艦娘症候群   作:昼間ネル

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雪風を詐欺罪と艤装損壊罪で訴えるわ!
理由はもちろん分かってるわね?雪風がこんな嘘で私や黒潮を騙し、鎮守府を破壊したからよ!
覚悟の準備をしなさい!近い内に訴えるわ。裁判も起こすわよ!
大本営にも問答無用で来てもらうわ!
ボーキサイトの準備もしてね。雪風は犯罪者よ!
独房にぶち込まれる楽しみにしていなさい!
いいわね!


ゲームの達人

「くっ!こ、こんな…何故これだけの敵が…!」

 

黒潮(くろしお)っ!他の皆は!?」

 

「か、陽炎(かげろう)お姉ちゃん!ダメや、矢矧(やはぎ)はんとウチらだけや!」

 

「で、でも、あの娘は…雪風は何も…!」

 

「雪風?陽炎、雪風がどうかしたの!?」

 

「や、矢矧さん…それは…」

 

「か、陽炎お姉ちゃん。もしかして雪風ウチらに…」

 

「そ、そんな筈はないわ!あの娘は私達の妹よ?…そういえば雪風は?」

 

「う、ウチも探しとるけど、何処にもおらんのや」

 

「そ、そんな…雪風…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令官は…運命って信じますか?

香取さんが言ってました。自分じゃどうにも出来ない事を人間は運命って言うんですって。

雪風は信じます…半分だけ。

どうして半分だけかって?それは…言っても信じてくれないから内緒です。

でも、香取さんの言う事は、雪風なるほど~って思いました。

雪風が香取さんみたいに“せくしー”になれないみたいに。きっとこれを運命って言うんです。

雪風、思うんです。運命って海みたいだって。

雪風、一生懸命泳いで来ました。

必死に…必死に…

だから雪風が、あんな目に遇ったのも、きっと運命なんです。

ここに…司令官に許へ流されて来たのも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…これは想像以上に酷いわね」

 

「えぇ…阿賀野(あがの)さん、捜索はこの辺で打ち切りましょう」

 

「そうだね、香取(かとり)さん」

 

「ま、待って香取さん!阿賀野さん!もう少し…もう少しだけ探そうよ!お願い!」

 

「…時津風(ときつかぜ)さん。残念ですが、これだけ探して一人も発見出来ないと言う事は…恐らく…」

 

「そ、そんなぁ…嫌だよぉ…」

 

「時津風ちゃん、私も…あら?」

 

「どうしたの、香取さん」

 

「阿賀野さん…あれ」

 

「あれは…深海棲艦…じゃない。あの姿は…駆逐艦?」

 

「そ、そうだよ!あれは…絶対間違いないよ!」

 

「あ、時津風ちゃん!」

 

「やっぱり…時津風は信じてたよ…絶対に…絶対に無事だって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪風!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令官は辛い事や悲しい事って、ありますか?

雪風は…いつも辛かったです。

皆さんが雪風の事、何て呼んでるか知ってますか?

幸運艦?…最初は皆、そう呼んでくれます。

でも、すぐに変わるんです。皆さん、こう呼ぶんです。

…死神って。

その理由は分かってます。

雪風と一緒に出撃しても、皆さんは傷付くのに雪風だけは無傷で帰ってくるから。

それは…仕方のない事なんです。誰だって…雪風だって出来るなら沈みたくありません。

だから雪風は…

でも、生き残るだけで恨まれるなら…いっそ沈んだ方がいいのかな。そう思った事もありました。

司令に会うまでは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん…」

 

「あ!しれぇ!気付いたよ!」

 

「本当か?大丈夫…」

 

れぇ…

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

「司令官!司令官!司令官っ!!」

 

「お、おい!」

 

「雪風っ!」

 

「…ここは…時津風ちゃんが…いる?」

 

「良がっだ…良がっだよぉ!雪風ぇ」

 

「ここは…雪風は無事に…」

 

「ここは隣の鎮守府だよ。君は海をさ迷っている所を救助されたんだよ」

 

「雪風は…無事に…」

 

「ああ。時津風に感謝しなよ。時津風が君を見付けてくれたんだからね」

 

「…鎮守府は…雪風の鎮守府は」

 

「…残念だが、発見出来たのは君一人だけだそうだ」

 

「…グスッ」

 

「お、おい。雪風?」

 

「ウウッ…ウェェェン!」

 

「雪風!?」

 

「失礼しま…あら、これは…」

 

「あ、ああ香取。この娘が急に泣き出して」

 

「虐待ですか?「違うぞ」

 

「雪風は提督の顔が怖かったんじゃない?「何故だ?」

 

「憲兵さんに連絡を「待て香取」

 

「香取さん、ここは“じどーそーだんしょ”だよ」

 

「変な言葉知ってやがる…香取、受話器置こうか」

 

「うふふ、冗談ですよ。その娘、雪風さんって言いましたっけ?良かった、目を覚ましたんですね」

 

「それは良いんだが、急に泣き出してしまって…生き残ったのは自分だけだ、よっぽど怖い目に遭ったんだろう」

 

「…そうですね。こればっかりは時間が経つのを待つしかありませんね」

 

「雪風、もう大丈夫だからね!ここならおっかない深海棲艦も襲って来ないよ!しれぇ…香取さんや阿賀野さんが守ってくれるから大丈夫だよ」

 

〈何故言い直す…〉

 

「グスッ…ご、ごめんなさい。雪風は…陽炎(かげろう)型8番艦の雪風(ゆきかぜ)です」

 

「しれぇ、時津風は何番艦か知ってる~?」

 

「雪風に10足して2で割って、そこに香取の艦数を足した数だったかな?」

 

「え!えっと~…雪風が8だから…ひいふう…香取さんって何番艦だっけ?」

 

「時津風さんから雪風さんを引いて、2で割った数ですよ」

 

「えっ…時津風は10だから…8を引いて…」

 

「私はこの鎮守府の提督だよ。大丈夫、君の鎮守府は気の毒だったが、ここは安全だから。これからよろしく」

 

「…はいっ」

 

「わ、分かったよ!香取さんは1番艦だよ!」

 

「まぁ、よく分かりましたね。時津風さんは計算が得意なんですね♪」

 

「そうだな。流石10番艦だな」

 

「えっ!どうして分かったの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『後ろがガラ空きだよ、雪風ちゃん!』

 

『あ、阿賀野さんっ!』

 

『阿賀野の本領、発揮するからね!』

 

『あっ!?至近弾です!』

 

『いっただきいっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それまで!お疲れ、雪…つっ」

 

「ど、どうしたんですか司令」

 

「何でもないよ(昨夜の酒が残ってるみたいだな)そんな事より、あの阿賀野とやり合って無傷だなんて…見事な演習だったよ」

 

「そ、それ程でも…」

 

「フッ、能ある駆逐艦は魚雷を隠すと言うだろう?」

 

「どっから湧いて出た長門(ながと)

 

「どうだ提督、この雪風は我が鎮守府で正式に引き取っては?」

 

「それは俺も考えてるが…俺の一存ではな」

 

「何ならこの長門が面倒を見ても「黙ってろ幼児性愛戦艦」

 

「えへへ…さっすが雪風だね!同じ陽炎型として()が高いよ「鼻な」…んっ」

 

「…どうした、時津風」

 

「う、ううん、何でもないの。ちょっと頭がキーンって…何だろ?」

 

「しかし…大したものだったよ。あの阿賀野に勝つなんて。幸運艦と呼ばれてるだけはあるな」

 

「…ありがとうございます」

 

「…雪風?」

 

「しれぇ、あのね~…ゴニョゴニョ

 

「…そうか。雪風、今まで随分と苦労してきたみたいだね」

 

「…司令?」

 

「実は君の事は少し調べてみたんだ。君が幸運艦と呼ばれている事…そして人の運を吸い取る死神と呼ばれている事」

 

「ちょっと!しれぇってば!」

 

「貴様!こんな幼い駆逐艦に何て事を!「グウッ!ぐ、ぐるじぃ…」

 

「…雪風は…」

 

「雪風、俺はそうは思わないよ…長門、そろそろ…い、息が…」

 

「…えっ?」

 

「プハアッ!…考えてもごらん。人の運を吸い取るなんて言われてるけど、逆に考えれば皆に幸せを分け与える事も出来るって事じゃないかな」

 

「皆に…幸せを…?」

 

「それにね、ここには君の姉妹艦の時津風だっている。誰も君の事をそんな風に言ったりはしないさ」

 

「そ、そうだよ雪風!」

 

「で、でも…雪風といたら…皆が不幸に…」

 

「…じゃあ俺を不幸にしたらいい」

 

「…え?」

 

「こう見えても俺は運が良い方でね。大した病気もしてないし、ジャンケンだって強いんだよ」

 

「この長門もジャンケンには自信があってな」

 

「部下には恵まれなかったけどな…それに俺は結構打たれ強いんだ。だから雪風、少し位じゃへこたれやしないよ。安心していい」

 

「そうだよ雪風、しれぇは凄いんだよ!コーヒーをねぇ、“ぶらっく”で飲めるんだよ」

 

「私だって飲めるぞ!」

 

「何故張り合う長門。雪風、約束するよ。例え何があっても私は君を見捨てたりはしないよ」

 

「…」

 

「…雪風?」

 

「ウッ…」

 

「どうしたの、雪風」

 

「ウワアァァン!」

 

「ゆ、雪風!貴様ァ、私の雪風を!」

 

「お、おぢづげ、長門…」

 

「だ、大丈夫?雪風」

 

「グスン…ありがとう、時津風ちゃん。雪風とっても嬉しくって」

 

「嬉しい?」

 

「うん、雪風、向こうの鎮守府では皆に嫌われてたの。ううん、それだけなら仕方のない事なの。でも、雪風、司令官さんにも嫌われてたの。雪風といると司令官の運も吸い取るって…」

 

「雪風…」

 

「大丈夫だ、雪風。さっきも言ったが、俺は君を決して見捨てたりはしない。もし何かあっても、その時は一緒に沈んであげるから」

 

「…はい、はいっ!」

 

「フッ、貴様も中々良い所があるではないか。見直したぞ」

 

「…じゃあ手を離してくれ。今にも轟…沈…しそう…」

 

「しれぇ!そんな!目を開けてよ!」

 

「あれ…死んだ婆ちゃん…何で川の向こうで手を振って…ガハッ!」

 

「しれぇ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令官は、お友達はいますか?

雪風は時津風ちゃんが一番のお友達です。ずっと昔の記憶…最後まで時津風ちゃんと一緒だったからかな。

姉妹艦なのにお友達って変なの…かな。

向こうの鎮守府には陽炎お姉ちゃんや黒潮(くろしお)お姉ちゃんもいました。でも、もういません。

みんなみんな、海の底…。

でも、寂しくなんかありません。

こっちには時津風ちゃんも不知火(しらぬい)お姉ちゃんもいるから。

不知火お姉ちゃん…あれ?さっきまで、そこにいたのに。

もう陽炎お姉ちゃんや黒潮お姉ちゃんには、会えないのかな。

もし会えたら…雪風、何て言えばいいのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ時津風ちゃん。司令官さんって、どんな人なのかなぁ」

 

「しれぇ?う~ん…面白い人だよ。よく長門さんと勝負してるし」

 

「雪風の事…好きになってくれるかなぁ」

 

「それは無理じゃない?しれぇ、香取さんみたいな“せくしぃ”な人が好きみたいだし」

 

「ぜくしぃ?「違うよ~」

 

「ゆ、雪風は、せくしぃじゃないかなぁ」

 

「雪風は阿賀野さんみたいな“お嬢様”感があるから」

 

和尚(おしょう)さま?「違うよ~…ねぇ、雪風。やっぱり陽炎お姉ちゃんも黒潮お姉ちゃんも…沈んじゃったの?」

 

「…ごめんなさい」

 

「ど、どうして雪風が謝るのさ!雪風は何も悪くないよ。そりゃ陽炎お姉ちゃんと黒潮お姉ちゃんが沈んじゃったのは残念だけど…雪風だけでも無事であたしも嬉しいよ」

 

「時津風ちゃん…」

 

「それに、こっちには不知火お姉ちゃんもいるからさ~。あたしも雪風が来てくれて凄く嬉しいんだ。みんなで仲良くやろうよ~」

 

「不知火お姉ちゃんとも、仲良くできるかな?」

 

「う~ん…どうだろ。不知火お姉ちゃんってさ…何考えてるか解んない所あるから、あたしは苦手かも…」

 

「呼んだかしら?」

 

「ひゃあっ!!」

 

「あ、不知火お姉ちゃん!」

 

「あら雪風、もう元気みたいね…どうしたの時津風。香取さんが眼鏡無くした時みたいな顔して」

 

〈これだよ…この分かる様で分かりづらい表現!不知火お姉ちゃんのこういう所が、あたし苦手なんだよね…〉

 

「何か私の話をしていた様だけど…?」

 

「べ、別に…ねぇ雪風!」

 

「雪風、不知火お姉ちゃんと仲良くできるかなぁって話してました!」

 

「ゆ、雪風!」

 

「フフッ、そんな心配する姉妹が何処にいるの?私は時津風とも仲良くやってるわ。ねぇ、時津風?」

 

「う、うん!時津風と不知火お姉ちゃんは仲良いんだよ?本当だから…お願い、信じて!」

 

「…何やら“せくしぃ”とか言ってたけど…もしかして不知火の事?」

 

「そ、そうだよ!「え、時津…」ねぇ雪風!そうだよね!?」

 

「う、うん」

 

「“お嬢様”…と言うのも?」

 

「う、うん!そうそう!(ほとんど最初から聞いてるじゃん!そんなんだからストーカーとか前世はハシビロコウとか言われるんだよ!)」

 

「ま、まぁ…司令官にも駆逐艦には見えない鋭い眼光と評された事もありますが」

 

〈それ絶対怖がってるだけだと思う…〉

 

「長門さんにも駆逐艦にしておくのは惜しいとも言われました…」

 

〈不知火お姉ちゃん、駆逐艦で唯一、長門さんにアイス奢ってもらってないって知ったら傷付くかな…〉

 

「香取教官にも『不知火さんには、もう教える事はありませんね』とお褒めの言葉を頂きました」

 

〈演習で香取さんボコボコにしてたもんね!香取さん、妹の鹿島さんに『私、教官に向いてないのでは…』って手紙に書いてたよ…〉

 

「あ、不知火お姉ちゃん、今凄く嬉しそう」

 

「え、わ、分かるの雪風?」

 

「もう、時津風ちゃん、不知火お姉ちゃんが何考えてるか分からないなんて変なの」

 

「…時津風、それは本当ですか?」

 

「あ、今少し怒ってる」

 

「し、知らぬい!じゃなかった、時津風は知らないよ!」

 

「あ、今度は悲しんでる」

 

「ゆ、雪風!いちいち言わなくていいから!」

 

「雪風、時津風。今日は雪風の歓迎会も兼ねて、姉妹三人でゆっくり語りましょう!」

 

「うわぁ♪雪風、とっても嬉しいなぁ!ねぇ、時津風ちゃん!」

 

「雪風、今あたしが何考えてるか…分かる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、珍しいな。今日は時津風と一緒じゃないのかい?」

 

「今は…時津風ちゃんはいません」

 

「そうか…雪風、ちょっといいかな?」

 

「はい、雪風に何かご用ですか?」

 

「うん…そろそろ気持ちも落ち着いてきたと思ってね。良ければ聞かせてくれないか。向こうの鎮守府で何があったのか」

 

「…」

 

「もし思い出すのが辛いなら、無理にとは言わないが」

 

「そ、そんな事は…」

 

「ここに来た時も酷く怯えていたから、やはり君のお姉さんの陽炎や黒潮が沈んだ事が原因かい?」

 

「…それもあります」

 

「それも…?」

 

「はい…雪風、向こうでは皆に嫌われていたんです」

 

「嫌われて…その、雪風…何か問題でも起こしたのかい?」

 

「雪風は…そんなつもりはありません。でも、皆さんは、そうは思わなかったみたいです」

 

「…良ければ詳しく聞かせて貰えないか?」

 

「司令官、雪風が皆さんに幸運艦って呼ばれてるのは知ってますよね。でも、それは雪風が生まれた時からある力なんです」

 

「生まれた時からある力…?」

 

「それは、多分信じてくれないと思うから言いません。雪風は沈みたくないから努力しただけです。でも、気が付くと、こう呼ばれてました…

 

「『雪風といると運を吸いとられる』って…」

 

「馬鹿な…そんな事…」

 

「雪風、とても悲しかったです。それでも雪風は皆さんを助けようとしました。でも誰も雪風に近付いてくれなくなりました」

 

「…」

 

「だんだん雪風、あの鎮守府に居るのが辛くなっちゃったんです。皆さん、雪風が嫌いなら…どうせ雪風を信じてくれないなら、雪風が居ない方がいいって…」

 

「雪風…」

 

「それで雪風、陽炎お姉ちゃんと黒潮お姉ちゃんだけでも一緒に来てほしいって、お願いしたんです。でもお姉ちゃん達は『雪風とは行けない』って…

 

「雪風は、もう考えるのが嫌になって一人で海に飛び出しました。そこへ運悪く、深海()()艦が現れて…」

 

「気が付いたら海を漂っていた…か。連中も駆逐艦一人だからと大目に見てくれたのかな」

 

「その…しれぇ…司令も雪風の事、気味が悪いって思いますか?」

 

「気味が…何故?」

 

「だって…鎮守府の皆さんは沈んじゃったのに、逃げた雪風だけが助かっちゃうなんて」

 

「それは単なる偶然だろう。もし雪風が鎮守府に居ても居なくても連中は襲って来た。雪風が居たからって結果が変わる訳じゃないさ」

 

「でも、雪風は皆さんを見捨てたんです」

 

「雪風、それは思い過ごしという物だよ…ちょっと待って…」

 

「司令…ペンを出して…左手に…何を書いてるんですか?」

 

「雪風、今、左手の中に1から10までの数字を書いた。何だと思う?当てたら餡蜜(あんみつ)奢るよ」

 

「えっ!本当ですか!じゃあ…雪風の艦数と同じ8!」

 

「ふふっ、違うかな」

 

「じゃ…じゃあ時津風ちゃんの10!」

 

「当たる確率は十分の一だから、10回答えれば最後には必ず当たるはずだ。でも実際は…ほら」

 

「…何も書いてません」

 

「そう。書く振りをしただけだよ。雪風、運命なんてこんなもんだよ。例え十通り全ての予想をしたって、それ以外の答えだって有り得るんだ。

 

「雪風、今回はこの“11番目”だったんだよ」

 

「11…番目…?」

 

「そう。これは雪風には…いや、長門がいても、どうしようもなかった事なんだよ。だから雪風、皆を救えなかったとか見捨てたなんて思う必要はないんだよ」

 

「で、でも…」

 

「それに…雪風のお姉さんを悪く言うつもりはないが、陽炎も黒潮も雪風の言う事を信じなかった訳だろう?もし信じて雪風と来ていれば助かったかもしれない。

 

「でも二人は鎮守府に残る道を選んだ。これは二人が決めた事だ、雪風に責任はないよ」

 

「ほ、本当に…雪風は悪くないんですか?陽炎お姉ちゃんも…黒潮お姉ちゃんも…雪風を恨んでオバケになって出て来ないですか…?」

 

「二人共、雪風の事を恨んだりなんかしてないさ。それにここには不知火も居るだろう?いざとなったら長門だって居る。あの二人が居たら深海棲艦だってオシッコちびって逃げ出すさ」

 

「ゆ、雪風は漏らしたりなんてしません!」

 

「い、いや、それは例えだから。別に雪風が駆逐艦だからオネショしてるなんて疑ってないよ」

 

「だ、大丈夫です!雪風、もうオネショはしません!」

 

「もう?」

 

「ち、違いますっ!しれぇ!雪風は艦娘だからオネショなんてしません!確認して下さいっ!」

 

「か、確認って…お、おい!どうしてパンツを脱ごうと!こ、こら、止めなさい!こんな所誰かに見られたら…」

 

「じゃあ、ちゃんと見て下さいっ!雪風のパンツは濡れてません!ゆ、雪風はオネショなんかしません!」

 

「わ、分かったから、パンツを下ろそうと…こら、雪風、私の腕を掴むな、パンツ戻せないだろ!」

 

「しれぇが、ちゃんと確認するまで離しませんっ!」

 

 

 

『…』

 

『…!!』

 

〈う~ん?あの声は提督と雪風ちゃん?〉

 

「提督…って、ええっ!?一体何を…ど、どうして雪風ちゃんのスカート(めく)って…」

 

「あ、阿賀野!それは誤解だ!」

 

「しれぇ、手を離して下さいっ!」

 

「は、離したらオマエ、パンツ脱ぐ気だろう!」

 

「え…え?どういう状況なの?阿賀野も脱いだ方がいいの?」

 

「えっ!?じゃなくって…雪風を止めてくれ!」

 

「て、提督さんって…阿賀野みたいな軽巡ボディより雪風ちゃんみたいな駆逐艦が好きなの?」

 

「そんな訳ないだろ!」

 

「雪風のパンツ見れば考え変わります!」

 

「雪風、それはどっちの意味で!?」

 

「う、うん…大丈夫だよ。阿賀野、そういうの理解ある方だから!ちょっとショックだけど…」

 

「目の前の状況を理解してくれ!」

 

「み、皆には言わないから!あ、香取さ~ん!」

 

「阿賀野ォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令官は、人を好きになった事ってありますか?

もし雪風の事を好きですかって聞いたら、司令はきっと好きって言ってくれますよね。

でも、雪風の好きは、その好きじゃないんです。

時津風ちゃんや不知火お姉ちゃんの好きじゃないんです。

何て言ったらいいのかなぁ。上手く説明出来ません。

でも、一つ解った事があります。

それは、司令が雪風の事を信じてくれたからです。

私の事を知ったら、陽炎お姉ちゃんや黒潮お姉ちゃんの様に皆さん、雪風を嫌いになるかもしれません。

でも、司令だけは…司令だけは雪風の事を好きでいてくれる。司令は雪風を信じてくれるって思ってます。

だから…雪風も司令を信じて…いいですか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…とっても楽しかった、まるっと」

 

「あ、阿賀野さん、こんにちは」

 

「雪風ちゃん、今日は演習じゃ?」

 

「エヘヘ…もう終わりました」

 

「えっ?その割には随分キレイね」

 

「い、一度も攻撃当たらなかったので」

 

「そ、そうか~。流石、幸運艦…って、この言い方は好きじゃなかったっけ。ごめんネ」

 

「い、良いんです!それより…それは日記ですか?」

 

「ち、違うのよ?これは提督観察日記じゃないのよ!」

 

「うわぁ!司令の日記ですかぁ!」

 

「ち、違うの!別に提督の好きな食べ物や癖までありとあらゆる事を網羅してる訳じゃないの!」

 

「うわぁ!面白そう!雪風、見てみたいです!」

 

「だ、駄目よ!これはトップシークレットなんだから!」

 

「そうですか…それは残念です」

 

「え?う、うん…だ、駄目なんだけど…ちょっとだけなら…見せてあげても…」

 

「本当ですか?…ふんふん…なるほど…司令はこんなのが好きなんですね」

 

「あ、あまり人には言わないでね」

 

「はい。あの…阿賀野さんは…司令が好きなんですか?」

 

「え?べ、別に好きとかそんなんじゃ…ただ阿賀野の事をよく使ってくれるから感謝してるだけで…その…」

 

「じゃあ嫌いなんですか?」

 

「き、嫌いな訳ないじゃない!うん…その…好きかな~って…」

 

「…そうなんですね」

 

「う、うん…アハハ。ねえ…雪風ちゃん。雪風ちゃんって向こうの鎮守府で矢矧(やはぎ)と一緒だったのよね?やっぱり矢矧は…沈んじゃったのかな」

 

「ごめんなさい、雪風には分かりません」

 

「あ!ごめんね、変な事聞いて!…うん、分かってるの。もしかしたらって思って私も捜索隊に参加したんだけど…そっか…」

 

「阿賀野さん…」

 

「ねぇ、雪風ちゃん。矢矧…私の事何か言ってた?」

 

「はい。阿賀野さんの事はよく話してました」

 

「え?私の事?な、何て何て?」

 

「いざという時に頼りになる自慢のお姉さんだって」

 

「え~、そ、そんな~。照れちゃうなぁ~」

 

「大和さん程ではないけど…」

 

「えっ!や、大和さんは戦艦だし!う、ううっ…」

 

「す、すいません!雪風はそんな事思いませんから!」

 

「う、うん…気にしてないから大丈夫」

 

「あ、そうです!最新鋭の阿賀野型に生まれる事が出来て鼻が高いとも言ってました!」

 

「え?も、もう矢矧ったら…ウフフ♪」

 

「次は戦艦に生まれたいって「矢矧!?」

 

「わ、私は軽巡洋艦の皆さん大好きですよ!ほ、本当ですっ!」

 

「う、うん…私、昔は大して活躍出来なかったし、あの娘は大和さんの護衛もしてたし、まぁ仕方ないよね…」

 

「そ、そんな事ないです!雪風は阿賀野さんの洗練された“ぼでー”、憧れちゃいます!」

 

「ええっ、べ、別にそんな事…テヘヘッ♪」

 

「大和さんはもっと凄いですけど」

 

「雪風ちゃん、それ本当に矢矧が言ってたのよね!?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「べ、別に怒ってる訳じゃないけど。はぁ…この鎮守府には戦艦の長門さんもいるし、私なんかじゃ提督振り向いてくれないかな…」

 

「阿賀野さんは…司令官が好きなんですね」

 

「う、うん…まぁね。雪風ちゃんだから言うけどね…私、提督と人間みたいな夫婦になりたいな~って思ってるんだ。だから提督には、私の事艦娘じゃなくって、一人の女の子として見てほしいなって…」

 

「…」

 

「アハハ…艦娘なのに変だよね」

 

「そ、そんな事ありません!雪風は阿賀野さんの思ってる事、とっても素敵だと思います!」

 

「雪風ちゃん…」

 

「矢矧さんだって、きっと同じですよ!」

 

「そうだよね…」

 

「長門さんには負けますけど!」

 

「雪風ちゃん、それ絶対、矢矧言ってないよね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また…阿賀野が一番なの…?」

 

「そ、そんな事…矢矧さんみたいな事言わないで下さいっ!」

 

「や、矢矧…?」

 

「やっぱり雪風の…雪風の所為ですか?」

 

「そ、そんな事…」

 

「雪風が…雪風が阿賀野さんの代わりに沈んだら…!」

 

「な、何を言って…」

 

「やっぱり雪風は死神なんですよ…」

 

「ゆ、雪風ちゃん…」

 

「ごめんなさい…ごめんなさいッ…!」

 

「雪風…!」

 

「時津風ちゃん…」

 

「阿賀野さんは…」

 

「…」

 

「…帰ろう」

 

「…うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…雪風、こんな夜中にどうしたんだ?」

 

「あっ、し、司令!…す、すみません…今日はその…もしかしたら阿賀野さん、部屋に戻ってるんじゃないかって思って…」

 

「今日の事を気にしてるのか。阿賀野の事は残念だが、それは雪風の所為じゃない、むしろ俺の所為だ。雪風が悔やむ必要はないんだよ」

 

「で、でも…阿賀野さんは…雪風と一緒にいたら沈んだんです。もし雪風がいなかったら…」

 

「雪風…阿賀野は最後に何て言ったんだい?」

 

「最後…ですか?矢矧さんの事を話してました」

 

「そうだろう?雪風、誰も雪風の事を責めたりはしないよ。それに雪風、こう考える事も出来るだろう?雪風のお陰で時津風は助かったって」

 

「時津風ちゃんが…?」

 

「ああ。もしかしたら雪風に護られていたのかもしれない」

 

「…」

 

「だから俺の事も護ってくれよ?もう少し長生きしたいからな」

 

「だ、大丈夫ですよ!雪風と一緒にいれば何があってもヘッチャラです!」

 

「はは、そうだな。まだ結婚もしてないしな」

 

「し、司令は…阿賀野さんや香取さんみたいな“せくしー”な人が好きですか?」

 

「えっ?ゆ、雪風、急に何を…」

 

「あっ、そ、その~…時津風ちゃんが司令の事好きみたいで…後で教えてあげようかなって!」

 

「フフッ、時津風が…そうだな、私は可愛い方が好みかな」

 

「可愛い?じゃ、じゃあゆ…時津風ちゃんみたいな可愛い娘が好きなんですか?」

 

「雪風だって可愛いだろう」

 

「は、はぐらかさないで下さいっ!時津風ちゃん知りたがってると思います!」

 

「そりゃ雪風みたいな可愛い娘と一緒にいるのは楽しいさ」

 

「ほ、本当ですか!…あ、じゃなくて、時津風ちゃんというにいるのは楽しいですか?」

 

「ああ、時津風()、ね」

 

「司令官を“悩殺”出来ますか?」

 

「どこでそんな言葉を…別にそんな事しなくてもいいだろう」

 

「で、でも雪…時津風ちゃん、不知火お姉ちゃんに比べると子供っぽいかなって」

 

「…雪風、俺はそんな理由で人を嫌いになったりはしないよ」

 

「じゃ、じゃあ、司令は時津風ちゃんの事が好きですか!?」

 

「ああ、好きだよ」

 

「将来はお嫁さんにしたいですか!?」

 

「ははっ、そうだな。考えておくよ」

 

「雪風、結婚指輪は0.4カラットが良いと思います!」

 

「ず、随分具体的だな」

 

「新婚旅行は佐世保に行きたいです!」

 

「佐世保?あそこ何かあったっけ…」

 

「あ、雪風“しゅーとめ”同居は“えぬじー”です。でないと揉めるって不知火お姉ちゃんが言ってました!」

 

「時津風じゃなくて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛い…エヘヘ♪

可愛い…雪風は可愛いのかぁ…

ゆ、雪風、前の鎮守府の司令官にも可愛いって言ってもらった事あるんですよ。

やっぱり雪風って、可愛いのかなぁ…

そっかぁ…

で、でも阿賀野さんや香取さんには敵わないかな…

雪風が軽巡洋艦だったら…

 

 

 

 

 

 

 

 

〈あら、雪風さん…ベンチに座って…後ろの柿の実が落ちそう…って、落ち…えっ!?〉

 

「香取さん、こんにちは」

 

「こんにちは…雪風さん、その柿の実…よく後ろを見ないで掴めましたね」

 

「あ、その…さっきから落ちそうだったので」

 

「そ、そうですか…元気がない様ですが、まだ阿賀野さんの事を気にしているんですか?」

 

「そ、そんな訳じゃないんです。ないですけど…」

 

「大丈夫ですよ。阿賀野さんは気の毒でしたけど、別に雪風さんの所為ではありませんよ」

 

「…香取さん。香取さんは辛い事や忘れたい事があったら、どうしてますか?」

 

「辛い事…ですか。う~ん、そうですねぇ…私は妹の鹿島と手紙のやり取りをしてるんですよ」

 

「鹿島さんと…?」

 

「ええ。でも最近は私が相談に乗ってばかりですね。フフッ、鹿島ったら自分の鎮守府の提督さんの事ばっかり書いてくるんですよ」

 

「そっかぁ…雪風も時津風ちゃんと、お手紙交換しようかな」

 

「と、時津風さんは同じ鎮守府ですから、その必要は…んっ…!」

 

「…」

 

「あ、ごめんなさいね(何かしら…艦娘の私が頭痛だなんて…)。ええと…そうそう、辛い時の話でしたね。雪風さん、私は楽しい事を思い出す事にしていますよ」

 

「楽しい事…?」

 

「ええ。雪風さんも、お友達やお姉さん達と一緒にいて、楽しい事はあったと思います。それを思い出せば、悲しい事も自然と忘れてしまいますよ」

 

「香取さんは…香取さんは今までで楽しい事ってありましたか?」

 

「私ですか?…フフッ、そうですねぇ。ここの提督さんの話ですけど提督さん、阿賀野さんの事を、とても信頼しているんですよ。それに阿賀野さん、私と違って強いし、とても明るいし…

 

「ある任務で阿賀野さんと組む事になったんです。私は当然、阿賀野さんが旗艦だろうと考えていました。ですが、提督さんは私を旗艦に選びました。

 

「私は不思議に思い提督さんに尋ねたんです。阿賀野さんの方が私より強いし旗艦に向いているのではと。でも提督さんは、こう(おっしゃ)いました。

 

「『香取が皆の事を細かく見ているのは知っている。旗艦に必要なのは強さではなく、皆のコンディションを把握出来る事だ』って』

 

「コンディ…ション」

 

「それを聞いた時、私はとても嬉しかったんです。私は練習艦という事もあり、提督さんも戦力としては見てくれていないのではと、ずっと気にしていたものですから。

 

「でも提督さんは、私の事もしっかり見ている、理解してくれているんだと考えると、とても嬉しかったんです」

 

「…」

 

「ですから、悲しい事があったら、その事を思い出す様にしているんですよ」

 

「そうなんですね!じゃあ後で不知火お姉ちゃんにも、そうすれば良いって教えてあげます!」

 

「し、不知火…さん?不知火さんが…何かあったんですか?」

 

「実は…不知火お姉ちゃん、この間、珍しく悲しそうだったんです」

 

〈か、悲しい?あの不知火さんが…?私には全く解らないけど…〉

 

「雪風、どうしたのって聞いてみたんです。そうしたら不知火お姉ちゃん、香取さんに嫌われてるって…」

 

「え、ええっ!原因、私ですか?そ、それに私は不知火さんの事、嫌ったりはしてませんよ?」

 

「でも不知火お姉ちゃん、最近香取さんに避けられてるって言ってました」

 

「うっ!そ、それは…私はそんなつもりは…ないんですが…態度に出ていたかもしれませんね」

 

「不知火お姉ちゃんも、どうして香取さんが怒っているのか解らないって」

 

「い、いえ、別に怒っては…」

 

「時津風ちゃんは、前の演習で香取さんを“ぼっこぼこ”にしたのが原因だって言ってました」

 

〈…まぁあれ以来、不知火さんが少し怖くなったのは事実ですけど〉

 

「それはもう徹底的に」

 

〈そ、そんな事ないもん!私だって少しは反撃したもん!当たらなかったけど…〉

 

「でも不知火お姉ちゃんは、それは違うって言うんです」

 

〈間違いなくそれが原因なのだけど…〉

 

「香取さんは、ワザと私に負けたって」

 

「ええっ!?」

 

「あの香取さんが駆逐艦に負ける筈はないって」

 

〈ごめんなさいね、駆逐艦に負けて!〉

 

「きっと香取さんは私に自信を付けさせる為にワザと負けたんだって」

 

〈百パーセント実力で負けたのよ!私だって頑張ったもん!〉

 

「だから不知火お姉ちゃんに教えてあげます!香取さん別に怒ってないって!」

 

「そ、そうね…誤解を解いてくれて私も嬉しいです。し、不知火さんも辛い事もあるでしょうし、そんな時は楽しかった事を思い出す様にも伝えて下さいね」

 

「あ、不知火お姉ちゃん、一番楽しかったのは香取さんに勝った時って言ってました」

 

〈鹿島!お姉ちゃん、そっちに行っていい!?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈あっ、司令だ!こんな夜中に何してるんでしょう。あれは…香取さん?それと…〉

 

「フフッ、こんな夜空に二人で散歩なんて、阿賀野さんがいたら嫉妬しちゃいますね」

 

「聞きたい事があって呼んだだけだよ」

 

「もうっ、そこは『月が綺麗だね』って返す所ですよ」

 

「そうだな。香取とも夜にしか会えなきゃ、こんな密会も楽しめるかもな」

 

「み、密会だなんて…(入渠は済ませたから体は…匂わないわよね?部屋は…大丈夫、散らかってないわ!提督さん!今日の香取、少し遅くなっても平気ですよ♪)」

 

「ま、香取とは昼間も会えるから明日でも良かったけど」

 

「えっ?え、ええ…そうですね。はい…」

 

「実は雪風の事なんだ」

 

「雪風さんが…どうかしましたか?」

 

「次の出撃、雪風の事を気に掛けてやってほしいんだ」

 

「雪風さんを…ですか」

 

「雪風とも話したんだが、姉の陽炎達を助けられなかった事を気にしてるみたいなんだ。それに阿賀野の件もある。少し心配でね」

 

「そうですね。私も昼に少しお話ししましたが、まだ引きずっているみたいですね」

 

「時津風もいるから大丈夫だとは思うが、あまり無理はさせないでやってくれ」

 

「…分かりました。でも提督、私の事は気に掛けてくれないんですか?」

 

「そんな事はないさ。実はこんな場所に呼んだのは理由があるんだ」

 

「り、理由…と言いますと?」

 

「実は…会ってもらいたい人がいるんだ」

 

〈ええっ!?そ、それって、ご両親に会ってもらいたいという事でしょうか?て、提督さん、私達まだ付き合ってもいないのに…で、でもそれだけ私との将来を真剣に考えて下さっているという事ですよね?ど、どうしましょう…〉

 

「不知火、来てくれ」

 

「…へっ?」

 

「…どうも、香取教官」

 

「は、はい…あの、提督さん…会ってもらいたい人って…不知火さん?」

 

「ああ。実は不知火から相談を受けてな。自分は香取に嫌われてるんじゃないかって」

 

「そ、そんな事ありませんよ!不知火さん、私はあなたの事を嫌ってなんかいませんよ?」

 

「で、でも…最近、明らかに不知火を避けていますし…」

 

「そ、それは…」

 

「不知火、何か心当たりはないのか?」

 

「…きっと、演習の事です」

 

「演習?何かあったのか?「て、提督!その話は後日説明しますので…」

 

「不知火が演習で香取さんに勝ってしまった事が、プライドを傷付けてしまったのではないかと…」

 

「そうなのか?香取」

 

「あ、あれはですね…その…」

 

「不知火も不思議に思いました。駆逐艦の不知火に手も足も出ないのは変だと…」

 

〈手も足も目一杯出して負けたんですけど!〉

 

「香取、不知火にボコボコにされたのか?」

 

「ち、違うんです提督!あれは「ええ、香取教官のお考え、この不知火は解っています「ええっ!?」

 

「香取教官は、不知火に自信を付けさせる為にワザと負けたんです」

 

「何、そうなのか香取?」

 

「…はい」

 

「やっぱりそうだったんですね!不知火もおかしいと思いました!巡洋艦の香取さんが駆逐艦の不知火に負ける筈がないと!」

 

〈ううっ!〉

 

「そりゃそうだ。不知火、腐っても教官だぞ?香取が本気を出せば不知火なんて一発轟沈だぞ?」

 

〈提督さん!ハードル上げないで下さいっ!〉

 

「や、やはり…伊達に眼鏡は掛けていませんね」

 

〈眼鏡は関係ないわよね?〉

 

「不知火、お前も香取に追い付く様に精進しろよ」

 

〈追い越してますっ!不知火さん、とっくに駆逐艦の強さ越えてますから!〉

 

「はいっ!いつかは香取教官を追い越してみせます!」

 

陽炎型怖陽炎型怖陽炎型怖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、行ってきます!」

 

「ああ、雪風。しっかりな」

 

「しれぇ…時津風は?」

 

「勿論、時津風もだよ」

 

「なんか雪風のオマケみたい」

 

「どっちかと言うと二人が香取のオマケなんだがな…じゃあ香取、二人を頼むよ。それとさっきの話なんだが…」

 

「フフッ、ご心配なく。雪風さんや時津風さんもいますからね。断るつもりです」

 

「そうか…」

 

「もうちょっと喜んでくれても良いと思いますが…」

 

「あ、ああ!断ってくれるなら俺も嬉しいよ!」

 

「しれぇ~、何の話?」

 

「帰ってきたら話すよ」

 

「ケチ~」

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待ってよ!雪風」

 

「時津風ちゃん!香取さん、時津風ちゃんが遅れてます!」

 

「敵に囲まれる前に不知火さん達と合流した方が良さそうで…つっ!(またあの頭痛だわ…そういえば阿賀野さんや時津風ちゃんもたまになるって言ってたわね…)」

 

「香取さん、この戦いに勝ったら司令官、雪風の事褒めてくれるかなぁ」

 

「え…そうですね。無事に帰れば、きっと褒めてくれますよ」

 

「…香取さん、昨日の夜、司令とお話ししてましたよね」

 

「え…聞いていたんですか?盗み聞きは良くないですよ」

 

「香取さんは…司令の事が好きですか?」

 

「雪風さん?どうしたんですか急に。今はそんな場合では…」

 

「雪風も…司令が好きだって言ったら…香取さんは怒りますか?」

 

「そ、そんな…怒るだなんて」

 

「…」

 

「…まあ、少し妬いてしまいますね。私も、あの提督さんの事は好きですから…鈍感ですけど」

 

「…阿賀野さんも…司令の事が好きだって言ってました」

 

「阿賀野さん…?ゆ、雪風さん、どうかしましたか?」

 

「香取さん…雪風、向こうの鎮守府では皆さんに嫌われていました。司令官にもです」

 

「雪風さん…急にどうしたんです?」

 

「雪風…向こうの皆さんの事が嫌いです。雪風は誰にも沈んでほしくないから()()()()()しました。なのに…

 

「ただ皆さんを助けたいだけなのに…そんな雪風の言う事を信じてくれない皆さんを…」

 

「言う事を…信じて…?あっ、敵影発見!まだこちらに気付いていない様ですね。雪風さん、話は後で!」

 

「もう今しか…ごめんなさい、何でもありません。時津風ちゃんが遅れてるので後ろに行きます…香取さん、敵は軽巡洋艦と駆逐艦だけです。挟み撃ちにしちゃいましょう」

 

「え…そ、そうですね。皆さん、砲撃用意!(…駆逐艦…?軽巡ヘ級はともかく駆逐艦は何処に…)」

 

〈あ…本当に駆逐艦が…こんなに!?〉

 

〈ゆ、雪風さん、どうして判ったのかしら?まぁいいわ。そろそろ雪風さん達も攻撃を…〉

 

〈…どうしたのかしら。敵が全てこちらに向かって…雪風さん達は何をして…〉

 

〈ま、まずい!私達だけではこの数は…〉

 

〈…雪風さん…?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪風、香取さんは!?」

 

「大丈夫、時津風ちゃん。香取さんが時津風ちゃんを助けに行けって!」

 

「で、でも…あれって軽巡だよね?私達じゃ敵いっこないよ!」

 

「大丈夫!時津風ちゃん、私に付いて来て!」

 

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

〈…す、凄い!〉

 

〈雪風って、こんなに強かったんだ…〉

 

〈そ、それに…雪風に付いて行けば敵の攻撃が当たらない…!〉

 

〈いつもなら、とっくに中破しても…ううん、こんな数の敵がいたら沈んじゃってもおかしくないのに…!〉

 

〈勝てるかも…雪風と一緒なら勝てるかも!〉

 

「雪風っ!何だか私達、勝てる気がしてきたよ!」

 

「うんっ!時津風ちゃん!あと一息だよ!」

 

「そうだね!勝って時津風の…私のしれぇの所に帰るんだから!」

 

「…えっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪風!よく無事で!」

 

「…不知火お姉ちゃん」

 

「時津風は…一緒じゃなかったの?」

 

「…」

 

「まさか…」

 

「…」

 

「そうですか…残念です」

 

「…」

 

「雪風、私は先に引き上げます。この海域の敵は倒しましたが、まだ安全ではありません。早めに合流して下さいね」

 

「…はい」

 

 

 

 

 

 

『また、一番最初かぁ…いいけど。雪風、初風、天津風…また…ね』

 

『時津風ちゃん!』

 

『雪風…どうしてそんな顔…して…』

 

『やっぱり雪風と一緒だったから…』

 

『そ、そんな事ないよ…』

 

『と、時津風ちゃん!』

 

『そんなの…よ雪風…』

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「……」

 

「ああっ…神様っ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございますっ!」

 

「雪風に、こんな力をくれてっ!」

 

「この力が有る限り、雪風は何度でも、やり直せますっ!」

 

「雪風としれぇに近付く人を、やっつける事が出来ますっ!!」

 

「神様っ!これからも雪風を見守って下さいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『また…阿賀野が一番なの…?』

 

『阿賀野さん…最後だから教えます。雪風が、こんな事が出来るって気付いたのは矢矧さんのお陰なんです』

 

『や、矢矧…?』

 

『私、矢矧さんには嫌われていたんです。雪風といると攻撃が自分に集中すると…』

 

『そ、そんな事…』

 

『でも、それって間違ってないんです。本当は雪風に攻撃が()()()()場所に、矢矧さんを誘導したんです』

 

『な、何を言って…』

 

『阿賀野さん…阿賀野さんがいると、司令官は雪風を見てくれません。だから矢矧さんと同じ事をしました』

 

『ゆ、雪風ちゃん…』

 

『雪風、阿賀野さんの事は好きでした…さようなら阿賀野さん…』

 

 

 

 

 

 

 

司令…

司令は、ああすれば良かった、こうすれば上手く行ったのにって思った事はありますか?

雪風は、いつもそんな事ばかり考えてました。

そんな時でした。

ある日、雪風は運悪く狙い打ちにされて、沈んでしまったんです。

…そう、あの時、雪風は間違いなく沈んだんです。

雪風は沈む瞬間に、こう思ったんです。

 

『もう一度やり直せたら…』って。

 

そうしたら雪風、沈む前に戻っていました。

雪風は、何が何だかさっぱり解りませんでした。でも、全て一度見た風景でした。

さっきと同じ場所にいて、皆さんはさっきと同じ事を話してました。そしてさっきと同じ場所に深海せぇ艦が現れました。

もし、さっきと同じなら…と思って、雪風は攻撃される場所から逃げました。

すると、雪風にだけは攻撃が当たらなかったんです。

それからも同じ事が続きました。

雪風はそんなに強くないから、何度も大破しました。

でも、その度に()()に戻りました。

何回沈んでも、雪風だけは無傷です。

でも、その内、雪風は皆から嫌われる様になりました。

今考えれば当然かもしれません。だって、いつも雪風だけは無傷で帰って来るんですから。

矢矧さんには、雪風は死神だって言われました。

やがて、陽炎お姉ちゃんや黒潮お姉ちゃんに聞かれました。雪風は、お姉ちゃん達だけは守ろうと秘密を教えました。

でも、直ぐに分かったんです。

お姉ちゃん達は雪風が大切なんじゃない…雪風の力が欲しいだけなんだって…。

だから雪風は、お姉ちゃんも矢矧さんも…

 

…そして、雪風はこの鎮守府に来ました。

司令は言ってくれましたね。

雪風を決して見捨てたりはしない、もし沈む時は一緒に沈もうって。

司令、その時の雪風の気持ちが、解りますか?

雪風は、この人だと思いました。

この人なら…この人なら、例えどんな事があっても雪風を見捨てたりはしないって。

だから、雪風はこの力を司令の為に使おうと決めました。

司令と雪風の為に、使おうって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪風、不知火、無事で何よりだった」

 

「司令…時津風ちゃんが…」

 

「ああ、不知火から聞いてるよ。だがそれは俺にも責任がある。辛い思いをさせてすまなかったね」

 

「妹を守れなかったのは不知火にも責任があります。申し訳ありません」

 

「それに…香取さんまで…」

 

「ああ、それなんだが…香取、入ってくれ」

 

「えっ!?」

 

「失礼します」

 

「か、香取さん…無事だったんですか」

 

「ええ…雪風さんと同じで、不知火さんに助けられたんです。その後、私が無事なのは黙っている様に伝えて帰投したんです」

 

「黙って…?香取、何でそんな事を」

 

「提督、それに付いては雪風さんにお尋ねして下さい」

 

「何故そこで雪風が…それにどうして無事なのを隠す必要があるんだ?」

 

「…」

 

「今回は勝利でしたが…いえ、阿賀野さんに続き時津風さんも失ったんです。勝利と呼ぶには辛すぎますね」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

『時津風ちゃん…時津風ちゃんが悪いんだよ』

 

『雪風…どうして…そんな顔…して…』

 

『司令は雪風だけを見なきゃいけないの。時津風ちゃんも司令が好きなんでしょ?』

 

『そ、そんな事ないよ…』

 

『でも、もう遅いよ。雪風もこんな事したくなかったけど、時津風ちゃんがいけないんだから…』

 

『そんなの…ひどいよ雪風…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令は言いましたよね。

自分を不幸にしてもいいって。雪風、その時決めたんです。

雪風のこの力は、この人の為にあったんだ…

司令だけは、絶対に幸せにしなきゃ…って。

阿賀野さんも時津風ちゃんも、今でも大事な大事なお友達です。

でも…二人がいると、司令は二人を見ちゃうから。

もし二人がいなかったら…司令は雪風の事をもっと見てくれるかのかなぁ…そう思ったら、雪風二人に嘘を教えちゃいました。

雪風が沈む前に戻って、その場所に二人を案内しました。

司令…本当に本当に…雪風、心が痛いです。

でも…香取さんは、どうして沈まなかったんだろう?

あの場所は…右にも左にも深海せぇ艦がいて、雪風も逃げられなかった場所だったのに。

不知火お姉ちゃんが助けたのかな…でも、お姉ちゃんでも、あんないっぱいの深海せぇ艦は倒せる筈ないのに…。

不知火お姉ちゃんって、そんなに強かったのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいたんですね、雪風さん」

 

「か、香取…さん」

 

「時津風さんの事は、私も残念です…雪風さんは違うかもしれませんが…」

 

「え、ど、どういう意味…ですか?」

 

「うふふ。雪風さん、そんな怖い顔も出来るんですね」

 

「えっ!そ、そんな事…あうぅ…」

 

「実は…雪風さんにとっては良いお知らせが有るんですよ」

 

「雪風に…な、何ですか?」

 

「今、提督にもお伝えしたのですが…私、妹の鹿島のいる鎮守府に移る事にしたんです」

 

「えっ…香取さん、いなくなっちゃうんですか?」

 

「ええ。前から自分の所に来ないかって誘われていたんです。最初は断るつもりだったんですが、駆逐艦の皆さんも充分強いですから(誰とは言わないけど…)。ですから雪風さん、私はお邪魔虫ではありませんよ」

 

「ゆ、雪風、香取さんの事、そんなふうに思ったりなんて…!」

 

「雪風さんは、嘘を吐くと頬っぺたが真っ赤になりますね」

 

「ひゃっ!ほ、ほんとですか!?」

 

「ちなみに私が嘘を言うときは微笑むって、提督に言われました。うふふ♪」

 

「…香取さんは意地悪です」

 

「まあ冗談はこの辺にして。雪風さん、最後に…一つ、お聞きしたい事があるんです」

 

「…何でしょう」

 

「その…上手く説明出来ないんですが、雪風さんが私達には解らない何かをしている気がして。只の好奇心なんですが…良ければ教えて貰えませんか?」

 

「雪風も香取さんに一つ聞きたい事があります。どうして雪風が“何かをしている”って思ったんでしょう?」

 

「私や阿賀野さん…提督に、ある共通点があるんです。私、最近頭痛が…頭が一瞬チクッとする事があったんです。ですが私や阿賀野さんは艦娘です。人間の提督さんの様に風邪を引いたり病気になる事はありません。

 

「私が頭痛を感じた瞬間、提督さんや他の皆さんも似たような症状を訴えてる様に見えました。

 

「雪風さん…アナタを除いて」

 

「…そうだったんですか。雪風、全く気付きませんでした。でも、もう一つ解らない事があるんです。あの海域で本当なら香取さんも助からない筈だったんです。雪風がそうだった様に…もしかして、不知火お姉ちゃんが全部やっつけちゃったんですか?」

 

「雪風さんが…そうだった?よ、よく解りませんが…その答えは簡単ですよ。雪風さん、あの時私に挟み撃ちにしましょうって言いましたよね。でも、私はそれには従わず後退したんです」

 

「不知火お姉ちゃんが助けたんじゃ…なかったんですか?不知火お姉ちゃん…香取さんより強いから、てっきり…」

 

「わ、私も強いです!今はちょこっと…ほんのちょっと不知火さんが上なだけで…

 

「オホン!実は、あの少し前、例の頭痛がありまして。それに雪風さんは目の前には軽巡へ級しかいないのに駆逐艦()いると言いましたね。

 

「それで確信したんですよ。雪風さんは私達には見えない何かが見えるのでは…私を騙そうとしているのでは…と」

 

「香取さんは凄いです。この事は陽炎お姉ちゃんも黒潮お姉ちゃんも気付かなかったのに…。や、やっぱりその眼鏡は心を読む事が…」

 

「そ、そんな事出来る訳ないじゃないですか」

 

「で、でも不知火お姉ちゃんが、香取さんの眼鏡に睨まれた深海せぇ艦は3秒で轟沈だって」

 

「これ只の眼鏡ですよ!?不知火さんは一体私を何だと思ってるんです!?」

 

「(ほ、ホントかな)でも…見えるんじゃないんです」

 

「…と、言いますと?」

 

「実は雪風……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈面白い話を聞いたわ…〉

 

〈でも流石に信じられないわね…雪風さんの妄想じゃないかしら…〉

 

〈でも以前、柿の実が落ちてきた時、あらかじめ知っていたかの様に振り向きもせず掴んだけど…偶然よね…〉

 

〈でも…雪風さんの言う事が本当で…〉

 

〈未来が見えるとしたら…〉

 

〈フフフッ…面白い話ね…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、雪風。香取なんだが…」

 

「知ってます。さっき香取さんに教えて貰いました」

 

「そうか。向こうには妹の鹿島もいるそうだし…おっと!どうしたんだ雪風、急に抱き付いて」

 

「少しだけ…ギューッってして下さい」

 

「…そうだな。阿賀野、時津風に続いて香取もいなくなるからな。雪風、お前だけは沈ませない様に頑張るよ」

 

「大丈夫ですよ!司令には雪風がついてます!司令、何か困った事があったら言って下さい。雪風、何だってしちゃいます!」

 

「ハハッ、それじゃ書類の整理を頼もうかな。色々あったから大変でね」

 

「書類の整理以外なら何でも言って下さい!雪風にお任せです!」

 

「あぁ…うん。じゃあ不知火にでも頼むか」

 

「不知火…お姉ちゃん?」

 

「以前は香取に頼んでたんだが、不知火に引き継いだそうだ。聞いてなかったか?」

 

「は、はい…そうですか…不知火お姉ちゃんが…」

 

〈もしかして香取さん、ワザとお姉ちゃんに頼んだのかな…ふふふっ〉

 

「雪風も、いずれは秘書艦出来る様になってくれたら、俺も助かるよ」

 

「はいっ!雪風にお任せですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不知火お姉ちゃんかぁ…

お姉ちゃんは…時津風ちゃんも言ってたけど、考えてる事が解らないなぁ。

司令の事どう思ってるんだろう。

私、不知火お姉ちゃんは好きだからなぁ…。

それに香取さんって…やっぱり凄いなぁ。

雪風の秘密に気付いちゃうなんて。

そっか…雪風が前に戻ると、側にいた人は頭がチクッてするんだ。不知火お姉ちゃんは…気付いてるのかな。どっちなんだろ。

司令は…気付いてないよね。でも…

大丈夫ですよ。

雪風が側にいる限り、司令を勝たせてあげます。

それだけじゃありません。司令に悪い事が起きても、全部無かった事にしてあげます。

だから、司令は何も心配しなくていいんです。

司令が雪風を信じてくれる限り、雪風は司令に幸運をあげ続けます。

だから司令、どうか…

どうか雪風を…見捨てないで下さいね。

 

しれぇ…

 

 

 

 

 




簡単に説明しますと、エルシャダイのルシフェルみたいに時間を巻き戻せると思って下さい。この後、雪風の秘密を知った提督と雪風の話みたいのも考えてます。霞回の次に書ければと思ってます。タイトルはシドニィ・シェルダンの同名小説からです。

つ、次こそ霞と電の話です。10月中に載せられる様に頑張ります(38話に当たります)。





艦娘型録

雪風 司令、どうしたんですか。お馬さんの競争?司令はこのお馬さんが好きなんですか?う~ん、でもそのお馬さん、あまり速くないみたいです。雪風の予想だと…

提督 今回は絶対このディープオーシャンが来る!ん、どうした雪風。何?こっちのギョライマスターの方が速い?ははは、雪風、競馬はもっと奥が深…く…マジかや。

阿賀野 あ~こんな事なら日記とゼクシィ処分しとくんだった。特に日記…あれ見られたら恥ずか死ぬわ!誰か時間戻して!処分したらちゃんと沈むから!

香取 こっちの提督さん、ちょっとニブチンなのよねぇ。その点、鹿島の方の提督は女心解ってそうね。確か向こうにいるのは…金剛さん、加賀さんそれに…瑞鳳さん。確か軽空母の娘だったわね…

時津風 雪風…私、別にしれぇの事好きじゃないんだけど。別に嫌いじゃないよ?嫌いじゃないけどさぁ、そっちの好きじゃないんだよね…

不知火 香取教官、いなくなると寂しくなりますね。でも不知火は大丈夫です。いつか香取教官が本気を出せる様にもっと強くなってみせます!教官の鎮守府に演習を申し込み…え、来なくていい?な、何故ですか?不知火では相手にもなりませんか!?


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