を…言って…」

 

「俺を食べろと言ったんだ…そうすれば、あと一度位戦えるだろう…」

 

赤城…今、何を考えたの…

 

「もう待っても味方は来ないだろう…」

 

駄目…駄目よ赤城…

 

「俺の我が儘に最後まで付き合ってくれた…せめてもの償いだ…」

 

止めて…止めなさい赤城!

そんな事を考えるな…

あなたが…

 

「俺も…お前と一緒に…」

 

こんなに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味しそうだなんて…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グァツ、グァツ…』

 

『グチャッ、グチャッ…』

 

『ギギィーッ…ブチィッ!!』

 

『モグモグ…』

 

『バリッ!!グチャッ!!』

 

美味いッッ!

こんなに…こんなに美味い物がこの世にあるなんてッ!!

解ってるのに…頭では解っているのに…!

食べるのを止められないッッ!!!

力がみなぎってくるわッ!

美味い!美味い!美味い!美味い!美味い!!

美味いッ!美味過ぎるッッッ!!!!!

あぁ、あなたッ!

これで私達は文字通り一つよ!

誰にも私達を引き離す事は出来ないわ!

だからもっと…もっと食べさせてッ!

手も!脚も!身体も!頭も!脳みそもッ!

深海棲艦に殺される位なら…

私が全部、食べてあげるわッ!

誰にも渡さない!!

あなたは…足の先から髪の毛一本までッ!

全部、全部全部全部全部全部ッ…!!

私のモノよォッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっ…ここは…

そうか…私は眠っていたのか。

 

「ねぇ、あな…」

 

そうだった。あの人はもう居ない。

…いや、違う…違うわ。

あの人は、私と一つになったのよ。

やっぱり私達は結ばれる運命だったのね。

不思議だわ…さっきまで動けなかったのが嘘みたい。

まるで、あの人の意思が乗り移ったみたい。

…そうよ。

あの人は生きてる。私の胎内で…。

私の血となり肉となり…私に戦う力を与えてくれた。

これなら戦える。

 

「あなた…加賀さん…今、行きますからね」

 

行こう…最後の戦いへ。

矢が尽き弓が折れ…海に沈むその時まで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…私と同じ…空母のヲ級…だったわね」

 

どことなく加賀さんに似てるわね。

フフッ、加賀さんが深海棲艦に化けて私を迎えに来たのかしら。

他にも見た事がある敵が居るわね。

駆逐古鬼…空母棲姫…戦艦棲姫。

ざっと見ただけでも一個艦隊は居るわね。

フフッ、私一人相手にこんなに…。

いいわ…私の最後に相応しい…。

精々、派手に散ってみせるわ!!

 

「一航戦、赤城…出ます!!」

 

『…!?』

 

…何?どうしたの?

 

『…!!』

 

…爆撃音…仲間割れ?

 

『…!!!』

 

ど…どういう事なの?

て、敵が逃げて…ま、待って!待ちなさい!!

私はここよ?…戦う迄も無いとでも言いたいの?

ば、馬鹿にして…ッ!!

わ、私と…たたか…

 

「…さん!」

 

…この声は…

 

「か、加賀さん!赤城さんは無事よ!!」

 

瑞鶴…さん…?

あなた…まだ沈んで…

 

「助けに来たわよ!!」

 

…曙さん…

 

「赤城さん、遅れてすみません」

 

…加賀さん…

 

「加賀さん、アイツら私達が来たから逃げて行くわ」

 

「私が来たからよ」

 

「…本当にそうだったりして」

 

「瑞鶴、それはどういう意味かしら」

 

「そ、そんな事より赤城さん!遅れてすみません!!」

 

遅れて…あなた達、どうしてこんな所に…。

 

「…加賀…さん」

 

「良かった…本当に良かった。赤城さん、よく無事で…」

 

「…」

 

「私達、舞鶴鎮守府の艦隊に助けられたの!あそこを見て!葛城や榛名さんも来てくれたわ!」

 

「…」

 

「赤城さん、翔鶴も無事よ。私達の鎮守府は…残念だけど放棄して、舞鶴に移りましょう」

 

「…」

 

「…赤城さん?」

 

「そんな事より、赤城さん!アイツは?赤城さんがいるって事は、アイツも生きてるんでしょ?」

 

「…」

 

「赤城さん…提督は無事ですか?もしや怪我でもして動けないのでは?」

 

「…」

 

「ねぇ赤城さん、ここも危ないわ。早くアイツを連れてここから離れましょうよ」

 

「…」

 

「赤城さん…顔色が悪い様ですが…大丈夫ですか?」

 

フフ…フフフ…

アハハ…

皆、生きてた。

全部私の早とちり…

どうして…どうして今さらノコノコ現れたの?

どうして今さら助けになんか来たの…

どうして私を沈ませてくれなかったの…?

もうあなた達は沈んだと思ったから…

あなた達の後を追うつもりで…

一緒に沈むつもりだったのに…

 

「フッ…」

 

私は一体、何の為に…

 

「ウフフッ…」

 

あの人を…

 

「あ、赤城さん?」

 

あと一日…

 

「ね、ねぇ…赤城さん、アイツ、生きてるんでしょ?」

 

あと一日、待っていれば…

 

「まさか、提督はもう…!」

 

「…アハッ♪アハハッ…」

 

「…?赤城さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハハハハハハハハハッ!!!」

 

「あ、赤城さんッ!?」

 

「死んだッ!死んだッ!死んでしまったッッ!」

 

あの人の身体を引き裂いてッ!

 

「死んだのよ!死んでしまったのよッッ!!」

 

血も、肉も、全て残さずッッ!

 

「髪の毛一本残さずッッ!」

 

私が食べた!…私が食べたッッ!!

 

「あの人はいなくなってしまったッ!」

 

私が食べたからッッ!!

 

「…そんな」

 

「アイツが…嘘よ…そんなの嘘よ…」

 

「…赤城さん…」

 

「うっ…ううっ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヤアアアアアアアッッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから三日が過ぎた。

 

気が付くと私は見知らぬ布団に寝ていました。

加賀さんの話では、錯乱する私を連れて舞鶴鎮守府へ向かったらしい。私の鎮守府で生き残った艦娘達も何人か居ました。

私はこの鎮守府に新しく加わる事になりました。

ここの艦娘達は皆、いい娘達です。葛城さんと言う後輩が出来て瑞鶴さんも張り切っています。

提督を…あの人を失った事は…一生忘れられないだろうが、私も早く復帰しなくては。

きっと、あの人もそれを望んでいる。

 

「赤城さん、食事に行きましょう。今日は私が奢りますよ」

 

「ええ」

 

加賀さんは本当に良い人です。本当は自分も辛いだろうに。私はここまで強くなれない。

…でも、いつまでも悲しみに浸っていたら、きっとあの人も怒るに違いない。

それにあの人は死んでなんかいません。

私の中で…永遠に私と共に生き続けている。

 

…でも、以前と変わった事が一つだけある。

 

「…あら、赤城さん。そんな少しでいいんですか?」

 

「大丈夫です、今日はあまり食欲が湧かなくて…」

 

そう、あの日から食べる量が…加賀さんが心配する程減りました。

以前は宝の山に見えた料理を目の前にしても、何の感慨も沸きません。まるで乾いた砂を噛んでいる様に、何の味もしません。

これは私に対する罰なのでしょうか…

最後まで仲間を信じなかった…

救援を待てなかった…

もう助からないと自分を騙し…

あの人の言葉に乗った振りをして…

自分の欲求を満たした私に…

一生を懸けて償えと、神様が言っているのでしょうか。

それは分からない。

 

ただ、もう…

 

どんなに美味しい料理を食べても、それを美味しいと思う日は二度と来ない。

…そんな気がしました。

 

 

 

 

 

 




赤城さんの話は絶対これで行こうと思ってたんですが、さてどうやって食わせようかと悩んでいたので後回しになっちゃいました。
最初は提督を自分の意思で食べて、皆には死んだって嘘を付くってオチだったんですが、こっち思い付いたのでこうしました。
長門は沈みました。

次は(多分)ろ~ちゃんですって! はい!(33話に当たります)











艦娘型録

提督 悲しき中間管理職。生き残れたら赤城と住もうと物件を探していた。普段から赤城の食事を見ているので自分の安月給で食わせていけるか心配していたが、実はそうでもないと知って心の底からホッとした。僕の身体をお食べよ!

赤城 頼りにはなるが、海原雄山並みにエンゲル係数が高い。ちなみに一番美味しかったのは腿肉。寝る度に変な老人と血を賭けた麻雀をする夢を見ていたが、最近は見なくなった。

加賀 赤城が釜ごと食うタイプなら、加賀は死ぬまでおかわりをするタイプ。この数年後、囚われた提督を助けたり金剛に余計な事言って榛名が酷いメに遇う。性の知識は駆逐艦レベル。

瑞鶴 思春期空母。後輩の葛城に懐かれたのはいいが、その所為で加賀に対する本当の気持ちに気付き禁断の扉が開きつつある。続きは薄い本で。

翔鶴 一応生存。赤城達と共に新しい鎮守府に来たはいいが、全員空母なので食費が一気に上がる事を申し訳なく思っている。でもおかわりはする。

曙 AKBN。新しい鎮守府にいる霞とキャラが被るのが気に入らないのか、しょっちゅう喧嘩してる。その所為で最近、駆逐艦達からハブられ気味に。ただしあけぼの、テメーはダメだ!!

舞鶴提督 馬鹿みたいに食う奴が一気に4人も増え、今さら「この辺にぃ~、別の鎮守府もあるんだけど…行かない?」とも言えないし頭が痛い。この数年後、戦艦棲姫に拉致られて無人島生活を送る羽目に。

榛名 この数年後、姉妹三人からフルボッコに。特に理由の無い砲撃が榛名を襲う!

鈴谷 109に行ってみたい。

熊野 一度神戸に行ってみたい。

長門 知らない子ですね。

鳳翔 伝言係。

葛城 スール。

戦艦棲姫と愉快な仲間達 只今絶賛子育て中。


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