テイルズオブベルセリア~True Fighter~   作:ジャスサンド

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今回はタイトルからお察し頂けるようにギデオン司祭の元に乗り込みます。




第10話 マギルゥ復活

タバサからの三つの依頼をこなしたベルベット達。

成功を報告するとタバサからアルトリウスの情報ともう一つ依頼を授かった。それはミッドガンド教会大司祭ギデオンの暗殺。

三つの依頼には赤聖水(ネクター)という常習性の強い薬物が絡んでおり、その売買で教会が大儲けをしている傍らで血翅蝶にも被害が出ているとのことらしい。

 

司祭は毎晩ローグレスの離宮で祈りを捧げているらしく狙うなら深夜という方向性で話はまとまり、ベルベット達はそれまで一時の休息を得た。

 

 

ロクロウとガイア、ライフィセットが同じ食卓で夜食を取っているとガイアはロクロウからふとこんなことを訊ねられた。

 

 

「なあガイア、お前の武器って変わってるよな。俺も初めて見るしどういう武器なんだ?」

 

「知りたいか?」

 

「まあそうだな。ライフィセットもどうやら気になってるみたいだぞ」

 

「そうなのか?」

 

「うん、ちょっと」

 

 

マーボーカレーの滓が口元に付いたまま答えるライフィセットに苦笑しつつ、ガイアは銃を卓上に置き数種類の弾丸を取り出す。

 

「これはアイフリードやアイゼンと異大陸を旅していた時に手に入れた代物だ。いくつかの弾を装填することで異なる効果を発揮する…例えば」

 

 

緑の線が縁取られたカプセルを銃倉に差し込み、ガイアは何もない空間目掛けてトリガーを引く。

すると光で構成された緑の網が発生し、宙に浮かんだまま、暫し仄かな粒子を撒き散らしていた。

 

 

「この緑の弾を使えばこんな風になる」

 

「おお…」

 

「他にはどんなのがあるの?」

 

「色々あるぞ。赤い弾なら威力倍増、青い弾なら速度強化って具合に色んな用途がある」

 

「色の違う弾によってそれぞれ効果が違うわけか、ロマンがあるな!なあライフィセット」

 

「触ってみていい?」

 

「いいぞ、気をつけてな」

 

 

キラキラと輝く好奇心の眼差しを向けるロクロウとライフィセット。

そんな彼らを一歩離れた位置から傍観していたアイゼンは彼らの話題を察したのか、自分も話の輪に加わった。

 

 

「カッコいい…」

 

「その銃は効果もそうだが造形の美しさもそこいらの武器とは格が違う。秘められた多種多様な能力と異なり一切の無駄のない銃身、加えてダイヤなどの宝石が素材として使われていないにも関わらず宝石と見間違える程にきらびやかな造形をしている。更には-」

 

「この紫の弾はどんな効果があるんだ?」

 

「その弾は牽制用だ。それを込めて発射すると弾が複数に分裂して広範囲に拡散する。しかしその反面威力は他のに比べて低下する」

 

 

銃の外見に見惚れるライフィセット、誇らしげな顔で解説に徹するアイゼン、見た目より武器としての性能に興味を示すロクロウ、彼に説明をしながらライフィセットの手つきに気を配るガイア。

そんな彼らにマギルゥはお手上げとばかりに両手を挙げて辟易する。

 

 

「全く男共は道具一つでよくぞあそこまで盛り上がれぬのう」

 

 

マギルゥの発言を受けてベルベットも男子共の盛り上がりぶりを冷ややかに眺めながら、呆れたように呟く。

 

 

「男子にはそういうくだらないことに何よりも夢中になる時があるのよ」

 

「十四歳ぐらいの年頃にの…」

 

見た目はそれぐらいのライフィセットは許容範囲にしても他の三人はすべからく例外だ。

フードのせいで顔立ちはわからないが、声色からしてベルベットと同年齢らしいガイアはまだかろうじて許せる。

だがその彼らより大人で業魔と聖隷であるロクロウとアイゼンは確実に論外だろう。

 

 

(ほんと男の子ってどうしてああなのかしら)

 

 

けどなんか懐かしい

そんな感慨にふけながらベルベットはライフィセット達を見つめていた。

 

 

 

そして深夜、ベルベット達は地下道を通ってローグレス離宮への侵入を開始した。

地下道といえども王都の中であるために何の問題もなくすいすいと目的地に到着できると思われたが、そううまく事は運ばないようだ。

彼らの進行を邪魔する者がいたのだ。

 

「地下道に業魔…?」

 

「これも死神の呪いのせいか?」

 

 

広い空間をうろうろ彷徨く業魔の群れを壁越しに警戒するベルベットとロクロウは物思いの言葉を呟く。

同じくこの光景を目にしたガイアも驚きを隠せずにいるものの、冷静に状況を分析する。

 

 

「これだけの数の業魔だ。呪いのせいとも一概には言えないだろう…しかし聖寮のお膝元にこんな景色があるとはな…民衆に知れたら混乱は免れない。何故野放しにしているんだ…」

 

「真偽のほどは何にせよここを突破せんことには復讐の道は拓けんぞ。ベルベットや」

 

「そんなの最初からわかりきってる。とっととこいつらを片付けるわよ」

 

 

何が来ようと問答無用だと言わんばかりに仇敵のみを見据えるベルベット。

彼女が壁から飛び出したのに続いてロクロウやアイゼンも業魔に飛び込み戦闘を始める。

 

 

「ちょっと待つのじゃ」

 

 

一瞬遅れて参戦しようとするガイアをマギルゥが手招きをして呼び止めた。

こんな時に何を、と如何にも怪訝そうな表情をとるガイアだがやむなく彼女に歩む。

素直に従ったガイアの耳元でマギルゥは囁く。

 

 

 

「-そういうわけじゃからきちんと頼むぞ。やれるじゃろ?」

 

「……本気で、言ってるのか…?」

 

 

マギルゥの言葉に耳を傾けたガイアは深い溜め息と共にそうぼやく。

 

 

「当然じゃ、このマギルゥ様は遊ぶ時すら本気じゃぞ~。とまぁ、あやつめが現れた時は任せたぞ」

 

つくづく本気とふざけの境目が読めない奴だ

マギルゥと会ってから何度そう思ったかと呆れながらもガイアも戦列に加わった。

 

 

 

 

そして地下の業魔を蹴散らしたベルベット達は離宮の図書室へ出て、そのままギデオン司祭いる祭壇へ直行する。

 

 

「ライフィセット、その本鞄に仕舞ったらどうだ?大事にしたいのは分かるが持ったままだと走りづらいだろう?」

 

「う、うん。そうだね」

 

 

後生大事そうに図書室から持ち出した本を両手に抱えて廊下を走るライフィセットにガイアが忠告する。

言われた通りライフィセットが本を鞄に入れた丁度そのタイミングで彼らはギデオン司祭のいる祭壇の前に到達し、閉まりきった扉をベルベットが強引にこじ開けた。

 

 

「あんたがギデオン?」

 

 

祭壇の前に佇む白衣の男の背中にベルベットが問う。

 

 

「祈りの途中だぞ。何者だ?」

 

「先に聞いたのはこっちよ」

 

「無礼な。だが業魔なら当然か」

 

「そこまでです!」

 

 

何故自分の正体を知っているのか。

目前の司祭にベルベットが詰め寄ろうとすると柱の陰からエレノアが使役聖隷を召還すると同時に、姿を現す。

 

 

「待ち伏せか」

 

「これも死神の力か?それともあの婆さんに売られたかな?」

 

 

ロクロウがある可能性を示唆する一方でベルベットは自らの内でそれを否定し、エレノアに断言する。

 

 

「調べたのね。赤水晶の元締めが大司祭だって」

 

「そう。あなた達が起こした事件の関連を洗って大司祭に辿り着きました」

 

「知った上で守るの?」

 

「処罰は聖寮が厳正に下します」

 

「処罰だと!?私がどれだけ聖寮に便宜を測ってきたか!」

 

 

ベルベットとエレノアの問答にギデオンが割って入り、エレノアを糾弾するような声色で唾を喚き散らす。

 

 

「貴方の言い分は後で聞きます。今は業魔の方が先決です!」

 

 

ギデオンを黙らせたエレノアが使役聖隷を引き連れてベルベットらに踊りかかる。

数はエレノアの他に使役聖隷が四体。

エレノアはベルベットを集中的に狙っているために他の方まで手が回らない。

数の上ではベルベット側に優位な立場なのだが、どういうわけかマギルゥとガイアは戦いに交じらず傍観していた。

マギルゥはいつものことにしてもガイアは何故戦わないのか…

 

 

「何してるの!さっさと戦いなさい!」

 

「そうしたいのは山々なんだが…このとおり」

 

 

腕を後ろ手に回されマギルゥに拘束されているガイア。

彼は悪びれた様子で答え、アイゼンは彼女の奇行に不満があるのか使役聖隷を殴打しながら問いただす。

 

 

「何の真似だ?」

 

「こやつにはやってもらうことがある。無駄な労力を使わせなくないんじゃよ。まあ一人や二人欠けたところでお主が負けるようなことはあるまいて、精々頑張っての~」

 

「勝手なことを!」

 

 

槍の刺突をブレードでかわすベルベットが毒づく。

ただでさえ戦力が欲しい状況下で、何故自分達から進んで戦力を削ぐような真似をしなければならないのか。

エレノアと斬り結びながらベルベットはマギルゥに舌打ちを打つ。

 

 

「飛燕連脚!」

 

「くうっ…!」

 

 

足技と剣術をくみあわせた斬新な戦闘スタイルを得意とするベルベットにエレノアはてこずるが、負けじと応戦。

 

 

「このぐらいで、描け蒼弓霊槍・氷刃!」

 

 

槍より放たれた霊力で構成されたいくつもの氷刃が銃弾のようにベルベットに飛びかかる。

迫る絶対零度の脅威にベルベットは眉をピクリとも動かさず、それらをブレードではたき落としたちまち粉末に変えた。

 

「一等対魔士とサシでやり合って優位に立つとはやはりベルベットの奴大した腕前じゃな」

 

「今更言うか…てかいつまでこうしてるつもりだ?俺は加勢に入りたいんだがこのまま突っ立ってるわけにもいかないだろ?」

 

 

未だ束縛されたままのガイアはマギルゥにそう注釈を入れる。

 

 

「我慢せんか、あやつめが姿を現すまでの辛抱じゃ」

 

「目的はあくまでもギデオン司祭だ。他に時間を割いてるうちに逃げられるぞ。それにこの騒ぎを聞き付けた増援だっていつ来るか」

 

「増援が来るその頃にはもうカタがついておろう…」

 

「おい-」

 

「そんなに心配なのかえ?」

 

「……」

 

 

黙りこくるガイア。

マギルゥはその様子に何かを察しつつも意図的に追及を続ける。

 

 

「心配せんでもあやつらの実力はお主も知っておろうに……それとも、他に何かあの場に行きたい理由でもあるのかえ?」

 

 

その問いかけを囁いた時ガイアの反応が変わった。

微々たるものであったがマギルゥの瞳には、確実にさっきまでとは大きく異なる反応に映った。

 

 

「ま、お主が何を思おうがどーでもいいわい。それより儂は-」

 

 

 

 

「エレノア様を苛めるなでふ~!」

 

 

マギルゥの言葉を遮る形でエレノアを擁護する種類の声を上げる小悪魔聖隷が姿を現出した。

マギルゥが探していた裏切り者、ビエンフーという名の使役聖隷だ。

 

彼は業魔手をもってしてエレノアを潰さんとするベルベットの進行上に立ち塞がり、勇敢にも主を守らんとする。…が

 

 

「ビエ~~~!」

 

 

造作もなく一払いで弾き飛ばされてしまいビエンフーは無念の涙を流して、床に落ち行く。

その小さな肉体はひんやりした床下に触れるより先に落下点に偶然居合わせたライフィセットの手中にぴったり収まり、両者は目を合わせる。

 

 

「わぁ…」

 

 

初対面で可愛いと言ったライフィセットの温かな目を間近で見たビエンフーは照れくささからか、ほんのりと赤く頬を染める。

 

 

この時点で彼も予想もしなかっただろう。

その温かさが数秒も持たずして凍てつき、己の肌に寒気が突き刺さることになろうとは

 

 

「会いたかったぞ~ビエンフー。よくも儂から逃げてくれたのう」

 

「マ、マ、マギルゥ姐さん!?」

 

 

ようやく見つけた因縁の相手の登場にマギルゥは瞳をギラつかせビエンフーの頭を鷲掴み、ぶら下げる。

こうなってしまってはビエンフーに逃れる術はない。

 

 

「あ…ああ…」

 

「元鞘に収まってもらうぞ」

 

 

怯えるビエンフーを他所にマギルゥはそう言うと魔法陣を頭上に展開し、滑らかに唇を動かす。

 

 

「七つ目の(もり)に生まれし一族よ。今再び契りを交わし我が悶々たる祈念混沌を極めし一滴とならん。覚えよ汝に与える真名(まな)を『フューシィ=カス』!」

 

「ビエ~ン!ソーバッ~ド~!!」

 

 

マギルゥが真名を告げ、ビエンフーは緑色の光となって彼女の体へと入ってしまった。

 

 

「ふっふっふ…みなぎってきた~!」

 

「この力は…対魔士!?」

 

 

使役していたはずの聖隷を強引に奪取された事実に驚くエレノア。

そんな彼女を前にマギルゥは威風堂々と言い放つ。

 

 

「ちがーう!儂こそは乾坤宇天(けんこんうてん)を玩具にし鬼をもおちょくる大魔法使い!」

 

 

マギルゥが口上を唱える最中、やっとこさ束縛から解放されたガイアは露骨に嫌そうな顔をしながら銃に黄色のカプセルを使う。

そして

 

 

「あ、マギルゥ姐さんと覚えおけ~~い!!」

 

 

名乗りと同時に背後で銃口から飛び出した閃光が幾重にも輝き、マギルゥを照らす。

さながら見世物のような演出をバックに決めポーズをとったマギルゥは喜ばしい表情をする。

 

「これで満足か?」

 

「うむ上出来じゃ。さすがは我が一番弟子、誉めて遣わすぞ~」

 

「遅れは取り戻す…マギルゥ、今度はこっちの言うことを聞いてもらうぞ」

 

 

ガイアがマギルゥにそう告げるのとベルベットとエレノアの間に眩き光弾を撃ち込んだのは、ほぼ同時だった。

 

 

「人間が業魔に味方するなんて…恥を知りなさい!」

 

 

飛び退いたエレノアはベルベットと間隔を空け、横槍を入れたガイアに毒づく。

 

 

「一気にカタをつける。やれるだろう?」

 

「もちろんじゃ誰に物を言うておる」

 

「それともう一つ、ここにいる聖寮の奴らは殺すな。聖隷も人間も全部」

 

「ちょっと何を勝手に-」

 

「注文が多いの~。ま、構わんわ…可愛い愛弟子の頼み、答えてやらんでもない」

 

 

ベルベットの抗議の言葉を無理やり遮断したマギルゥは小汚なく、魔女らしい笑みを浮かべてそう口を開く。

 

 

「誰がいつ誰の弟子になった」

 

 

律儀にマギルゥの軽口に返答したガイア。

彼は紫の銃弾を装填し、天井に向けて引き金を引く。

すると一筋の光が銃口より伸びたかと思えば次には無数に分裂し、秋雨の如く使役聖隷とエレノアへと降り注ぐ。その着弾の余波は彼らだけでなくエレノアと対峙していたベルベットをも巻き込み、彼女は寸前で後方へ引き下がった。

 

 

「ぐうう!」

 

「ちぃ!」

 

「マギルゥ!」

 

「マギルゥ復活の記念じゃとくと受けとれい!アクアスピリット!」

 

エレノアと分断された使役聖隷達にマギルゥの詠唱した水流が覆い被さる。

その威力たるや並大抵のレベルではなく、まともに浴びた使役聖隷達は放水が止むと地べたに這いつくばっていた。

 

 

「そんな!ああっ!」

 

あっという間に使役聖隷を倒されたエレノアにガイアは光の鞭を巻き付け、彼女を拘束。

それにより敵の戦力を完全に絶つことになった。

 

 

「なんじゃもう仕舞いか。歯応えないの~」

 

「くっ…ほどけないっ!」

 

「おいギデオン司祭はどこだ?」

 

 

煽るマギルゥにエレノアが歯噛みするのを尻目にロクロウはギデオンの存在を思い出し小さく呟く。

するとアイゼンが視界の隅に部屋を抜け出て、遠ざかる聖職者の背中を目撃する。

 

 

「あそこだ」

 

「逃がすわけにはいかない。追うわよ」

 

「待ってベルベット、ガイアは!?」

「構うな。先に行け」

 

「でも」

 

「本人がああ言ってるんだ。ここは任せようぜライフィセット」

 

 

先立って走るベルベットにライフィセットがそう指摘するも、本人とロクロウに反論されライフィセットは後ろ髪を引かれる思いのまま走り去る。

去り際に目が合ったガイアとアイゼンはお互いに何かを察したように無言で頷き合い、アイゼンはガイアを残して姿を消す。

そうして場に残りかつ意識があるのはガイアとエレノアの二人だけ。

 

 

(こんなものに…!)

 

 

エレノアは自らを縛る光の縄に顔をしかめ、ガイアを鋭い目付きをもってして睨みつける。

直接的な敵意を注がれる対象になっているガイアは部屋の内外から音が途絶えたのを確かめると、拘束を解き銃を下ろした。

 

 

「え…!?」

 

 

体の自由を戒めていた光が粉粒のように消え行き、残留粒子が宙に舞う。

暗がりも相まって幻想的な景色を演出するきらめきを気にも止めず、エレノアはガイアに問う。

 

 

「何故とどめを刺さないのですか?」

 

「俺は海賊だ。人殺しを生業にしているわけじゃない」

「よく言いますね。ギデオン司祭を暗殺しに来たのでしょう」

 

「不本意ながらな」

 

「不本意…?そうやって罪の意識から逃れるつもりですか?貴方といいあの魔女といい、業魔に肩入れして命を奪って何が違うと言うのですか!貴方と業魔に一体何の!」

 

 

問答を繰り返すうちにエレノアは苛立ちを募らせる。

人間の身でありながら業魔の味方をし、聖寮に牙を向く彼。そしてギデオンを暗殺しようとしているそんな輩らに敗北した自分。その両方にエレノアは怒りを覚えざるにいられなかった。

 

「自分が何をしているのかは重々理解している…殺した命に報いるつもりはない。だがその命の重さを理解していない程愚かでもない。いずれ裁きは受けるだろうな…だが俺を裁くのは聖寮ではない…」

 

 

そこで言葉を途切らせたガイアは一拍間を置く。

 

 

「この世で唯一俺を裁ける資格があるのは一人だけだ」

 

その先を音にすることなく言葉を断ち、ガイアは前に両の足でしっかり立つ少女を見据える。

 

場違いであるとわかっていながら、自分が長らく同じ時を共に過ごした幼なじみと気付いていないとわかっていながら、彼女が彼女であったことにそっと安堵する。

彼女の目線の先にいるのがグランであったなら再び聖寮の対魔士として業魔と戦う道もあるだろう。むしろそうしたいと思う自分がほんの少しだけでもいる。

しかし今ここにいるのはグランではない。ガイアという名前の異なる別人だ。

彼女とはさほど面識はないし、情けをかけるだけの義理もない。

 

ベルベットと行動するなら彼女はまた自分達の障害と成りうる。先のリスクを考慮するのであれば今ここで始末してしまうのが最善の選択なのだ。

照準を定めて引き金を引けばそれで済む単純な作業。だがガイアにはそれができずにいた。

 

 

「一つ忠告しておく。自分や組織を信じるのは構わない。だが絶対的な正しさなどどこにもないことだけは覚えておけ」

 

「何が言いたいのです…」

 

「盲目的になるなということだ。それではいずれ自分の身を破滅させることになる」

 

「貴方は一体-」

 

 

再度エレノアが問いただそうとした時、遠方よりどたばたと慌ただしい足音が響く。

 

 

(警備兵か…)

 

 

一方的に忠告を投げかけたガイアは銃口をエレノアに定め、閃光を放つ。

発光を直に受けてしまいエレノアはたまらず目を閉じる。

バリィィン!とガラスが砕ける音がした。

時間をかけながら視力を取り戻したエレノアの瞳には無人の空間と床に散らばるガラス片だけが映った。

ガイアの行方を求めて四方八方を見渡すもその姿はどこにもない。

 

 

「あの男…何故あんなことを…?」

 

 

暗闇と静寂が包む室内は、響いたエレノアの呟きは一層戸惑いを色濃く強調させていた。

 

 




ガイアの使う銃は今回説明したように異大陸での冒険で手に入れた武器です。
色ごとに発揮できる能力が違いこれまでに出ているのは
赤-発射すれ光球の威力増加
緑-光のバリアやネットを展開する
青-光を広範囲に拡散させる
紫-鞭やアンカーなどに光の形状を自在に変化させる
黄-目眩まし用の閃光を放つ

このようになっております。
追々話の中で詳しく触れていきたいと思っています
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