艦娘症候群   作:昼間ネル

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「金剛お姉さまが沈みました」
「お姉さまは私達、金剛姉妹でも最弱…」
「深海棲艦ごときに倒されるなんて、金剛型の面汚しですね」




蘇る金剛

5人の男女が大きな機械の前で固唾を飲んでいた。

彼女達の前で、建造機と呼ばれる艦娘を生み出す機械が稼働していた。完成迄の残り時間あと一分。今まさに、一人の艦娘が誕生しようとしていた。

 

「お姉さま…」

 

「だ、大丈夫よ!きっと上手く行くわ!」

 

「私の計算によると、恐らく…!」

 

巫女の様な白装束を着た三人が祈りを捧げながら立ち尽くす。

建造機の窓口から青色の光が怪しく洩れる。機械が機関車の様な轟音を発しながら煙を巻き上げた。

 

「て、提督。いよいよです!」

 

「あ、ああ。待ちくたびれたぞ!」

 

やがて機械は徐々に静かになり、ゆっくりとドアが開いていく。と同時に中から爆風の様な煙が放たれた。

 

「うわっ!」

 

「きゃあっ!」

 

徐々に煙は晴れ、その場に居た全員が煙の中を覗き込んだ。

そして、その中から現れたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、艦隊帰投しました!」

 

執務室を訪れた三人の艦娘。その中の一人、金剛型戦艦2番艦の比叡が敬礼をする。

 

「お帰り、と言いたい所だが…その様子だと散々だったようだね」

 

「あっ、いえっ!これは、その…」

 

3人共に白装束は焼け焦げた様に破れ、意気消沈していた。

 

「うう…。でも榛名は大丈夫です」

 

「私の計算では司令の作戦は完璧だった筈…。一体どこで計算が…」

 

同じく3番艦の榛名は泣き顔で恥ずかしそうに胸元を隠す。4番艦の霧島は胸が見えそうなのもお構い無しにブツブツと独り言を呟いていた。

 

「ま、まぁ作戦が失敗したのは残念だったが、皆こうして無事だったんだ。良くやってくれた」

 

「ううっ。申し訳ありません」

 

比叡が恥ずかしそうに頭を下げる。

 

「いいんだよ。こちらの作戦もまずかったんだ」

 

「そ、そんなっ。提督は何の問題もありません!榛名達の力が足りなかっただけです」

 

「ありがとう、次はこうならない様に気を付けるよ。…それに、君達三人に何かあったら金剛に会わせる顔が無いよ」

 

「フフッ、司令はお優しいですね。この霧島、金剛お姉さまの分も頑張らせて貰います!」

 

「ひえぇっ!き、霧島っ、胸っ!見えてるっ!」

 

「へっ?し、失礼しました///」

 

「…提督、どうして目を細めてるんでしょう?」

 

「オ、オホンッ!と、とにかく入渠してくれ。話はそれからでいいから」

 

 

 

 

 

 

 

 

かつてこの鎮守府には、金剛型戦艦1番艦の金剛が在席していた。その後建造やドロップ等の紆余曲折を経て、金剛型の四姉妹はこの鎮守府に勢揃いする事になった。

だが、ある作戦で手痛い敗北を喫し、その結果金剛を失う事になってしまった。提督も金剛には艦娘としてではなく、一人の女性として愛情を持っていた為、自分の落ち度を深く恥じた。しかし比叡達は、これは自分達の責任だと提督の作戦を責める事はしなかった。

そんな負い目からか、提督は金剛の妹達には他の艦娘達が羨む程に気を使った。

それが、彼女達のあらぬ誤解を生んでいる事も知らずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん?」

 

昼食を終えた提督が鎮守府の中庭を通り掛かると、二人の艦娘が仲良さげに談笑していた。ちょうど後ろを通りかかった提督に気付いた二人が同時に声を揃える。

 

「「あっ、司令官!」」

 

「あ、あぁ。息ピッタリだな、おまえ達」

 

「え、そうですか?」

 

「えへへ、何か嬉しいです」

 

比叡と楽しげに語っていたのは陽炎型駆逐艦、雪風だった。比叡と雪風の二人は共に根が明るい為か、それとも船だった時に関わりがあった事に起因しているのか艦種を越えた友情を育んでいた。特に比叡は金剛が沈んで以来落ち込み気味だったが、そんな比叡を慰めたのが雪風だった。最近では榛名や霧島達といるよりも雪風といる時間の方が多く、提督にはさながら年の離れた姉妹の様に写っていた。

 

「偶に気になるんだが、いつも二人で何を話してるんだ?お前達、特に接点無い気がするんだが…」

 

「聞いて下さいよ司令!雪風ちゃん、な、何と!妖精さんとお話できるんですよ!」

 

通常、提督は妖精と会話を通して意思の疎通を図る。一方の艦娘は妖精達を従える事は出来るが、会話はできない。

 

「へぇ、凄いな雪風」

 

「はいっ!雪風、妖精さんが何を言ってるのか頭に伝わってくるんです」

 

「それは凄いな。将来は提督になれるんじゃないか?」

 

「ええっ!雪風、提督になれるんですか!?」

 

「ああ。提督になるには妖精と話せなきゃいけないからな」

 

「ん~…でも、いいです!」

 

「何でだ?勿体ない」

 

「雪風、司令と一緒がいいです。だから雪風はずっと駆逐艦でいいです!」

 

「ははっ、ありがとう。そんな未来の提督候補にプレゼントだ。間宮さんの券だ。あんみつでも食べておいで」

 

「うわぁ!ありがとうございます♪」

 

目を輝かせて券を受けとる雪風。一方の比叡は何故か下を向いて考え込んでいた。

 

「どうしたんだ比叡。そんな怖い顔して」

 

〈雪風ちゃんが司令官?じゃあ雪風ちゃん、私の上司になっちゃうの?でも、そうしたら今の司令どうなっちゃうの?もしかして首?左遷!?〉

 

「…何か凄い失礼な事、考えてない?」

 

〈そんな事ありません!〉(「さようなら司令!」)

 

「本音と建前、逆になってるぞ」

 

「あっ…ひえぇっ!」

 

「…ほら、お前にも券上げるから雪風と食べておいで」

 

「ありがとうございます!気合!入れて!食べます!!」

 

〈普通に食えよ…〉

 

比叡と雪風は軽い足取りで間宮へと向かった。そんな二人の後ろ姿を提督は微笑ましく見送った。

 

〈妖精の言葉が解る、か…。比叡の奴も妖精と話したいのかな〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、俺だけど。入っていいかな?」

 

〈あっ!今開けますね〉

 

提督がドアの向こうに声を掛けると、返事と共にパタパタと足音が聞こえドアが開いた。

 

「どうしました、提督?」

 

開いたドアから榛名が顔を出した。提督はドアの外からチラッと部屋の中を見渡す。

 

「霧島に用が…と思ったんだけど、居ないみたいだな」

 

「あっ、霧島は工廠に用があるとかで…」

 

「そうか、じゃあそっち行ってみるかな」

 

「あっ、待って下さいっ!せっかく来て下さったんですから、紅茶でも飲んでいきませんか?」

 

「まぁ、別に構わないけど…。じゃあ少しお邪魔しようかな」

 

「はいっ!喜んで!」

 

提督は榛名に言われるままに部屋へと入って行った。

 

〈そういえば榛名達の部屋に入るのは初めてだな〉

 

提督は広めのリビングに案内されるとソファに腰掛けた。部屋はややクラシックな感じの家具で統一されており、椅子に座った正面の壁に恐らく比叡が書いたであろう【気合い!!】の文字の掛け軸が。

そしてその下の棚に置かれている小さな金庫の様な物が目に入った。

 

〈あれは…この部屋には随分と不釣り合いだな。貯金でも入ってるのか?〉

 

提督はソファに深く腰掛けると深呼吸した。かつてこの部屋には金剛が居た。だが、今の静寂からはとても想像が付かない。

 

〈金剛…すまない。俺の采配が不味かったせいで…〉

 

『目を離しちゃNoなんだからネ~!』

 

『Don't worry!ワタシに任せて下サ~イ!』

 

『ネ、ネェ提督ゥ…。提督は、ワタシの事…どう思ってますか?』

 

彼女の前向きな姿勢、また最初に着任した金剛型という事もあり、提督も随分と励まされた。いつしか鎮守府のムードメーカーとなり、気が付けば提督も彼女を目で追っていた。

それだけに、彼女が沈んだ報告を受けた時は提督も思わず涙を流した。この部屋を見れば彼女がどれだけ姉妹達に慕われていたのかも解る。提督は金剛の面影を見る度に、罪悪感もまた浮かび上がってくるのを感じていた。

 

〈ん?〉

 

部屋の辺りばかり気にしていて気付かなかったが、目の前のテーブルにアルバムが置かれていた。

 

「気になります?」

 

榛名が紅茶を携え戻って来た。

榛名は紅茶をテーブルに置くと、アルバムを捲った。

 

「これは…」

 

提督がアルバムを捲ると、そこには金剛や榛名達を中心にした写真が飾られていた。

 

「青葉さんに撮ってもらった物を整理していたんです。皆さんやお姉さまとの…大事な大事な記憶ですから」

 

「そうか…」

 

そこには四姉妹が集合した写真や、戦いから帰って来た金剛達の日常が切り取られていた。

 

〈金剛…〉

 

当時を思いだし懐かしさを覚えながら、提督がアルバムの次のページをめくろうとすると、榛名がハッとした顔で突然提督の手を掴んだ。

 

「は、榛名?」

 

「あ、いえっ!その…。そこから先は見てもつまらないですよ」

 

「…?まぁ見るなって言うなら見ないけど」

 

「えっ!その…提督がどうしても見たいと言うなら、止めませんけど」

 

「いや、別に…」

 

「…」

 

「榛名?」

 

「あっ!駄目です!勝手に捲っちゃ…!」

 

「え?俺、何も…」

 

榛名に強引に手を掴まれ、提督の指がページを捲らされる。あるページで止まると、榛名はアルバムを持ち上げ提督に突き付ける。

 

「イヤ~ッ!見ないで下さい~ッ///」

 

〈俺、何もしてない…って、え!?〉

 

榛名が開いたページには、提督が…一体いつ撮られたのか、彼を写した写真が何枚も飾られていた。

 

「これ、俺だよね?何で俺の写真を…」

 

「い、いえっ!別に他意はありませんっ!青葉さんが譲って下さるというから仕方なく…」

 

「まぁ俺の写真なんか飾っても仕方ないしな…」

 

「ち、違っ…う、嘘ですっ!私が青葉さんに頼んで盗さ…撮ってもらったんです!!」

 

〈今、何か凄い事言わなかった?〉

 

榛名はアルバムをテーブルに置くと、軽く深呼吸する。

 

「そ、その…勝手に撮った事は謝ります。すみません…」

 

「あ、あぁ。別にこの位、構わないけど…」

 

〈本当はもっと凄いのもあるんですが…〉

 

「…榛名?」

 

「あ、コホンッ!わ、私にとっては金剛お姉さまも提督も同じ位大事です。だからこの写真は…私の大事な宝物なんです」

 

「…」

 

提督がアルバムの次のページを捲ろうとすると、再び榛名が提督の手を掴む。

 

「…そこから先は何もありません」

 

「え…今チラッと俺の写真が…」

 

「そこから先は何もありません」

 

榛名はニコッと微笑んではいるものの、提督を掴む手を決して離そうとはしない。

 

「あ、あぁ…そうか(次のページに一体何が…)」

 

提督はアルバムから手を離した。

 

「あの…提督」

 

「ん?」

 

榛名は棚を開けると、黒い機械を取り出した。

 

「じ、実はここに青葉さんから借りてきたカメラがあるんです。そ、その…もしよろしければ…。一緒に撮りたいのですが。…駄目でしょうか?」

 

「別に構わないけど…」

 

「あ、ありがとうございます!じゃあ早速撮りましょう!」

 

「あれ?でも今、二人しかいないから誰が撮る…」

 

「…提督っ!し、失礼しますっ///」

 

榛名はカメラを自分に向けるとそのまま提督に近付き、頬を押し付ける。

 

「お、おい榛名っ!」

 

カシャッ!

 

驚く提督を余所に、紅潮した笑顔の榛名はシャッターを押した。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「…あぁ、うん。別に嫌がらないから、次からはちゃんと言ってね」

 

「金剛型の家宝にします!将来、榛名に子供が生まれたら、その子にもちゃんと見せますからね」

 

「子供って…旦那さんは…」

 

「若い時のパパですよって♪」

 

「パパ、俺!?」

 

 

 

 

「それにしても…」

 

提督は正面の掛け軸を見つめる。

 

「あの掛け軸、比叡が書いたのか?まぁ、あいつらしいけど…」

 

「あ、書いたの私です」

 

「え?」

 

「嘘です」

 

「えっ!?」

 

「霧島です♪」

 

「ええっ!?」

 

 

 

 

 

提督を見送った榛名は、一人部屋に戻った。その視線に黒い金庫が目に入った。

 

「お姉さま…」

 

榛名はソファに座るとアルバムを捲り、提督が見ていないページを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、私を探していた様ですが…何か?」

 

榛名と別れた提督は、先程まで比叡と雪風が居た中庭のベンチに腰掛けていた。ふと後ろに人の気配を感じた提督が振り返ると、霧島が立っていた。

 

「あ、霧島。工廠に行ったって事は、明石から話は聞いたかい?」

 

「はい、これで私も榛名に続いて改に成れるそうで」

 

「今朝、明石からそれを聞かされてね。たまたま霧島達の部屋の近く迄来たものだから伝えておこうと思ったんだが…。まぁ何だ…おめでとう、でいいのかな」

 

「フフッ、ありがとうございます。司令にそう言ってもらえると頑張った甲斐があります。もっともっと頑張って、金剛お姉さまに近付いてみせますよ」

 

「…金剛か」

 

「…どうかしましたか?」

 

「いや…。霧島、少しいいかな?」

 

「…?はい」

 

提督に目で促された霧島は、その隣に座った。

 

「霧島や榛名達は…やっぱり俺の事を恨んでいるかい?」

 

「司令…もしかして、金剛お姉さまの事をまだ気にしておいでで?」

 

「まぁね。あの時は少しキツかったが金剛なら何とか行けると思ってた。ところが蓋を開けてみればまさかの敗北。しかも金剛を失った。

 

「霧島達にしてみれば、大事な姉を失ったんだ。恨み言の一つも言いたくなるだろう」

 

「…司令、失礼しますね」

 

提督の言葉に、霧島は何を思ったか突然眼鏡を外し提督に掛けた。

 

「わっ、霧島、何を…」

 

「司令、今、周りがどう見えます?」

 

「どうって…何かボヤけて見えるよ」

 

「私も司令と同じです。眼鏡が無いとボヤけて見えます」

 

「…?」

 

「あの時の司令は今と同じです。《慢心》と言う色眼鏡のせいで、いつもなら見える物も見えなくなっていたんだと思います。

 

「そして私や比叡お姉さま達は今の視界が悪い私と同じです。心の何処かで眼鏡を掛けなくても何とかなると思っていたんです。

 

「《金剛お姉さまがいるから大丈夫》と…」

 

「…」

 

「それに金剛お姉さまは、沈む瞬間まで司令の事を気にしておいででした。『ここで沈んだらテイトクを守れない』と」

 

「金剛が…そんな事を…?」

 

「はい。だから私達は沈み行くお姉さまに約束したんです。比叡お姉さまや榛名、そして私の三人がお姉さまに代わって司令をお守りすると」

 

「霧島…」

 

提督は目頭が熱くなるのを感じた。自分が泣いていると気付くと、恥ずかしさから顔を背けた。

霧島はそんな提督の頭を優しく抱きしめると、自分の胸元へと引き寄せた。

 

「司令…大丈夫です。私は絶対に沈みません。お約束します」

 

霧島は提督の頭を強く抱き寄せた。霧島の柔らかい胸から彼女の鼓動が聞こえてきた。頭を抱き寄せる両手も恥ずかしさからか震えていた。

 

「ありがとう霧島。少し気が楽になったよ」

 

「い、いえっ!こんな事で良ければ何時でも(出来れば司令のお部屋とかで…///)」

 

「それに霧島達の部屋の掛け軸みたいに、俺も気合い入れなきゃな」

 

「…ッッ!!な、何で司令がそれを?ま、まさか私達の部屋にっ!?」

 

「あ、あぁ。榛名に招かれて…。ま、不味かったか?」

 

「い、いえ!そういう訳ではなくって!も、もうっ、比叡お姉さまったら!だからあんな物飾っちゃ駄目って言ったのに…」

 

「え?書いたの霧島だって榛名が…」

 

「★♯#*!?ち、違うんです!酔った勢いで書いたのを比叡お姉さまが勝手に飾って…///」

 

「霧島って意外と字、下手なのな…って、え、霧島?何で怖い顔して…え、その艤装何処から出し…ちょっ!何で全部の砲塔こっちに向いてんの?え?霧島?」

 

「…主砲、敵を追尾して」

 

「俺を守るって金剛に約束したんじゃ…!!」

 

 

 

 

 

「きゃあっ!!ひ、比叡さん、今の爆発は…」

 

「ひえぇっ!ま、まさか鎮守府に敵が!?だ、大丈夫よ雪風ちゃん!私がいるから…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ゲホッ!何とか撒いたか…。霧島の奴、ホントに撃ちやがって〉

 

「あっ、提督!今の爆発音は一体!?」

 

「うわっ!な、何だ明石か」

 

「何だは余計ですぅ~」

 

木陰に隠れていた提督に気付いた明石が驚きながら近付いて来た。

 

「ところで、こんな所で何やってるんです?かくれんぼですか?」

 

「ま、まぁそんなところだ。それより珍しいな、明石と工廠の外で会うなんて。何かあったのか?」

 

「(別に工廠から出られない訳じゃないんだけどなぁ…)えぇ、ちょっと耳寄りな情報が入ったのでお知らせしようかと」

 

「耳寄りな情報…?」

 

「はいっ!知ってましたか提督?一度沈んだ艦娘を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

明石からもたらされた情報は提督にとって寝耳に水だった。例え一度沈んだ艦娘でも建造で蘇る事が出来る。

それはつまり、金剛を再びこの鎮守府に呼び寄せる事が出来るという事。勿論それなりの燃料や鋼材等のコストは掛かるが、条件を満たせばそれが可能だと言う。

明石からその事を聞かされた提督は、早速取り掛かる様にと告げた。

再び金剛に会える。

それが自身の愛情なのか、比叡達に対する罪滅ぼしなのか、提督にも分かりかねていた。

そしてその情報は、比叡達の知る所となった。

 

 

 

 

 

 

「し、司令っ!金剛お姉さまが蘇ると言うのは本当ですかっ!?」

 

朝の執務室。

まだ寝ぼけ眼の提督の下に飛び込んで来た比叡が、開口一番尋ねた。

 

「おはよう比叡。明石から聞いたのかい?あぁ本当だ。まぁ保証は出来ないみたいだが…比叡?」

 

比叡は急に背中を丸めてうち震えだした。

 

「お、おい比叡、どうしたんだ…」

 

「う、ううっ…」

 

比叡は肩を震わせながら、静かに泣いていた。いつもの無邪気さは消え、提督も初めて見る比叡の涙に声を掛けるのも忘れる程だった。

 

「あ、違うんです!こ、これは…この涙は悲しいんじゃないんです。これは…グスッ」

 

「…あぁ、解ってるよ」

 

「あの日…金剛お姉さまは私の目の前で沈んで行きました。その日以来、私は金剛お姉さまを想わない日は一日もありません。

 

「もう一度お姉さまに会いたい…。もし会えたらお詫びしようと、ずっと思ってました。

 

「司令…もし、またお姉さまに会えたら…金剛お姉さまは私を…お姉さまを救えなかった私を許してくれるでしょうか?」

 

「大丈夫だよ。きっと許してくれるさ」

 

提督は比叡の肩を優しく擦った。

 

「はい…はいっ!」

 

その後、床にへたりこんで大泣きする比叡の鳴き声に、たまたま執務室を通り掛かった雪風が慌てて飛び込んで来た。提督は自分が泣かしたのではないと雪風に説明し、比叡も雪風にあやされながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「金剛さんがまた来るかもしれないんですね!雪風も嬉しいです!」

 

「グスッ…ねぇ雪風ちゃん。私達って友達だよね」

 

「はいっ!比叡さんは雪風の《マブダチ》です!」

 

「(マブダチ?)じゃあ、一つお願いがあるの。これは雪風ちゃんにしか出来ない事なの。

 

「…もし聞いてくれるなら私、雪風ちゃんのお姉さんになってあげる」

 

「えっ!ホントですかっ!比叡さんが雪風のお姉ちゃんに?き、聞きます!雪風、比叡さんにお姉ちゃんになってほしいですっ!!」

 

「えへへ、ありがと。あのね、雪風ちゃんって妖精さんとお話出来るって言ってたでしょ。だから妖精さんに頼んでほしいの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、お聞きしたい事が…」

 

翌日の昼下がり。一人昼食を終えた提督の下へ、榛名が訪ねてきた。

 

「ああ榛名、もしかして金剛の事かい?」

 

「はい、比叡お姉さまが仰っていたものですから、本当かと思い…」

 

「本当だ。と言っても明石の話だと、必ずしも金剛が復活すると保証は出来ないそうだが…」

 

「そうですか…」

 

榛名はやや肩を落とした。

 

「だ、大丈夫だ。明石の話だと、金剛を必要とする強い意思が何より重要だそうだ。榛名達がこんなに望んでいるんだ、きっと上手く行くさ」

 

「…そ、そうですね。きっとお姉さまは戻って来ますよね」

 

「あぁ、大丈夫さ」

 

提督はおもむろに立ち上がると、戸棚の中から缶を取り出した。中を開けるとその中には細かな粉末が入っている様だった。

 

「提督、それは茶葉ですか?もしかして…」

 

「前に金剛から貰った茶葉だよ。何か無性に飲みたくなってね。榛名も飲むかい?」

 

「あ、待って下さい。良かったら榛名が淹れますよ」

 

「そうか?じゃあ頼むよ」

 

「はいっ!」

 

榛名は慣れた手つきでポットとカップを二つ出し、紅茶を淹れ始めた。物の数分で出来上がると提督はカップに口を付けた。

 

「…うん、美味いな。まるで金剛の淹れてくれた紅茶みたいだ」

 

「エヘヘ、実は金剛お姉さまに教えてもらったんです。榛名も提督に飲んでもらいたくて」

 

「そうなのか。自分でもたまに淹れてみるんだが、微妙に味が違ってね。何かコツでもあるのかい?」

 

「フフッ、それは金剛型の秘伝なので内緒です♪」

 

「そりゃ残念。でも金剛が戻ってくれば、また飲める様になるのかな」

 

「…提督、良ければそれまでの間、榛名がお淹れしましょうか?」

 

「いいのかい?そりゃ嬉しいが…」

 

「そう言って頂けると榛名も嬉しいです。…フフッ♪」

 

「ん、どうしたんだ?」

 

「あ、いえっ…。実はずうっと、提督に紅茶を淹れて差し上げたかったんです」

 

「…別に、何時でもすれば良かったのに」

 

「そうは行きません!金剛お姉さまの紅茶で提督はすっかり舌が肥えてますから、もっと美味しいのを淹れようと何度も教えてもらってましたから」

 

「う~ん、俺は大して気にしないけど…。紅茶道って奥が深いんだな」

 

「『最後に紅茶を飲めたなら、その日は幸せだ』って言葉もありますから」

 

「へぇ、そうなんだ。知らなかったよ」

 

「今、作りました♪」

 

「榛名!?」

 

数十分後、提督と別れた榛名は自室に戻った。

ソファに腰掛け一人物思いに耽っていた榛名は目の前の金庫に気が付いた。榛名はおもむろに立ち上がると、金庫を開けた。

 

〈お姉さま…。お姉さまに教えてもらった紅茶、提督にとっても喜んでもらえましたよ〉

 

榛名は金庫から取り出した、古めかしいドーナツの様な金属片をギュッと胸に抱きしめると、再びケースに戻し、鍵を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛の建造の進展具合を聞きに来た提督は、工廠の入り口で明石と談笑する霧島を目にした。霧島は手を振って明石と別れると提督に気付いた様で、彼の下へとやって来た。

 

「司令、明石さんにご用で?…どうして身構えてるんです?」

 

「べ、別にそんな事は…。霧島と同じだよ。建造の事が気になって。ここに居るって事は霧島も?」

 

「え、えぇ、ハイ。進展具合を聞きに…」

 

霧島は自分が心配しているのを知られたくなかったのか、どこか照れた様に横を向いた。

 

「そうなのか、ちょっと明石に…」

 

「あ、あのっ!」

 

提督が工廠に向かおうとすると、霧島が提督の袖を掴んだ。

 

「な、何だ霧島?まさかまだ砲撃したりないんじゃ…」

 

「ち、違います!んもぅ…。少し真面目にお話いいでしょうか?」

 

「ああ。で、何だい?」

 

「司令にとって私は…霧島はどう映ってます?」

 

「どうって…」

 

「…真面目に答えてくれないと、また撃ちますよ」

 

「ま、待てっ!答えるから!…でも、どうしてそんな事を聞きたいんだ?」

 

「べ、別に深い意味はありません!い、いいから答えて下さいっ!」

 

「あ、あぁ。…その、とても頼りになると思ってるよ。金剛が抜けてから比叡と榛名は少し落ち込み気味だったが、そんな二人をよく纏めてるし。(たまに見境無くなるけど)

 

「それに最近は、その…艦娘じゃなく、『霧島』として見てる事が多いかな」

 

「へっ!?し、司令っ!そ、それって…///」

 

「う~ん、まぁそんな感じかな。真面目に答えてくれって言うからこの際言うけど、最初は金剛の代わりとして見てたんだ。

 

「でも霧島には霧島の…金剛には無い魅力があるって気付いてきて。だから正直、金剛がいなくてもいいんじゃないかって思ってた。

 

「これが本音かな。霧島は俺の事、どう思ってるかは解らないけど…」

 

「わ、私も司令の事は好きです!!あ…///」

 

「あ、うん。ありがとう。面と向かって言われると照れるな…」

 

「へっ?だ、だって司令が私の事好きって言ったから…!」

 

「直接言うのは恥ずかしいからボカしたつもりなんだが…だから艤装出すなって!!」

 

「ッッ///…ふ、ふふっ。流石は司令。艦隊の頭脳と言われる私に鎌を掛けるとは。見事に引っ掛かりましたわ」

 

〈自滅しただけじゃん。艦隊の頭脳って初めて聞いたけど…〉

 

「も、もう一度聞かせてくれますか?司令は…その…。わ、私の事を…」

 

「あぁ、好きだよ。霧島が俺のこと嫌いじゃなくて良かったよ」

 

「…比叡お姉さまより?」

 

「あぁ」

 

「榛名より?」

 

「…あぁ、だからそろそろ連装砲こっち向けるのやめて」

 

「し、失礼しました!…ふふっ、でも嬉しいです。初めて司令がこっちを向いてくれたみたいで。司令、改めてよろしくお願いしますね!」

 

「あぁ、こっちこそ。ふふっ、金剛聞いてるか?後はおまえが戻ってくるだけだぞ」

 

「…そ、そうですね。私も楽しみです!」

 

「じゃあちょっと明石の所へ行ってくるから」

 

「ハイ、また後程…」

 

笑顔で工廠へと向かって行く提督を見送った霧島は、一人呟いた。

 

「明石さん、お姉さまが蘇るかどうかはあなた次第です。後は頼みましたよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから明石は早速建造を開始、数日後、いよいよ完成するとの報告が入った。提督が工廠へたどり着くと、比叡、榛名、霧島の三人が既に待ち構えていた。

 

「皆、もう来てたのか」

 

「お姉さまがいらっしゃるかもしれないんです。待ちきれません!」

 

「榛名もです。我慢出来ずに来ちゃいました」

 

「明石さん、準備大丈夫?一緒にチェックします?」

 

そんな提督や比叡達に答えるかの様に、建造機の稼働は最大に達し、窓からは怪しい光が漏れていた。完成迄の時間、残り一分。

 

「いよいよですね、提督」

 

「あぁ、待ちくたびれたぞ。…明石、本当に大丈夫だろうか?」

 

「う~ん、それは何とも…。金剛さんは一度建造に成功してますから成功率も高いと思うんですが。そうですね、何かこう…遺品とか、より強く金剛さんをイメージ出来る物があれば確実なんですが…」

 

提督が振り返ると比叡達は目を瞑り祈りを捧げていた。そんな三人を見て提督もまた、金剛が再び蘇る事を心から願った。

建造機の時刻表示が完成を示す【00:00】を示した。

建造機の扉が爆風の様な煙を放ちなから、ゆっくりと開かれていった。

そこにいたのは…

 

「ああっ…」

 

「き、君はっ!!」

 

建造機の中から煙と共に現れたのは、白い水着に瓢箪の様な玉を背負った小さな女の子だった。

 

「は、初めまして。まるゆ着任しました!」

 

「あ、あぁ。よ、宜しく頼むよ。〈明石、これは…〉」

 

「〈こ、今回は…ご覧の通りです。申し訳ありません〉」

 

「あ、あの~隊長。皆さんに何だか見られてる気がするんですが…。まるゆ、何かおかしな所でも…」

 

「い、いや違うんだ。この鎮守府は潜水艦が少ないからね。あ、明石。まるゆを執務室に連れて行ってくれないか?」

 

「あ、あ~ハイハイ!まるゆちゃん、他の皆さんにも紹介したいから、私について来てくれる?」

 

「は、はいっ!あの、そこの皆さんは…」

 

「後で紹介するわ。さっ、こっちよ!」

 

後に残った提督達に重い空気が流れた。特に提督は、この事を言い出した張本人なだけに、どう弁明したらよいものか途方に暮れていた。

 

「その、すまない。期待させておいてこのザマだ。何と言っていいのか…」

 

「し、司令は悪くないですよ!それは、金剛お姉さまに会えなかったのは残念ですけど…」

 

「そ、そうです。榛名は気にしていません」

 

「司令、そう気を落とさないで下さい。明石さんからも聞いています。建造は難しいものだと」

 

「おまえ達…」

 

 

 

 

 

 

『雪風ちゃんって、妖精さんとお話が出来るって言ってたでしょ?だから、頼んでほしいの。金剛お姉さまの建造を…』

 

『お姉さま…お姉さまに教えてもらった紅茶、提督にとっても喜んでもらえましたよ』

 

『それにお姉さまは沈む瞬間まで、司令の事を心配しておいででした。『ここで沈んだらテイトクを…』

 

 

 

 

 

 

「…本当にすまない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉さまを造らない様に、言ってくれる?』

 

『だから、もうお姉さまは必要ありません』

 

『ここで沈んだらテイトクを…私達から守れない…でしたっけ?お姉さま』

 

 

 

 

建造は失敗した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日、金剛お姉さまは私の目の前で沈んで行った。それは、私が不甲斐なかったから…私達の身代わりに沈んで行った。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!

お姉さまは、きっと私を許さない。こんな私を許す筈が無い。きっと私達の事を恨みながら沈んで行った。絶対そうに決まってる。

もし許されるなら変わってあげたい。私がお姉さまの代わりに沈んでいれば…ごめんなさい。

 

雪風ちゃんは私の事を何度も慰めてくれた。誰にも話していない、妖精と話せる事まで明かして私を元気付けてくれた。私の方がお姉さんなのに。情けないなぁ…。

 

そんな時、司令から金剛お姉さまが蘇らせる事が出来るかもしれないと聞いた。

そんなの駄目よ!

お姉さまを救えなかった私に今さら会わす顔なんて無い。

そう言えば建造って、妖精さんが係わってるんだよね?

ねぇ、雪風ちゃん。私、もうお姉さまに会わせる顔が無いの。だからお願い、妖精さんに頼んで建造を失敗する様に頼んで!

そう。上手く言ったのね。これでお姉さまは蘇らない。

 

そうよ、今さら会う訳にはいかないわ。

それにお姉さまはもう沈んだの。あの時の…沈んで行くお姉さまは、とても綺麗でした。

あぁ…お姉さま。

一生お慕いしています。

お姉さまは私の心の中で、ずっと生きています。

これが一番いいの。そうよ、そうに決まってる。

きっと榛名や霧島もそれを望んでるわ。

お姉さまの志は、比叡が立派に受け継ぎます。だから金剛お姉さまは安心して眠って下さい。いつか私がそちらに行くまで…。

だから、ごめんなさい。

 

さようなら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの写真…

提督と金剛お姉さまの写真を見る度に思い出してしまう。

私は大好きな提督に少しでも振り向いてもらおうと、金剛お姉さまに紅茶の淹れ方を学んだ。でも金剛お姉さまは、こんな紅茶じゃ提督は満足しない、提督には私が出すから榛名はいいと何度も言われた。

その内、私は気付いた。

 

お姉さまは私に嫉妬しているのだと。

 

私と提督が仲良くなれば、きっと提督を獲られてしまう。だから私を近付けたくないんだわ。

ズルいわ、お姉さま。

提督を慕うのは自由のはず。どうしてお姉さまに邪魔されなきゃいけないの?

お姉さまなんか…お姉さまなんか、いなくなっちゃえばいいのに…!!

 

…ウフフ、アハハッ♪

こんな事ってあるのかしら?

本当にお姉さまが沈んでしまうなんて!

きっと神様の罰が当たったんだわ。可哀想なお姉さま♪

それなのに…また再びお姉さまが蘇る?

そんなの許せないわ。せっかく提督もお姉さまを忘れかけているのに…!

提督の事は何もかも知っているわ。どんな物が好みか、どうすれば喜んでくれるか…。

それに提督は金剛お姉さまの紅茶の味なんて忘れているわ。これからは毎日、私の紅茶を飲んでくれるの。金剛お姉さまではなく、榛名の淹れた紅茶をね…。

だから、もうお姉さまは要らないの。

 

明石さんから聞いた事があるわ。

本人と縁のある物を使うと、建造の成功率が大幅に上がるって。

例えば私が戦場で拾ったお姉さまの電探カチューシャとか…。

あの時は単なる名残惜しさから取っておこうと思ったけど、今考えると余計な事だったかしら。

幸いこの事を知ってるのは私達姉妹だけ。それに比叡も霧島もこの事は決して明石さんに教えない所を見ると、もしかして私と同じなのかしら?

霧島はともかく、比叡お姉さまが提督を慕っている様には見えないのだけど…。

 

でもいいわ。建造は《無事》に終わったわ。もし上手く行ったらどうしようと思ったけど…。明石さんには感謝しないと。ウフフッ♪

後はお姉さまのカチューシャを処分するだけ。これで次があってもきっと失敗するわ。

最も、その頃は提督も金剛お姉さまの事なんて忘れているわ。提督には榛名がいれば大丈夫だもの。

 

だから、ゆっくり眠ってて下さいね。

金剛お姉さま…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで沈んだら…アナタ達からテイトクを守れないっ…!』

 

やっぱり金剛お姉さまは私や榛名の気持ちに気付いていたみたいね。もしかして比叡お姉さまもそうなのかしら?

それにしても…テイトクを守れないなんて。それじゃ私達が司令を害するみたいじゃない。失礼しちゃうわ。

金剛お姉さまがやたら司令と一緒にいたがるのは、私達を寄せ付けない為なのは解っていた。まるでこれは私の物だと私達に解らせる様に。

私は金剛お姉さまや比叡お姉さまの様に、感情を表に出すのが苦手だ。それに末娘という立場もある。…まぁこれは言い訳かしらね。

司令が私の事を艦娘として…戦力として見てくれるなら、私はそれで満足しようと思っていた。

なのに…

 

こんな不幸が起こるなんて♪

 

お姉さまは私達を庇う形で被弾した。

私だったらここまでは出来ないかもしれない。…成る程、やっぱり金剛型のネームシップは伊達じゃないですね。ここだけは素直に感服しますわ。

金剛お姉さまがいなくなった事で、私も榛名も気持ちを隠さなくなったと言うか…抑制心が無くなったと思う。

毎日が…戦っている時でさえ気分が晴れやかだ。

 

でも…明石さんも余計な事を考える。

お姉さまを蘇らせようだなんて…。

明石さんの話では、成功率は半々だそうだ。正直好ましくない状況だわ。

仕方ない。私が密かに貯めていたアレを使おう。

私が《ネジ》を明石さんに渡すと、彼女は私の意図を理解してくれた。…かなり足元を見られたが。

そして私達の思惑通り、建造は不幸にも失敗した。

ふふっ、これを不幸だなんて扶桑さんが聞いたら怒りそうね。

そう言えば榛名も金剛お姉さまのカチューシャを持ってる事を口にしなかったけど…榛名も金剛お姉さまが目障りなのかしらね。アラアラ♪

 

私の戦況分析によると、司令は榛名より私に気があるはず…。私のデータに抜かりは無いわ!

 

金剛お姉さま。

司令は私がお守りします。だから安心してお眠り下さい。お姉さまの分もしっかり愛してもらいますわ…ウフフッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、提督は何度か建造を試したが遂に金剛が蘇る事は無かった。そんな提督に寄り添う比叡、榛名、霧島の三人と過ごす内に、彼は次第に金剛への執着を無くしていった。

その愛情が誰に傾くかは、また別の話…。

 

 

 

 




金剛は自分の作品では比較的優遇されてるキャラなので、たまにはこんな役もいいかなと。
金剛は喋り方が独特なので、毎回他の人の作品参考にしてます。今回は楽でした。

次は吹雪が異動後の鎮守府に残った叢雲の話です。(5話に当たります)










艦娘型録

金剛 今回は出番無し。何だかんだで最後は妹達を守って沈んだので良いお姉ちゃんだったと思われる。ただ長女の特権をやや行使し過ぎた様子。

比叡 金剛が嫌いなのではなく、思い出を美化したい。大好きなアイドルが引退したのに「やっぱり続けます♪」って言われるのが嫌な感じ。約束通り雪風のお姉ちゃんになったが、毎日の様に自分達の部屋に遊びに来るので、最近榛名と霧島から白い目で見られている。

榛名 金剛がいる時は目立たない陰キャだったが、最近は垢抜けてきた。クラスの地味な子が夏休み明けに金髪に染めてきた感じ。案外根は明るいのかもしれない。

霧島 金剛型一の知性派を気取ってはいるもののすぐテンパる。頭脳派を自称する割には体を使った色仕掛けが多い。司令の悪口を言われると無言で艤装展開する。いけないなぁ、彼の悪口を言っては。

提督 元は金剛派だったが最近は霧島に乗り換えつつある。榛名が毎日自分の所に入り浸っているのであらぬ噂が流れ始めた。

雪風 この鎮守府にはマブダチの時津風がいないので比叡になついた。妖精と話せるので何気に一番の情報通だったりする。

明石 この人が登場するとだいたいロクな事が無い。霧島からネジを受け取ったのに味を占め、建造の度に口止め料を値上げしている。

まるゆ 金剛目当てだった事を引け目に感じたのか提督や金剛姉妹に大事にされている。一部の運の低い艦娘(陸奥、翔鶴、扶桑姉妹)から何故か会う度に拝まれて困惑している。
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