ノーゲーム・ノーライフ もう一人の奴隷   作:二重世界

1 / 4
プロローグ 前日

「明日だな。覚悟は出来てるか、クラミー」

 

ここは人類種の最後の国であるエルキア、そのほとんど人のこないような郊外にある宿の一部屋。

俺はそこのベッドに寝転びながら、テーブルを挟んでトランプで遊んでいる少女二人――その片方の胸の貧相な人類種に質問する。

 

「……今、心の中で私を変な呼び方しなかった?」

 

「……さぁ、何のことやら」

 

貧乳の――じゃなかった。長い黒髪が綺麗なクラミーがゲームをする手を止めずギロッと俺を睨んできたので思わず目線を逸らす。

無理なのは分かっているが魔法で俺の心を読んでいるんじゃないかと疑いたくなるほど勘が鋭い。

まぁ、かなり長い時間一緒にいるからな。俺の考えていることぐらい読めても不思議じゃないが。

 

「いつ見てもクラミーは美人だな、と思っていただけだ」

 

「ありがと……」

 

急に真剣な表情になって声も低くして本気な感じを出してみたのだが、クラミーは呆れたように溜め息を吐きながら適当に返事をしてきた。

別に冗談ではないのだが。やっぱり何回も言っていると真実味が薄れるのだろうか。

これからは少し自重した方がいいかな、とか考えているとクラミーが目で「早くしろ」と言ってくる。

 

「……? どうかしたか?」

 

「どうかしたか? じゃないわよ。さっき何か言いかけてたじゃない」

 

何だ、続きを言ってよかったのか。クラミーの反応から今回は我慢しようと思っていたのに。

 

「そんなにクラミーは自分の魅力について語ってほしいのか。いいだろう、そこまで言うなら今から朝までだってクラミーにクラミーの可愛さについて語ってやろう」

 

「違うわよ! 何の話をしてるの!? 私は覚悟がどうとかの話をしているの!」

 

さっきの余裕のある態度とは違い、今度は顔を真っ赤にしながらツッコんできた。

ああ、そっちか。そんなことよりもクラミーの可愛さの方が大事だから忘れていた。

 

「明日のことだよ。明日で――」

 

「ちょっと待つのですよぉ」

 

俺が話の続きをしようとしたところでクラミーと遊んでいる胸元の開いたパジャマで大きな胸を露にしている森精種――フィール・ニルヴァレンことフィーが口を挟んできた。

そんな格好をしているせいで前屈みになった時とかに胸の先っぽが見えそうになったり、更には下の方も生足を晒していたりと色々と際どい。

 

ヘタレな男なら気まずくて目を逸らしたりするかもしれないが俺はそんなことはしない。ただただ眼福である。

だがクラミーまでエロい格好をしていたら別の意味でヤバかった。理性を抑えるのが難しい。

ちなみにクラミーの格好は可愛らしいキャラが描かれたパジャマだ。完全な俺とフィーの趣味なのだが、クラミーも満更ではなさそうだった。

 

「……どうしたの、フィー」

 

いつになく真剣な様子のフィーにクラミーもシリアスな雰囲気になる。

このタイミングで大事な話でもあるのだろうか。

一応、俺も体を起き上がらせて話を聞く体勢になる。

 

「クラミーの可愛さについて語るなら私も混ぜてほしいのですよ~」

 

「ちょ、フィー!?」

 

フィーの言葉が予想外だったのか驚いた声を上げるクラミー。そんな姿も可愛くて癒される。やっぱりクラミーはからかいがいがある。

ただ一つ気になるのはこんなに大声を出して隣の部屋から苦情がこないかということだ。

 

「いいぜ。そういうことなら俺から言わせてもらおう」

 

「カイも乗らなくていいの!」

 

「え、駄目か?」

 

「駄目に決まってるでしょ! いいからさっきの話を続きをしなさい!」

 

「あ、これで私の勝ちなのですぉ」

 

「うそ! いつの間に!?」

 

二人がしていたゲームは神経衰弱。そしてフィーの前には過半数のトランプが。

どうやらクラミーが俺との会話に夢中になっている間にフィーは次々とカードを当てて勝利したようだ。

 

「というわけで、私の勝ちなので話を続けさせてもらうのですよぉ」

 

「駄目よ」

 

「どうしてなのです~?」

 

柔和な笑顔を浮かべながら不思議そうに首を傾げるフィー。

明らかに分かった上でとぼけているな。クラミーをからかって遊ぶつもりだ。

 

「だって今のは『盟約』に誓ったゲームじゃないもの。私がフィーの望みを聞く義理はないわ」

 

正直、奴隷の言うことは思えないが気にしない事にしよう。フィーはそういうのを嫌うし、俺も人のことは言えないからな。

 

「だったら今度は『盟約』に誓ったゲームをするのですよぉ」

 

「そうだな。で、俺達が勝ったらクラミーを誉めて誉めまくって

照れている姿を見て癒される」

 

「そしてクラミーが勝った場合は今日のところは大人しくするのですよ~」

 

「あなたたち息がピッタリすぎない!? 後、今日のところは、って何!?」

 

そりゃ、息はピッタリだろ。何せ俺とフィーは立場を超えた同志兼ライバルなのだから。

後半について触れることはないな。

俺はまだ何か言いたそうなクラミーを横目に立ち上がって机まで移動する。

 

「さすがに二対一は卑怯だし、まずは俺からだな」

 

「ちょっと待って! 誰もやるなんて言ってないわよ!」

 

「何だ、ビビってるのか……? 安心しろ、ただのゲームだから」

 

「別にビビってないわよ。私に得がないからしたくないだけよ。後、カイの『ただのゲーム』は信用できないのよ。あんたはそういう言葉を使う時こそ本気を出すじゃない」

 

俺としては挑発しつつも楽しそうな雰囲気を出そうとしたんだが失敗したか。

クラミーが断固とした態度で反対してきた。

それにしても俺にそんな癖があったとは知らなかった。次からは気をつけよう。

 

それから二時間後、俺とフィーは何とかクラミーを言いくるめることに成功。二人ともゲームに勝利し、クラミー談義に花を咲かせていたのだが問題が発生した。

 

「…………」

 

ベッドの上に座っているクラミーの表情が死に完全な無表情になってしまった。どうやら恥ずかしさのあまり心を閉ざしてしまったようだ。

反応が可愛くて思わずやり過ぎたな。

さすがにこれはマズイと思い、目配せで中止を提案するとフィーも同じ考えだったらしくすぐに賛成してくれた。

 

「じゃあ、そろそろ寝るのですぉ」

 

「そうだな。クラミーは明日は大事なゲームがあるし、寝不足のせいで負けたなんて事になったら困る」

 

フィーはベッドに移動し、俺は忘れられたかのように放置されているトランプの片付けを開始する。

 

「……あ、もしかして覚悟がどうのって言っていたのはその話?」

 

落ち着いたのか生気の戻った目になるクラミー。

良かった、ずっとこのままで嫌われたらどうしようかと思っていたところだ。下手したら罪悪感に耐えられず自殺していた可能性もある。

 

「ああ、明日のゲームはクラミーの目的を叶えるための大一番だからな。何せ今まで次期国王を選出するためのギャンブル大会でクラミーは無敗、そして次の相手は前王の孫娘であるステファニー・ドーラ。これに勝てばよほどの事がない限りクラミーの優勝は決定する」

 

「心配する必要なんかないわよ。愚王の孫娘なんかに負ける訳ないじゃない。こっちにはフィーもいるのよ」

 

確かにそうなんだがな。でも、何か不安になるんだよな。

クラミーって別に油断したりするわけじゃないが詰めが甘いところがあるからな。ここまで順調にいっていて最後の最後で失敗なんてのはゴメンだ。まぁ、そこに関しては俺が気を付ければいいか。

例えどんな展開になったとしてもクラミーが得をするようにしてみせる。

 

「でも、何でそこで覚悟を聞くのよ。普通は準備とかじゃないの?」

 

「クラミーが今までちゃんと準備してきたのは俺が一番知っているからな」

 

「私が一番だからカイは二番なのですよ~」

 

フィーが優しげな表情とは裏腹に妙に厚のある声で何か言っているが言い返したりはしない。

ここで言い合いになったら本格的に寝る時間がなくなるからな。それに言い合いする理由もない。フィーが何と言うと俺が一番なのは決定している事実なのだから。

 

「そう……。でも、どっちにしたって必要のない心配よ。準備も覚悟もとっくの前に出来ているんだから」

 

クラミーは自信に満ちた目をしながら不遜な笑みを浮かべ……ようとしているのは分かるが失敗している。

照れているのか頬を赤く染めながら僅かに目線を俺から逸らしている。そのどこか大人の色気すら感じる儚げな仕草に思わず見とれてしまう。

普段ならここから更に一言二言からかったりするのだが、今はそんな気にはならない。

それにしてもさっきの言葉は褒めたりするつもりはなく、思ったことをそのまま言っただけなんだがな。

 

「さて、そろそろ寝るか」

 

トランプを片付け終わったところで俺も寝るためにベッドに移動する。

 

「って、何で私のベッドの中に入り込もうとしているのよ!?」

 

「そりゃベッドが二つしかないからな」

 

「だったら椅子で寝ればいいじゃない!」

 

「ここの椅子って硬いんだよ。こんなので寝たら体を痛めてしまう。やっぱり安い宿は駄目だな」

 

「だったらもう一部屋とればよかったでしょ!」

 

「だって一人だけ別の部屋って寂しいし」

 

「だったら私がクラミーと寝るのから、カイがあっちのベッドを使うと良いのですぉ」

 

急に後ろからフィーの声が聞こえたので振り返ってみると、すでにフィーもクラミーのベッドに入り込もうとしていた。

 

「何でフィーまで入ってきてるのよ!?」

 

「だってカイと一緒に寝るのは恥ずかしいのでしょ? だから代わりに私がクラミーと寝て、カイには開いたベッドで寝てもらうのですぉ」

 

「……それは、それで恥ずかしいけど……仕方ないわね」

 

俺と寝るよりはマシだと判断したのかフィーの提案を受け入れるクラミー。

それなら俺とフィーが一緒に寝ても良かったと思うのだが、今回はさすがにやめておこう。性的な意味で本格的に寝れなくなるからな。

これ以上何か言うことはなく俺は移動して寝ることにした。

 




プロローグ終了。
そんなに更新速度は早くないかもしれませんが、頑張って投稿していこうと思います。
感想とかくれると嬉しいです。もしかしたら更新が早くなるかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。