艦娘症候群   作:昼間ネル

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「アラアラアラ」
「提督さん死ぬわ」
「へぇ…○○入り瓶ですか。大したものですね」



そして 彼もいなくなった

「コッチヨ」

 

無数の女達が廊下を闊歩していた。それだけなら何の事もないが、普通ではない事が二つあった。

一つは彼女達は一人として人間ではない事。その中に唯一人、人間が混じっている事。

彼女達に取り囲まれて歩く男は手を縛られている為か、それとも自分が置かれている状況の所為か、まるで死人の様に表情が暗かった。

やがて女達は大広間に出ると、それを待っていたかの様に一人の女が彼女達を出迎えた。

一見、黒いドレスを着た美女に見えるが、紅く光る瞳が彼女が人ではない事を物語っていた。

 

「ウフフ…待ッテタワ…」

 

彼女は妖艶に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、お待ちしていました!」

 

「あ、あぁ…ただいま大淀」

 

鎮守府正門に一台の車が停まった。車から一人の男が降りると、待ち構えていた三人の女達は痺れを切らした様に彼に駆け寄った。彼は額に包帯を巻いており、傷が痛むのかどことなく表情も暗かった。

 

「て、提督さんっ!その怪我は?だっ、大丈夫なんですかっ!?」

 

「只のかすり傷だよ鹿島。すぐに治るよ」

 

「そ、それならいいですが…提督さんの乗ってる船が攻撃されたと聞いた時は、ショックで大破するかと思いました!」

 

「大袈裟だな。それに松風が駆け付けてくれたから深海棲艦もすぐに逃げて行ったよ」

 

「そ、そうですか。私、ここでず~っと祈ってました!提督さんが無事であります様にって♪」

 

「オ、オホン…私も、もちろん祈ってましたけど」

 

「あ、あぁ…ありがとう二人共」

 

「フフッ、祈るだけじゃね。その点、僕はいち早く司令官を助けに行ったけどね♪」

 

「ムムッ!」

 

「ま、松風さん」

 

「あぁ、ありがとう松風。お前が来てくれなかったら今頃海の藻屑だったよ。朝風にも礼を言っておいてくれ」

 

「あぁ伝えておくよ。じゃあ司令官、行こうか。先輩方、司令官の荷物持ってくれるかい?僕達と違って疲れてないだろう?」

 

「…え、えぇそうですね鹿島さん、駆逐艦には重いでしょうからね」

 

「そ、そうですね大淀さん。こんな時、朝風さんなら率先して持つと思いますけど…」

 

「あ、姉貴は関係ないだろ!?」

 

「さ、提督、行きましょう♪」

 

「あ、ああ…」

 

「ムムム…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある鎮守府。

この鎮守府の提督が出張に行く際に怪我を追い、病院から帰って来た所だった。幸い怪我はかすり傷程度で命に別状は無かったが、彼の表情は暗かった。その理由は、ここ最近の出来事にある。

ここ最近の彼は妙な不運に見舞われていた。ある時は車の事故を起こしそうになり、又ある時は爆発事故にあったり…。

今回も彼の乗る輸送船が深海棲艦に襲われ、たまたま出迎えようとしていた松風、朝風が駆け付けたお陰で軽傷で済んだ。

艦娘達にしてみれば、一体どうして自分達の提督はこうもトラブルに見舞われるのか、ほとほと首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます。提督、もう怪我はよろしいんですか?」

 

「おはよう大淀。大丈夫だよ、もう何ともない」

 

「そうですか、それは良かったです。提督は…その、生傷が絶えないので心配です」

 

「心配掛けてすまないな…」

 

「い、いえっ!提督がご無事ならそれでいいんです!」

 

執務室を訪れた彼女の名は大淀。大淀型軽巡洋艦の1番艦に当たる。

提督との付き合いはこの鎮守府では最も古く、提督も彼女の事は信頼しており彼女もそれを誇りに思っていた。

 

 

「あれ…提督、こちらに置いておいた書類は…?」

 

「あぁ、俺が全部片付けるから気にしなくていい」

 

「そ、そうは行きません。それでは何の為に私がいるか解りません!」

 

「だが一日もあれば終わる量だ。それに大淀もやる事があるだろう」

 

「そんな事気にしないで下さい!私にとっては提督の補佐が一番の優先事項です!それに鹿島さんにてるのはこれしか

 

「何か言ったか?」

 

「あ、いえっ!何でもありません。それにしても…船が襲われるなんて本当に災難でしたね」

 

「こればっかりはどうしようもないさ」

 

「以前も車が事故を起こしそうになったり、兵器の暴発事故があったり…とても心配です」

 

「自分でも不思議だよ。どうしてこうも立て続けに不幸な目に遭うのか」

 

「…提督、もし何か用事が有れば私に言って下さい。私は艦娘ですから事故なんかへっちゃらです!」

 

「そうもいかないだろう。それに会議は俺が出ないという訳にはいかないし」

 

「それは…そうですが…」

 

「大淀…本当に気にしなくていい。俺の事はいいから自分の仕事だけ考えればいいから」

 

「…はい。あれ?こちらの手紙は…」

 

「あぁ、何年も実家に帰ってないから手紙だけでもと思ってね。後で街に行って出してこようと思って」

 

「では私が行って来ます!」

 

「大淀が…?でも悪いよ」

 

「い、いえっ!他にも何かあれば言って下さい。いつも飲んでいるコーヒーも買ってきますよ。確かDOSSでしたね」

 

「最近はGEOLUGUに変えたんだ」

 

「…序でに御愛読の本も買ってきましょうか?」

 

「な、何の話だ?」

 

「今月は春の大艦巨砲大特集!…でしたっけ?」

 

「ちょ、ちょっと待て!何で知ってるんだ?」

 

艦娘魅力胸部装甲だけじゃないといますでは行って参りますね」

 

「あ、ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう…何で知ってるかなんて…私がどれだけ秘書艦やってると思うんですか。

それに私だって戦艦や重巡の皆さんには負けてませんから!大きさ…はともかく大事なのは色と形です!

ま、負けてないんだから!…多分。

 

それにしても、ここ最近の提督は元気が無い。無理もない。この数ヵ月でやたらトラブルが頻発してるから、きっとそれが原因だろう。

また何かあったら大変だし、こんな時こそ私の出番だ。

ファイトよ大淀!こういった地味な努力が明るい未来に繋がるのよ。私はやれば出来る娘!

そう!これが大淀型の本当の実力よ!

 

でも…今の提督を見てると昔が懐かしくなる。まるで今と逆だった、あの頃みたいに…

 

 

 

 

 

 

『やぁ、君が大淀だね、今日からよろしく』

 

『はい…こちらこそよろしくお願いします』

 

『…やはり前の提督の事を引きずっているみたいだね』

 

『そ、そんな事は…』

 

『鎮守府を見て回ったけど、みんな君みたいに表情が暗かったよ。前任の提督はあまり良い人ではなかったみたいだね』

 

『わ、私達は艦娘です。人間と同じ様に扱う訳にはいかないのは当然です…』

 

『…でも、女の子だろう?』

 

『えっ?』

 

『人間の様に接するのは嫌かい?』

 

『そ、そんな事は…』

 

『君は艦娘だけど、同時に女の子でもあるんだ。せっかくそんなに可愛く生まれたんだ。もっと楽しく生きないと損だよ』

 

『で、でも…私は戦うのが仕事です。それに…私なんて大して可愛くなんか…』

 

『う~ん…可愛くない女の子を口説く趣味はないんだけど…』

 

『く、口説くって…からかわないで下さい!』

 

『アハハ、ごめんごめん。でも、さっきも言ったけどせっかく女の子に生まれたんだ。戦うだけの人生なんて詰まんないよ』

 

『そ、そんな事言われても…私は…』

 

『すぐには無理かもしれない。でもきっと君が笑って過ごせる鎮守府を作ってみせるよ。だから大淀、俺に協力してくれないか?』

 

『…フフッ、おかしな提督さんですね。ハイ、私で良ければ』

 

『ああ!』

 

 

 

 

 

前任の提督は…今にして思えば、あまり良い人ではなかったのかもしれない。連続出撃は当たり前、大破しても碌に入渠も出来ない。轟沈した娘も何人いたか…。勝って帰っても『そうか』の一言。

でも私はそれが普通なんだと思っていた。

私達は艦娘、人間じゃない。それに本当の私達は既に海の下に沈んでいる。仮に沈んだ所で、再びあの海で眠りに就くだけ…。

そう思っていたのに。

今の私は随分と軟弱になってしまった。

轟沈するのが怖い。もう二度と今の提督に会えなくなるのではと思うと胸が張り裂けそうになる。きっと兵器としては欠陥品なんだろうな…。

でも、そうなってしまったのは全部あの人の所為だ。全く酷い人ですね!

私がこうなった責任…ちゃんと取って貰いますからね。

 

「あれ?大淀さん、お出掛けですか?」

 

「えぇ、ちょっと提督に頼まれて買い物に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん、お仕事中ですかぁ?」

 

「な、何だ鹿島か。びっくりさせるなよ」

 

「もう!私が来ちゃいけないんですか?」

 

「そんな事はないが…」

 

「ウフフッ、お邪魔しま~す♪」

 

まるでイタズラっ子の様にソロリと執務室にやって来た彼女の名は鹿島。香取型練習巡洋艦の2番艦に当たる。

大淀と共に前任の提督の下で働いており、大淀とは違った理由で人間に対し不信感を抱いていた。今でこそ提督に対し無邪気な部分を見せているが、かつては大淀と同じ位生気の無い目をしていた。

 

「どうしたんだ、何か用か?」

 

「もうっ、用が無いと来ちゃいけないんですか?」

 

「そうじゃないが…鹿島がここに来るなんて珍しいから」

 

「それは…大淀さんが居る時は遠慮しているだけです」

 

「大淀?何で大淀が居ると遠慮するんだ?」

 

「提督さんはもう少し女心を勉強した方がいいと思います!」

 

「そ、そうか…悪い」

 

「もっとも…それを私に教えてくれたのは提督さんなんですけどね」

 

「俺が…?」

 

「コ、コホンッ!で、でも提督さん、怪我はいいんですか?」

 

「大丈夫だよ、船から放り出された時に頭を打っただけだ。マヌケだろ?」

 

「そ、そんな事ありません!提督さん、以前も車で事故を起こしそうになるし…鹿島、心配ですっ!」

 

「あれは俺も不思議に思ってるよ。急にブレーキが利かなくなって…肝を冷やしたよ」

 

「もうっ、だから私達が付いて行きますって言ったのに。そうすればあんな事…」

 

「別に鹿島がいたって事故は起こるだろう」

 

「まぁ…そうなんですが…と、とにかくっ!次はちゃんと私に言って下さいね!例え何があっても鹿島がお守りしますっ♪」

 

〈次いでに街でデートしたり…キャッ♪〉

 

「鹿島?」

 

「え?ち、違いますっ!お洋服欲しいな~とか夜景を観に連れて行ってほしいなんて考えてませんっ!」

 

「…ち、近い内にな」

 

「キャーッ♪い、いいんですか?て、提督さんっ!鹿島、今度の日曜、非番なんですっ!どこか行きたいかな~なんて…」

 

「考えておくよ」

 

「是非っ!あ、もちろん大淀さんには内緒でお願いしますね?」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やった~♪

本当にデート出来るなんて、言ってみるものね。大淀さんが聞いたら悔しがるかも。ウフフ♪

でも…私がこんな気持ちになるなんて、生まれた時は想像もしなかったなぁ…。艦娘に生まれたんだから沈むまで戦うんだって思ってたのに…。

 

 

 

 

 

『……鹿島?顔色悪いみたいだけど、大丈夫か?』

 

『キャッ!…す、すみませんっ!違うんです、提督さんに触られるのが嫌だったんじゃないんです。ほ、本当です』

 

『そんなに謝らなくてもいいよ。話は大淀からも聞いてるよ。その…前任とは何度かトラブル起こしたとか…』

 

『はい…その、前の提督さんは私を…まるで人間の女の人みたいに扱って…』

 

『…何か不満でも?』

 

『私に恋人になれと…人間の女の人がする様な事を私に望んで…提督さんも、そうなんですか?』

 

『…あぁ、そうだね』

 

『…そうですか。やっぱり提督さんも前の提督さんと同じなんですね』

 

『かもしれないね。でもね…一つだけ違うかな』

 

『一つだけ…違う?』

 

『あぁ。でもね、俺はちゃんと口説いてからじゃないと、そんな事はしたくないんだ』

 

『く、口説くって…私は艦娘です。人間じゃありませんっ!』

 

『俺は人間の…可愛い娘しか口説かないよ』

 

『も…もうっ!からかわらないで下さいっ!』

 

『前任の提督も君の事を人間の女の子として見てたから、そんな事したんじゃないかな。でも俺はそれだけじゃ不満かな。鹿島にも俺って人間を評価してほしいんだ』

 

『提督さんを…評価…ですか?』

 

『ああ。だから鹿島にも艦娘の力だけじゃなく、女の子としての魅力も見せてほしいかな』

 

『私が…女の子…?』

 

そのスカート

 

『…も、もうっ!提督さんのエッチ!』

 

『あ、やっぱり可愛い笑顔だね。こりゃ前任が惚れるのも無理ないな』

 

『ウフフッ…もう♪』

 

 

 

 

 

 

女の子かぁ…。

そんな事言われたの初めてだったなぁ。

前は私は艦娘なのに、どうして人間と同じ姿をしてるんだろうって何度も思ったなぁ。人間の姿じゃなければ…お尻を触られたり変な事される事も無かったのに…。

でも、今の提督さんが来てからは違う…自分でも驚いてる。もし艦娘に生まれなかったら話す事も…ううん、こんな事を考える事も無かった。

 

〈褒めてくれた、嬉しいっ!〉

 

〈提督さん、大淀さんみたいな長い髪が好きなのかな?〉

 

提督さんといると、どんどん知らない自分が出てくる。

もっともっと私を知って欲しい…私も知らない私を引き出して欲しい!!

 

提督さんっ、私、意外と欲深いですよ?

練習巡洋艦だからって、甘く見ないでね?

ウフフッ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ司令官、こんな所で何してるんだい?」

 

「いや、別に何も…」

 

艦娘達の演習をしている海を眺めていた提督は、自分を呼ぶ声に振り返った。そこには二人の少女がいた。

白い着物にエメラルド色の袴、ボーイッシュな外見の少女は松風。神風型駆逐艦の4番艦に当たる。青い袴に大きな蝶の様な左右のリボンが特徴的な少女は朝風。同じく神風型の2番艦で松風の姉に当たる。

 

「どうしたの司令官。アナタがこんな所に来るなんて珍しいじゃない」

 

「フッ、姉貴と違って司令官は繊細なんだよ。時にはメランコリックな気分になる時もあるさ」

 

「はぁ?それじゃまるで私が単純みたいじゃない!それにメリケンサック?まだ乗った事ないけど、それが何よ!」

 

「それを言うならメリーゴーラウンドだよ姉貴…」

 

「お前達は演習はいいのか?」

 

「僕は努力とか苦手なんだよね。そんな事しなくても、ちゃんとキミの危機は救ってみせたろう?」

 

「そうだったな、感謝しているよ」

 

「…深海棲艦を追い払ったのは私だけどね」

 

「もちろん姉貴の功績が一番さ。そんな姉貴を護れて僕は幸せだよ…って、イテテッ!あ、姉貴っ、ツネるなよ!」

 

「私が他の駆逐艦の娘達みたいに、そんな歯の浮く様なセリフで誤魔化される訳ないでしょ!」

 

「わ、分かったって…まぁ、そんな所が可愛いんだけどね♪」

 

「ま、松風っ!」

 

「…でも司令官、ここ最近よくここに来てるね。どうしたんだい?」

 

「べ、別にどうもしないさ」

 

「僕がその理由を当ててあげようか?」

 

「な、何?」

 

「ズバリ、恋だね!」

 

「ええっ!そ、そうなの司令官?」

 

「い、いや、そんなんじゃない」

 

「何よ松風、驚かさないでよ。そんな訳ないじゃない」

 

「…でも姉貴、その相手が姉貴だったら?」

 

「はあっ!?し、司令官が…私に…メロメロ?」

 

「い、いや、メロメロとは言ってないけど」

 

「どうなの司令官。も、もしかしてアナタ…わ、私にゾッコンなの?」

 

「ぶ、部下としては好きだが…」

 

「え…じゃなくって!松風、適当な事言うんじゃないわよ。司令官こう言ってるわよ?」

 

「う~ん…じゃあどうして毎日ここに来てるんだい?僕はてっきり姉貴の演習姿でも眺めてるんじゃないかと思ったんだけど」

 

「し、司令官が…私の演習姿を見て…胸キュン?」

 

「ホント色んな言葉知ってるよね姉貴」

 

「あ、朝風の姿を見に来てる訳じゃないが…まぁ、その…朝風の訓練してる姿も、たまには見るな」

 

「んなっ!からかわないでちょうだい!ま、全くウチの司令官はいつからこんなに軟弱になったのかしら!…そうね、これは鍛え直す必要があるわ…司令官、明日から私が起こしに行ってあげるわ!朝御飯は私が作ってあげるから一緒に食べるわよ!いいわね?」

 

「あ、あぁ…」

 

「フフッ、とんだ押し掛け女房だね♪司令官も気の毒に」

 

「松風、二人で頑張るわよ!」

 

「司令官…明日から僕もここに来ていいかい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも最近の司令官は少し心配だな。

何かこう…何をしてても上の空で、心ここに在らずって感じだよ。

僕と会った時は、もっとノリが良かったのになぁ。

 

 

 

 

『君が松風か。少しいいかい?』

 

『キミは…新しい司令官だね。ちょうど良かった、僕もキミに頼みがあったんだ』

 

『頼み…何だい?』

 

『姉貴を…少し休ませてやってほしいんだ』

 

『朝風が…どうかしたのか?』

 

『僕はあまり練度が高くないんだ。その所為で前の司令官にはよく(なじ)られてね。だから僕のミスの分も姉貴が働く事になって…。でも僕達は駆逐艦だ。大淀さんや鹿島さん程、頑丈じゃないんだ』

 

『朝風が…そうか、妙に暗い表情をしているのはその為か…』

 

『お願いだよ司令官、これ以上姉貴の辛い顔は見たくないんだ。ぼ、僕も頑張るよ!それに…僕はあまり可愛くはないかもしれないけど…もし望むなら、キミのしたい事…してあげるよ』

 

『…そうか。それは良い事を聞いたな。じゃあ一つお願いがあるんだ』

 

『…何だい?』

 

『今からお茶に付き合ってくれるかな』

 

『…え?』

 

『俺の望む事してくれるんだろ?』

 

『そ、そうだけど…そんな事でいいのかい?』

 

『もっと凄い事の方が良かったかい?』

 

『ち、違うよ!違うけど…キミは男の人だし…もっと恥ずかしい事言ってくるのかと…』

 

『…そうだな。でもその前に松風や朝風の事もよく知りたいんだ。だからそんな事は…お互いを知ってからでも遅くないだろ?』

 

『僕のブーツの匂い嗅がせろとか、ホントは男の子なんだろって身体検査したりとか…しないのかい?』

 

『…しない。する訳ないだろう』

 

『今迷ったね?』

 

『そ、そんな事はない!』

 

『本当は?』

 

『まぁ…少しは』

 

『プッ…アハッ♪良い人なんだか変な人なんだか分からないね。でも…いいね、僕そういうの嫌いじゃないよ。改めてよろしく、僕は松風だよ』

 

『ああ、こちらこそよろしく』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えこの姿になっても、僕達は艦娘。人間じゃない。

だから姉貴を苦しめる人間を恨んじゃいけない…そう思ってた。

なのに…あの人は、そんな僕の心を全部変えてくれた。

ううん、僕だけじゃない。きっと姉貴もそうだ。

もっと早くキミに出会っていれば、姉貴もあんな事をせずに済んだのに…

 

僕は知ってるよ。これは恋って言うんだ。

僕、こう見えてもカストリ雑誌読むんだよ。姉貴も口では破廉恥なんて言いながら、こっそり読んでるのも知ってるよ。

その本にあったんだ。身分違いの男女の恋物語が。

まるで僕達みたいじゃない?人間のキミと艦娘の僕が種族を超えて愛し合う…とってもロマンチックじゃないかい?

僕がこんな事考えるなんて柄じゃないってキミは笑うかな?

キミは僕の事、そんなに意識してないかもしれない。でもすぐに振り向かせてみせるよ。

忘れた?僕、追撃戦、嫌いじゃないんだ。

それに…僕だって…

女の子なんだよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈くそっ…港は四六時中アイツらが張り付いてやがる。港からはダメか…〉

 

執務室で提督は一人思案に耽っていた。一見すれば真面目に政務に励む姿に映るが、彼は全く別の事を考えていた。

 

この鎮守府から逃げる事を。

 

謎の失踪を遂げた前任の提督の後任としてこの鎮守府に来た彼は、前任の提督によって身も心も酷使された艦娘達を見て愕然とした。話を聞けば彼女達は人間としてではなく兵器として扱われ、いつ沈んでもおかしくない毎日に目は死んでいた。

まだ若く理想に燃える彼は、そんな彼女達に心から同情し、少しでも彼女達を助けようと誓った。

最初はどうして自分達を人間の様に扱うのか不思議に思っていた艦娘達だったが、彼と接する内に徐々に感情を取り戻していった。

自分達は笑ってもいいのだ、辛い時は泣いてもいいのだと。

そんな彼女達を見て、提督も彼女達を救えた事を共に喜んだ。

だが、事態は彼の想像とは違う方向へと転がって行く。

 

人間らしい心を取り戻したのはいいが、その結果彼女達は彼に極端に依存する様になった。

一緒に御飯を食べたがる、何処へ行くのにも着いて行きたがる程度なら、まだ可愛げもある。

最初はすぐに飽きるだろうと(たか)(くく)っていたが、彼女達の行為は一向に止む事が無かった。それどころか日に日にエスカレートし、彼は四六時中監視されている様な物だった。

彼女達は彼が鎮守府から離れる事を極端に嫌がった。

ある時、公務で外出しようとすると外は危険だからと行く手を阻まれた。幾ら何でも大袈裟なと一笑に付す彼だったが、当の彼女達は真剣その物で、遂には鎮守府総出で彼を阻んだ。その鬼気迫る表情に彼も大人しく言う事を聞かざるを得なかった。

ある日、彼女達の監視を掻い潜り車で外出しようとすると、何故かブレーキが利かず事故を起こしかけた。

またある時は、艤装の点検中に不慮の爆発事故が起こり、危うく巻き込まれかけた。

そんな事がある度に、彼女達から自分達と一緒にいれば安全だ、もう自分達の目の届かない所には行かない様にと釘を刺された。

 

そんなある時、公務に一切顔を出さない彼に大本営から出頭命令が出た。

当然彼女達は反対したが、このままでは自分は解任されるかもしれないと諭すと、渋々承諾した。

彼の提案で海路を行くと言い出すと、何かあってはと松風、朝風の二人が護衛に名乗り出た。

結果その予測は的中し、彼の船は深海棲艦に襲われた。

船から転落し、危うく深海棲艦の餌食になると思われた提督だったが、深海棲艦達は彼を襲う寸前で何故か撤退して行った。

 

この事件以来、彼の監視は一層強化され、最早彼に気の休まる時間は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうか、分かったよ。じゃあ…」

 

「て、提督、大変です!大本営から通達が…」

 

ある日の午後、提督が電話をしていると執務室に大淀が血相を変えて飛び込んで来た。大淀は提督が電話を切るのを待つと一枚の封筒を渡した。

 

「お電話ですか?どちらから…」

 

提督は大淀の質問を無視し手紙に目を通した。暫くして大淀に手紙を渡すと彼女に背を向けた。

 

「…明日、再び出張に行く」

 

「そ、そんな!」

 

「無理もないだろう。前回は深海棲艦に襲われたとはいえ、結局参加出来なかったんだからな」

 

「ですが…また同じ事になったら…今度も無事とは限りません!」

 

「…大淀、何度も言うが事故なんて度々起こる物じゃない。これじゃおちおち外も出歩けやしない」

 

「わ、私達はただ提督が心配なだけで…」

 

「大淀…俺の手紙を自分が出しておくからと預かってくれたな。あれは出したのか?」

 

「え…は、はい。買い物がてら出しましたが…」

 

「そうか…それはおかしいな。今、実家に電話したんだが、俺からの手紙は一通も届いてないそうだ。おかしな事もあるもんだな」

 

「そ、それは…」

 

「手紙だけじゃない。大本営に送る書類にも、今俺がどんな状況か書いて送ったんだ。だが大本営からは何の音沙汰も無い。…確か向こうに送る事務手続きは、全て大淀に任せていたな」

 

「ま、待って下さい。手紙の件は…謝ります。申し訳ありません。ですが書類の件は私にも言い分があります」

 

「言い分?改竄した事にか?」

 

「か、改竄なんてしていません!ですが提督は書類に…その、まるで私達に監禁されているかの様に書かれていました。ですから視察に来て頂いた方に誤解があったと言って()()にお引き取り願っただけです」

 

「…やはりそんな事だったか。何度も催促しているのに、おかしいと思ったんだ」

 

「て、提督は今の状況に不満なんですか?必要な物は言って頂ければ何だって用意します。そ、その…提督…差し出がましい様ですが…」

 

「…何だ」

 

「提督は男性の方ですし、その…もしかして異性の温もりが欲しいのではと思いまして。あ、あの…私そういった事は初めてですが…私で良ければお相手致します」

 

「…そんな気分じゃない」

 

「な、何故ですか?私、精一杯ご奉仕させて頂きます。それとも鹿島さんと違って私みたいな地味なタイプでは、そんな気になりませんか?」

 

「そんな話をしてるんじゃない。今のお前達は少し神経質だと言ってるんだ。お前達は俺を鎮守府に縛り付けるつもりか?」

 

「そ、そんなつもりは…」

 

「明日は予定通り出張に向かう。まさか止めたりはしないだろうな?」

 

「で、ではせめて私が護衛に!」

 

「大丈夫だと言ってるだろう!」

 

「て、提督…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀の前では口にしなかったが、彼の読んだ手紙には出頭命令以外の事も書かれていた。それによると軍の関係者がこちらに向かったが、軒並み行方不明になっているらしい。不審に思った近隣の艦娘が様子を見に来たが、(ことごと)く門前払いされて鎮守府に近付く事も出来なかったらしい。

 

〈なんて事だ!そんな事が起きてたなんて全く知らなかったぞ!

 

〈それに軍の使者が行方不明?そんな馬鹿な事があるか!考えたくはないが…アイツらが俺の知らない所で…?

 

〈大淀…アイツがそんな事をする奴だなんて考えたくはないが…もう昔のアイツとは違うと思ったのは、俺の錯覚だったのか…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ、君が大淀だね。今日からよろしく』

 

『…私は大淀です。私の事は只の兵器として扱って下さい。不満は言いません』

 

『…やはり前の提督の事を引きずっているみたいだね』

 

『…何の話ですか?』

 

『鎮守府を見て回ったけど、みんな君みたいに表情が暗かったよ。どうやら前の提督はあまり良い人ではなかったみたいだね』

 

『人間の事は私には解りません。それに私達は兵器です。その本分を果たすのが務めかと…』

 

『…でも女の子だろう?』

 

『お、女の子…?な、何を言ってるんですか?私は艦娘ですよ。艦娘に男も女も…』

 

『人間の様に接するのは嫌かい?』

 

『わ、私は兵器です。そんな扱いをされても…どうすればいいか解りません』

 

『君は艦娘だけど、同時に女の子でもあるんだ。せっかくそんなに可愛く生まれたんだ。もっと楽しく生きないと損だよ』

 

『か、艦娘は深海棲艦を倒すのが使命です。その私が…男だろうと女だろうと関係ありません』

 

『う~ん…可愛くない女の子を口説く趣味はないんだけど…』

 

『て、提督は艦娘の私をからかっているのですか?』

 

『アハハ、ごめんごめん。でもさっきも言ったけど、せっかく女の子に生まれたんだ。戦うだけの人生なんて詰まんないよ』

 

『敵を倒して、いつかは自分も沈む…それ以外の人生なんて…』

 

『すぐには無理かもしれない。でもきっと、君が笑って過ごせる鎮守府を作ってみせるよ。だから大淀、俺に協力してくれないか?』

 

『…やはり提督の仰ってる事はよく解りません。ですが、それが命令なら従います。明石共々よろしくお願いします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈くそ…やはり車は故障したままか。明石に頼んだのに、まるで手を付けてないじゃないか!〉

 

「提督さん♪」

 

「うわっ!「きゃっ!」

 

「な、何だ鹿島か…驚かすなよ」

 

「それはこっちのセリフですっ!人の顔見るなり驚いて…私の顔そんなに怖いですか?」

 

「…こんな所でどうしたんだ?」

 

「ウフフッ、それは私の質問ですよ。提督さん、出張は明日ですよね?どうして車に乗ろうとしてるんですか?」

 

「大淀から聞いたのか。別に…買い物にでも行こうと思っただけだ」

 

「う~ん…今日は止めておいた方がいいですよ。明日の話聞いて、皆さん気が立ってますから。それに車も直ってないんですよね?」

 

「じゃあ歩いてでも行くさ」

 

「ええ、そう仰ると思ってここに来たんです。提督さん、用事があれば私達に仰って下さい。そ、その…エッチな本でも鹿島、頑張って買ってきます!」

 

「前も聞いたが…何で俺をここから出そうとしない?」

 

「もうっ!人聞きの悪い事言わないで下さい!私達は提督さんの身を案じてるだけなんです!」

 

「身を案じる…?鎮守府に居ても爆発事故に巻き込まれそうになった事もある。この車だってそうだ。自分で調べてみたがブレーキが誰かに切断されていた」

 

「て、提督さんは私達が犯人だって言うんですか?」

 

「そうは言ってない。だが、そう考えるのが普通だろ?俺の命を狙ってる奴が身内にいるって考えるのが…」

 

「て、提督さん!それは違います!提督さんの命を狙う人なんて、ここにはいません!ただブレーキが利かなければ外には行けないって…あっ!」

 

「…やっぱりお前達が犯人だったか。まぁいい。俺を殺すつもりじゃないって解っただけでも充分だ」

 

「ま、待って下さい、提督さん!」

 

「鹿島…お前達は少し度が過ぎている。少しそれを考えてくれ」

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈やはり鹿島達が犯人だったか。となると明石も含め鎮守府全てがグルだと考えるべきか。

 

〈しかし、あの鹿島が…。そう簡単には心の傷は治らないのか。俺は…もしかしたら…余計な事をしたんだろうか…〉

 

 

 

 

 

 

 

『…鹿島?顔色悪いみたいだけど大丈夫か?』

 

『す、すみません…すぐに任務に取り掛かります。本当にすみません…』

 

『そんなに謝らなくてもいいよ。大淀からも話は聞いてるよ。その…前任とは何度かトラブル起こしたとか』

 

『私が悪いんです。自分と個人的に付き合えば任務なんかしなくてもいいと…その申し出を断った私が悪いんです…』

 

『…何か不満でも?』

 

『将来は本当の夫婦になって、自分の子供を産んでくれと…だから自分の言う事を聞けと。提督さんも…そうなんですか?』

 

『…あぁ、そうだね』

 

『…分かりました。提督さんがそう仰るなら従います。でもお願いです。他の皆さんは…大淀さんや松風さんには何もしないで下さい。それとも…私一人では不満ですか?』

 

『かもしれないね。でもね…俺は一つだけ違うかな』

 

『違う…?提督さんは前の方と同じく男の人です。男の人の考えてる事は皆さん同じです。提督さんもそうなんですよね?』

 

『あぁ。でもね、俺は口説いてからじゃないと、そんな事はしたくないんだ』

 

『口説く…?そんな事しなくても解体すると脅せば皆さん従います。それに私は人間じゃありませんよ』

 

『俺は人間の…可愛い娘しか口説かないよ』

 

『わ、私は艦娘ですっ!そ、それは練習巡洋艦で皆さんに比べれば非力かもしれません。で、でも私は…!』

 

『前任の提督も君の事を女の子として見てたから、そんな事をしたんじゃないかな。でも俺はそれだけじゃ不満かな。鹿島にも俺って人間を評価してほしいんだ』

 

『そ、そんな事より私の艦娘としての力を評価して下さい!私は…人間の女の子の様になんて振る舞えません。それでも…そうしろと仰るんですか?』

 

『ああ。だから鹿島にも艦娘の力だけじゃなく、女の子としての魅力も見せてほしいな』

 

『…やっぱり提督さんの仰ってる事は理解出来ません。ですが、私をそう見たいなら幾らでも見て下さい。こんな私で良ければお好きにどうぞ』

 

『その時はスカートの中も…』

 

『下着が見たいんですか?…これでいいですか?…す、すみません、やっぱり隠していいですか?少し…恥ずかしいです…』

 

『あ、やっぱり可愛い笑顔だね。こりゃ前任が惚れるのも無理ないな』

 

『…艦娘に惚れるなんて物好きな提督さんですね。提督さんの事が理解出来るか分かりませんが努力はします。これからよろしくお願いします』

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝。

まだ迎えの船が来る時間ではないが、提督は一人海を眺めていた。

 

〈正面からは無理…港も駄目。やはり…あの手段しかないか。と言っても()()()()が俺の誘いに乗ってくれるか…全ては運次第か…〉

 

「おはよう司令官、今日もいい朝ね!」

 

「あ、朝風…と松風か」

 

「酷いな、まるで僕が姉貴のオマケみたいじゃないか」

 

「あんたは妹なんだもの。私のオマケみたいなものよ」

 

「夜に()()な方が男の人にはモテるんだよ。僕みたいにね」

 

「姉より優れた妹なんて存在しないわよ!…それに何で夜元気な方がモテるのよ?」

 

「僕の口からはちょっと…」

 

「夜戦の事?川内さんってモテるの?私は神通さんの方が殿方に人気あると思うけど」

 

「姉貴のそういう所、僕ホント好きだよ」

 

「松風…それに朝風、何でここに?まだ早朝だぞ」

 

「それは…い、いいじゃない!朝の綺麗な空気を吸いに来たのよ!悪い?」

 

「いや、別に…」

 

「僕は付き添いさ。姉貴の()()のね」

 

「ま、松風っ!」

 

「…そんな事より司令官、キミも本当に懲りないな。もう諦めたらどうだい?」

 

「な、何の話だ?」

 

「そうよ、何の話よ松風」

 

「…僕達だって今日は仕方ないと割り切ってる。司令官に辞められたら元も子もないからね。でもね、そこまでだよ。僕達が譲歩出来るのは」

 

「…あくまで俺をここから出さないつもりか」

 

「それはこっちのセリフだよ。こんな可愛い僕達に囲まれて、一体何が不満なんだい?」

 

「そうよ司令官、アナタちょっと欲張り過ぎよ。私だけでも多いのに松風だっているのよ。両手に花じゃない」

 

「上手い事言うね、流石は姉貴。それに僕達だけじゃない、大淀さんや鹿島さんだっているじゃないか。あの二人は僕から見ても可愛いと思うよ」

 

「何言ってるのよ松風、第五駆逐隊の旗艦を務めた私が一番に決まってるじゃない。それにあの二人…あ、あんな破廉恥なミニスカートなんて邪道よ!ねぇ、アナタもそう思うでしょ?」

 

「お前の言いたい事は解る「でしょう?」だが俺はペットじゃない。籠の鳥にはならない」

 

「じゃあ、その羽をむしってあげようか?事故なんて何処にでも転がってるものだよ。また爆発事故に巻き込まれなきゃいいけどね」

 

「…やはり前の事故はお前の仕業か」

 

「事故…?何言ってるのよ、アレは只の不発弾でしょ?」

 

「そうさ、姉貴の言う通りアレは只の不発弾さ。でも、僕と一緒にいればそんな事故起こりはしないよ。僕、こう見えても運は良い方なんだ」

 

「何言ってるのよ松風、運なら私の方が良いじゃない。やーねぇ、全く…」

 

「姉貴、少し黙っててくれないか…」

 

「…分かった。俺は何処にも行かない。これでいいんだろう?」

 

「アハッ♪案外物分かり良いんだね。そうだよ、それで良いんだよ。僕、意外としつこいからね。例えキミが何処に逃げたって見つけてあげるよ。必ずね…」

 

「何言ってるの?アナタ今日の出張サボる気?駄目よ、そんなの私が許さないわよ!」

 

「…もう好きにしてよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈あの爆発事故は、やっぱり松風の仕業か。俺を殺すつもりはないみたいだが…動けなくするのが目的だったのか。

 

〈松風…姉想いの良い奴だったのに。直接行動に出る分、大淀や鹿島よりタチが悪い…

 

〈前任の提督がどんな奴だったか知らんが…今なら少しだけ同情出来るよ〉

 

 

 

 

 

 

『君が松風か。少しいいかい?』

 

『キミは…新しい司令官だね!お、お願いだよ!僕の頼みを聞いてほしいんだ!』

 

『頼み…何だい?』

 

『姉貴の…朝風が…司令官を…』

 

『朝風が…どうかしたのか?』

 

『前の司令官を殺してしまったんだ!で、でも姉貴は悪くないんだ!姉貴は僕を苛める司令官が許せなくて、ついカッとなって…わ、悪いのは僕なんだ!』

 

『朝風が…そうか、妙に暗い表情をしてるのはその為か』

 

『司令官の死体は港の僕達しか分からない場所に隠してある。バレない様に僕と姉貴とで毎日見張ってるけど…いずれ誰かが見付ける。そうなったら姉貴は…!』

 

『…そうか。それは良い事を聞いたな。じゃあ一つお願いがあるんだ』

 

『な、何だい?…いいよ、キミが望むなら何だってしてあげるよ。だ、だからお願いだよ!姉貴を解体するのは勘弁してやってくれ!やるなら僕を…!」

 

『今からお茶に付き合ってくれるかい?』

 

『へ…な、何を言ってるのさ。僕達は司令官を殺したんだよ?そ、そんな事をして何になるのさ』

 

『俺の望む事してくれるんだろ?』

 

『そ、そうは言ったけど…』

 

『もっと凄い事の方が良かったかい?』

 

『ああ!解体でも僕を自由にしてもいい!だからお願いだ。この事は誰にも…姉貴の事を許してくれよ!お願いだよ!』

 

『…そうだな。でもその前に松風や朝風の事をよく知りたいんだ。そんな事は…お互いを知ってからでもいいだろう?』

 

『そ、そんな事?ぼ、僕達は司令官を殺したんだよ?憎くないのかい…解体するんじゃ…ないのかい?』

 

『…しない。する訳がない』

 

『嘘だ。そうやって僕と姉貴を解体するんだろ?そうに決まってるさ!』

 

『そ、そんな事はない!』

 

『本当に…誰にも言わないのかい?僕達が…憎くはないのかい?』

 

『まぁ…少しは』

 

『そう…変わった人間だね。オーケー、ひとまずはキミの言う事を信じるよ。でもね、もし僕達を…姉貴を裏切る様な事をしたら…何をするか分からないよ…』

 

『あぁ、こちらこそよろしく』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行ってくる」

 

「お気をつけて!」

 

数時間後、迎えの船に乗る提督を鎮守府の艦娘達が総出で見守っていた。

 

「て、提督さん、やっぱり私も護衛に付いて行きましょうか?」

 

「アハハッ、鹿島先輩、僕達が信用出来ないのかい?」

 

「そうよ、司令官の護衛は私と松風で充分よ。鹿島さん達はお茶でも飲んでてちょうだい」

 

「…香取姉ぇから、新しい教練の手引きが届いたの。今度二人に試してみましょうね♪」

 

「な!ズルいわよ、そんなの!」

 

「そうだよ!どうして僕まで」

 

「護衛任務を無事終えたら、考え直してあげますよ」

 

「グヌヌ…これだから最近の若い娘は…脚で勝負出来るのは若いうちだけよ…!」

 

「姉貴、進水した年がバレるから止めて」

 

やがて汽笛が鳴ると、船は港を離れた。名残惜しそうに手を振る大淀達を尻目に、松風と朝風の二人は船に並走する様に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちは問題無いよ。姉貴、そっちはどうだい?」

 

「ええ、こっちも問題無いわ」

 

デッキに肘を付く提督の下で、海面を松風と朝風が滑っていた。いつ敵が出てもいい様に単装砲を構える朝風と比べ、松風は退屈なのか、巻き毛を弄ってはアクビをしていた。

そんな二人を見下ろしつつ、提督は海の彼方を、何かを探す様に眺めていた。

 

〈…やはり無理か。賭けは失敗だったか〉

 

提督が何かに落胆し、船内に戻ろうとした時だった。グラッと船が揺れると、船尾で大きな爆発が起こった。

 

「うわっ!!」

 

思わず尻餅を着いた提督は、船から落とされない様に手すりに掴まった。慌てて下を覗きこむと、そこには深海棲艦の潜水艦達が待ち構えていた様に姿を表した。

 

「せ、潜水艦だって!?何でこんな海域に!」

 

船に気を取られていた松風が、目の前に現れた潜水カ級、ヨ級達に向かって行く中、提督はその光景を眺める強い視線に気付いた。

 

「…!ま、まさか」

 

提督が目を凝らすと、白い長髪を(なび)かせながら一人の女がこちらへ向かって来た。空母棲姫だった。

 

「な、何だってあんな奴が!あ、姉貴っ、こっちへ来てくれっ!」

 

「ま、待ってて松風、今行くわ!」

 

空母棲姫は二人には目もくれず船を、その先にいる提督目掛けて疾走し続けた。その状況に驚いているのか、提督はその場に固まっている様だった。

 

「し、司令官っ!ここは僕達が何とかするから船の中へ戻るんだ!」

 

「そ、そうよ!司令官が逃げる時間位稼いであげるわ!だから早くっ!」

 

その場に固まってしまった提督を見ると、空母棲姫は無数の黒い球体を発生させ、命令する様に手を振りかざした。その手の指す方向、提督の乗る船へ殺到する化け物達。

 

「あ、危ないっ!」

 

「司令官っ!」

 

「くっ!」

 

次の瞬間、船体が爆発で激しく揺れると、提督は船から振り落とされた。海面に浮かぶ彼を数匹の化け物達が掴むと、主の下へと運んで行った。

 

「いやああっ!司令官っ!」

 

「くっ!ま、待てっ!」

 

落下の衝撃で気を失った提督を空母棲姫が抱き抱えた。彼女の乗る黒い鮫の様な艤装が反転し、船から遠ざかって行った。

潜水艦達に行く手を阻まれた松風と朝風の奮闘も虚しく、空母棲姫は二人から悠々と去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直、文字が判るか不安だったんだが…驚いたよ」

 

「驚イタノハコッチヨ。人間ノ…ソレモ私達ノ敵デアル艦娘達ノ提督ガ、アンナ事ヲ言ッテクルナンテ」

 

「ああ…俺も、この話に乗ってくれるかどうかは賭けだったんだがな」

 

「賭ケハ、アナタノ勝チノ様ネ。協力シタ私達ニハ何カ褒美ハ無イノカシラ?」

 

「あるだろう…ここに」

 

「…アア、ナルホド」

 

何処とも分からぬ場所、広い廊下を提督は歩いていた。その隣には彼を拐った空母棲姫や無数の深海棲艦が取り囲んでいた。

今、彼が彼女達と共にいるのは単なる偶然ではなかった。全ては彼が意図的に作り出した状況だった。

今から数週間前、彼が艦娘達の狂信的な依存に絶望し、自分はもう鎮守府から出られないのかと諦めかけた時、大本営からの出頭命令が下った。

それを聞いた提督は、ある奇策を思い付いた。

 

深海棲艦達に自分を拐ってもらおうと。

 

提督は艦娘達に自分が首になるかもしれないと説得し、海路で向かう事を提案した。深海棲艦が上手く現れるかは運次第だったが、幸いにも彼の願い通り現れてくれた。そこで彼はバランスを崩して船から落ちた振りをすると、目の前の深海棲艦にあらかじめ用意した手紙を入れた瓶を投げ、それを読んでくれと告げた。

彼の言葉に耳を貸さず殺される危険もあったが、瓶を受け取った潜水艦は撤退してくれた。

下準備を整えた彼は、もう一度出頭命令が来るのを待ち続けた。とは言え、深海棲艦達が人間の文字を理解出来るのか、理解したとして自分の話に乗ってくれるかは疑問だったが…

空母棲姫が自分を殺さず連れ去ろうとした瞬間、彼は理解した。

自分の企みは成功したのだと。

 

深海棲艦が自分達人間の敵なのは彼も理解している。だが、今の彼にはそんな事はどうでも良かった。

後は野となれ山となれ、彼は艦娘達から解放された喜びに胸を撫で下ろした。

 

「コッチヨ」

 

長い廊下を抜けると大広間に出た。その中央に一人の女が佇んでいた。腰まで届く黒い髪、肩を出した黒いドレスを身に纏った女は彼に手を差し出した。

 

「ウフフ…待ッテタワ…初メマシテ…デイイノカシラ?」

 

「あ、あぁ…何て呼べばいいのかな」

 

「アナタ達ハ戦艦水鬼ッテ呼ンデルワネ。好キニ呼ベバイイワ」

 

「う~ん…じゃあ貞子で「戦艦水鬼デイイワ…本題二入ルケド、アナタガココニ来タ理由ハ手紙デ読ンダケド…本気ナノ?」

 

「…ああ。こんな所に来て無事に済むとは思っていないさ。二~三日自由にさせてくれたら、煮るなり焼くなり好きにすればいい」

 

「ソレナンダケド…アナタ、艦娘達ノ指揮官ダッタノヨネ?」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「私達ノ提督ヲ…ヤッテミナイ?」

 

「深海棲艦の…提督?」

 

「流石二自分ノ部下達ト戦ウノハ気ガ引ケルカシラ」

 

「それもあるが…その、俺はてっきり殺されるものとばかり思っていたから…」

 

「元々アナタノ話二乗ッタノモ、ソレガ目的ナノヨ。私達ハ(チカラ)ダケナラ艦娘ヨリ強イケド…個体数ハ圧倒的二少ナイノ。長イ目デ見レバ私達ノ方ガ分ガ悪イノヨ。

 

「ソンナ時二アナタノ話ガ舞イ込ンデ来タノ。ダカラ考エタノヨ。コレハ使エルッテ」

 

「そうか…お前達はお前達で色々と大変なんだな」

 

「ドウカシラ…?モチロン自由ハ保証スルワ。ソレニ欲シイ物ガアレバ用意サセルワヨ」

 

「もし断ったら?」

 

「魚ノ餌ニナルノト艦娘達ノ所ヘ送リ返スノト、ドッチガイイカシラ?」

 

「もうアイツらの所に戻るのはな…それに、そうだな、艦娘と…人間の敵に回るのは少し抵抗あるが…分かったよ、そうさせてもらうよ」

 

「決マリネ!コレカラヨロシクネ、人間サン」

 

「…提督でいいよ」

 

「フフッ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈まさか深海棲艦の提督になるとは夢にも思わなかったな。かと言って断っても殺されるだけだし…〉

 

〈まぁアイツらは艦娘じゃない。それに種族も違う。艦娘の二の舞…なんて事にはならないだろう〉

 

〈大淀、鹿島、松風、朝風…悪いな。今日からはお前達の敵になりそうだ。悪く思うなよ…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈よくやったわ空母棲姫。大手柄よ!〉

 

〈そうね、これで私達の戦力が上がるわ〉

 

〈…そ、そうね!もちろんその通りよ、うん…〉

 

〈…アナタ…何を考えてるの?〉

 

〈な、何も考えてないわよ!た、ただ…思ったよりイイ男だな~とか…その…このドレスどう思ってるかしらって…〉

 

〈不埒な事考えないでよ!彼は人間よ?全く、私達をそんな目で見る訳ないでしょ?〉

 

〈へ~…じゃあ聞くけど、いつもは半分破れた様な格好してるわよね?どうして空母水鬼の格好してるワケ?〉

 

〈え!?べ、別に…その…迎えに行く訳だし…その…身だしなみは大事じゃない!〉

 

〈よく言うわよ、そんなの気にした事ない癖に。アナタが大股開きで艤装に乗る度に見たくもないマンコ見せられるコッチの身にもなってよ!〉

 

〈そ、それを言ったらアナタの前髪こそ何なのよ!何でクロスしてんのよ!この貞子!〉

 

〈だから貞子って誰よ!この開脚性器!〉

 

〈字が違うわよ!〈字って何よ!〉だいたいそれ言ったらアンタのツノ何なのよ!黒光りした卑猥な物生やしてんじゃないわよ!〉

 

〈んなっ!な、何て卑猥なの!そんなんだからリコリスに『アナタってとっても個性的ね』なんて皮肉言われるのよ!着るか脱ぐかハッキリしなさいよ!〉

 

〈(え?アレ皮肉だったの!?)う、うっさいわね、マン毛ボーボーの癖に!悔しかったら私の格好してみなさいよ!〉

 

〈グヌヌ…〉

 

〈ギギギ…〉

 

〈…まぁいいわ。どの道彼は逃げられない。せいぜい私達の役に立ってもらうわ〉

 

〈そうね。ところで…今夜、彼と食事しようと思うの…〉

 

〈ハッ♪あのヒラメのフルコース?人間があんな物食べる訳ないじゃない!その点、私はワインも用意してあるし?彼、喜ぶわよ〉

 

〈あ~、この間リコリスと沈めた船から、かっぱらってきたヤツ?その事バラしたら飲んでくれるかしら?〉

 

〈グヌヌ…!〉

 

〈ギギギ…!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督が…拐われたと言うんですか!?」

 

松風と朝風の報告を受けた鎮守府は騒然となっていた。彼女達も、そう何度も災難が降りかかる訳がないと思っていたが、それを嘲笑う様に最悪の事件が起きてしまった。その心境は筆舌に尽くし難い。

 

「ご、ごめんなさい…この私がいながら…」

 

「姉貴は悪くないよ。言い訳するつもりはないけど…今回は僕達の手には追えなかったんだ…すまない」

 

ガックリと肩を落とす朝風と松風に大淀、鹿島の二人は責める気にもなれず、何と声を掛けたらいいものか途方に暮れた。

 

「…仕方ありませんね。空母棲姫が相手では私がいた所で勝てるかどうか…」

 

「ええ、大淀さんの言う通りです。あなた達は悪くありませんよ。そう気を落とさないで下さい。それに…」

 

「ええ。松風さん、もう一度聞きますが、提督は殺されなかったんですね?」

 

「う、うん…僕も不思議に思ったんだけど、空母棲姫が司令官を抱き抱えて…」

 

「そう、私も見たわ!てっきり私と松風を沈めにくると思ったら…一体どういうつもりかしら?」

 

「それは解りませんが…これからやる事は、皆さん解りますね?」

 

「ええ!もちろんです大淀さん。提督さんは生きています。恐らく私達が助けに来るのを待っているはずです!」

 

「うん、僕もそう思うよ鹿島先輩。でなきゃ、あの場で仕留めていたはずだからね」

 

「そうね松風、私もそう思うわ!あぁ、可哀想な司令官、今頃何してるのかしら。私に会えない寂しさで自殺したりしないかしら?」

 

司令官二人ける艦娘なんて姉貴位だよ

 

「え?何か言いましたか、松風さん」

 

「う、ううん!大淀さん、何でも言ってくれよ!僕もあの司令官には借りがあるからね。司令官を助ける為なら何だってするよ!」

 

「ええ…今こうしている間にも、提督に危険が迫っているかもしれません。この辺りなら…棲地はこの辺でしょう。直ちに艦隊を編成しましょう。

 

「待っていて下さいね、司令官…」

 

 

 

 

 

数日後、大淀率いる艦隊は戦艦水鬼の艦隊と激しい激戦を繰り広げる事になった。だが、その深海棲艦を率いているのが自分達が救おうとしている提督だと知るのは、少し先の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




元ネタは動画で知ったゲームです。マリオみたいにお姫様を助けに行く主人公が実はストーカーでお姫様は彼から逃げていたみたいな。
最後の水鬼達の会話はカットしようか迷ったんですが…まぁいいやと思って載せました。いらないと思った方すいません。

次は天龍の話です。フフフ、読みたいか?
その前にいつものリメイクあるかも…。







艦娘型録

提督 よく見りゃ空母棲姫って凄いカッコしてるよね。え?見てないって。ホント、見えてないってば!

大淀 一体何がいけなかったのかしら。やっぱり初対面の印象がまずかったのかしら。うう…昔に比べれば明るくなったと思うのに…。

鹿島 こんな事なら車のブレーキ壊すんじゃなかったな。せめて一回位、デート行きたかったな~。香取姉ぇもいないし…その…少し位遅くなっても…大丈夫です!こ、心の準備も出来てますよ、提督さん。

松風 最後に脅したのはマズかったかな。でも裏をかいてくるなんて…やるね。さっさと動けない体にしとけば良かったかな。

朝風 ねぇ松風。みんなに…バレてないわよね?え?司令官、知ってるの?何で?…アナタが喋った?一体どういうつもり?まさか司令官、それで逃げようと…ち、違うのよ司令官、あれはつい魔が差しただけなのよ!本当よ!

戦艦水鬼 ね、ねぇ…このドレス…どう?え?髪型?まさかアナタも貞子って言うつもりじゃ…え…もこっち?誰それ。知り合いなの?

空母棲姫 え?どうして破れてるって…たまたまよ、今日はたまたま!ホントよ!ねぇ、どこ見てるの?やだ、もしかして…見えてる?


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