This work end エルフ課長のさいなん   作:ARice アリス

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かもしれない。


訪れなかった終末 熱帯:カイダンニテ、君を待つ1

……どこまでも続く海

 

 

この神社の階段は海につながっている。

 

 

ずっと前から、この星の水辺は広がり、僕たちは当然、このわずかに残った陸地も飲み込まれるのだろうな。

 

と漠然と考えていた、そんないつもの二人が集まる。

 

 

 

―-境内の真夏、午前昼前…

 

僕はあの子との忘れられない、そんな時を過ごした

 

大切な思い出を語ってゆく

 

 

 

 

 

この階段が105段目で海に浸かっているのを確認することはもう五歳のころには終わっていたし

 

最近は特に昆虫採集にも虫自体の数も減ってきた

 

知り合いの人魚のお姉さんは何かの大規模工事とやらで周りの大人も連れだって

ここらにいる人間は僕の知る限り

 

生まれの一年違う年子の幼馴染の男の子だけだ

 

赤ん坊のころから一緒で、家族ぐるみでの付き合いのヤツ

 

僕にとって、ソイツとのこの境内に集まるのは。

いつも、いつでものルーティンで、必ず組み込まれる。幼少期の狭い世間では世の常となっていた

 

 

 

そいつがここ二、三日全く音さたなく

自分の家の手漕ぎ小舟を家の向かいの山まで往復で二、三十回は向かった

 

漕いだ労力むなしく、留守だった

 

 

 

あれから大人たちに勉強を教えてもらいつつ、夏が終わりそうな。

 

ひぐらしが、悲しく泣いていた晩夏

 

 

 

家に帰ると、親父が、母さんをぶっていた

 

「なにしてるんだよ!」

 

「おれたちは!おれは!もうおしまいなんだ!」

 

「カオル、これで商店に行ってきなさい」「でも、」「早く!」

 

 

もう、僕の家族は。同じ形にもどらない気がした

 

舟をこぎ、沖に出ると、にぎりしめた千円札はやぶれていた

 

 

俺は、また、あの階段へ向かった。

 

 

鈴虫が泣いていて。

 

 

 

聞き覚えのない、後ろから女の子がやってきた

 

 

「泣き虫…」

 

 

うるさい、だったか。とにかくひどい言葉を漏らしたのは

 

 

 

「私のパパ、怒ってた、あの人たちになのか。」誰にでも、なのか。

 

とにかく、どうにかなるよ。

 

 

夏の夜、虫たちの音色に包まれ、疲れ果て、眠る香る。線香と甘いスイカのような香り、柔らかい感覚

 

今でも、彼女に…

 

 

夏の蝉たちの鳴き声で目が覚めた。

 

暑い日差しに、ありえないものを見た、でもそれはのぞんでいたものではなくって。

 

 

 

とにかくそれは、嬉しかった

 

 

「薫、おはよ。」お寝坊さんだね?いつもより、それらしくなっていた

 

 

「ああ、(のぞみ)、おはよう」なんでもないように、できただろうか。たぶん私の顔は…

 

希は私のほっぺたを縦横伸ばすと

 

 

「やーめーろっ…!」

手を振りほどき、うつむいて、また、歪んだ顔で(精一杯笑って)見ていたのだろう

 

「うん、元気だね!」

 

 

 

 

「…なっちまったのか」

 

胸元のリボンが特徴的なサマーワンピース、いつもの麦藁帽もすこしぶかぶかだ

頭をなでてくる。抵抗はしない

 

「ん、最後の日に、股が血が出てて両尾びれちょっとなりかけててね」

 

「胸元も、ふくらみかけだけど、おっきくなっててさ、さわってみる?」そういって、手を持って行った

 

「アハハ、あれ?女の子のおっぱいだぞー?」

 

 

泣いてんじゃねーか

 

 

「無理すんなよ」そう言って肩に手をまわし、抱きしめた。

 

「親友の、ハグだ」今度は、彼女が泣く番だった

 

 

『「二人して泣いて」』日もまだてっぺんなのに、と笑いあった

 

 

「海の中の街を造ってるんだって」

 

「親父がスゲー…キレてたのはあれのせいか」

 

 

「百年も土地が完全に沈んだ海上暮らしなんて、やりたくないよね」

 

 

「親父は。死んでるな。俺の母ちゃんみたいになれば違うんだろうけど」

 

 

「心配すんなって!一ヶ月だろ!」

 

 

 

 

 

 

「いいえ、私は行きません……」

 

「貴女には幸せになってほしいの…分かってちょうだい…」

 

親父は奥の茶の間で黙って古い新聞を読みふけっていた

 

「ダイジョーブ!ヨユーだって!食べ物も支給されんだしさ!カーちゃん楽しんで来いよ!」

 

約束もできないのに

 

母が抱きしめたのは、わかっていたから

 

 

 

 

 

今では、

 

 

今では骨ばった父

 

 

この家を建てたとき、僕は生まれていなかった。

 

海運貿易商の際、救助に当たったのが母だったそうだ、互いに一目ぼれで。俺は3年後に生まれることとなった

 

 

「父さん、水の申請まだ届いてないのかなあ…」

 

 

「……かぉぅ……」

 

 

「父さん」

 

 

「わぁしぁ…もぅ…だぇぁ…」

 

 

「……無理だよ、父さん居なくなったら誰が居るんだよ!」

 

 

「タカオには…悪いこと………を……」

 

 

 

「タカオ…?父さん………?」

 

耳元で聞いた彼の言葉は、あれから吐き出すように漏らしていた罵倒の言葉ではなく

何かの一種の懺悔だった

 

彼の読み耽っていた資料には色あせ、傷だらけでほとんど読めない、会社…とは読めた

 

それを読む時間は一種の狂信に近い物のようで遠巻きに見ていたが

 

忌の際に想うもの…タカオ…母さんの旧姓か…?

 

 

水は届かない、日が昇って、夕焼けになって、雨が降って、嵐が起きて、日はなかなか降りない

 

 

父はミイラとなった

 

残りの燃料で父を火葬し、砕き、海に撒いた

 

照りつける日差し、何もない世界、海原。昔読んだ海の砂漠。海面下にはハイブがあり、そこで豊かな生活をしているのだろうか、あの人口で? 言い得て妙だ

 

釣り上げた魚から血を吸いだすのも限界に近い、最後の釣り具も損失したし。歳も取り過ぎた

 

 

 

縁側で寝転がる。聞こえるのは波のちゃぷちゃぷとうねる音

 

 

いや、聞こえるのは…あの時の鈴虫と波のひいては寄せる

 

やさしいあの香りと君の姿は薄っすらと戻ってきた

 

 

『もう限界…?なら、帰ろう…命の生まれた海へ…!』

 

幻だろう、彼は希。うっすらと父と母が横に立っている

 

私は最後の力を振り絞り、縁側から海に飛び込んだ。

 

 

 

 

泡が身体を包む。

 

せめて瞼を閉じてしまわないように幻を幻視し続けると足が…下へ、深海へと尾を掻きだした

 

泡がさらに私を包む

 

腕はあの日のように泳ぎだ(クロール)する

 

 

 

真っ暗な世界に来た…何か灯が近づいてくる…

 

 

私の父と母は闇の中へと消え去っていった

 

 

「のぞみ………  …    」

 

 

 

 

 

さんは……ここに居るということは…」

 

「母さん、おめでとう、戸籍はもう違うけれど。妹。なんだね」

 

「っ、違うわ!あなたも…」「違わないよ、立派な命だよ」

 

 

 

僕は真っ赤な紅の、あの夕焼けのような。の最期の笑顔、色鮮やかな魚を一緒に食べたあの日を思い出す

朱色ベタの人魚になっていた

 

おめでとう。どのようなことであれ、僕は君を祝福し、手助けするよ、タカオ家次期頭首……

 

 

高雄 茂子

 

 

水槽の中、彼女の腕の中で白色の赤子の人魚が静かに眠っていた。

 

母は不安そうに見ていたが、(ワタクシ)はこの子だけでも、何が起ころうと護り通そう(・・・・・・・・・・)、そう刻む

 

 

 

 

 

 

 

ceo.1989 偉大なと母に誓いここに刻む 宮野 薫

 

 

 

 






ミヤノ……
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