ノーゲーム・ノーライフ もう一人の奴隷   作:二重世界

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第一話 ギャンブル大会

エルキア王国の首都エルキア、その中央から少し離れた郊外にある酒場も兼ねている宿屋。ここでとあるゲームが行われている。

それは次期国王選出のためのギャンブル大会だ。

ルールは単純。人類種なら誰でも参加可能で対戦方法も自由、ただ最後まで勝ち残った人が次期国王になるというもの。

 

そして今酒場の中央で大量の観衆に囲まれながらポーカーをしているのは前国王の孫娘である赤毛の少女――ステファニー・ドーラと我らがアイドル――クラミー・ツェルだ。

俺はそれを離れた席から酒場で買った安酒を飲みながら見ている。

 

「余裕そうだな」

 

二人の様子を見ながら呟く。

クラミーが表情一つ変えず余裕そうなのに対し、テファニー・ドーラは明らかに冷静さを失っている。

ここまでボロ負けなのにまだ戦う意志があるのは評価するがそれだけだ。

負けたくないという気持ちからか、さっきから守りに入っている。フィーのイカサマを抜きにしても、これでは勝てるものも勝てない。

 

「所詮ゲームで負けまくって領土が残り一つになるまでエルキアを追い込んだ愚かな前国王の孫娘、何を考えているのか表情に出すぎなのですぉ。私の魔法がなくてもクラミーなら勝てると思うのですよ~」

 

フィーがいつもと変わらない柔らかい笑顔で毒を吐く。

相変わらず俺とクラミー以外には厳しいな。

 

ちなみにフィーはフードで森精種の特徴的な耳を隠した上で偽装魔法も使っている。

これで魔法を使うどころか精霊を認識することすら出来ない周りの人類種にフィーの正体がバレる心配はない。

 

「それを言ったら今までの対戦相手にだってクラミーより強い奴なんていなかっただろ? だが、それでもイカサマをしないという選択肢はない。そういう油断や慢心が敗北に繋がることもあるからな」

 

「カイは心配性すぎるのですよぉ」

 

「せめて用心深いと言ってくれ」

 

大体、何で俺がこんな性格になったと思っているんだよ……。

奴隷になった頃、俺の周りには味方と呼べる人物は一人もいなかった。……フィーも含めて。

クラミーに会ったのも暫く経ってからだったし。周りは全て敵という状況で育ったんだから用心深くなるのも仕方ない。

まぁ、一番の理由は周りのクソ森精種共からクラミーを守って上手く立ち回るためだけだが。

 

「ん?」

 

昔の事を思い出し何となく嫌な気分になってフィーから目を逸らしたところでフードを被った二人の男女が目に入る。

外の方で中年の男性とクラミー達と同じポーカーで対決しているようだ。

フードのせいで分かりづらいが恐らく男の方は俺と同い年ぐらいで、もう一人は十歳ぐらいの少女だろうか。

 

年齢が離れているし恋人ではなく兄妹かな……。

二人は普通にゲームをしているだけなのに何故か目が離せない。俺の直感が言っている。あの二人には何かあると。

 

「どうかしたのですかぁ?」

 

フィーが不機嫌そうに少し頬を膨らませながら俺の視線の先を見る。自分と話している時に俺が別のものを気にしていたのを不快に思ったのだろう。フィーって意外と粘着質だし後で念のためフォローしておかないと。

 

「…………」

 

俺が見ていた人物にすぐ気付くと何故かフィーの表情が怪訝なものになり、次に哀れむような視線をこっちに向けてくる。

どういうことだ? 全く意味が分からないんだが。

 

「……クラミーに相手してもらえないからって、あんな小さな女の子に手を出すのはどうかと思うのですよぉ」

 

「おい、待てフィー。俺をどういう目で見ているんだ!? 後、俺がクラミーに相手してもらえていないなんて事実は存在しない」

 

「え~と、可愛い女の子の小さな胸を好む少し変わった性癖の持ち主……ですかねぇ……。それと昨夜も一緒に寝ようとして断れているし、そろそろ現実を受け止めた方が良いのですよぉ」

 

遠慮がちにぼかしながら言うフィー。もしこれが俺じゃなかったら間違いなく嬉々として罵倒しているだろう。

いつも落ち着いているフィーの戸惑っている様子というのは可愛いものがあるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

クラミーが俺と寝るのを断ったのは恥ずかしくて照れていただけだ! それ以外の答えは有り得ない!

 

「いや、クラミーの胸はないに等しいほど小さ……」

 

急に物凄い殺気を感じたので振り返ってみると、クラミーが殺意のこもった目線を俺に向けていた。

 

俺が変な事を言っているのを勘で察したのか、それとも単に会話が聞こえたのか。

この騒がしい状況で離れたところに座っている俺達の会話が聞こえるとは思えないし、多分前者だろう。

何かステファニー・ドーラとのゲームよりも迫力を感じるんだが。

 

とりあえずクラミーの胸のことには触れず会話を進めるしかない。

 

「俺は小さな胸もイケるが、フィーみたいな大きな胸も大好きだぞ。それにどちらかと言うと俺は足派だ!」

 

「確かに昨日触りましたけどクラミーの足はすべすべでいつまでも触っていられるほど気持ち良かったのですよぉ」

 

「え、昨夜俺の寝ている横でそんなことになってたの!? 羨ましいぞ! それなら俺も混ぜろよ!」

 

とか、フィーとそんな話をしているうちに例の二人のゲームが終わったようだ。

本来ならもっとクラミーの足の感触について聞きたいところだが、今はこっちの方が優先だ。

 

二人はゲームに勝ったらしく相手からそれなりの額の金を受け取ると、テーブルから離れてカウンターに向かう。このままこの宿で泊まるつもりのようだ。

俺は二人がマスターと話始めるのを確認してから、フィーに一言だけ言って二人の対戦相手だった男に話かける。

 

「なぁ、さっきの二人は何者だったんだ?」

 

「さぁ、よく分からん。ただの田舎者だと思ったんだがな」

 

いきなり話かけてきた俺を訝しみながらも男は素直に質問に答えてくれた。

この言葉から察するに事情をよく知らない田舎者をカモにしようとして返り討ちにあったってところか。

ていうか、エルキアの田舎って何? それが本当なら世捨て人ってことか?

やっぱり何か怪しいな。

と、そこでテーブルに置かれているカードが目に入る。あの二人が最後に出した手札か。

 

……ロイヤルストレートフラッシュ!?

 

そんなの確実にイカサマじゃねぇか。もちろん確率が0じゃない以上、偶然という可能性もあるがロイヤルストレートフラッシュが出る確率は65万分の1。そう簡単に出る数字じゃない。ほぼ間違いなくイカサマだ。

 

「ちなみにあの二人は何を賭けたんだ?」

 

「自分達二人を自由にしていい、だとよ」

 

はぁ? マジかよ。

そんな事して負けたら人権なんて残らないぞ。自分の命すら相手の意のまま。俺と同じ奴隷みたいなものだ。

それなのにこんな明らさまなイカサマをしたのかよ。イカサマがバレたら『十の盟約』によって敗北になるのに。

自分達の言った意味を理解できていない馬鹿なのか? もしそうじゃなかったら狂ってやがる。どれだけ自信があっても普通の感覚の持ち主なら出来る事じゃない。

 

………まだエルキアにこんな奴等が残っていたのか。こいつらがギャンブル大会に出てきたら面倒臭いことになりそうだな。クラミーのためにも早めに対処したおいた方が良いな。




第一話終了です。
次回は空白の二人とステフが登場します。下手したら十八禁になりそうな気がしますがさすがに自重しようと思います。

では感想待ってます。
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