艦娘症候群   作:昼間ネル

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その時、龍驤に電撃走る!

悪魔的…圧倒的、閃きッ…!!
(ナレーション 立木 文彦)



提督誕生

「龍驤…」

 

そう呼ばれた彼女は、自分の名を呼んだ青年の顔を見てしばし呆然とした。数秒の沈黙が流れた。やがて我を取り戻した龍驤は驚いたのか嬉しいのか、どちらとも言えない表情で苦笑いした。

 

「まさか、ここで再会するとは思わんかったわ…」

 

「約束したろ。今度は俺の方から会いに行くって」

 

「…せやったな」

 

青年は龍驤に近付くと、彼女を抱き締めた。

 

「コ、コラッ!自分、何してんねん///」

 

「…これからよろしくな、龍驤」

 

暫く恥ずかしがっていた龍驤だったが、青年の言葉に目を瞑り、そっと抱き返した。

 

「…ったく、待たせ過ぎや」

 

龍驤の目から涙が溢れた。

 

「…ウチこそ、よろしゅうな」

 

鎮守府の中庭の桜が、二人を祝福するかの様に舞い散る。

春の風が、二人を優しく包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいたたっ…ここは…?」

 

砂浜に打ち上げられた一人の少女が目を覚ました。

朱色の長袖は所々破れ、黒いスカートも焼け焦げたのかギザギザになっていた。

 

〈そうか…ウチ、あの嵐で〉

 

彼女はここに来るまでの記憶を手繰った。

 

彼女の名は龍驤。

龍驤型軽空母一番艦。ある鎮守府に席を置く艦娘だった。

ある任務を終え帰投する最中、深海棲艦の部隊と遭遇。既に夜中だった事、また急に天候が崩れた事もあり、思った以上の乱戦となった。

戦いの最中、視界が悪かった事もあり龍驤は敵の魚雷を喰らってしまった。本来なら海の藻屑となって沈んでいたかもしれなかったが、嵐と潮の流れによって、この海岸へと流されたのだった。

 

〈ウチ、ここまで流されたんか〉

 

龍驤は辺りを見渡した。

付近に民家もなく、錆びた小舟や貝殻が目に入った。まだ体が重いが、艤装にも異常は無さそうだった。

太陽がほぼ真上にある事から、時刻はだいたい正午といった所か。

 

〈暫くここで休んで、帰るのは夕方やな。皆、心配してるやろな…〉

 

龍驤は肩の力を抜き、とりあえず場所を変えようかと起き上がった。

 

〈うん?〉

 

防波堤に一人の少年が立っていた。

何かを探している様に周囲をキョロキョロ見回していたが、龍驤に気付くと慌てて彼女の方へ走ってきた。

 

「ハァ…ハァ…ねぇ、大丈夫?」

 

年の頃は十代半ば、と言った所だろうか。背格好は龍驤とほぼ変わらない、学生服を着た少年が龍驤の顔を心配そうに覗きこんだ。

 

「ん、あぁ大丈夫や。ウチこう見えても丈夫なんや」

 

〈艦娘やしな…〉

 

「そう…びっくりしたよ。コイツらが急いで来いって髪引っ張るからさ」

 

〈コイツら?〉

 

少年の肩からひょっこりと、龍驤の艦載機の妖精達が顔を出す。

 

「あっ、オマエら。いないと思っとったら…」

 

妖精の内の一匹がジャンプして龍驤の肩へと飛び乗った。

 

「歩いてたら、いきなりコイツらが顔に乗っかってきて、一緒に来てくれって言うもんだからさ」

 

「ふ~ん、そうやったんか…って自分、妖精さんが見えるんか!?」

 

「あ、コイツらの事?うん、皆は見えないみたいだけど、俺、昔から見えるんだよね」

 

龍驤達、艦娘は妖精が見える。だが意志の疎通は出来ても会話は出来ない。一方の人間はまず妖精が見えない。彼女達と同じ様に妖精が見え、会話をする事が出来る者もいるが、極めて稀だった。

 

〈ほえ~っ、驚いたわ。妖精が見える人間なんて提督以外で初めて見たわ…〉

 

「ところでおまえさ、どうしたの。溺れたの?」

 

「ムッ…オマエちゃうわ!ウチには龍驤って立派な名前があるわ!こう見えても立派な艦娘やで!」

 

「えっ、艦娘っ?本当!?は、初めて見たよ!」

 

少年の目が急にキラキラと輝いた。

 

「ふっふ~ん。そうや、ウチは艦娘やねん。どや、びっくりしたやろ」

 

「そうなんだ!でも艦娘って事は…女の子でしょ?…えっ、どういう事?」

 

「ん、何がや?」

 

「だってオマエ…男だろ」

 

龍驤は少年のスネに蹴りを入れた。

 

「痛てっ!な、何すんだ!」

 

「やかましいわボケ!こんな美少女掴まえて何言うとんねん!誰が男や!艦娘言うたやろ!!」

 

「え、お、女の子?俺、てっきり…」

 

足を蹴られてうずくまる少年は龍驤を見上げる。

その視線の先は…

 

「オラァッ!「あちょぷっ!」

 

龍驤は回し蹴りを繰り出した。会心の一撃!

 

「な、何すんだよ!あちょぷとか言っちゃったじゃん!」

 

「やかましいわこのタコ!どこ見て判断してんねん!」

 

龍驤は怒りながらも恥ずかしそうに胸を両手で隠した。

 

「あっ、そ、そうなんだ…そうだよな。ご、ごめんよっ、俺てっきり…それに…」

 

「…それに?」

 

「龍、なんて男みてぇな名前だなって思って♪」

 

「ッシャアッ!!」

 

本日三度目の蹴りが、少年を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、龍驤は事情を話すと、少年は水と食料を持って来た。

少年はこの近くの港町に住んでおり、趣味の釣りに来た所を龍驤の妖精に捕まったらしい。

龍驤は好奇心から、何故妖精が見えるのか尋ねてみた。何でも彼が幼い頃から見え、妖精の方も自分達が見えるのが嬉しいのか、彼に話しかけてくるそうだった。

ところが少年が学校の友人にその事を話しても、誰も見える者はいなかった。その為嘘つき呼ばわりされる事もあり、彼は周囲にはこの事を黙っていた。

彼は育ての親の祖父母にこの事を聞いてみた。彼らが言うには、艦娘やそれを指揮する提督には見えるらしい。なら自分は提督になれるのかと聞くと、何故か怒られたそうだ。

 

「何や、自分、提督になりたいんか?」

 

「いや、別になりたいわけじゃないけどさ。俺も戦いたいじゃん。悪い深海棲艦をバーッて倒してさ」

 

「止めとき止めとき。そんな簡単なモンちゃうで。だいいち人間じゃ深海棲艦と戦えんやろ」

 

「う、うっせーな。そんなの分かってるよ!」

 

「戦うのはウチらに任しとき。その気持ちだけで充分や」

 

「何だよ、俺と同じ位のガキなのに偉そうだな」

 

「だからドコ見て言うてんねん!」

 

「ンアッ!」

 

結局この日、龍驤は数時間程、少年の話し相手を務める羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほなら、自分はもう行くわ」

 

「えっ、もう?か、体は大丈夫なの?」

 

「食うもん食ったら元気出たわ。それに皆もウチの事、心配しとるやろから、早よ帰らな」

 

「そうか…」

 

龍驤は服に着いた砂を払うと、海に立った。その光景が珍しいのか、少年は口を丸くして驚いていた。

 

「フフッ、何やマヌケ面して♪」

 

「う、うるせ―よっ!」

 

「ほなな。メシ、あんがとな。旨かったで」

 

「あぁ。俺、この辺りでよく釣りしてるから、また来いよ!」

 

「ウチもそうそう暇やないんよ」

 

少年は肩を落とし、見るからに残念そうだった。

 

「…でもまぁ、任務でここを通る事もあるから、そん時は寄らせてもらうわ」

 

「!お、おうっ!絶対だぞ!」

 

海に駆け出した龍驤に、少年は手を振って見送った。

 

〈…それにしてもアイツ、何か見覚えがあるんやが…どっかで会ったかいな?〉

 

龍驤は海を蹴り、速度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから週に一度程、龍驤は任務帰りに少年のいた港に足を運んだ。龍驤と会えた時の少年は、まるで物語の英雄のように彼女を歓迎した。少年は男の子らしく、龍驤の戦いの話を聞きたがり、龍驤も自分の武勇伝を目を輝かせて聞き入る彼に悪い気はせず、いつしか少年との密会を楽しむ様になっていた。

 

「龍驤さん、最近機嫌良いですね。何か良い事でもありました?」

 

龍驤と同じ軽空母、鳳翔の営む居酒屋で、店の主は酒を注ぎながら尋ねた。

 

「別に何もあらへんよ?最近は前みたいな大きな戦闘もないし、のんびりできる思っとるだけや」

 

「イヒヒ、案外男でも出来たんじゃね~の?」

 

同じく軽空母の飛鷹型二番艦、隼鷹が龍驤の頬を指でつついた。

 

「まあっ、龍驤さんも隅に置けないわね♪」

 

「アホかっ、そんな訳あるかっ!第一ウチら艦娘やん。どこで知り合うっちゅ~ねん」

 

〈それにアイツはどっちか言うと弟やろ〉

 

「ウフフ、冗談ですよ。でも、ここ最近の龍驤さん妙に機嫌が良いって加賀さんも言ってましたよ」

 

「だから別に何も無いって…。加賀の奴、余計な事を」

 

「いんや、この顔は絶対、男だ!アタイには分かる!」

 

「自分、男と付き合った事ないやろ…」

 

「う、うるせ―っ!この隼鷹様が男の一人や…二人…位…。飛鷹~っ!コイツがアタイらモテないって虐めるよぉ!」

 

「私、関係無くない!?」

 

隣で静かに飲んでいた飛鷹が、隼鷹に抱き付かれた。

 

「アタシらだって、本気出せば男の一人や二人…。アタシらの艦娘力、見せてやろうぜ出雲丸!」

 

「誰が出雲丸よ!この橿原丸っ!!」

 

いつもの光景に、ハイハイと軽くあしらいながら鳳翔は新しい酒を注ぐ。

そんな鳳翔は、少し寂しげな表情を見せた。

その表情を察した龍驤は、鳳翔に小声で囁いた。

 

〈…大丈夫や鳳翔、〈あの子〉もきっと元気でやっとるって〉

 

鳳翔は、彼女達艦娘が誕生した十数年前、ある男性と恋仲になった。鳳翔と龍驤が所属するこの鎮守府で働く軍人で、龍驤も彼の事はよく知っていた。

自分達を、人間の女性と変わりなく接してくれる彼に龍驤も好意を寄せていた。それとなく彼に想いを伝えた事もあったが、既に彼は鳳翔と恋仲になっていた。

不幸にも彼が戦死した後、鳳翔は彼の子供を身籠っていた。これは鳳翔と龍驤、今の提督しか知らない事だった。

鳳翔は彼の忘れ形見を懸命に育てていたが、彼の両親がどこからかその事を嗅ぎ付け、自分達の孫を返せと鳳翔から息子を奪ってしまった。

愛する子供を奪われた鳳翔は暫く戦う事も出来ず、まるで脱け殻の様だった。落ち込む鳳翔を龍驤は『生きていればいつか会える』と慰め、その言葉が響いたのか鳳翔は徐々に生気を取り戻し、1ヶ月もする頃には龍驤と共に再び戦場に立つ迄に回復した。

 

「…そうね。ふふっ、せっかくの雰囲気が台無しね」

 

「鳳翔さん、熱燗もう一本ね~♪」

 

「…自分、もうちょっと空気読みぃや」

 

「な~に浸ってんだよぉ、飲めコラ~!」

 

「艦娘力って何よ!?」

 

この後、隼鷹は三日間、出禁を喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分、両親はおらんの?」

 

あれから数ヶ月。

月に何度か少年と会うのも龍驤のささやかな楽しみになっていた。

ある日の会話で彼の両親の話題になった。何でも彼の父親は軍人だったが、深海棲艦に襲われ戦死したそうだ。母親もその後を追う様に病死したらしい。

 

「せやったか…悪い事聞いたな」

 

「いいよ。親って言っても、生まれてすぐ死んだから会った事もないし、実感ないからさ」

 

「…もしかして、前に深海棲艦と戦いたいとか言うてたのって」

 

「あぁ。俺の友達にも、家族が深海棲艦に殺された奴いるし…」

 

「…」

 

「なぁ龍驤。妖精が見える奴って、提督になれるんだろ?俺、もしかして提督に向いてるのかな?」

 

「それはどうやろな。妖精さんが見えるからって、必ずしも提督になれるワケちゃうで」

 

「そっか…」

 

少年は寂しそうにうつむいた。

 

「別に無理に軍人にならんでも…ウチらが戦ってるさかい、大丈夫やって」

 

「じいちゃんも同じ事言ってた」

 

「じいちゃん?あぁ、自分、父親の祖父母んトコで暮らしとるんやったな」

 

「うん。俺の父ちゃんも軍人だったみたいでさ。俺も軍人になるって言ったら、駄目だって怒られた。戦いは艦娘に任せて、オマエはそんな危険な事するなって」

 

〈何や、感じ悪いな…。孫を危険に晒したくないのは分かるけど。艦娘の事、嫌いなんか…?〉

 

「俺の父ちゃんも海軍にいたらしいんだぜ!会った事ない?」

 

「すまんな。流石にそんな昔の事は覚えてへんわ」

 

「そっか…」

 

体育座りをしていた少年は、残念そうに頭を膝の間に埋めた。

 

「…なぁ、そういや自分、名前何て言うたっけ?」

 

「あれ、言わなかったっけ。俺は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、少年と別れた龍驤は鎮守府の資料室に来ていた。

この資料室には、過去、自分達艦娘が来る以前からの人事に関する資料が保管されている。

 

「!!」

 

慣れない調べ物に奮闘する事一時間、龍驤の手はあるページで止まった。

 

〈…やっぱりや〉

 

龍驤は周りに誰も居ないのを確認すると、そのページを引きちぎり懐に忍ばせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、鎮守府近海で深海棲艦の勢力が観測された。

この辺りに出現する敵は、ごく稀にflagship級がいる程度でそこまで強力ではない。だが近隣には港町もある。被害が出る前にと、龍驤ら軽空母達にも威力偵察の命令が下った。

 

その日の夕方。

 

「よう龍驤、鳳翔んとこに飲みに行かない?」

 

中庭にいた龍驤を見つけた隼鷹が、彼女を誘いに来た。

 

「自分、明日はウチと出撃やん。飲んどる場合ちゃうやろ」

 

「アタシは酒飲まないと調子出ないんだよ」

 

「艦娘ってアル中になるんやな…。悪いがウチは遠慮するわ。ちょっと用事あるし」

 

そう言うと龍驤は足早に去っていった。

 

「なんだよ、付き合い悪いな…ホントに男じゃねぇだろうな」

 

「あら、隼鷹さん」

 

「お、鳳翔じゃん!!」

 

弓道場の帰りなのか、弓を手にした鳳翔が通りかかった。

 

「…龍驤さん、どちらへ?」

 

「あ~、ありゃ絶対逢い引きだわ。っか~イヤらしいねぇ、アタシを差し置いてさぁ。鳳翔さん、あんな薄情者は放っといてウチらでパーッとやろうぜ!」

 

「残念ですが、提督から今日は隼鷹さんには飲ませるなと言われてまして…」

 

「そ、そんなっ!…ま、まさかアンタらグルだったのかい!?」

 

「今日は諦めて、明日に備えて下さいね」

 

「…ふぉい」

 

トボトボと肩を落として歩く隼鷹を見送った鳳翔は、一人物思いに耽る。

 

〈龍驤さん、最近私の店に顔見せないけど、何かあったのかしら…〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

少年が帰宅すると、玄関の扉に封筒が挟まっていた。

見ると、海軍から彼の祖父母当てに送られて来た物だった。

 

「じいちゃん、手紙来てるよ」

 

少年から手紙を渡された彼の祖父は、封筒を開けると中の便箋を取り出した。

最初は興味無さげに読んでいた彼だったが急に目を見開き、両手で手紙を掴み食い入る様に読み始めた。

 

「どうしたの、何かあったの?」

 

祖父の珍しく真剣な表情に、少年は少し驚いた。

祖父は祖母を呼んで手紙を見せた。祖母も同じ様に何かに驚いている様だった。

やがて、少年に今日はもう寝ろと伝えると、二人で何かを話し合っている様だった。

 

〈…確か、海軍からだったけど。もしかして俺のポテンシャルに気付いた海軍が提督になってとか誘ってきたのかな?俺ってBIG?〉

 

少年はワケの分からない妄想に浸りながら、眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍驤、そっち行ったよ!」

 

軽巡洋艦、北上の檄に龍驤は振り返る。

 

「うわっとと…こんのーっ!!」

 

龍驤はバランスを崩しながらも敵の砲撃を避けた。

今日の龍驤は、どこか精彩を欠いていた。

いつもなら部隊のムードメーカー的な役割で、皆を鼓舞していたが、今日の彼女はどこか動きも鈍く、いざ戦いが始まっても後手に回っていた。

 

「龍驤、大丈夫かい?制空権はあたしが何とかするから、あんたは下がった方がいいんじゃないかい?」

 

昨日までのだらしない飲んべえ面はどこへやら、隼鷹は先制攻撃を成功させ、戦いを有利に展開していった。

いつもならそれは彼女と龍驤の役割だった。だが、今日の龍驤は明らかに隼鷹より動きが鈍い。

 

「いや、大丈夫や!これしきの敵、どうって事ない!」

 

口では強がる物の、龍驤は防戦を強いられていた。

 

「くっ!」

 

潜水カ級の魚雷をかろうじて交わすが、その結果、龍驤一人だけが部隊から引き離されてしまった。そんな彼女を仕留めに掛かろうと考えたのか、空母ヲ級率いる潜水カ級達が龍驤の後を追う。

 

「マズい!向こうは人が住んでる港だっ!龍驤っ!!」

 

隼鷹の叫びも空しく、龍驤とその追っ手の姿は視界からどんどんと小さくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈やっぱり海だ…何でこんな所へ?〉

 

少年は祖父母の後を追って海へ来ていた。

その日の朝、祖父母は真剣な顔でどこかへ出掛けると少年に伝えた。いつもなら気にもしなかったが、昨日の手紙を読んだ後から二人の様子がおかしかった事が気に掛かっていた。

少年は、学校を早退すると祖父母の後を付ける事にした。ところが、いざ付いてきてみれば、いつも自分が来ている海岸だった。一体こんな所に何の用があるのか?そう思った矢先だった。

 

「!」

 

海から爆発音が聞こえた。小さな水柱が何本も立っては消える。

最初は何だと呑気に眺めていた少年も、すぐに誰がが戦闘しているのだと理解した。

しかも銃撃と爆発音はどんどんと祖父母達のいる海岸へと近付いてくる。

 

「あれは…」

 

海の上を滑りながら急接近してくる人影達。その先頭にいたのは彼がよく知る人物。

 

「龍驤?」

 

龍驤は、砂浜に少年の祖父母がいるのに気付いたのか、その場を旋回しだした。少年には龍驤が、祖父母の盾になろうとしている様に見えた。

やがて、空母ヲ級が合図すると、潜水カ級達が、その姿を海面に表し、無数の魚雷を発射した。

 

「龍っ…!」

 

龍驤は咄嗟に回避するが、その内の一発が掠り、爆発に吹き飛ばされた。

そして、残る全ての魚雷は…!!

 

「じっ、じいちゃん、ばあちゃんっ!逃げろっ!!」

 

少年は防波堤から乗り出し、二人に叫んだ。

二人も海から現れた化け物が、自分達に何かを撃ってきたのを理解したのか、その場から逃げようとしたが…。

 

次の瞬間、まるで爆弾でも落ちたかの様な爆発が海岸に巻き起こった。

砂煙は、嵐の様に辺りを包む。

 

「うわっ!!」

 

少年は両手で頭を庇いながら、砂煙から身を守る。と、少年の頭に軽い痛みが走った。何かが頭にぶつかったらしい。小石でも飛んできたのかと、それを見てみると…。

それは、真っ赤に染まった祖父の腕時計だった。

 

「っ!!」

 

少年は思わずその場から飛び出し、祖父母の下へと走って行った。

 

「なっ!何でオマエがここに!」

 

急に現れた少年に龍驤は目を丸くして驚いた。龍驤は慌てて彼を庇おうと海面を滑り出した。

 

「じいちゃんっ、ばあちゃんっ…!」

 

少年は涙声で、二人の下へと向かった。龍驤が何か大声で叫んでいるのにも気付かずに。

 

「バカッ!逃げろぉッ!!」

 

少年の数メートル先で爆発が起こり、彼は吹き飛ばされた。彼は砂浜に頭を打ち付け、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍驤!目を覚ましたよ!」

 

次に少年が目を覚ますと、何人かの女達が自分を取り囲んで何やら話していた。

白い上着に赤いスカートを履いた女性が、彼女の名を呼んだ。

 

「良かった!大丈夫か?どこか痛いトコ無いか!?」

 

「龍…驤…?」

 

次の瞬間、少年は生き返った様に飛び起き、龍驤に掴みかかった。

 

「龍驤ッ!じ、じいちゃんとばあちゃんはっ!?」

 

龍驤も側にいた女達も何も言わず、彼から目を反らした。

龍驤の後ろにいた隼鷹が彼の前に立つ。

 

「龍驤から聞いたよ。君、あの二人のお孫さんだったんだってね」

 

「え、えぇ、そうです。じいちゃんとばあちゃんは?無事なんですかっ!?」

 

「あたしらが来た時にはもう…」

 

少年の目の前が暗くなる。ハッと我に帰り龍驤の後ろを見てみた。薄い緑色のセーラー服を着た三つ編みの少女が、浜辺に寝そべる二人を見下ろしていた。

 

「…すまん」

 

龍驤の言葉に少年は駆け出した。

寝そべる二人の下へ来た彼は、その顔を確認した。

砂と血に汚れた、もう動かない祖父母がそこにいた。

 

少年は涙声で絶叫を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

龍驤は、ある任務からの帰還途中、部隊の皆に先に行ってくれと独り別れ、戦闘のあった港に寄った。

特に約束をした訳でもないが、龍驤は少年に会える予感があった。そんな龍驤の予感通り、或いは少年もそう感じたのか、彼はそこに居た。

龍驤は彼の待つ砂浜へと上がった。

 

「…この前は、その…すまんかったな。ウチのせいで」

 

「龍驤は悪くないよ。むしろ俺やじいちゃんを庇ってくれたんだ。感謝してるよ」

 

「…」

 

「俺、幼年学校に行く事にしたんだ」

 

「…軍人になるんか?」

 

「あぁ。俺、もう身寄りが居ないからさ。幼年学校だったら、学費もほとんど掛からないらしいし」

 

「さよか…」

 

「龍驤には、どうしても伝えておきたかったんだ」

 

暫くの沈黙の後、少年は後ろを向き走って行った。少し行くと止まり、龍驤に向き直った。

 

「さよなら-っ!いつか必ず会いに行くからなーっ!!」

 

少年は龍驤に手を振ると、再び走り出した。

彼の姿が見えなくなるまで、龍驤はその場を動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍驤さん」

 

宿舎で休んでいた龍驤の元へ、鳳翔が訪ねて来た。

 

「ん、なんや珍しいな。鳳翔がウチの部屋に来るなんて」

 

「話、聞きましたよ。その子は気の毒だったけど、仕方無かった事です。あまり落ち込まないでね」

 

「…まぁ、そりゃそうやけど、半分はウチのせいやからな」

 

「…その子も、私の子と同じ位の年頃ですってね」

 

「…」

 

「そう思うと、余計同情しちゃってね。だから私も他人事に思えなくて」

 

鳳翔は龍驤の肩に優しく手を置いた。

 

「今日は任務無いでしょう?夜、私のお店に来てね。隼鷹さんも寂しがってるわよ?」

 

「…あぁ、そやな」

 

鳳翔は必ず来てね、と念を押すと部屋を後にした。

 

「ホンマ、堪忍な…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳳翔…」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数年の歳月が流れた。

少年は幼年学校に入った。年に数回、龍驤宛てに自分は元気でやっていると手紙が届いた。龍驤もそれに返事を出す、いつからかそれが当たり前になっていた。

何でも今は近隣の軍港に来ており、近く深海棲艦を想定した演習が行われるそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「狙えーッ!!」

 

三隻の練習巡洋艦が演習を行っていた。

艦長の命令に巡洋艦の砲頭がゆっくり動き、数十メートル先の的に照準を定める。

 

「目標捕捉!」

 

一人の青年が、艦長に答える。

かつては少年だった彼も、今や立派な青年に成長していた。

 

「撃てーッッ!!」

 

艦長の号令の下、巡洋艦の主砲が放たれた。

轟音と共に放たれた砲弾は、その先の的を破壊する…はずだった。

砲弾は的を大きく反れ、海へ消えた。

 

「どこを狙って…何ッ?」

 

動かない筈の的が意志を持った様に右往左往し出した。

 

「な、何だ!?」

 

やがて的は匂いを嗅ぎ付けたかの様に、青年の乗る巡洋艦に目掛けて直進し出した。

よく見れば的の後ろに白い尻尾が浮かび上がる。

やがてその尻尾は二本、三本と徐々に増え、その的の下から人影が浮かび上がった。

潜水ソ級達だった。

 

「し、深海棲艦だっ!」

 

艦長が言うが早いか潜水ソ級達は、青年の前の巡洋艦目掛けて魚雷を放った。

爆音と共に手前の巡洋艦が、煙を上げた。

 

「て、撤収っ!!」

 

艦長の号令の下、青年の乗る船は旋回し始めた。

 

〈こんな所にも深海棲艦が…!!〉

 

焦る青年の頭に何かが落ちてきた。

 

「何だ…あっ、オマエは!」

 

昔、龍驤と初めて会った時、彼を龍驤の下へ連れて行った妖精だった。

 

「何でオマエがこんな所に…。まさか、龍驤が近くまで来てるのか!?」

 

妖精はこくっと頷く。

 

「た、頼むっ。龍驤に助けてくれって伝えてくれっ!!」

 

妖精は彼の肩から飛び降りると、煙の様に姿を消した。

 

「貴様、そんな所で何をぼさっとしておる!」

 

「あっ、艦長。大丈夫です。もうすぐ艦娘達が来てくれます!」

 

「艦娘?な、何でオマエにそんな事が分かる!?」

 

「今、妖精に来てくれと伝えました!」

 

「キ、キサマ妖精が見えるのか…?」

 

艦長が青年の言葉に半信半疑で疑っていると、後ろの通信技師が雄叫びを上げた。

 

「何だっ、どうしたっ!」

 

「か、艦娘ですっ!彼女達の部隊から通信がありました!後は任せろとの事ですっ!!」

 

青年は艦橋に躍り出た。

数十メートル先の海面を滑走する艦娘達。その中には、青年が忘れもしない龍驤の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう龍驤。助かったよ」

 

かろうじて軍港にたどり着いた巡洋艦から降りてきた青年は、龍驤と三年振りの再会を果たしていた。

 

「な、何や自分、随分背ぇ伸びたなぁ!見違えたで!」

 

「ははっ、あれから三年も経ってるんだ。そりゃ伸びるよ」

 

「それにまぁ、大層男前になって…///」

 

「ありがと、龍驤も昔と同じで可愛いよ。…胸は昔のまんまだけど」

 

「やかましい!」

 

龍驤のスナップの効いた回し蹴りが、青年の尻にヒットした。

 

「痛てぇっ!」

 

「昔から一言多いわっ!」

 

「お、おまえも相変わらずいい蹴りしてやがる。変わってないな」

 

「…お互いな」

 

その後、龍驤達の部隊は巡洋艦の艦長と話をした後、自分達の鎮守府へと帰って行った。

 

〈龍驤…また会おうな…〉

 

龍驤達が海の彼方へと消えるのを、青年は何時までも名残惜しそうに眺めていた。

その彼の下へ、一人の将校がやって来た。

 

「あ、艦長。すぐに戻ります」

 

「いや、そんな事より聞きたい事がある」

 

「聞きたい事…。自分に、ですか?」

 

「うむ、貴官は艦娘達の妖精が見えるそうだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知っとるか鳳翔。今日から新しい提督が着任するそうやで」

 

弓道場に向かおうとした鳳翔を見かけた龍驤が、彼女の足を止めた。

 

「まあ、そうなんですか。後でご挨拶に向かわないと」

 

「確か、もうそろそろのはずや。ちょっくら出迎えてくるわ」

 

「あ、龍驤さん、私も一緒に…」

 

「先に行っとるで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間はあってるハズなんやけど…」

 

鎮守府の正門に来た龍驤は、周囲を見回したが自分以外の人影は見当たらなかった。

と、突然、龍驤の視界に何かに遮られた。

 

「な、何や!敵かっ!?」

 

龍驤は自分の顔に覆い被さっている物を掴み上げようとする。ところが、それはまるでガムの様に彼女の耳や眉毛に引っ張り付く。

 

「イタタ、何やねん…うわっ!!」

 

龍驤はバランスを崩し、尻餅を着いた。

 

「った~。何やの…って妖精さん!?」

 

龍驤の艦載機の妖精が、龍驤の前で舌を出してニヤニヤしていた。

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「へっ?」

 

尻餅を着いた龍驤を見上げる一人の青年。彼の肩に妖精が乗ると、二人はお互いに笑いながら親指を突き上げる。

 

「ア、アンタ。まさか今日来る提督って…」

 

「あぁ。今日からよろしくな、龍驤」

 

青年は龍驤の手を掴むと、彼女を起き上がらせた。

 

「まさか、こんな形で会いに来るとはな…」

 

「言ったろ。必ず会いに行くって」

 

青年は龍驤の背中に手を回し、彼女を優しく引き寄せた。

 

「コ、コラッ、自分、何してんねん///」

 

「…これからよろしくな、龍驤」

 

「…待たせ過ぎや」

 

彼の胸に頭を埋める龍驤の後ろに、小さな足音が響いた。

 

「あらあら、お邪魔でしたかしら?」

 

鳳翔の声に、青年は慌てて龍驤から離れた。

 

「クスッ。え~っと、新しい提督さんでしょうか?」

 

彼は軽く咳払いすると、襟を正しながら振り返った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぃ~っ。

 

三年…いや四年か?

ホンマ長かったわ。

 

ようやくや。ようやく戻ってきたのお。

 

昔、ウチが惚れた男の忘れ形見…

そして、鳳翔の…

 

あの日、偶然アイツに会った時、何処かで見た顔だと思っとった。

そん時は、気のせいやろ思ったが、アイツの両親がすでにいない、祖父母に育てられとると聞いて、何か心に引っ掛かったんや。

まさかと思て、鎮守府の資料漁ってみたら…

ドンピシャや。

 

アイツ、昔、ウチと鳳翔が惚れた男と同じ名字や。

おまけにアイツの名前。鳳翔とウチが一緒に考えた名前や。忘れるハズがない。

それで確信したわ。

 

アイツは生き別れた鳳翔の息子やと!

 

アイツの父親…鳳翔の夫と知り合ったのは、まだウチら艦娘がこの世に誕生した頃や。

右も左も分からんウチらと一緒に、泣いて笑うて同じ釜の飯食って…。あん時が一番楽しかったわ。

 

そんなアイツに、気が付いたら惚れとった。

コイツと夫婦になれたらなんて、何度思った事か…。

 

でも、ウチは艦娘や。

こんな自分に好かれても迷惑なんちゃうか…その気持ちがどうしても拭えんかった。

だが、アイツはそんな事まるで気にせえへん言うてくれた。だからウチは思いきって想いを伝えようとした。

そんな矢先、鳳翔から言われたんや。

 

『私、あの人にケッコンを申し込まれたの…』

 

なぁ鳳翔…。

あの時のウチの気持ち、アンタに分かるか?

 

アンタらがすでにデキとったやなんて…。

フッ、ウフフ、アハハハッ♪傑作やないか…。

 

フザケんなや!!

 

ウチはまるでピエロやないかっ!!

ウチが真剣に悩んでる時に、アンタらよろしくやっとったんかい!!悩んでるウチを酒の肴にでもしとったんか!?

人を馬鹿にすんのも大概にしいや!!

 

あげくの果てに、鳳翔とここを出てくやと?

…そんなん、ウチが許すわけないやろ…!

 

アイツが鳳翔と駆け落ちする日、たまたま深海棲艦が鎮守府に現れた。

そん時ウチは思ったわ。

やっぱり神様は、正しいモンの味方なんやと。

 

ウチは出撃、アイツは鎮守府の防衛。

深海棲艦は鎮守府のドックに攻撃を仕掛けてきた。ウチはその敵を追って鎮守府へ。

 

ウチは艦載機でドックにいる敵に攻撃を仕掛けた。

…そこにアイツがいるのを知りながらな。

 

ウチの活躍で、深海棲艦は撤退した。大勢の犠牲も出た。アイツもその一人や。

気の毒になぁ…。でもアンタが悪いんやで?

ウチの気持ちを弄んだ天罰が当たったんや…!

 

ウチは笑いを堪えながら、鳳翔に知らせに行った。鳳翔はその場で泣き崩れた。

ウチにすがり付いて泣く鳳翔。もし、そん時のウチの顔見とったら、どんな顔するんやろな?見てみたかったわ♪

 

でもな、鳳翔。

アンタどこまでウチをコケにすれば気が済むんや…。

アイツのガキが腹ん中にいるやと…ッ!

 

ふぅ~、落ち着け龍驤。

アイツはもういない。いないんや。

今、鳳翔の腹ん中にいるのはアイツのガキ。こいつには何の罪も無いんや。

…そう思ってたのになぁ。何でやろ。

鳳翔がガキに乳をあげてるのを見てたら.何やムカムカしてきたわ。

ホンマならそのガキは、ウチが産むはずやったんや…。

今そこで乳あげてるのは、ウチのはずだったんや!!

 

…気が付いたらウチ、アイツの親に鳳翔がガキ産んだ事、バラしとったわ。

案の定アイツの両親、血相変えて乗り込んで来たわ。

可哀想にのぅ。

鳳翔、大事なモン奪われるのがどんな気持ちか、これで分かったやろ。

でもま、アンタは大事な戦友やし、ウチも鬼やない。これで仕切り直しや。また昔みたいにやってこうや。

 

それから十数年、ウチと鳳翔は仲良くやってきた。

なのに…。ウチは会ってしもたんや。

 

鳳翔のガキに…!!

 

最初は何や見覚えのある顔やな思てたが、そりゃそうや。鳳翔のガキやもんな。

そら最初はビックリしたわ。こんな偶然あるんやなって。

…そん時ウチ、ピンと来たんよ。

これって、神サマが引き合わせてくれたんやないか…って。

あん時は鳳翔の邪魔が入って結ばれなかった。だから、ウチを不憫に思った神サマがやり直すチャンスくれたんや!

きっとそうや…。そうに違いない!!

 

ウチはコイツと会いながらず~っと考えとった。どやったら、コイツをウチだけのもんにできるやろか。

そう言えばコイツ、妖精さんが見える言うてたな…。

それでウチ、閃いたんや。

 

提督になってもらおって!!

 

幸いコイツも深海棲艦を父親の仇と思ってるみたいやし…。

でも、それだけじゃ駄目や。

もっと明確な、必ず提督になるんやって、強い意志を持ってもらわな…。

そういやコイツ、祖父母と暮らしとるんやったな。

…悪いな。ちょっと利用させてもらうで。

 

コイツの暮らしとる港町の側に深海棲艦が出た。

ウチは出撃の時間が決まると、コイツの祖父母に手紙を出した。

アンタの息子の遺書が出てきた、渡したいから来てほしい。そう言うてちょうど戦闘の始まるやろう時間に港へ誘い出した。

こっからはウチの演技力に掛かってる。ウチは調子が悪いフリして、一人部隊から孤立する様に動いた。敵さんもウチの事追って来てくれとる。

海岸が見えると二人の人影が見えた。予定通りや。

鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪

的はウチや。しっかり〈二人の前に立つ〉ウチを狙うんやで!!

 

ウチの作戦はバッチリ的中した。

ウチが交わした魚雷が不幸にも〈偶然そこにおった〉民間人を吹き飛ばしおった。

別にアンタらに恨みはないんやが…堪忍やで。

 

ただ誤算があったとすれば、その場にアイツもいた事や。あん時はホント焦ったで。

ここでアイツまでイッてもうたら、何もかもパァや。幸い怪我だけで済んだがホンマ、ヒヤヒヤしたわ。

 

ただ怪我の功名っちゅうんかの。目の前で育ての親が死ぬトコ見たのは大きかったな。

これでアイツの心には、しっかりと刻まれたはずや。

深海棲艦への恨みがな。

 

ウチの考えた通り、アイツは軍人への道を歩み始めた。

それから三年、アイツの行動は手紙でつぶさに把握しとった。ときにはこっそりウチの妖精さんを飛ばして、様子を見てもらいもした。

それが良かったんやろな。

たまたまウチらが戦ってる最中に、アイツが演習しとった。ウチは敵をその方角へ誘導する様に戦った。

すぐにアイツの船が見つかった。後は簡単や。敵さんに適当に船を攻撃してもらって、あわや絶体絶命のトコをウチが救う!

これならアイツもウチに惚れ直すやろ!

 

命拾いしたアイツの前に颯爽と現れる…のは良かったんやが…ヤられたわ。

 

逆に惚れてもうたわ…///

えらい男前になって…!

背もすっかり抜かれてもうたわ。

 

やっぱ鳳翔と結ばれたんは、間違いだったんよ。だから神サマがもっかいやり直す為に、生き返らせたんや…。

 

何や聞いた話だと、アイツが妖精さんと意志の疎通が出来る事を知った上層部が、アイツを提督に抜擢したらしいわ。

ホンマ、上手く行く時は行くモンやな♪

 

今日、アイツはここの提督として鎮守府に着任する。

…鳳翔には提督が息子だとは知らせてない。

だが鳳翔のヤツも、アイツの顔見ればイッパツで分かるやろ。

ウチを裏切ったアイツにそっくりやからな…!!

 

鳳翔、悪いな。

旦那はアンタに譲ったんや。息子の方はウチが貰う。それで、おあいこや。

なぁ、そうやろ鳳翔?

アンタなら…分かってくれるやろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈提督〉は鳳翔に振り返った。

 

「私は鳳翔型軽…空母の…ほ、鳳…翔と…」

 

彼は満面の笑顔で答えた。

 

「初めまして。今日からこちらに着任する事になりました。名前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そん時のウチの顔、鳳翔にはどう写っとったんやろ?

きっと見られたモンやないやろな。

 

イヒヒッ♪

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくれてる方には分かると思いますが、鳳翔回のIFルートになっちゃいました。もしも龍驤の方が先に提督(鳳翔の息子)に会っていたら?みたいな。
最初は単に彼が提督になる様仕向けるだけの話だったんですが、鳳翔回と絡めたら面白いかな~と思ってこうしました。鳳翔さんは思わぬとばっちりでした(゜.゜)

読んでる艦これ物で、10月から更新止まっちゃってるのがあって寂しいです。早く再開しないかな。

次回?あたしだよっ!!ヒャッハ~♪(※30話になります)








おまけ 艦娘型録

龍驤 幼児体型を気にしてる割には、映画館は子供料金で入場する。最近パッドを入れてみたが誰も気付いてくれなかった。

鳳翔 提督の実の母。鎮守府における数少ない非処女勢。最近、下着を集めるのにハマっているが見せる相手がいないのが悩み。

提督 精神的には成長したが頭はハッピーセット。最近、龍驤と鳳翔から頻りに食事に誘われている事からモテ期到来と勘違いしている。好きな漫画は忍空。

隼鷹 ラリパッパ。飲んだ時の事は一切覚えていない一週間フレンズ。最近、飛鷹からアルコール依存症を本気で疑われている。次の話の主役だからお前ら見とけよ見とけよ~。

飛鷹 今回一番の常識人。顔は可愛いし龍驤のパッドも見て見ぬ気遣いも出来る割には人気が無い。飛鷹がモテないのはどう考えてもお前らが悪い。

北上 クレイジーサイコレズ。久し振りに登場。

祖父母 一人息子が艦娘と駆け落ちした挙げ句戦死したり、孫を引き取ってやり直そうと思ったら吹っ飛ばされた、ある意味一番の被害者。最近腕時計を新調した。10回ローンで。
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