俺は今、昼間にクラミーとステファニー・ドーラが対決していたボロ宿にいる。
クラミーとステファニー・ドーラのゲームが決着(もちろんクラミーの圧勝)した後、俺達は一旦元の泊まっていたボロ宿に戻り、それからクラミーを祝って単独行動だと言って出てきたのだ。もちろん目的はゲーム中に気になった二人の調査。
俺の行動が的外れだったら恥をかくし、余計な心配をかけたくないのでクラミーには本当の事は言っていない。
「え、あ……うん。いってらっしゃい」
そう言ってクラミーは俺を送り出してくれた。特に何も追及しないのは俺を信用してくれているのだろう。
元々俺は単独行動が多いので今さら何か言うのも面倒臭いだけとか、そういうことは決してない。
「また女のところですか~? さすがにそろそろ自重しないとクラミーに嫌われるのですぉ」
フィーは妙に良い笑顔で俺を送り出し……いや、追い出した。
フィーは俺の目的を知っているのに、この言い種……。俺の事が好きなのか嫌いなのか分からないな。
……まぁ、知っているからこその言葉なのだろうが。
酒場は夜ということで仕事終わりの野郎どもが酒を飲みながら騒いでおり、昼間とはまた違う雰囲気を醸し出している。
俺がまたここに来た理由は一つ、ここの宿に泊まっている例の二人に接触するためだ。昼間の調査では何も情報が出てこなかったからな。それで最後の手段として正体を隠した上で二人に直接会いに来たのだ。
泊まっている部屋に関してはフィーが酒場のマスターと二人の会話を聞いていたので問題ない。
俺は意味がないと分かっていても、念のため酒場で情報収集をしてから宿の方に向かう。
「……ん、あれは」
目的の部屋の扉の前についたところで見覚えのある人物を発見した。
赤い髪にどこか気品のある立ち姿……間違いない、ステファニー・ドーラだ。
何かよく分からないが緊張しているようで深呼吸している。
ていうか、ここにいるってことはステファニー・ドーラも俺と同じ人物に会いに来たってことか? でも何故?
後、どうでもいいけど扉の前で入る素振りもなくひたすら深呼吸してるって完全な不審者だな。
とりあえず悩んでいても仕方ないので話かけてみる。
「何してるんだ?」
「ひゃっ! いや、別に私は怪しい者はないですわよ!」
いきなり後ろから話かけられて完全にテンパっているステファニー・ドーラ。
自分が怪しいって自覚はあったのか。
「安心しろ。俺は不審者がいるって通報を受けて確認しにきた宿屋の従業員じゃないから」
「そ、そうでしたの……」
ステファニー・ドーラは俺の言葉に安心しつつも、勝手に勘違いして取り乱したことを恥ずかしく思っているようで顔を赤くしている。
それにしても近くで見るとやっぱり美人だな。フィーほどではないけど胸も大きくて形も整っており、スタイルも良い。
更に俺と違ってどこかとなく育ちの良さを感じさせる雰囲気をしている。その上でチョロそう。
そういやステファニー・ドーラって国内最高のアカデミーを首席で卒業しているんだったな。そうなると駆け引きとかは苦手でも頭が悪いという訳ではないだろう。
国王選定から外れて精神的に弱っているところをゲームでハメれば色々と利用価値はありそうだな。
とはいえ、今の最優先は目の前の部屋に泊まっている連中。そういうのはまた別の機会にしよう。
それよりもちょうど良い。これからの展開にステファニー・ドーラを利用する。
「ところで俺はこの部屋に泊まっているであろう二人組に用があるんだが、あんたは知り合いなのか?」
まずは二人とステファニー・ドーラの関係を確認だ。
相手の情報が全くないまま接触というのは不安だったので、少しでも情報が得られるなら有難い。
「……別に知り合いという訳ではないですわよ。ただ聞きたい事があるだけですわ」
聞きたいことねぇ……。
ということは俺が見逃していただけで二人に通りすがりに何か言われたのだろうか? それでその確認をしに来たと。
知り合いではないのなら、それぐらいしか思い付かない。
わざわざこんなところまで確認に来るくらいだし、可能性として高いのはクラミーのイカサマを指摘された。もしそうだったとしたらマズイな。
森精種の魔法を見破れる奴がバックにいるのか、精霊を認識できないのにイカサマに気付いた事になる。これはどっちにしろクラミーの優勝の妨げになる可能性がある。
……もちろん俺の杞憂ということも有り得るが警戒レベルは上げておいた方がいいな。
「ちなみに何を聞きたいのか聞いてもいいか?」
「それは……って、何でそんな事を貴方に言わないといけないんですの……」
ちょっと踏み込み過ぎたか。一方的に質問する形になったのもマイナス要因の一つだろう。
警戒というほどではないけど怪訝そうな表情をしている。これ以上聞くのは止めておいた方がいいな。
疑われては今からの本番で邪魔になるかもれないし、それにこれ以上の情報があるとも思えない。
「それもそうだな。別に言いたくないなら言わなくてもいい。変なこと聞いて悪かった」
「い、いえ別に謝るようなことではありませんわ!」
「そう言ってくれると助かる」
相手の不信感を取り除くために安心したかのように溜息を吐く。
……さて、俺の話になっても面倒臭いし少し強引だが展開を進めるとしよう。
「それよりあんたも俺と同じでこの部屋の住人に用があるんだろ? だったらこんなところで時間を無駄にしてないで早く目的を果たさないか」
言うと同時に俺は扉をノックする。
「ちょ、いきなりですのっ!?」
予想外の行動に驚くステファニー・ドーラ。
何だろう、弄りがいがある気がする。調査のついでにステファニー・ドーラで遊んでみるのも面白いかもしれない。
「あー、はいはい。どちらさん?」
少し苛立った感じの男の声が返ってきた。
ちょっと喋り過ぎたか。丸聞こえということはないだろうけど、ボロい扉だし俺達の会話がボソボソとだが聞こえていたのだろう。誰でも知らない奴が部屋の外で立ち止まって会話していたら気になるしイラつく。
「ステファニー・ドーラとその他1名だ」
またもやステファニー・ドーラが俺の予想外の言葉にビックリにしている。
これは別にステファニー・ドーラを弄ったりふざけている訳ではない。
知らない男がいきなり来たら誰でも警戒する。その警戒を削ぐためにステファニー・ドーラの名前を利用しただけだ。
昼間のゲームの時にいたのならステファニー・ドーラの名前はさすがに知っているだろうからな。
「はいよ、今開ける」
そう言って扉を開けて出てきたのは黒髪の男。
多分同一人物なのだろうが昼間に見た時と違ってあまり覇気は感じられない。それにマトモに社会生活をしているようにも見えない。これが俺があんなに警戒していた相手なのか? ただの駄目人間のようにも見えるが。
「……あ?」
扉が開くと同時に部屋の中にズカズカと入り込んでいく俺を見て男は訝しむ。
だが、そんなものは無視して奥の方のベッドで寝ている一人の少女のところまで行く。少女は眠そうにしているが完全に寝ているわけではないようだ。
真っ白に透き通った綺麗な肌をしている少女だ。クラミーの事がなければ一瞬目を奪われていたかもしれない。このまま育てば物凄い美人になるだろう。
俺はその場で片膝をつき手を伸ばしながら少女に言う。
「昼間に見た時、一目惚れした。俺と結婚を前提に付き合ってくれ」
俺はクラミーのためなら何でもする。
どんな嘘でもつくし、いかなる手段も使う。
二話終了です。
今回は空白はほとんど出番はなかったですが、次回はちゃんと活躍する予定です。
後、最後に主人公があんなことを言っていますが白がヒロインになることはありません。
ヒロインはクラミーでサブがフィーです。もしかしたらサブは少し増えるかもしれませんが。