「出来らぁ!」
「今なんて言った?」
「同じ料理でもっと美味しい弁当を作れるって言ったのよ!」
「こりゃあどうしても美味しい弁当を作ってもらおうじゃないか」
「えっ?同じ料理で弁当を!?」
ある鎮守府の近海で遺体が上がった。
偶然、漁師が引き揚げた物で、死後かなり経過しているのか完全に白骨化していた。
当初は単なる溺死と思われたが検死の結果、胸部を撃たれた事が死因と判った。
死後十数年経過しており身元が分かる物が一つも無い事から、人知れず無縁仏として埋葬された。
「今日からここが…」
ある鎮守府の正門に一人の若者が立っていた。
白い軍服に身を包んだ彼の顔は、期待と不安に揺れていた。
彼が門をくぐり中庭へと進んだ時だった。
ドサッと何かが倒れる音に彼は横を振り向いた。見ると桜の木の下で、一人の女性が尻餅を付いていた。
「あの…大丈夫ですか?」
「はい、お恥ずかしい所を…あっ」
青年は手を差しのべた。彼女は暫く呆気に取られていたが、彼の手を握ると立ち上がった。
「……」
立ち上がった彼女は彼の手を握ったまま立ち尽くしていた。見ればどことなく顔も上気し、彼の顔に見とれているようだった。
「あの…手を…」
「…はっ!私ったら…申し訳ありません」
「い、いえ…」
彼女は慌てて手を話すと、両手で顔を隠した。
年の頃は二十代後半、と言った所だろうか。淡い桜色の着物に濃紺の袴、その立ち振舞いにはどことなく威厳がある様にも見える。
「提督さん、ようこそ私達の鎮守府へ」
「僕の事を知って?」
「ええ。龍驤さんからお聞きしています。改めてご挨拶させて頂きます。私は鳳翔型軽空母の鳳翔と申します。これから宜しくお願いしますね」
青年も慌てて一礼すると、鳳翔は彼のバッグを手に取った。
「自分で持ちますよ」
「いえ、この位させて下さい」
鳳翔はこちらですと、執務室への案内を買って出た。
〈綺麗な人だな…〉
青年には両親が居なかった。
正確には父親と母親の顔を覚えていなかった。
初老の老夫婦が彼の育て親だったが、物心が付いた頃、自分達は実の両親ではないのだと明かされた。彼が親だと思っていた二人は祖父母であり、自分は孫に当たると告げられた。
どうして自分には両親が居ないのか?
ある時、彼が祖父に尋ねた事があった。
祖父が言うには、父親は軍人だったが深海棲艦との戦いで戦死。母親もそれに巻き込まれ自分を産んですぐに亡くなったそうだった。彼は幼心に、いつか軍人になって両親の仇を討つんだと心に誓った。
祖父が見せてくれたアルバムには、軍服に身を包んだまだ若い彼の父親が写っていた。
母親の写真は無いのか尋ねたが、あいにく一枚も残っていないそうだった。
ある日、今は自分の部屋である父親の部屋の奥から何枚かの写真が見つかった。そこには父と共に一人の若い女性が写っていた。彼はこの女性が自分の母親だと理解した。彼はその写真をロケットに加工し、大事に持ち歩く事にした。
彼が十歳になる頃、妖精と話している所を見た祖父が、誰と話しているのかと尋ねてきた。彼はこの時初めて自分以外には妖精が見えない事に気付いた。学校の友達も妖精が見える者はおらず、彼はこの事は内緒にしようと考えた。
やがて彼は希望通り軍人になった。
ある時、彼が妖精が見える事を知った上層部が、彼に提督にならないかと話を持ち掛けた。
妖精が見える者が深海棲艦と戦える艦娘の提督に成れるのだと知った彼は、二つ返事で引き受ける事にした。
「いや~遠路はるばるご苦労さん!」
提督が執務室に案内されると、一人の少女が彼を出迎えてくれた。
「はは、こんにちは。え~と、君は吹雪型かな?…それとも暁型…」
「暁型なのです!…って誰が駆逐艦やねん!「あちょぷ!」
少女のキレのいい水平チョップが提督の胸に炸裂した。
「そ、そんな強くやったつもりナイんやけど…か、堪忍な(あちょぷって何や)」
「もう、龍驤さんったら…(あちょぷ?)」
「え?君も艦娘だろ?駆逐艦じゃないのかい?」
「…次は本気で叩き込んだろか?「龍驤さん!」
「フフッ、冗談や。ウチの名前は龍驤。そこに居る鳳翔と同じ軽空母や。よろしゅうな」
「え?軽空母?」
「…何や?ウチが軽空母なんが、おかしいんか?」
「い、いやその…」
「安心しい。ウチと鳳翔はこの鎮守府の一番の古株や。こう見えても多分キミより年上や」
「ええっ!?」
明らかに未成年にしか見えない彼女が、自分よりも年上。提督は思わず鳳翔に振り返ると、彼女は恥ずかしげにうつ向いて首を縦に降った。
「キミの事は色々聞いとるで。将来有望な若モンやってな。何か分からない事があったら何でも聞きや♪「いてっ!」
笑顔で背中を叩かれた提督は、再び鳳翔と龍驤を見比べた。艦娘の外見がほとんど変化しない事は知識として知っていたが、実際に見てみると俄には信じられないと背中を擦りながら彼は思った。
『うわあっ!!』
『航空部隊、発艦!!』
『…え…な、何だ?』
『あの…いくら駆逐イ級とはいえ、銃で立ち向かうなんて危ないですよ』
『わ、分かってるさ!だが、鎮守府の中まで来たんだ。軍人の俺が逃げる訳にはいかないだろ!』
『フフッ、勇ましいですね。でもここから先は私達艦娘に任せて下さい』
『か、艦娘…?じゃあ君が…』
『鳳翔、そっち行ったで!!』
『はい!龍驤さん、今行きます!じゃあ…』
『ほ、鳳翔…って言うのか、君は?』
『ええ。それじゃ、勇敢な軍人さん♪』
彼が鎮守府に着任して一ヶ月。
艦娘達とも打ち解け、何度かの海域攻略も成功させていた。
ある日の鎮守府の港。鳳翔を旗艦にした遠征部隊が帰投した。
「しれぇ、ただいま!」
「お帰り時津風、雪風…鳳翔さん」
「只今戻りました」
「今日は大成功だよ、しれぇ!」
「そうなのです!雪風も頑張りました!」
「そうか、偉いぞ~」
「もう、また子供扱いする~」
「ああ、ごめんごめん。時津風が可愛いから、ついな」
「…じゃあ許してあげる」
「司令!雪風も子供扱いして下さい!」
「大丈夫、雪風も可愛いから」
「じゃあ、しなくていいです!」
「あ、ああ…」
自分の前で騒ぐ駆逐艦を微笑ましく見つめる鳳翔に、提督は優しく声を掛けた。
「今日は思ったより早かったですね」
「ええ。珍しく敵と遭遇する事が無かったものですから。これも雪風ちゃんのお陰かしら」
「案外そうかもしれないですね」
「
「分かってるって」
「ところで提督、良ければ今夜、私のお店に来ませんか?」
「そう言えば鳳翔さん、小料理屋を出してるんでしたね」
「ええ。来て頂けるなら、腕に縒りを掛けますよ」
「それは楽しみですね。是非、伺わせて下さい」
「お待ちしています」
「しれぇ~、私も行っていい?」
「う~ん、酒もあるし時津風は駄目かな」
「ちぇ~っ、つまんないの」
「司令!雪風は行ってもいいですか?」
「良い子は早く寝るもんだぞ」
「じゃあ、行きたくありません!」
「お、おお…」
『あ、あなたは…また会いましたね』
『やあ鳳翔、君を探してたんだ』
『私を…ですか?』
『ああ。あの時は礼を言う暇も無かったからさ。あの時は君が来てくれなかったら危なかったよ。本当にありがとう』
『い、いいんですよ。私達はその為に生まれたんですから』
『そうだったな。君は艦娘だったっけ』
『ええ…あ、あの…何か?私の顔に何か付いてます?』
『ごめん!そうじゃないんだ。その…艦娘を見るの初めてで…』
『フフッ、そうですね。艦娘は私や龍驤さんを入れても十人もいないそうですから…もしかして、どこか変ですか?』
『い、いや…その逆だよ。その…凄い綺麗だなと思って…』
『え?…ありがとう…ございましゅ///』
『その…君さ、ここの鎮守府の艦娘なの?』
『はい。こちらでお世話になっています』
『そうなんだ。実は俺もさ、昨日からここで働く事が決まったんだ、よろしくな。名前は…』
「あら提督さん、こんな所に…珍しいですね」
提督が弓道場を訪れると、入り口で鳳翔と龍驤が何やら話している様だった。
「ああ鳳翔さん、加賀に用事で…あ、あそこか」
「せっかくやから、キミも練習してったらどや?」
「やめとくよ。剣道なら得意だが弓は持った事もない。そっちは龍驤達に任せるよ」
「へ~♪キミ、剣道得意なんか。じゃあ鎮守府に敵が来ても安心やな」
「ああ。お前の仇は取ってやるよ」
「そら心強い…って、勝手に沈めんなや!」
「悪い悪い。でも…あれ?龍驤って、弓使ったっけ?確か式神だった気が…」
「あ、あぁ。ウチは鳳翔に用があったんよ」
「ふ~ん。じゃあな、お~い、加賀」
提督が加賀と話し出すのを見た龍驤は、囁く様に鳳翔に呟いた。
「…分かってるやろな、鳳翔」
「ええ…心配し過ぎよ、龍驤さん」
「ウチも余計なお節介やとは思っとる…思っとるだけで済めば、ええんやけどな」
「…」
『こんにちは、今からお昼ですか?』
『ああ鳳翔。うん、今から昼飯だよ』
『そうですか、ちょうど良かった。あの…これ、私が作ったんですけど…良かったら食べます?』
『え?いいの?』
『は、はい。ただ…初めて作ってみたので、美味しくはないかもしれないですが』
『こんな美人に作ってもらったんだ。それだけでも感謝しなきゃ』
『そ、そんな…』
『いただきま~す♪』
『…ど、どうでしょう。美味しいですか?』
『…軽空母って、艦載機どの位積めるの?『どうして今そんな事聞くんです!?美味しくなかったんですか!?』
『い、いや…そんな事ないけど…『どうして目を逸らすんです!?』
『お、美味しいよ!うん…頑張って…食べて見せるよ『頑張って!?そんなに不味いですか!?』
『そ、そんな事ないって!ほら、ちゃんと食べるから』
『うう…私、料理の才能無いのかしら…』
『い、いや…初めてでこんなに作れれば上出来だよ。ただちょっと…味が濃すぎたかも』
『…あの、明日もう一度ここに来て下さい!こ、今度はもっと美味しいの作ってきますから!』
『あ、ああ…』
「あら、提督さん、来てくれたんですね」
「こんばんは」
実務を早めに切り上げた提督は、鳳翔の居酒屋を訪れていた。
「こんばんは、提督」
「ああ。加賀に…隼鷹も来てるのか」
「そりゃそうだよ。ここはあたしの別荘みたいなモンだからね。ニヒヒ」
「もう出来上がってるのか…」
「もう、隼鷹さんったら…さ、提督さん、こちらへどうぞ」
鳳翔に手招きされ、提督は座席に腰掛けた。
「それにしても、鎮守府にこんな所があったなんて。とても落ち着いてていい雰囲気ですね」
「だろ~?」
「なぜ得意気なんだ隼鷹…加賀に聞きましたけど…鳳翔さんは、この鎮守府、随分長いそうですね」
「ええ、お恥ずかしながら…」
「そりゃそうさ。鳳翔さんは最初の艦娘って言われてる位だからね!あたいらの師匠みたいなモンだよ」
「そうなのか隼鷹。知らなかったよ」
「ふふっ、お陰様で何とか轟沈もせずにやってこれました」
「確か最初に艦娘が現れたのが…俺が生まれた辺りって聞いたから…にじゅ「て、提督さんよ~!とりあえず一杯飲もうぜ~!」お、おい隼鷹」
〈提督さんよ…女に年の話は禁句だよ〉
〈あ、ああ…そうか、すまない〉
「そんな事より、さ、提督さん。どうぞ」
「美味しそうですね」
「あ、あれ~鳳翔さん。随分豪華だけど…あたしらと違くないかい?」
「そ、そんな事ありませんよ。その…そ、そう!提督さんにはこれからも来て頂きたいから…さ、サービスですよ」
「そ、それにしたって随分豪華だね…あたしもここに通って長いけど、こんな気合いの入った料理見た事ないよ…」
「そ、そうなんですか…じゃあ、とりあえず…」
「ど、どうでしょう…」
「…うん、とっても美味しいです。こんな美味しいの初めて…あ、あの…鳳翔さん?」
「…う…ううっ…」
「ちょっ…ちょっと鳳翔さん、どうしちまったんだい!?」
「あの…僕、何か変な事でも…?」
「ち、違います!ごめんなさい…その…玉ねぎが目に染みて…」
「な、何だい。びっくりさせないでくれよ。でも鳳翔さんが泣いてる所なんて初めて見たよ」
「そうなのか…あの、鳳翔さん、本当に美味しいです。今まで食べた中で一番美味しいです」
「は、はい…ありがとうございます…」
結局、提督が料理を食べる度に泣き出し、提督達に大丈夫かと心配される羽目になった。提督はもちろんだが、隼鷹や加賀もそんな光景に驚き、次の日には提督が鳳翔さんを泣かせたと鎮守府中で噂になった。
隼鷹と加賀は、なぜか三日間出禁になった。
『ど、どうですか?』
『…うん、美味しいよ!』
『ほ、本当ですか!?』
『凄いな。三日前とはまるで別物だよ。こんなに美味しくなるなんて』
『うふふっ。あれから何度も勉強したんですよ。龍驤さんも美味しいって言ってくれたから、今回は自信あったんです』
『そうなんだ…。でもこれだけ作れるなら艦娘辞めても料理屋で食べていけるんじゃない?』
『そ、それは褒めすぎですよ。でも…そんなに美味しかったですか?』
『ああ。これなら毎日だって食べたい位だよ』
『…明日も…作ってきましょうか?』
『え?いいの?』
『はい。最近は大きな戦いも無いので…暫くは大丈夫かと…』
『そうなんだ。でも、明日は大丈夫だよ』
『え?や、やっぱり本当は美味しくなかったんですか?』
『違う違う。明日は…休みで、外に出掛けようと思ってるんだ』
『そ、そうなんですか…何か用事でもあるんですか?』
『用事って訳じゃないけど…俺、恋人がいるんだ』
『…え?』
『その…来年に結婚するんだ』
『…そ、そうだったんですね!おめでとうございます』
『ありがとう…だから、明日はいいよ』
『…分かりました』
「じゃあ加賀、旗艦を頼む」
「分かりました」
数日後、加賀率いる部隊はある任務に赴く事になった。出発までの間、艤装の整備で時間を潰そうと思った加賀はドックへと向かおうとしていた。
〈あら、あれは…鳳翔さんと…青葉?珍しい組み合わせね〉
加賀や鳳翔の居る空母寮の隅で、鳳翔と青葉の二人が談笑している様だった。
声を掛けようと思った加賀だが、考えてみれば特に用も無かったなと立ち去った。
『…今日は楽しかったよ。じゃあまた』
『はい。もうすぐ結婚なんですから、体に気を付けて下さいね』
『ああ』
『わ…びっくりした。あの…何か?』
『急に悪いな!この写真の男、知ってるやろ?』
『え、は、はい。私の婚約者ですが…』
『ウチ、アイツと同じ軍で働いてるんやが、アイツ大怪我したんや!』
『ええっ!ほ、本当ですか!?』
『ああ。アイツがアンタに会いたがっててな。向こうに船を用意してる。一緒に来てくれんか?』
『は、はい!分かりました!』
「ふぅ、これで一段落ですね」
「ええ。ご苦労様です」
「もう…敬語はやめて下さいって言ってるのに…」
夜の執務室。
鳳翔の手伝いもあり思いの外デスクワークを終わらせた提督は、椅子に深く腰掛けた。
「すいません。まだ慣れてなくて…」
「いいんですよ。私も暇ですから」
鳳翔は慣れた手つきでお茶を淹れると、机に置いた。
「…うふふっ♪」
「…何か?」
「あ、いえ!…やっぱり提督さん、まだお若いだけあって、仕事熱心だなと思いまして」
「覚えなきゃいけない事は山程ありますからね。この程度で根を上げてられないですよ」
「…でも、提督さん、まだお若いし、仕事は幾らでもあったんじゃないですか?どうしてまた軍人になろうと…?」
「そうですね、鳳翔さんにはまだ話してませんでしたね」
提督は鳳翔にどうして自分が軍人を目指したかを話した。自身の生い立ち、父親が軍人だった事、母親が戦いの犠牲になった事…。
「まぁ…そうだったんですね。それはお気の毒に」
「いえ、そうでもないですよ。祖父母はとてもいい人でしたから、特に不満は無かったです…いや、一つあったかな」
「…何です?」
「母の事です」
「…お母さま、ですか」
「ええ…」
そう言って提督は、胸元から小さなロケットを取り出すと、鳳翔に見せた。
「…!!」
「…鳳翔さん?」
「い、いえ…その…とても綺麗な人ですね」
「ええ。でも、母について知ってるのは顔だけなんです」
「…と言いますと?」
「父と会った訳じゃないですが、祖父母から父はどんな人だったかは聞いてます。ですが母については知らないの一点張りで…。
「どうも父と母は駆け落ちだったらしく、祖父母もあまり良く思ってないらしいんです。偶然、父の部屋でこの写真を見つけて…形見変わりにこうしてるんです」
「…そうだったんですか」
古い思い出を懐かしむ様に眺めていた提督は、ロケットを胸元へと閉まった。
「やっぱり…お母さんに会ってみたいですか?」
「それは…そうですね。どんな人だったんだろうとか、父と何があったんだろうとか、聞きたい事はありますよ」
「そうですか…そうですよね…」
「でも最近はそんな気持ちも薄れてきましてね。今はもっと知りたい人がいまして…」
「…それは誰ですの?」
「…」
「…え?て、提督さん?」
提督は何も言わずに鳳翔を見つめていた。鳳翔も提督の言わんとしている事に気付き、頬を赤らめた。
「も、もう!提督さん、冗談はやめて下さい!」
「冗談のつもりはないんですが…」
「で、でも…この鎮守府には加賀さんや青葉さんみたいな可愛い娘が居ます。わ、私なんかが…」
「…そうですね。でも鳳翔さん、答えは今すぐでなくても構いません。覚えておいて下さい…」
「提督さん…」
「邪魔するで~♪」
不意に部屋のドアが開き、呑気な顔の龍驤が入って来た。提督も鳳翔も急に気まずくなりお互い顔を反らした。
「提督さん、ウチの出撃の…事で…」
「あ、ああ龍驤!そう言えばまだ言ってなかったな。悪い」
「…あ!その前に鳳翔に用事があったわ。提督さん、すまんが鳳翔借りてええか?」
「あ、ああ。鳳翔さん…」
「…それでは今日はこれで」
「…どういうつもりや?」
「どうって…龍驤さん、何を怒っているの?」
「とぼけんなや!自分、鏡見てみぃ!まるで恋する乙女って顔やぞ!」
「そんな事ないわよ…そんな事…」
「はぁ…なぁ鳳翔、気持ちは解る。けど、アイツの事はただ見守るだけ。ウチにそう約束したのは誰や?」
「な、何もやましい事は…」
「…ウチもアンタに
「大丈夫よ龍驤さん。そんな事ある訳ないわ」
「ホントに解っとるんか?アイツはアンタの…
『あ、あの…船はどこに…』
『すぐに来ますよ…三途の渡しが』
『あ、あなた誰です?ど、どうして弓矢なんか持ってるんですか?あ、あの人はどこです!?』
『…あなたがいると、あの人は私を見てくれないの。それに、あなたにあの人が守れるの?只の人間のあなたに』
『きゃああっ!!…あ、あなた…』
『…』
『ありがとう龍驤さん。まさか協力してくれるなんて思わなかったわ』
『鳳翔、何も殺さなくても…身を引く様に脅すだけじゃなかったんか?』
『気が変わったのよ。彼女の幸せそうな顔を見ていたら、何か無性に…ね』
『だ、だからって…』
『龍驤さんも本当はあの人の事…そうでしょ?』
『それは…』
『さっきも言ったけど…あの人は人間よ。私達艦娘と一緒にいた方がよっぽど安全よ。人間の女といたって何も出来やしないわ。これはあの人の為なのよ』
『ほ、鳳翔…』
『龍驤さんは先に帰ってて。私は彼女を捨ててくるわ』
「加賀さん、敵が逃げて行きます!」
「ええ、今回の任務は終了ね。私達も帰りましょうか」
「は~い!」
加賀率いる部隊が帰路に着こうとしていた。彼女が思っていたよりは苦戦もせず轟沈を出す事も無く、一先ずは肩の荷が降りたと言った所だった。
「ねぇ加賀さん、しれぇ褒めてくれるかな~?」
「そうね、今回は時津風も頑張ったもの、きっと褒めてくれるわよ」
加賀の隣を走る時津風は無邪気に笑うが、急に何かを思い出した様に顔が曇った。
「…どうしたの?」
「う~ん、でも私ばっかり褒められたら鳳翔さん怒るかなぁ~」
「どうしてそこで鳳翔さんが出てくるの?」
「だって~鳳翔さん、しれぇの事大好きみたいだし…」
「それは…提督も悪い人じゃないし、私も嫌いじゃないけど」
「わ~、熱愛発覚?」
「そういう意味じゃないわよ…と言うか、そんな言葉どこで…」
「鳳翔さんはそうだよ~」
「まぁ…否定はしないけれど」
〈言われてみればそうね。自分の店に来て欲しいなんて前の提督には言わなかったし…鳳翔さんは若い男性が好みなのかしら〉
「私ね~知ってるんだ~。鳳翔さんがしれぇの事大好きなの♪」
「そうなの?」
「前にね~、雪風と鳳翔さんの部屋に行ったら…あ、これ鳳翔さんに言ったら駄目って言われてたんだっけ」
「…鳳翔さんの部屋がどうかしたの?」
「だから~言ったら駄目なんだって!鳳翔さんと約束したんだから!」
「まあ無理にとは言わないけど…それに私も知ってるわよ」
「へっ?なんだ~、加賀さんも知ってたんだ~」
「昨日、鳳翔さんとお茶したのよ」
「そっか~。私ビックリしたよ!雪風は凄いって喜んでたけど。まさか部屋の中が…
『あの…どうかしたんですか?さっきから考え込んでるようですけど…』
『鳳翔…まあ、ちょっとね』
『もし良ければ…話してくれませんか?』
『…実は、婚約者が行方不明になったんだ』
『婚約者って…前に話していた人ですか?』
『ああ。彼女の親から連絡があって…一週間前に会った後、家に戻っていないそうなんだ』
『それは…さぞや心配でしょうね』
『ああ。事故に巻き込まれたにしても連絡位はあるはずだし。まさか…』
『き、気を落とさないで下さい。そうだ、私も手伝いますから、探してみませんか?』
『探すって…警察でも判らないのに』
『私は艦娘です。人間には出来ない事も出来ます!』
『鳳翔…すまない、手を貸してくれるか?』
『は、はいっ!!』
『なあ鳳翔…疑う訳じゃないが、どうして海に?』
『実は、龍驤さんがこの辺りで戦ったらしいんですが、その日がどうも、婚約者さんがいなくなった日と同じなんです』
『…ま、まさか戦いに巻き込まれて!』
『そこまでは分かりません。ただあなたが婚約者の方と会っていた場所から遠くありませんし、もしかしたら海に来ていたのではと思いまして…』
『わ、分かった。浜辺を探してみよう!』
『はい。私も艦載機を飛ばしてみます』
〈…彼女と会っていた場所?俺、あそこで会ったって鳳翔に話したっけ?〉
『こ、これは!!』
『ど、どうしたんだ鳳翔』
『私の艦載機が海でこれを…』
『…こ、これは彼女のバッグ?何で海なんかに!?』
『そこまでは解りません。ただ…言いにくいですが、少し焦げた跡があります。やはり深海棲艦との戦いに巻き込まれたのでは…』
『…』
『あ、あの…』
『う、ううっ…
『う、うわああああっっっ!!!』
〈鳳翔さんは…今日は雪風達と護衛任務だったわね〉
加賀は空母寮にある鳳翔の部屋の前に来ていた。
鳳翔の部屋には何度か来た事があるが、ここ数年は余程の用事でもない限り寄る事もなく、またそれを気にした事も無かった。
だが今は違った。
『前にね~雪風と鳳翔さんの部屋に行ったら…』
この言葉が気になった加賀は、時津風に鎌をかけてみた。
『私も知ってるわよ』
鳳翔にも人に言えない秘密の一つや二つあるだろう。大方、時津風は鳳翔の意外な趣味でも知ったのだろう程度にしか思っていなかった。
だが次の瞬間、時津風の口から発せられた言葉に耳を疑った。その言葉がどうしても頭から離れなかった加賀は、悪いとは思いながらも好奇心に勝てなかった。
幸いにも今日一日は鳳翔は戻らない。万が一の為と嘘を付いて、空母寮全員のスペアキーを作った。全ての鍵は疑われない為と鳳翔に預かってもらったが、こっそり鳳翔の鍵を二つ作った。
加賀が鍵を差し込むと、ドアは静かに開いた。
ゆっくり…誰も居るはずがないが、忍び足で部屋へ上がり込む。中央の応接間は以前見た通り。机には湯飲みとお茶うけのお菓子が置かれていた。
〈何だ…時津風は嘘を付いたのかしら…〉
これと言って変わった所も無く、誰か人に見られる前に部屋を出ようとした時、もう一つの部屋がある事に気付いた。鳳翔が使っているであろう寝室だった。
ゴクリと唾を飲み込むと、加賀は寝室の襖を開けた。
〈なっ…!こ、これは…!!〉
加賀は時津風の言葉を思い出した。
『まさか部屋の中が、しれぇの写真でいっぱいなんて』
時津風の言葉通り部屋の中は一面中、いつ撮ったのか分からない提督の写真が部屋の隅から隅まで所狭しと貼られていた。
〈ほ、鳳翔さん、提督に気があるのは知っていたけど…これは…〉
「勝手に人の部屋に入るのは良くないんじゃないかい?」
「…!?」
加賀が慌てて寝室を出ると、そこには隼鷹が立っていた。
「隼鷹…あなた、どうしてここに!?」
「おいおい加賀さん、それはこっちのセリフじゃないのかい?」
「…」
「鳳翔さんに頼まれたんだよ。部屋を見張ってくれって。そうすりゃ溜まってるツケをチャラにしてくれるっていうからさ」
「隼鷹…あなた、この事を知ってたの?」
「いや、知らないよ。どれどれ…成る程ね、そりゃ見られたくない訳だ」
隼鷹は加賀の横をすり抜け、寝室を覗くと溜め息を吐いた。
「鳳翔さんが、あの若い提督にお熱なのは知ってたけど、これ程とはね。いい趣味してるよ」
「隼鷹、あなた…」
「加賀…鳳翔からの伝言を伝えとくよ。アンタは何も見てないし、この事は誰にも話さない。そうすりゃ今まで通り仲良く出来るってさ。
「鳳翔はアンタが嗅ぎ回ってるの、多分知ってたんじゃないか?でなきゃ私にこんな事頼みやしないだろ」
「…」
「別に鳳翔に借りがある訳じゃないけどさ、
「それともアンタ…あの提督に気があるのかい?」
「ば、馬鹿言わないで…///」
「だろ?ま~ちっとはイイ男だとは思うけどさ。今回は鳳翔に譲りなよ。それにケッコンってのは何も一人だけって訳じゃないって聞いたしさ」
「…」
「さ、早く帰んな。この事は黙っといてやるからさ」
「…分かったわ」
「それにしてもさ…あの提督さん、どうも見覚えがあるんだよね~。どこかで会ったっけ?」
「何よ隼鷹、あなたも提督に気があるの?」
「え?そりゃアタシだって…っと、この事は鳳翔には黙っといてくれよ!」
「さあ…どうしようかしら」
「…仕返しかい?」
「まあ、そんな所よ…ええ、私は何も見てないわ。これでいいんでしょ?」
「ま、それが一番利口さね」
『まだ…気に病んでるんですか?』
『鳳翔…ごめんな、もう一ヶ月も経つのに…男の癖にいつまでもメソメソと』
『い、いえ!気持ちは解ります!私だってあなたに何かあったらきっと…』
『ほ、鳳翔…』
『あ、その…今のは忘れて下さい!』
『…』
『なぁ鳳翔』
『はい…あっ』
『こんな事したら…俺の事、節操の無い男って呆れるか?』
『そ、そんな事…でも、私は艦娘です。人間じゃありませんよ?』
『そんな事気にしないよ。…鳳翔、俺と一緒に遠くへ行かないか。…俺達の事誰も知らない所で…俺と夫婦になってくれないか?』
『ほ、本当に…いいんですか?私は…艦娘ですよ?』
『ああ。だから…その、これからも一緒に居て欲しいんだ…鳳翔、俺に着いて来て…くれるか?』
『…はい…はい!』
『…鳳翔…アンタら…!!』
鳳翔達の部隊は、敵の攻撃に晒されていた。
決して鳳翔や時津風達が弱い訳ではない。ただ護衛任務と言う性質上、どうしても防戦一方になってしまう。そんな中、鳳翔は雪風や時津風をまるで我が子の様に庇いながら戦っていた。
「ほ、鳳翔さん!雪風達を庇わなくても大丈夫です!」
「そうだよ!そんなんじゃ私よりも先に鳳翔さんが沈んじゃうよ!」
「ふふっ、雪風ちゃん、時津風ちゃん、私をなめないで。伊達に長く艦娘をやってる訳じゃないわ」
「で、でも…!」
「大丈夫、あなた達は絶対に私が守ってあげるから…もう二度と、大事な人を失うのはごめんよ」
「ほ、鳳翔さん…」
〈そうよ…もう二度と、あんな思いはごめんよ…!〉
『ここにおったんか!』
『り、龍驤!ああ!すぐそこまで敵が来てるんだろ?俺だって…!』
『アンタ、今日鳳翔と出てくんやなかったん?』
『それはそうだが…鳳翔だって解ってくれるさ!』
『なんや、考える事は一緒みたいやな。鳳翔の奴もウチが報せたら走って戻ってきたで』
『鳳翔も居るのか?』
『ああ、そこのドックに待機してる。行ってやりぃや』
『あ、ああ!すまない龍驤!』
『はぁ…気分悪いわ。惚れた男を騙すんわ…でも…アンタらが悪いんや。ウチの気持ち…知っとった癖に…ホント、酷い男や…』
『鳳翔!どこに居るんだ!鳳翔…居ないのか!?』
『攻撃隊、発進…目標は…あのドックや…』
『鳳翔…どこだ…?』
「提督、ただいま帰りました」
「ほ、鳳翔さん!その姿は…」
雪風や時津風と共に遠征任務から帰投した鳳翔だが、他の者はほぼ無傷なのに対して、彼女だけはまるで集中砲火でも浴びたかの様に、立っているのもやっとの状態だった。
「ご、ごめんなさい司令!鳳翔さん、雪風を庇って…」
「そ、そうなのか」
「申し訳ありません。少々腕が鈍っていた様です。ううっ…」
「そ、そんな事より早く入渠ドックへ!」
「あ…て、提督さん…」
恥ずかしがる鳳翔を気にせず、提督は鳳翔の肩を抱くと彼女を支える様に歩き始めた。
「わ、私達も…!」
「駄目だよ雪風。私達は後で…ね?」
「え?時津風ちゃん、どうして…あ?う、うん。そうだね」
雪風と時津風のイヤらしい笑い声を尻目に、提督は鳳翔に語り掛けた。
「全くアイツら…でもアイツらなりに気を効かせたのかな」
「ふふっ、案外そうかもしれませんね。あの…提督さん…そんなに胸元…気になります?」
「い、いえ!その…」
「うふふっ…いいですよ別に。加賀さん程大きくはありませんけど…肩を貸してくれたお礼です」
「はぁ…じゃあ、お礼ついでにもう一つ、お願い聞いてくれますか?」
「提督さん、意外と欲張りさんなんですね」
「茶化さないで下さい…オホン!鳳翔さん…俺とケッコンしてくれませんか?」
「え…あ、あの…ほ、本気で言ってるんですか?」
「やっぱり、俺みたいな若造じゃその気になれ「そんな事ありません!!」
「ほ、鳳翔さん…」
「違うんです。本当に…本当に私なんかでいいのかと思って…」
「はい、俺は鳳翔さんがいいんです。鳳翔さんはこんなどこの馬の骨とも分からない俺を親身になって支えてくれました。
「それに…キザな事言わせてもらうと…鳳翔さんとは、何か運命の様な物を感じるんですよ」
「ふふっ、お上手ですね。今までもそう言って口説いてきたんですか?」
「そ、そんな事ありません!こんな事言ったのは…鳳翔さんが初めてです」
「分かってますよ。あなたはそんな器用には見えませんからね」
「…褒めてないですよね、それ?」
「そんな事ないですよ。とても実直で素晴らしい方だと言ってるんですよ」
「じゃあ…」
「はい…」
『…鳳翔、分かっとるんか?』
「私で良ければ…謹んでお受けします」
『アイツは…』
「これからずっと…あなたの側に」
『オマエの実の子やろ!!』
翌日、提督が鳳翔にケッコンを申し込んだ事が鎮守府中に知れ渡った。ある者は喜び、ある者は先を越されたと悔しがるも、皆から祝福を受けた鳳翔は、提督のケッコン相手となった。
まさか…
まさか、本当に私を選んでくれるなんて…!!
あの子の父親と出会ったのは、もう二十年以上前。艦娘として生を受けた私は右も左も解らなかった。
そんな時にあの人と出会った。
彼は私が艦娘である事など気にもせず接してくれた。そんな彼に惹かれるのに、そう時間は掛からなかった。
生まれたばかりの私は、疑う事を知らなかった。
私がこんなに好きなのだから、彼も当然、私の事が好きなのだと信じていた。
信じていたのに…。
彼の心には既に別の女が棲みついていた。
それを知った瞬間、私の心に黒い靄が掛かった。面白い事に龍驤さんも、私と同じ事を考えていたらしい。
…私はその女に消えてもらう事にした。
龍驤さんも、何だかんだ言いながらも私に協力してくれた。彼女もあの人が好きだったみたいね。
そして…信じられない事に、彼は私と夫婦になりたいと言ってくれた。
私は浮かれきっていた。彼が私を選んでくれた事、人間の様に夫婦になれる事…これから始まる幸せに想いを巡らせていた。
だが、神様は意地悪らしい。
あの人が戦死した…。
龍驤さんの話ではドックに居た彼の下に、深海棲艦が現れたらしい。龍驤さんも必死に応戦したが、間に合わなかったそうだ。
私は龍驤さんの胸で大泣きした。
あの人はもういない…私は生きる事に絶望してしまった。
だが、そんな私にある変化がある事に気付いた。
私はあの人の子供を身籠っていた。
信じられない…!
艦娘の私が人間の子供を授かるなんて。
私は皆には内緒で、龍驤さんと共にこの子を育てる事にした。
だが、神様は余程艦娘が嫌いらしい。それとも私が手に掛けたあの女が私の幸せを阻んでいるのだろうか。
彼の両親がどうやって知ったのか、私の下へやって来て、子供を渡せと言ってきた。
私は返してと必死に懇願したが、艦娘のお前に子供が育てられるのかと言われると、返す言葉も無かった。
私は、一度に夫と子供を失った…。
それからの私は何も感じなくなった。
例え仲間が沈もうと、鎮守府が滅びようと、心が揺らぐ事はないだろう。そう思っていた。
ある日、龍驤さんが慌てて私の下へやってきた。
一体何事かと思えば、新しい提督が来るらしい。なぜそんな事で慌てるのか、そう思った私に龍驤さんは一枚の紙を突き付けた。
そこには亡き夫の面影を持つ我が子が写っていた。
龍驤さんが言うには、妖精さんが見える事を知った大本営が、彼を抜擢したらしい。
確かに、私の…艦娘の力も受け継いでいるのなら、妖精さんが見えても不思議ではない。
その時の私の喜びは言葉では表せない。まるで氷が砕ける様に、私の心に再び生きる灯火が宿った。
再びあの子に会える!
私は偶然を装って、あの子を迎えた。
でも…あの子の顔を見た瞬間、体中の力が抜けてしまった。そんな私にあの子は優しく手を差しのべてくれた。
こんなに…こんなに大きくなって。
夜は私の店で、あの子の為に料理を振る舞った。
あの子が私の料理を食べてくれる…!!
たったこれだけで、どうしてこんなにも胸が熱くなるのか。これが母性愛と言う物だろうか…。
あの子が、私が手を掛けたあの女の写真を持っていたのは驚いたが…幸いにも、あの子はあの女を自分の母親だと思っているらしい。
その時、私は決意した。
これからもあの子の側に居よう。
そう、あの子の妻として…!!
ただ、龍驤さんは私の歪な感情に気付いていた様だ。
わざわざ私に釘を刺してきた程だ。だが私はもう止まらなかった。
それからの私は秘書艦になってまで、四六時中あの子と一緒に居た。それこそ今までの時間を取り戻すかの様に。青葉さんにも協力してもらったっけ。ふふっ、感謝しないと。…加賀さんが何か不思議がっていたけど…隼鷹さんに見張りを頼んだから大丈夫でしょう。
そして…そんな私の献身に心を打たれたのか、あの子は私とケッコンしたいと言ってくれた。
そうよ…私の空白の二十年は…この時の為に有ったのよ。
そうに違いないわ。
あの時は奪われたけど…もう誰にも…例え龍驤さんだろうと、あの子を…いや、私の夫を奪わせはしない!!
それにしても…
あ、あの子…夜は意外と積極的なのね…。
わ、私もその…二十年振りだから…久しぶりに燃えてしまったわ…。
い、いけないわ。はしたない女だと思われないかしら?
でも、やっぱり若いわね。あの人よりも逞しいかも。
これじゃすぐに子供が出来てしまうわ…。
でも…うふふっ、あの子が望むなら何人だって産んであげるわ。
だから、もう二度と…私から離れないでね…
あなた…。
鳳翔は、彼の背中に手を回し、しっかりとその背中を抱き締めた。
もう二度と…二度とこの手を離さないと、固く誓いながら。
北上回をリメイクしたらこっちも書き直したくなって、先に書きました。前回は最後にオチを言って終わりだったので、今回は少し話を膨らませました。
次はユーちゃんの話書きます。ホントだよ?
艦娘型録
鳳翔 バツイチ子持ちの未亡艦。最後大破した際に、胸元だけは自分で破いた。寝室には実は大人のオモチャが合ったので、そっちが見つからないかヒヤヒヤだった。最近妙にお肌がツヤツヤ。
提督 今回のルートでは無事?鳳翔と結ばれたが、もし数年前に龍驤と会っていれば、龍驤ルートに突入して祖父母を殺されていた。どっちにしても厄介な二人に目を付けられた気の毒な人。
龍驤 こっちの話では常識人。自分の話では逆光源氏計画をしようとしていた。ただ鳳翔が婚約者を殺すのを敢えて止めなかった。提督のお父さんを事故に見せかけて殺した。
加賀 脇役で出てくると探偵役が多い。暫くは鳳翔さんと顔を合わせずらかった。
隼鷹 ツケが溜まっているので完全に鳳翔の手下。加賀には黙っている代わりに奢ってもらった。最近、手が震える事がよくある。
時津風 偶然にも鳳翔の部屋に入って顔には出さないがドン引きした。素直に喜べる雪風が羨ましい。
雪風 この娘と出撃すると何かと楽な様で皆から大切にされている。最近鳳翔がやたらと奢ってくれるのが不思議。