艦娘症候群   作:昼間ネル

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もぅいャ…鈴谷ゎがんばった…
提督さんが…ぜんぜん話聞かなぃカラ…
でも…もぅつかれちゃった…でも
あきらめるの、ょくないって…
鈴谷ゎ…ぉもって…がんばった
…でも…鈴谷…つかれて…
神通さん…さっきまで…提督まかせてて…ゴメン
でも…鈴谷と神通さんゎ…ズッ友だょ…!


Good orange

「報告書は読んだが…」

 

眼鏡を掛けた男は手元の書類を机に置くと、目の前の女の顔を見る。

 

「君の妹、那珂君も被害にあっていたようだね。同情するよ」

 

「…」

 

「率直に聞こう。君は彼を解任すべきだと思うかい?」

 

机の前に立つ女は、暫しの沈黙の後、重い口を開いた。

 

「私は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さ~ん、まだ日も高いわよ~?」

 

「じゃあ、夜ならいいのか?」

 

「そういう訳じゃないんだけど…」

 

提督と呼ばれた男は、戸棚から書類を取ろうとしていた女のお尻を軽く撫で回す。

そんな提督を軽くいなそうとする艦娘、長門型戦艦の陸奥だったが、彼は中々離れようとはしなかった。

 

「提督…そろそろおイタは止めましょうね~」

 

「イテッ!」

 

陸奥に手をつねられ、慌てて手を放す提督。ふて腐れた顔で、もう一度陸奥にちょっかいを出そうとすると、勢いよくドアが開いた。

 

「失礼するぞ!」

 

「あら~」

 

「…長門」

 

陸奥の姉妹艦に当たる長門型1番艦の長門が、提督を睨み付ける。

 

「提督、陸奥はこの後演習だ。借りていくぞ」

 

「(チッ)…ああ」

 

長門は陸奥の手を引っ張って出ていった。

 

「何かされたか?」

 

「ハァ…いつもの事よ」

 

陸奥は半ば諦めた顔で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある鎮守府。

表向きは何事も無く運営されていた…少なくとも大本営はそう判断していた。

だが、その実態は些か違った。

艦娘達の限度を超えた出撃、大破を気にも止めない作戦、体罰、セクハラの強要…。数え上げれば切りが無かった。

それもこれも全てはこの鎮守府を仕切る彼、提督が元凶だった。

 

元々、彼も最初からこうでは無かった。

着任から暫くした大きな戦いで、彼の艦隊は大勝利を収めた。だがこれは、敵深海棲艦が別の艦隊との戦いで既に手負いだった事、悪天候で敵の指揮が乱れた事等、幸運に幸運が重なった、言わばビギナーズラックの様な物だった。

結果的に勝利を掠め取った形になったが、そうとは知らない大本営は彼に勲章を与えてしまった。

これに気を良くした彼は、自分は才幹に溢れた稀代の英雄なのだ、この国を救うのは自分なのだと著しく増長してしまった。

だがメッキはすぐ剥がれる物。

次の戦いでは惜敗。たがこれは新型の深海棲艦を把握していなかったからだ、彼は自分に言い聞かせた。

敗北…たまたま上手く行かなかっただけだ。

惨敗…アイツらが不甲斐ないから悪い!

敗走…自分の作戦通りに動かなかったアイツらが悪い!!

 

いつしか彼はやさぐれ、その責任を艦娘達に擦り付ける様になった。

命令通りに戦い、負ければ叱咤される。これでは艦娘達の不興を買うのも当然で、今や提督の信頼は地に墜ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、軽巡洋艦天龍率いる遠征組が不幸にも敵と遭遇した。本来なら難無く戦える相手にも係わらず、艦隊は敗走する羽目になった。

 

「大丈夫か、雷?」

 

暁型駆逐艦、雷と電は所々セーラー服も破れ、いつ倒れてもおかしくない状態だった。

 

「こ、これ位大丈夫よ!天龍さんこそ…」

 

「何だ、遠征は失敗か?」

 

鎮守府に辿り着いた一同を待っていたのは冷淡な提督だった。

 

「ご、ごめんなさいなのです…」

 

「フン、こんな楽な任務もこなせないとはな」

 

「なっ…テメェ!オレ達は前の遠征から休まねぇで出てんだぞ!?でなきゃ、こんな事には…」

 

「黙れ天龍!普段から態度はデカい癖にこのザマか…その姿はどうした?旗艦のお前が大破か?」

 

「クッ、こ、これは…」

 

「て、天龍さんは悪くないわ!天龍さんは雷を…私を庇ってくれたの!!」

 

「で、仲良く大破か。資材を集めに行って、その損傷を治す為に資材を使う…まるで貧乏神だな」

 

「つ、次は頑張るわ!だ、だから司令官…」

 

「…フン」

 

「…入渠するぜ」

 

「駄目だ、その程度でドックを使わせられるか」

 

「フザケんな!俺たちに、このままでいろってのか!?」

 

「役立たずに使わせるドックなど無い!反省しろ!」

 

「い、いいの天龍さん。雷が…雷が悪いの。こ、これ位、平気…よ」

 

「雷!…提督、オレはいいからチビ共だけでも使わせてやってくれ」

 

「…フン、まぁいい。次は無いからな」

 

「あ、ありがとう司令官…」

 

 

 

 

 

「ふう~、久しぶりのフロだ。生き返るぜ…」

 

「本当なのです…」

 

天龍と駆逐艦達は久しぶりの入渠ドックで疲れを癒していた。ここ最近は大した状態で無ければ入渠を許されず、天龍達にとっては数日振りの命の洗濯だった。

 

「大丈夫か雷…クソっ、あの野郎」

 

「い、雷は大丈夫よ天龍さん。この位、天龍さんに比べたら」

 

「そ、そうなのです。天龍さんの方が大変なのです」

 

「へっ、チビ共が生意気抜かすな。天龍様はこの位どうって事ねぇんだよ!…イテテ」

 

雷は、かつての提督の事を思い出していた。

 

『電…っと、雷だったな。ごめんごめん』

 

『雷、今日も輸送任務ご苦労様』

 

『大丈夫か?ゆっくり休んでくれ』

 

提督も元から冷たかった訳ではない。ある時から徐々に功を焦り始め、気が付けば自分達の状態よりも成果を重視する様になった。

雷はこの鎮守府では古株に当たり、天龍達が知らない提督の優しい顔も知っている。それだけに天龍の様に提督を憎みきれずにいた。

 

「…雷。オマエ、まだアイツが昔みたいに戻ってくれるって思ってんのか?」

 

「う、うん…」

 

「諦めろ。もう昔のアイツはいねぇよ。今のアイツはオレ達の事なんざ、何とも思ってねぇよ」

 

「そ、そんな事ないわ!今は…そう、戦いが多いから司令官も大変なのよ!平和になれば昔の司令官に戻るわ…きっとそうよ」

 

「雷ちゃん…」

 

翌日、回復した雷達は休む暇もなく次の任務へ駆り出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷ちゃん達は大変だねぇ熊野。ウチら重巡で良かったよ」

 

「そうですわね。でも、もうお忘れになったの鈴谷?あの提督の所為で、三隈姉さんを失った事を…」

 

「わ、忘れてなんかいないし…」

 

「次は私達かもしれませんわ。駆逐艦の皆さんは天龍さんに任せて、私達は自分達の心配をしましょう」

 

「うん、そだね…」

 

最上型重巡洋艦3番艦の鈴谷、同じく4番艦の熊野がこの鎮守府に来てから1年程が過ぎていた。

戦闘の規模が大きくなるにつれ、提督は重巡の火力を強化すべく鈴谷と熊野を呼んだ。当初は提督に持て囃されていた鈴谷達だったが、半年程前から事情は変わった。

既に居た三隈を戦闘で失った。それだけなら鈴谷達も提督を恨んだりはしなかったが、問題はその後だった。

戦果を重視する提督は、三隈の抜けた穴は同じ姉妹艦の鈴谷達が補うべきだと、必要以上の出撃を命じた。例え大破だろうが動けるなら平気だろうと。それでも駆逐艦に比べれば、必ず入渠や補修は受けられた。もちろん、それなりの戦果を上げればだが。

 

 

 

 

 

「え~っ?ドック使えないって…何で!?」

 

ある日、戦いから帰った鈴谷達は報告の後、入渠ドックに向かおうとしていた。だが提督はそれを許さず、そのままの待機を命じた。

 

「提督さん、ウチらボロボロなんだけど!」

 

「文句は駆逐艦達に言うんだな鈴谷。今ドックはアイツらで一杯だ。オマエ達の入る余裕は無い」

 

「…お言葉ですが提督、駆逐艦の皆さんを休みも与えず酷似し過ぎでは?もう少しローテーションを組んで効率良く…」

 

「だ、黙れ熊野!俺の考えが間違ってるとでも言いたいのか!?元はと言えば、三隈達が抜けた穴を…」

 

「な!そ、それがどうして私達の所為なんですの!?それこそ提督の作戦が悪かったのが原因ですわ!!」

 

「うるさいっ!」

 

「きゃあっ!」

 

逆上した提督は熊野の頬をおもいっきり叩いた。

 

「く、熊野!ちょっと提督、女の子ぶつなんて最低だよ!」

 

「うるさい鈴谷!オマエもぶたれたいか?戦力としてアテになるから優しくしているんだ。それを付けあがりやがって!何なら解体して新しい連中を迎えてもいいんだぞ!」

 

「…ちょっ、何でそうなるのよ!」

 

「恨むんならオマエ達の姉の三隈でも恨むんだな。アイツが抜けた所為で俺の作戦も狂ってきたんだ。クソッ、沈んでまで迷惑掛けやがって…全く良い姉貴を持ったもんだな」

 

「…最低」

 

 

 

 

 

 

 

「鈴谷さん、熊野さん…ご、ごめんなさいなのです!」

 

執務室から出てきた二人の前に、雷と電の二人が立ちはだかった。二人は鈴谷達の顔を見ると申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「ど、どうしたのアンタ達?」

 

「わ、私達の所為でドックが使えないって…ご、ごめんなさい!」

 

「別にそんな事気にしていませんわ。私、こう見えても体は丈夫でしてよ?ねぇ鈴谷」

 

「そうだよ~。アンタらが資材集めて来てくれてるから、ウチらも戦えるんだからさ~。ゆっくり休みなって!」

 

「うぅ、ありがとうなのです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、こんなの無理だって!」

 

「そ、そうですわ、考え直して下さい」

 

翌日、鈴谷と熊野の二人は出撃を命じられた。それだけなら問題は無かったが、そこは鬼級の深海棲艦が陣取る海域で、戦艦の長門や陸奥ですら撤退する程の危険な場所だった。

 

「お前達は戦艦に並ぶ火力を持ってるんだ。問題無いだろ」

 

「そ、そんな事言ってんじゃなくって!長門さん達ですら負けちゃった所でしょ?ウチらだけで勝てる訳ないじゃん!」

 

「お前達は戦艦に比べれば燃費もいい。ここで役に立たないでどうするんだ!」

 

「だ、だったらせめて長門さんや陸奥さん達と一緒に行く事は出来ませんの?」

 

「アイツらはまだ入渠中だ…全く、肝心な時に使えない奴らだ」

 

「提督は、鈴谷達が沈んでもいいの?」

 

「俺の作戦通りに動けば何とかなる…仮に沈んでもすぐに長門達を投入すれば…」

 

「なッ…!それでは私達は最初から捨て駒扱いですの!?」

 

「俺の作戦が信じられないのか!?もし出来ないなら、解体だ」

 

「そんな理不尽が通ると…」

 

「行こう、熊野…」

 

「あ、鈴谷、ちょっと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『君が鈴谷か。最上に聞いていた通りの可愛い娘だな』

 

『流石、重巡。ウチのエースは鈴谷達で決まりかな?』

 

『もう少し…もう少しだけ俺を信じて頑張ってくれ。頼むよ鈴谷、お前だけが頼りなんだ』

 

 

 

 

「鈴谷…本当に出撃なさるおつもり?」

 

「仕方ないじゃん。命令だし…」

 

「だからって…!提督は私達を見殺しにするつもりですのよ?」

 

「分かってる…分かってるよ。でも…」

 

「…鈴谷。あなた、もしかしてまだ提督が私達が来た時の様に戻るとお思いで?」

 

「…」

 

「私も以前はそう思っていました。でも今回でハッキリしました。あの人は私達の事なんて…艦娘の事なんて道具としてしか見てないんですわ!」

 

「熊野…」

 

〈道具…私達は道具…ねぇ、そうなの提督?前に優しくしてくれたのは嘘だったの?

 

〈もう鈴谷の事なんか、どうでもいいの?〉

 

 

 

 

〈私達は艦娘…戦場で沈むなら本望ですわ!でも、こんなのって、あんまりですわ!何とか、何とかならないかしら…

 

〈もし私達が沈んでも、この事を最上姉さんにでも知らせておけば…〉

 

その日の晩、熊野は鎮守府を訪れていた川内に事情を話し、大本営に居る姉の最上に渡してほしいと手紙を託した。最初は信じられないといった面持ちの川内だったが、この鎮守府に居る妹の那珂にそれとなく話を聞いた所、熊野と同じ様な扱いを受けている事を知った。

その日の夜更け、川内は人知れず港を発った。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ…ちょっと待ってよ!私、まだ回復してないんだけど…」

 

翌日、長門型戦艦、陸奥は入渠中にも係わらず提督に呼び出された。そこで提督から告げられたのは以前に敗北した海域への出撃だった。

 

「お前は長門に比べてダメージも軽いだろう。もう充分だ」

 

「そ、それは出撃しろと言われれば出るけど…あの海域は長門と共同でも突破出来なかったのよ?考えはあるの?」

 

「鈴谷と熊野を連れて行け。先にアイツらをぶつけて、もし駄目ならお前が行くんだ。これなら倒せるはずだ」

 

「そ、それじゃ鈴谷達を囮にするって事?イヤよ、そんなの!私は反対だわ!」

 

「黙れ!他に方法が無いんだ!…元はと言えば、長門とお前が負けるから…」

 

「私達が負けた事は言い訳しないわ。でも、それとこれとは別よ。長門が回復するのを待ってからでも遅くは…」

 

「それじゃ遅いんだ!長門の回復を待ってたら、他の鎮守府の連中に先を越されちまう…」

 

「あなた、まさか…そんな理由で私や鈴谷達を出撃させるつもりなの!?」

 

「そ、それがどうした!もし上手く行けばこの鎮守府の名は鳴り響く。それにお前達だって鼻が高いだろ?」

 

「呆れた…私達はあなたの名声欲の為に沈まなきゃいけないの?」

 

「う、うるさい!本当なら今頃は俺が戦争を終わらせてる筈だったんだ」

 

「…あなた、変わったわね。昔のあなただったら私達の事を第一に考えてくれたのに」

 

「…もし断るなら、お前は出なくていい。その代わり長門に行ってもらう」

 

「む、無理よ!長門は私より…「どうするんだ?行くのか、行かないのか?」

 

「…長門はそのままにしてあげて」

 

 

 

 

 

 

 

『流石はビッグ7の一人、俺も誇らしいよ』

 

『どっちが好みって…陸奥かな。長門には言うなよ』

 

『見ててくれ陸奥、俺がきっとこの戦いを終わらせてみせる。その時は陸奥、俺の横に居てくれよな?』

 

 

 

 

「提督に何か言われたのか?」

 

入渠中の長門に、自分はもう出るからと言いに来た陸奥は彼女の問いに足を止めた。

 

「次は私だけ先に出る事になりそうよ」

 

「…それだけか?」

 

「…ええ、それだけ」

 

「そうか…」

 

陸奥がドックから居なくなるのを見届けた長門は、まだ回復していない重い体を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「提督、いるか?」

 

その日の夜更け、仕事を切り上げ、一人晩酌をしていた提督は長門の訪問を受けた。

 

「…何だ、陸奥の事でか?」

 

「それもある。だが、二人っきりで話すのも久しぶりだろう。それとも私と話すのは嫌か?」

 

「べ、別にそんな事は…」

 

「お邪魔するぞ」

 

長門は部屋に入ると、机の横のソファーに腰掛けた。

 

「で、用件は何だ?陸奥の出撃を止めにしてほしいとでも言いに来たのか?」

 

「それもあるが…どうせ言っても止めないだろう?」

 

「作戦には必要だからだ。それに上手く行けば問題は無い筈だ」

 

「上手く行けば…か。まぁ、それはいい。それはそうと提督よ…その酒は旨いか?」

 

「…いきなり来て何を言うかと思えば…何の話だ?」

 

「言い方を変えようか…提督よ、あなたは何を目指している?」

 

「何をって…」

 

「出世が目的か?で、最後はどこを目指しているのだ。大将か?元帥か?」

 

「ち、違う!俺は出世の為に働いてるんじゃない。俺はこの国を救うと言う目的の為に…!」

 

「フッ、殊勝な事だ」

 

「…馬鹿にしているのか?」

 

「そう聞こえたなら謝ろう。で、その目的の為に我らは沈む訳だが…それはいい。戦場で沈むなら本望だ。

 

「だが今のやり方では、この国を救う頃には我らは一人もいないだろう…提督よ、もう一度聞こう。

 

「私達の血の味は…旨いか?」

 

「…」

 

長門はソファーから立つと、提督の机に腰掛け、そっと手を重ねた。

 

「提督、私も陸奥も貴様が本当は優しい男だと知っている。どうか思い出してほしい。私達に初めて会った時の事を。

 

「もし思い出してくれるなら、私はいつ沈んでも…この身をあなたに差し出しても構わん」

 

「…」

 

「話はそれだけだ…邪魔したな」

 

長門は腰を上げると、部屋を後にした。

一人部屋に残された提督は、グラスの酒を一気に飲み干した。

 

〈俺は…どこで道を間違えた?俺は…もっと出来る筈なんだ!〉

 

「くそっ!」

 

提督はグラスを壁に叩き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、大本営からの電話で提督は目を覚ました。提督が以前から申請していた戦力補充が通ったとの事で、川内型軽巡洋艦の神通がやって来るとの事だった。

提督としては重巡洋艦を回して欲しかったが、一先ずは了承する事にした。

 

 

 

 

 

「今日からお世話になります、軽巡洋艦の神通です。どうぞ、よろしくお願い致します」

 

「あぁ、よろしく」

 

「神通お姉ちゃん、久しぶり~、待ってたよ♪」

 

「那珂ちゃん…今日からよろしくね」

 

姉妹艦の那珂が居た事もあり、神通はその日の内に鎮守府の皆と馴染んだ。

その日の夜、皆も寝静まった頃、神通はこっそり部屋を抜け出し鈴谷達の部屋を訪れた。

 

 

 

 

 

 

「熊野さん、これを覚えてますね?」

 

神通は懐から一通の手紙を取り出した。

 

「それ、私が夜戦バ…川内さんに渡した…どうして神通さんが持っていますの?」

 

「実は私、この鎮守府には…内偵と言いましょうか…実情を探りに来たんです」

 

「えっ?ど、どういう事?」

 

「はい、実はそちらの熊野さんが、この鎮守府の事を姉の川内を通じて最上さんにお伝えしたらしいのです」

 

「そ、そうなの熊野?」

 

「えぇ。下手に逆らっても状況が悪くなるだけだと思って…上手く行った様ですわね」

 

「最上さんは、熊野さん達の事を心配して上層部に相談したようです。その結果、様子を探る為に私が派遣されたのです」

 

「そ、そうだったんだ~」

 

「流石は私達の姉さん。頼りになりますわ」

 

「…私の任務は提督の監視、もし出来るなら改善して行き、それが見込めない様なら上に報告して解任する事になります。出来ればそこまではしたくありませんが…」

 

「うん、私も昔の提督さんに戻ってくれれば一番いいけどさ…」

 

「鈴谷、あまり甘い事は考えない方がよろしくてよ。無謀な作戦、補給も受けられず連続の出撃、勝たなければ入渠も許されない…。もうお忘れになったの?」

 

「う、うん…まぁ、そうだけどさ…」

 

「神通さん、私達はどうすれば?」

 

「提督には私の事は伏せておいて下さい。最上さんからも、あなた達の立場もあるでしょうから大事にしないで欲しいと頼まれていますから」

 

「そうですわね…分かりました、この事は私と鈴谷以外には内緒で。いいですわね?鈴谷」

 

「う、うん…分かったよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、神通は早速行動を開始した。

神通も参加する作戦説明の時だった。

 

「…で、鈴谷を旗艦にして、この海域を」

 

「あの、提督。失礼ですが、その案には賛成できません」

 

「…神通、君はここに来てまだ日も浅い。ここは俺の作戦を信じてだな…」

 

「ですが、前回はそれで長門さんは撤退したとか。これでは前回の二の舞かと…」

 

突如、提督に意見し出した神通に、鈴谷と熊野を除く皆は驚いた。

 

「それは今も説明した通りだ。だから鈴谷をだな…」

 

「それでは無駄な犠牲が出るだけです。考え直して下さい」

 

「神通…」

 

その日の会議は平行線のまま打ち切られた。

だが、その日以来神通は事ある毎に提督の意見に異を唱えた。周りの艦娘も、神通がいつ提督の逆鱗に触れるか気が気では無かった。

 

 

 

 

 

『提督、それでは駆逐艦に負担が大き過ぎます』

 

『提督、無駄な建造は避けるべきかと…』

 

『時には退く事も大事です。次に備えては?』

 

当初は提督も神通を自己主張しない大人しいタイプだと思っていた。だが、事、会議になると冷静に作戦の欠点を指摘し、提督の自尊心を痛く傷付けた。

そしてある日の会議、皆の不安は遂に現実になった。

 

 

 

 

 

「…提督、それは以前も申しましたが反対です」

 

「神通!いい加減にしろ!何度逆らえば気が済むんだ!」

 

「提督が考えを改める迄、止めるつもりはありません」

 

「黙れっ!」

 

カッとなった提督は、神通に平手打ちを喰らわした。

 

「きゃあっ!」

 

「じ、神通さん!」

 

だが神通は頬を打たれた事など意にも介さない様に、再び提督に向き合う。

 

「私は艦娘です。仲間の艦娘が危険な目に会うのを黙って見ている訳にはいきません」

 

「…この軽巡洋艦がっ!」

 

「その軽巡だからこそ出来る事もあります」

 

「…ッ!だ、だったらお前が旗艦をやってみろ!」

 

「…分かりました。その代わり一つお願いがあります。もし成功したら、私を秘書艦にして下さい」

 

「ふん、出来たらな」

 

結果、神通を旗艦に那珂を加えた艦隊での出撃となり、神通達はその海域を無事突破、轟沈を出す事も無く帰投した。

 

 

 

 

 

「馬鹿な、何で…!!」

 

「…提督、軽巡は火力は低いですが、対潜能力に優れています。以前はそれを怠ったから負けたのです」

 

「くっ…」

 

「提督、約束は忘れていませんね?」

 

「…好きにしろ!」

 

次の日から神通は提督の秘書艦になった。

 

 

 

 

 

 

「いや~マジ驚きだよ。本当に勝っちゃうなんて」

 

神通は鈴谷達の部屋に招かれ、その後の進展を語っていた。

 

「本当ですわ。鈴谷ったら、どうせ沈むからって、あんみつ5個もドカ食い…お食べになってましたからね」

 

「熊野だって、今日が最後かもって、陸奥さんに貰った高い下着履いてったじゃん♪」

 

「な、何で知ってますの!?」

 

「みんな知ってるっしょ?熊野気付いてないかもしんないけど、小破した時、後ろから丸見えだったんだよね~」

 

「ほ、本当ですの?…じ、神通さん!?」

 

「…下着?ア、アレ下着だったんですか?てっきり只のヒモかと…///」

 

「//ち、違うんですの!アレを着けると運が上がると陸奥さんが…そ、そう!験担ぎですわ!」

 

「だよね~。いや~びっくりしたよ。あの熊野があんなエロエロの…。先越されたかと思ったよ」

 

「先って何ですの!?私はまだ純潔ですわ!!」

 

「え?ウチ、改の話してんだけど…」

 

「…ッ///す、鈴谷ぁッ!!」

 

「だ、大丈夫です熊野さん!わ、私もまだですから!」

 

「そ、そうですわよね神通さん!一緒に改になりましょうね!」

 

「改?…あ、ハイッ!」

 

「神通さん?何を想像したのかナ~♪」

 

「す、鈴谷さんッ///」

 

「アハハ、冗談だって…でもさ神通さん、どうして秘書艦になったの?」

 

「…やはり近くにいた方が何かと都合が良いかと。それに…私が見るに、そこまで悪い人ではないのではと…」

 

「そ、そんな筈ありませんわ!戦果を上げないと補給はおろか、入渠も許さない、逆らおうものなら解体すると脅す…何度沈むと思った事か…!」

 

「ええ、熊野さんの仰る事も、もっともです。ですが、あの人は理想が高過ぎるだけなのではと…」

 

「うん、熊野の言う事も確かだけど…昔はさ、あんな人じゃなかったの。ウチらや駆逐艦の娘にも優しかったし…」

 

「私もそう思います。まだ改善の余地がある様に思えて…だから秘書艦の立場が最適かと」

 

「私はお勧めしませんが…神通さんがそう仰るのなら。無理はなさらないで下さいね」

 

「はい、私が立ち直らせてみせます」

 

「無理しないでよ神通さん。もし何かあったら言ってね。ウチらズッ友だョ!」

 

「お、おけまるっ!!」

 

「…へ?」

 

「あ、あの…オーケーと、マルを足した言い方でして…その…前に居た所で漣ちゃんに教えて貰って…し、知りませんでした?」

 

「…い、イヤッ!知ってたし!ね、ねぇ熊野?」

 

「わ、私はあまり…」

 

「く、熊野!」

 

「お、思いきって使ってみたんですが…やっぱり私にはこういう事は似合いませんね//」

 

「ハ、ハハ…」

 

〈…神通さんって…意外と明るいのかな…〉

 

 

 

 

 

それからというもの、神通は常に提督の傍らで彼を指導し続けた。勿論、提督が素直に言う事を聞く筈も無かったが、神通の正論に最後は彼が口をつぐむ、いつしかそんな光景が当たり前となった。

 

 

 

 

 

「雷達は使えるな?明日からの遠征だが…」

 

「ま、待てよ提督。この海域はまだチビ共には危険だ。もう少し待ってやれよ」

 

ある日の会議、提督に呼ばれた天龍はいつもの様に彼の案に反対していた。

 

「天龍、そんな時の為にお前がいるんだろ?世界水準を超えていると言うのはハッタリか?」

 

「なっ、何だとっ!?」

 

「…私も天龍さんの意見に賛成です」

 

「神通!」

 

「神通、また俺の案に反対なのか?」

 

「そうではありません。ですが、駆逐艦の娘達の資材確保はとても重要です。その駆逐艦を失う事にでもなったら、提督の、この国を救うと言う大業に支障をきたすのでは?」

 

「だが、これは必要な…」

 

「はい。ですから私も同行致します。よろしいですね?」

 

「…勝手にしろ」

 

 

 

 

 

 

 

「今回は大成功だわ!」

 

「ハイなのです。こんな安全な遠征は初めてなのです!」

 

天龍を旗艦にした遠征部隊がまもなく帰投しようとしていた。道中、幾つかの戦闘に巻き込まれはしたが天龍と神通によって蹴散らされ、いつもなら何人かは大破している駆逐艦達もほぼ無傷だった。

 

「神通、オマエ強いんだな!まぁこの俺程じゃないけどな!」

 

「ありがとうございます。天龍さんも随分と経験を積まれている様で。お見それしました」

 

「フフフ、怖いか?」

 

「キャーッ♪天龍さんのフフ怖だわ!」

 

「久しぶりに聞いたのです!」

 

「フフ怖って…オマエらっ!」

 

「ウフフ…♪」

 

「じ、神通ッ、てめえもか!」

 

「す、すみませんっ!その…天龍さん、本当に皆さんに慕われているんだなと思いまして」

 

「…まぁアイツらとはいつも組んでるからな。それとその…何だ…ありがとな、神通」

 

「え?」

 

「俺も久々だよ。アイツらがあんなに笑ってるのを見たの。それもお前が提督にガツンと言ってくれたからだ。サンキューな」

 

「そ、そんな!私なんか…」

 

「あの提督もさ、元々はあんな奴じゃなかったんだ。俺もアイツと一緒に頑張っていこう、そう思ってた時もあったんだぜ?

 

「でもよ、龍田の奴が沈んだ辺りから、アイツもおかしくなってよ」

 

「…」

 

「俺だけじゃない。ここにいるチビ共も、鈴谷達もアイツが優しかった頃を知ってるからな。だから、どんな酷い扱いを受けても、いつか元に戻ってくれる…そう信じてやってきたんだ。

 

「神通、お前のお陰だぜ。ありがとよ」

 

「天龍さん…」

 

「わ、私からもお礼を言うわ!神通さん、ありがとう!」

 

「雷ちゃん…」

 

「司令官が変わっちゃったのは、私達の所為でもあるの。私が不甲斐ないから…」

 

「そ、そんな事ありませんよ。雷ちゃんは…」

 

「でも今は少し変わった気がするわ。ありがとうね、神通さん」

 

「どういたしまして」

 

〈でも、本当はちょっぴり悔しいかしら…私が司令官を立ち直らせようと思ってたのに。私の愛で立ち直った司令官は、私にケッコンしようって…!キャー///ダメよ司令官!私達は上司と部下よ?イケナイわ!〉

 

「…あの、雷ちゃん?」

 

「あ~大丈夫だ神通…雷はたまにあぁなるんだ。そっとしといてやってくれ(…これも久々に見たな)」

 

「は、はぁ…」

 

〈司令官!背広から香水の匂いがするわ!まさか浮気っ?ヒドいわ!私と言う者がありながら…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に状況が改善され、かつての活気を取り戻しつつある鎮守府に衝撃の一報が届く。

深海棲艦の一大反攻作戦が始まり、一気に勢力図が塗り替わろうとしていたのだ。当然その余波は、この鎮守府にも到達していた。

 

 

 

 

 

「提督よ、今回は私も出るぞ」

 

「当たり前だ。長門、旗艦はお前だ。一気に押し戻すぞ。それと…神通」

 

「…?はい」

 

「お前の意見があれば聞こうか」

 

〈ちょっ…マジ?あの提督さんが人の意見を!?〉

 

〈じ、神通さん凄いわ!やるじゃない!〉

 

〈驚いたわね。私や長門の意見なんか耳も貸さなかったのに…〉

 

敵の反攻作戦に備える会議にて、皆は神通が提督に与える影響力を改めて知る事になった。いつもなら長門辺りが作戦の粗を指摘し、口論となるのが日常茶飯事だったが、今回はその提督の方から他人の意見を聞こうとしていた。今までの提督を知っている皆は勿論、一番驚いていたのは、実は他ならぬ提督だった。

 

〈俺は間違ってない…そう思っていたのに何故だ?今は神通が何を考えてるのか知りたくて仕方ない…〉

 

作戦は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

「陸奥、大丈夫か?」

 

「大丈夫よ長門。あなたに比べたらこの位…」

 

熾烈な戦いは終わりを告げ、残った深海棲艦達は散り散りに敗走を始めた。

 

「神通、お前もだ。大したものだ」

 

「い、いえ、そんな…」

 

「謙遜しなくてもいいのよ神通。あなたが敵に斬り込んでくれたお陰で私達も勝てたんだから」

 

「陸奥さん…」

 

「それに聞いたわよ。自分が私達の盾になるから同じ艦隊に入れてほしいって、提督に頼んだそうじゃない」

 

「そうなのか?神通」

 

「ハ、ハイ。せめて長門さん達の露払いにでも成ればと…」

 

「フッ、華の二水戦は伊達じゃないな。恐れ入ったよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「私からもお礼を言わせてね、神通。本当にありがとう」

 

「む、陸奥さん?」

 

「あなたが来てから、あの人も変わったわ。昔の優しい彼に戻りつつある…。私や長門じゃ出来なかったのに。感謝してるわ」

 

「はい…。私も提督のお側に居て解ってきたのですが…。あの人は、決して悪い人では無いんです。何と言いますか…先を見すぎて目の前が疎かになっているのではと…」

 

「ああ、それは私も感じていた。決して悪い奴では無いのだ。私も陸奥も長らく見てきたから分かる」

 

「フフッ、長門ったら昔『提督は髪が短い方が好みだろうか?』って私に聞いたものね♪」

 

「むっ、陸奥ッ///…神通、何故そんなに驚く?わ…私だって、その…提督を…//」

 

「…ハッ!い、いえっ!そんな事は!」

 

「提督も、これで変わってくれればいいのだけど…」

 

「そうですね陸奥さん、私もそう願っています。…それはそうと陸奥さん…」

 

「何?」

 

「熊野さんに贈った下着…アレは本当に下着なんでしょうか?アレではその…か、隠せないのでは//」

 

「あ~アレ?買ったの長門よ」

 

「えっ!?」

 

「む、陸奥ッ!!」

 

「思い切って買ったけど、こんなの履けるかって私に寄越したのよ。たまたま熊野が大破してたからあげたの…え?何?熊野ったらアレ着けて出撃したの?」

 

「…///」

 

「うわ~…熊野って意外と大胆なのね。鈴谷ならともかく…幾ら私でもアレはちょっと…」

 

「全くだ。戦場を何だと思っているんだ」

 

「買ったのアナタだけどね」

 

「む、陸奥ぅッッ//!!」

 

 

 

 

 

 

「あの~もしもし?神通お姉ちゃん、長門さん。那珂ちゃんもいるんですが…」

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、大きな戦いが終わった事もあり鎮守府は穏やかな日々が続いていた。そして何よりも皆を驚かせたのは提督の変わり様だった。戦いの後、照れながらも皆に労いの言葉を掛け、酒(駆逐艦にはジュース)を奢った。これには長門や天龍も大層喜び、雷も涙を流して喜ぶ程だった。

 

 

 

 

 

 

 

「これで今日の仕事は終わりですね」

 

「あぁ、ご苦労さん」

 

夕方の執務室。

神通が手伝った事もあり、提督の仕事はいつもより早めに切り上がった。一段落着いた神通が席を離れようとした時だった。

 

「神通、少し話があるんだ。いいか?」

 

「ハイ…構いませんが」

 

「その…神通。今の俺の事をお前はどう見てる?」

 

「提督を…ですか?…そうですね、以前よりも良くなったと思います…前の提督は、あまり目の前が見えていない気がしました」

 

「確かに…我ながらそう思うよ。じゃあどうして変わったと思う?」

 

「それは…提督が皆さんを大事に思い始めたからです。だから皆さんも提督の気持ちに答えようとしたのでは?」

 

「…じゃあ神通、お前も俺の気持ちに答えてくれるのかい?」

 

「勿論…え?あ、あの提督?それはどういう…」

 

「神通、ケッコン指輪を…受け取ってくれないか?」

 

「…え…えっ!?ケッ…コン…?」

 

「あぁ。…最初はお前の事を生意気な奴だと思ってた。でも、お前の意見を聞き始めてから上手く行く様になった。それで俺も自分を見つめ直したんだよ。もしかしたら、俺は間違ってたんじゃないかって…」

 

「そ、それは…た、確かに提督は少し性急過ぎる所がありましたが…」

 

「でも、そんな俺にお前は面と向かって言ってくれた。だから俺は変われたんだ。それで気付いたんだよ。神通…俺には君が必要なんだって」

 

「て、提督…」

 

「今までの事は謝る。だから神通、これからも俺の側に居てくれ!この通りだ!」

 

「ま、待って下さい提督。い、いきなり過ぎて何が何だか…」

 

「…やっぱり俺の事なんか好きになれないか?」

 

「そ、そんな事ありません!!て、提督が真面目な人だと言うのは側で見て解っています!そ、それに…私も…その///」

 

「…!じゃあ神通!」

 

「す、少しだけ待って下さい!そ、その…私、こういった事は始めてで…///コロンバンガラ島の時よりも緊張してて…。お、お返事は必ずします!ですから少し時間を下さい…お願いします」

 

「あ、あぁ。そ、そうだな!急に変な事言ってすまない」

 

「そ、そんな!変だなんて!わ、私とっても嬉しいです。で、でも…ここには陸奥さんや鈴谷さんみたいな綺麗な人も居ます。私なんかが…」

 

「俺は神通に側に居て欲しいんだ」

 

「…て、提督」

 

「まぁ今日は、これ以上は無理みたいだし…。良い返事を期待してるよ」

 

「ハ、ハイ///し、失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

「え~っ!?ホ、ホントにっ?提督さんにケッコン申し込まれたのォ!?」

 

「な、那珂ちゃん///そ、そんな大声で言わないで」

 

「あの提督さんが…てっきり陸奥さんの事好きだと思ってたのに!」

 

「わ、私も少し混乱してて…返事は待って貰ったけど。那珂ちゃん、私どうすればいいのかしら?」

 

「う~ん…もう答え出てるのに?」

 

「え?ど、どういう事?」

 

「神通お姉ちゃん、提督さんの事キライ?」

 

「そ、そんな事ないわ!前は那珂ちゃんを虐める酷い人って思ってたけど…。今はそんな事ないわ」

 

「じゃあ好き?」

 

「す、好きって…!私は提督の部下ですし…そんな…ハイ、好き…かも…//」

 

「お姉ちゃん大胆~♪」

 

「な、那珂ちゃん///」

 

「あ~あ。でも神通お姉ちゃんに先越されちゃうとはな~。三人の中で一番人気あるの私だと思ったのに…」

 

「ご、ごめんなさい。那珂ちゃんがそういうなら今からでも断って…」

 

「わあ~ダメダメ!冗談だってば!…でも提督さん、お姉ちゃんのそんな所が好きになったのかなぁ。那珂ちゃんもプロデュースの戦略変えようかな…」

 

「わ、私は那珂ちゃんの可愛らしさを出してくやり方好きだけど…」

 

「とにかくっ!おめでとう神通お姉ちゃん。でも私も負けないよ?那珂ちゃんの魅力で提督さん撃沈しちゃうんだから!…あれ?お姉ちゃん?どうして急に黙って…顔が怖いんだけど…じょ、冗談だからっ!!」

 

「…ハッ!ご、ごめんなさい那珂ちゃん!少し気が動転しちゃって…」

 

「ア、アハハ…」

 

〈提督さん、重婚は出来そうにないかも…〉

 

 

 

 

 

翌日、鎮守府の話題は神通がケッコンを申し込まれた話で持ちきりだった。何故か神通より一足先に起きた那珂が鎮守府で一番のガールズトーク大好きな鈴谷に話し、ものの一時間もしない内に鎮守府内に広まった。翌朝、執務室に向かおうとした神通は、再三その話は本当か呼び止められた程だった。

 

 

 

 

 

 

「ね、ねぇ提督さん。あの話、本当なの?」

 

神通と共に今日の仕事に取り掛かろうとした提督の下に、鈴谷、陸奥、雷の三人が押し掛けて来た。

 

「何だ鈴谷…お前らもう知ってるのか?」

 

「そ、そんな事より提督…本当なのかしら?」

 

「…あぁ。本当だよ」

 

「そ、そんな…」

 

「な、何だ雷?そんなに意外か?」

 

「う、ううん、そうじゃないわ!そうじゃないの…」

 

「雷ちゃんは司令官が好きだったものね。だから驚いてるのよ」

 

「む、陸奥さんっ//!」

 

「そうなのか?てっきり嫌われてるとばかり思っていたが…」

 

「そ、そんな事ないわよ!私が司令官の事、嫌いになる訳ないじゃない!」

 

「ありがとう。まぁ、その…鈴谷、陸奥、雷。今まで本当にすまなかった。俺はここにいる神通のお陰で目が覚めたよ。今までの俺は本当に馬鹿だった。許してくれ」

 

「提督…」

 

「気、気にしないでいいよ!ウチらも提督さんが昔みたいに戻ってくれて嬉しいし!でしょ?みんな」

 

「え、えぇ…そうね」

 

「わ、私も嬉しいわ!」

 

「鈴谷…熊野にも伝えておいてくれ。直接謝りたいと」

 

「う、うん!熊野もきっと許してくれるよ!」

 

「皆…ありがとう」

 

その日は執務室に次から次へと来客が訪れ、提督は報告次いでに今までの事を謝罪した。それを聞いた皆は、その変わり様に驚きはしたが温かく受け入れた。

 

少なくとも彼は、そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

翌日、神通は那珂と共に演習の為、港へ来ていた。

港へは既に何人か集まっており、その中には同じチームになる鈴谷や熊野、敵チームの陸奥も混じっていた。

 

「あ、神通ちゃん!こっちこっち!」

 

「おはようございます鈴谷さん。今日はよろしくお願いしますね」

 

「うん、でも神通さんの方が練度高いし、足引っ張っちゃうかもね~」

 

「そんな…鈴谷さんも中々ですよ。頑張りましょう」

 

「おけまるっ♪」

 

 

 

 

 

 

「あの…申し訳ありません」

 

「何?神通さん」

 

「いえ、那珂ちゃんに聞いたんですが、提督さんは陸奥さんの事が好きみたいで…。雷ちゃんもそうみたいですし」

 

「アハハ、それは仕方ないじゃん?ウチらがどう思ってても提督さんがウンって言わなきゃ意味無いし」

 

「ええ…私も男の方にそんな事言われたの初めてなもので、今だに混乱しています…」

 

「そんな考えなくてもいいっしょ?別に本当の夫婦になる訳じゃないしさ。あくまでカッコカリだって!」

 

「え、ええ…そうですね!提督もそこまで考えてはいないでしょうし」

 

「そうそう。もっと気楽に考えなよ!」

 

「ハイ…それにしても嘘の様です」

 

「へ?何が?」

 

「私が来た時は、皆さんにあんなに辛く当たって…私の意見にも耳を貸そうとしなかった提督が、あんなに素直になるなんて…」

 

「へ?変わる?提督が?」

 

「ええ…人間、変われば変わる「何言ってるの?神通さん」

 

「…え?」

 

「提督は変わってないよ。昔からあのままだよ」

 

「…え、ええ。勿論、本当の提督さんはとても優しい方だと…」

 

「だ~か~ら~。提督は今も昔もあぁだったじゃん!ウチらに辛く当たる?私も熊野もそんな事一度も思った事無いけど?」

 

「す、鈴谷さん…?」

 

「も~神通さん、急におかしな事言い出すんだもん♪マジ勘弁してよ~」

 

「す、鈴谷さん、ですが私は熊野さんに呼ばれて…」

 

「神通さんさ~。あんまりおかしな事ばかり言ってると…

 

「そろそろ怒るよ?」

 

〈鈴谷…さん…〉

 

 

 

 

 

 

鈴谷の豹変振りに言葉を無くした神通だったが、そうこうしている内に演習は始まった。戸惑いをひとまずは心に隠し、神通は演習に臨んだ。

演習の際の鈴谷は、さっきの態度が嘘の様に神通と連携を組んだ。神通も、さっきの鈴谷はたまたま虫の居所が悪かっただけなのでは…そう思う事にした矢先だった。

 

「神通、行くわよ!」

 

陸奥の砲撃が神通に放たれた。これだけなら神通も難なく交わせただろう。所が、他の艦娘の砲撃すらもことごとく神通目掛けて雨あられの如く降り注いだ。

 

「くっ…キャアアッ!」

 

幾ら模擬弾を使っているとはいえ、ダメージが無い訳では無い。神通は二度、三度と衝撃に弾き飛ばされた。

負けずに応戦しようと思いきって前へ飛び出した神通の前に、待ち構えていたかの様に陸奥が立ちはだかる。

 

「…ッ!陸奥さんっ!」

 

「頂きよ、神通っ!」

 

陸奥の砲撃音と共に、神通の視界が黒く染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ううっ…」

 

次に神通が目を覚ますと、いつもとは違う天井が目に入った。

 

「ここは…」

 

「工廠よ」

 

横から聞こえる声に起き上がると、椅子に座った雷が神通を見ていた。

 

「雷ちゃん…」

 

「神通さんは気を失って、ここへ運ばれたのよ」

 

「気を失って…あ、確か演習をしてて陸奥さんに…」

 

雷が水の入ったコップを差し出すと、神通はそれを一息に飲み干した。

 

「演習は、どうなりました?」

 

「陸奥さんのチームが勝ったわ」

 

「そう…私達は負けたのね。鈴谷さんには悪い事したわね」

 

「その鈴谷さんからの伝言よ」

 

「鈴谷さん…から?」

 

「この鎮守府はどこもおかしな所は無い、神通さんは大本営に戻ってそう報告してほしいそうよ」

 

「す、鈴谷さんが…そう言ったの?」

 

「ええ。それに私もそう思うわ。司令官はとっても素晴らしい人よ!あんな立派な人はいないわ!」

 

「雷ちゃんも…鈴谷さんと同じ考えなの?」

 

「勿論よ!だから神通さんは…何も心配する必要無いのよ!」

 

「…そう。ありがとう雷ちゃん。悪いですが、少し一人にしてもらえますか?」

 

「分かったわ…」

 

 

 

 

 

 

 

少し体を休めた神通は、一先ず自室へ戻る事にした。神通がドアを開けると、那珂が困った表情で座っていた。

 

「ただいま。どうしたの那珂ちゃん?」

 

「あ、うん…。大丈夫?」

 

「もう少し寝れば大丈夫よ。それより何かあったの?」

 

「そうじゃないんだけど…ねぇ、神通お姉ちゃん…悪い事言わないから、ここから出てった方がいいよ」

 

「どうしたの急に?」

 

「その…最近みんなの様子がおかしいの。特に陸奥さんと鈴谷ちゃんが。私、演習見てたけどお姉ちゃん、何か気付かなかった?」

 

「演習?確かに鈴谷さんの様子は変だった気が…」

 

「やっぱり…陸奥さん、鈴谷ちゃんの事絶対狙わなかったもん。それに陸奥さん…ううん、他の娘もみんな神通お姉ちゃん狙ってた!」

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、神通はまだ痛む体を起こし、執務室へと向かった。

 

「失礼します」

 

「…あぁ。実は大事な話があるんだ」

 

椅子に座る提督は何やら神妙な、まるで着任当時の様な気難しい顔をしていた。

 

「ハイ、私の方からもお話があります」

 

「神通から?…先ずはこちらの話をするよ。一つ謝りたい事があるんだ」

 

「謝りたい…事?」

 

不意に提督は椅子から立ち上がり、神通の前に立つと頭を下げた。

 

「すまん神通!ケッコンの話は無かった事にしてくれ!」

 

「…え?ど、どういう事ですか?」

 

「あれから考えたんだが、それはまだ早いと思ったんだ。本当に申し訳ないが…あの話は無かった事に…」

 

「…鈴谷さんや陸奥さんに、何か言われましたか?」

 

「…」

 

「そうなんですね?」

 

「…すまない」

 

「…いえ。気にしないで下さい。返って都合が良いです。私、今日限りで大本営の方に戻らせて頂きたいのです」

 

「え?い、いや神通、確かにケッコンの話は悪いとは思うが、向こうに帰る必要は無いだろう?」

 

「…実は、私がこちらに送られて来た本当の理由は提督の素行を調査する為だったんです」

 

「なっ…!」

 

「場合によっては上に報告して解任も有り得ましたが、その必要は無さそうです」

 

「…」

 

「この鎮守府は正常に運営されている様です。もう私が居る理由はありません」

 

「…神通、それじゃすぐに答えをくれなかったのは」

 

「それもあります。でも、やはり私はここに居るべきではないのではと思いまして…

 

「提督、あなたは本当は優しい方です。私に向けた愛情を、どうぞここの皆さんに注いであげて下さい。

 

「最後に…提督、こんな私とケッコンしたいと仰って下さり、本当に嬉しかったです。これは私の嘘偽り無い本心です」

 

「神通…」

 

「お世話になりました。…お元気で」

 

神通が一礼して部屋を出るのを確認すると、提督は隣の部屋のドアに声を掛けた。

 

 

 

 

「…これでいいんだな?」

 

 

 

 

神通の気配が消えると、隣の部屋から痺れを切らした三人の艦娘が現れた。鈴谷、陸奥、雷の三人は顔こそ微笑んでいるが、その理由を知る提督は彼女達を睨み付けた。

 

「いや~、神通さん嫌だって言ったらどうしようかと思ったよ~」

 

「ええ。でも神通がこの鎮守府を探りに来てたなんて…初めて知ったわ」

 

〈ギクッ!!〉

 

「どうしたの鈴谷?…アナタまさか知ってたの?」

 

「え、え~っ!?何の事、陸奥さん。私さっぱり…アハハ」

 

「アナタ嘘付くの下手ね…まぁいいわ」

 

まるで悪びれる素振りもなく話始める三人に、提督は尋ねた。

 

「お前達の言う通り、ケッコンの話は断った。だが何故そんな事をする必要があったんだ!?」

 

「これは司令官の為なのよ?」

 

「い、雷…?」

 

「司令官は神通さんに騙されてたの!だから私達が助けてあげたのよ!」

 

「…だから武装蜂起すると俺を脅したのか?」

 

「脅したなんて人聞きの悪い事言わないで頂戴…でも私達も驚いてるのよ。みんなアナタの事は恨んでるだろうから、一緒に反対しましょうって言っても断られると思ってたのに…。

 

「アナタ、意外と慕われていたのね。驚いたわ」

 

「だからって、神通を追い出す為にここまで…!神通がお前らに何をしたって言うんだ!?」

 

「…悪いのは提督じゃん」

 

「鈴谷…?」

 

「ウチらホント辛かったよ。来る日も来る日も出撃して、負けたら入渠も出来ない。何度沈みそうになったと思ってんの?」

 

「そ、それは…すまないと思ってる」

 

「私、一体何の為に頑張ってきたと思ってんの?いつか提督が私の事認めてくれるって思ってたからだよ?

 

「なのに、私じゃなくて神通さんとケッコン!?マジあり得ないんですけど!!」

 

「そうね。鈴谷の言う事も、もっともだわ。この戦いを終わらせるから、俺の隣にいてくれって私に言ったのは嘘だったの?」

 

「む、陸奥さん、そんな事言われたの!?」

 

「あら、口が滑っちゃった♪」

 

「う~っ…!わ、私だって任務ご苦労様って言われたんだから!!」

 

「ごめん、それウチら、みんな言われてるから」

 

「そ、それだけじゃないわ!も~っと俺を頼っていいのよって言われたんだから!」

 

〈…嘘よね?〉

 

〈てか、アレ雷ちゃんがよく言ってるヤツっしょ〉

 

「ぐぬぬ…これが〈ヨメとシュウトメ戦争〉なのね?負けないんだから!」

 

「ちょっ!誰がシュウトメだし!」

 

「そうよ、それを言うなら〈若い嫁と義理の娘〉じゃない?」

 

「え~?若さなら陸奥さんより、私の方が若く見えなくない♪」

 

「ハイハイ、鈴谷はまず学校を卒業しましょうね?」

 

「学生じゃないし!!」

 

「天龍さん助けて!おばさん二人がイジメる!」

 

「「誰がおばさんよ!!」」

 

「…お前達。一体何が目的なんだ?」

 

提督の言葉を聞いた三人は急に能面の様な顔になる。三人から放たれる不気味な冷気に、提督は思わず後ずさった。そんな提督をからかう様に鈴谷が口元を歪める。

 

「…私達はただ提督さんに、ここに居て欲しいだけだって」

 

「ここに…?それだけなら…」

 

「提督、今までの事、反省してるのよね?」

 

「そ、それは…」

 

「もししてないって言うなら、大本営に言っちゃおうかしら?私達酷い扱い受けてますって」

 

「む、陸奥!だからそれは悪かったと…」

 

「じゃあ昔みたいに仲良くやっていきましょ?でないと乱暴された~って泣きついちゃうわよ?」

 

「そ、そんな事してないだろ!」

 

「でも、お尻触ったわよね?」

 

「ちょ!提督さん、それマジ!?」

 

「ふ、不潔よ//!」

 

「…」

 

「提督、別にいいのよ。アナタが望むなら何だってしてあげるわ。勿論、長門には内緒でね。

 

「その変わり、アナタはずっとここに居るの。大丈夫、もし誰かが不満を言ったり、また神通みたいに調査が来ても私達が何とかしてあげるわ」

 

「そうそう♪そ、それにさ…鈴谷の甲板ニーソ…ぬ、脱がしてみる?な、何なら別のトコでも…///」

 

「わ、私だって!司令官!私なら耳掻きしてあげるわ!眠くなったら膝枕だってしてあげる!い~っぱい甘えていいのよ!!」

 

〈〈…フッ〉〉

 

「て、天龍さん!!行き遅れがイジメるわ!!」

 

「「誰が行き遅れよッ!!」」

 

一見、呑気な痴話喧嘩にしか見えないが、提督にはとても笑う事は出来なかった。無邪気な顔で笑う彼女達が自分達の要求を通す為に自分を脅し、あまつさえ反乱を起こす事さえ厭わない。

しかもその理由が自分に対する憎しみなら、まだ理解も出来る。だが今の自分は反省し、彼女達もそれを受け入れてくれた。多少のわだかまりはあるだろうが、全ては良い方向に向かっている筈だった。

…もしや、これが彼女達なりの復讐なのだろうか?

そんな提督の困惑を余所に、鈴谷達は愛と言う名の呪詛を吐き続ける。

 

「ねぇ提督。これからも鈴谷と一緒に居ようね。…三隅姉さんの事は忘れるからさ。大丈夫、熊野だってきっと許してくれるって」

 

「そうよ司令官!私、司令官がず~っとここに居てくれるなら遠征なんかへっちゃらよ!も~っと私に頼っていいのよ!」

 

「長門だってアナタの事は、本当は信頼してるのよ。だから私もアナタと居る時間を増やして欲しいの…長門よりもね。だから提督…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私達…ずっと一緒に居ましょうね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、自分に対する罰なのか。自分はもう彼女達から逃れられないのか。鎮守府と言う牢獄で、彼女達の愛情を受け入れる事が贖罪なのか…。

 

憔悴する意識の中、やがて提督は考える事を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、彼は…」

 

「はい、問題無いかと…」

 

眼鏡を掛けた中年将校は、神通の報告に目を通すと訝しげに尋ねた。

 

「この報告だと、彼は艦娘達に慕われている様に見受けるが…熊野君の手紙は嘘だったのかね?」

 

「その…鈴谷さんに聞いた所、怒られた事に腹を立てて、ちょっとした悪ふざけのつもりだった様です」

 

「でも、君の妹の那珂君も居たんだろう?」

 

「那珂も…今の所は問題無い様です」

 

「そうか…解った。一応彼と熊野君には軽くお灸を据えておくよ。とんだ手間を掛けてしまったね。ご苦労様」

 

「…失礼します」

 

神通は一礼して退室した。

 

 

 

 

結局、神通は鈴谷達の望む通り、何事も無かった、提督には何の問題も無いと報告した。

…実を言うと、神通が鈴谷や陸奥の様な艦娘を見たのはこれが初めてでは無い。過去にも自分の仲間が提督に対する愛憎で変わる様を見てきた。そしてその度に思う。

もし自分も好きな人が出来たら、彼女達の様になってしまうのか?もしあのまま鎮守府に居たら、いつか自分もああなってしまうのではないか…。

そしてもう一つの疑問。

あの鎮守府に居た妹の那珂は、果たしてどちらだったのだろうか?

自分に危険が迫っているからと、逃げる様に勧めたのは那珂だ。だが、それは本当に自分の身を案じての事なのか?

自分に提督を奪われると知った鈴谷達が、自分を目障りだと思った様に、那珂もそう思っていたのでは?

たまたま鈴谷達と目的が一致しただけで、本心では自分を追い払いたかったのでは?

 

〈妹を疑うなんて…これじゃまるで…〉

 

鈴谷さんと同じじゃない…そう思った神通は、首を振り気持ちを切り替えた。

 

「あ、姉さん」

 

廊下を歩く川内を見掛けた神通は、彼女に手を振るのだった。

 




以前の鹿島の回と立場が逆みたいな感じです。どっちも主人公に振り回される感じですが、こっちは主人公まとも、周りがちょっとイカレてるみたいな。
なんで、タイトルも合わせる感じで東方の曲にしました。Bad apple良い曲だよね。一番好きなのはデザイアドライブです。これもそのうちタイトルに使ってみたいです。タイトルは格好いいの無いかいつも探してます。艦これのSSで何言ってんだか…。

次は正規食う母、赤城さんです。








艦娘型録

神通 こっちに来た時はセクハラされるかもと期待していたが、全く手を出してこないので、少し自信を無くしている。見た目に反してお笑い好き。漣と仲がいい。

那珂 神通に帰る様に勧めたのは、あくまで身を案じての事か、単に邪魔だったのかは結局謎のまま。そろそろ新しいキャラを模索すべきではないか最近、方向性に疑問を感じている。

鈴谷 口調はギャルだが身持ちは固い。むしろ熊野が自分の知らない変な知識を持っているので驚かされる。陸奥よりは自分の方がイケてると思っている。

熊野 お嬢様キャラではあるが、下着は鈴谷がドン引きする位派手なのを持っている。今回のですらまだ二軍。手紙の件で暫く陸奥と鈴谷からの視線が辛かった。

陸奥 誘い受け。お尻を触らせたのもワザと。写真を撮る時も一歩下がって小顔に写ったり、何かと計算高い。最近、同室の長門のぬいぐるみコレクション(通称ぬいコレ)が目障りになってきたので一人部屋が欲しい。

長門 番長だけあって男気はある。提督の事は憎からず思っている。本当は那珂ちゃんの服が着てみたい。一度だけ着せて欲しいと頼んだが丁重に断られた。

雷 昼メロ大好き。いつか提督のお母さんにいびられたい変な願望がある。電ドン引き。

電 不幸体質。そういう意味では雷とは気が合う。雷がおままごとの度に自分に浮気相手をやらせるのがムカつく。たまには奥さんをやってみたい。

天龍 何だかんだで面倒見のいい下町気質。本当は両目見えるが、眼帯取るタイミングが分からない。周りもそれには触れないでいる。

提督 俺TUEEE!!な人。調子に乗りやすい。少し頭を冷やシンス。鈴谷より熊野の方が好き。

将校 神通の上司。那珂ちゃんファンクラブ、通称NFC会長(非公認)。神通が那珂ちゃんを(自分の鎮守府に)スカウトしてくるんじゃないかと密かに期待していた。チェッ!

川内 パシり。

最上 チクり魔。
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