This work end エルフ課長のさいなん 作:ARice アリス
トライアングル な けもの。ぶりざーど 極氷点下の赤道帯にて
がたがたと木戸を風雪の吹雪がなぐるように吹き付ける
ロビーホールとはいえ、二重戸の上、戸の閉まりは良い筈なのだけれど
『東西の等圧線が狭まり…ばらく…くでしょう』
ラジオが聞こえずらい…もともと田舎ってこともあるんだけど
「ラジオ局の機材の修理…来月初めまで、か」
急がないと
あとそれと
温かいストーブに干している洗濯もの
乾いているだろうか
…
ん、む?
風に混じって人の声が聞こえる
さっきからガタガタいっていたのはもしかして
…
戸をゆっくりと開けると彼女は吹雪に押されるようになだれ込んできた
「どしたの?」
彼女は勢いあまって尻もちをつき、ウーと唸り睨みつけてくる
…
「ペンギンの獣人とはいえ…この寒いのは寒いのっ!!」
「いやーすまんすまん凛子。部品頼んでたの忘れてた」
広いロビーから管理人室だった部屋に移動している
ペンギンの亜人、その女の子の幼馴染である 『華 凛子 はな りんこ』
改めて見廻すと………短足だ
腰からは『ペンギン』の胴体となっている。元の生物を知らんが
ん?この凛子様のナイスなスタイルに惚れちゃったカナー?
しかし、と無駄に育った胸を…本人は自覚していないんだろうがドヤ顔で腰に手を当て強調している
「いーや、昔から短足だなーって」
ハァ?ムカつく!まったく、ひどいクソやろーね。とぶつぶつ文句を言っている
「ここいらじゃあ野郎は俺一人だもんな」
―………あー…
と複雑な凛子
だって彼は………
目の前の真っ白な男性『鳴咲 鳴 なるさき なる』
いつも、いつもこいつは素知らぬ顔で
たぶん意図せずして私の心をかき乱す
私たちの暮らす地域は熱帯に位置しており
私はこいつのお姉さんやお父さんとは違い生まれから亜人だった
こいつとは幼馴染で出身の村では一番若い私とコイツは子宝を望まれていた
その話を聞かされてからコイツとは距離を取ろうとしたのだが…コイツは頭がいい。天才といっても差はないと思う
機械工作、室内農業の経験、氷漬けの海の漁の方法、それらを生まれから瞬く間に開発していった
本人が言うには『どこからか知識を引っ張り出しているだけ』とのことだが
厭味ったらしくこいつを扱うのに、こいつは私に対して嫌悪感を吐き出したことはない
むしろ簡単に流されてしまうからこそコイツとの今の仲があるのだろう
正直に言おう、こいつと家庭を築くのも………悪くはないか、な?
それからというものコイツの外出に連れ立ってもらって
家庭の外壁の修理や外部機材の修理なんかを手伝っている。
素直になれないとはいえ、
「……なにかあったの?」彼はふい、と顔を背ける。そしてうつむくと
「実はラジオ塔の修理に行かなければならないんだ……」
「あー…」
「どっち、の?」
この裏手の山の上にある電波塔か
「六階、要は屋上だな」
「この強風の中?」
「死ぬわよ、判ってんの?」
「心強い味方を用意したのだよ」
「あ、あはは。ど、ドモー……?」
幼いころ私とコイツのあこがれの人だった白熊の雪子さんだった
驚いている私たちをきょどきょどするのは人離れしすぎたのかな…
急ぎ仕上げました。