テイルズオブベルセリア~True Fighter~   作:ジャスサンド

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今回原作のイベント戦を二つ詰めこんでいます。
最初は2話に分けようと思ったのですが文字数の少なさから1話にまとめてしまいました。

詰めこみすぎと思われる方もいるでしょうがご容赦ください


第16話 再戦

「一等対魔士エレノアだな!業魔に屈するとは恥を知れ!!」

 

 

クロガネの工房から出てほどなくして一等対魔士の小隊と出くわした。

顔を見るなり小隊を指揮する女対魔士がエレノアに啖呵を切った。

仮面で表情は見えないが彼らの胸の内には一人の例外もなく、エレノアに対しての憤りが沸き上がっている。

 

 

「私は-」

 

「黙れ!対魔士が業魔に肩入れするなど聖寮への最大の侮辱、アルトリウス様に代わって我々が貴様を断罪する!」

 

「覚悟しろ。貴様の行いは聖寮の、聖寮だけではない民衆への反逆だ!死をもって償え!!」

 

 

エレノアの弁解に耳を貸さず一等対魔士達は攻撃を仕掛ける。

 

 

(どうしてこんな…)

 

 

やむなくエレノアも応戦する。

女対魔士の剣を槍で受け止め押し返すと、一時間合いをとって退避する。

しかし休む暇を与える余裕は敵方にはない。

後方から使役聖隷の火球が追い打ちとして放たれる。

 

 

「霊陣・空旋!」

 

 

エレノアの起こした旋風は火の球をブワッと消し、対魔士を強襲する。

 

 

「この程度どうということはない!」

 

 

強風に苦戦しながらも女対魔士は前へと踏み込みエレノアに接近する。

使役聖隷が身体強化の補助術をかけたことにより女対魔士の力ははねあがり、旋風を一振りで凪いだ。

進行の障害がなくなり女対魔士は急速に間合いを詰めた。

 

 

「うおおおっ!」

 

「…くっ」

 

 

また剣と槍が音を立てて混ざり合う。

肉体が術の加護を受けて強化されている女対魔士の剣技とエレノアは顔を歪ませながらも、対等に立ち回っていた。

 

 

その様をアイゼンは一等対魔士の横っ面を殴り飛ばしながら見ていた。

 

 

(身を守るばかりで反撃には転じない…間違いなく手を抜いているな)

 

 

相手を傷つけまいという配慮がエレノアの戦い方には現れていた。

海賊であるとはいえアイゼンにもその行動は一定の理解はある。

理解はできるが同情はしない。

 

 

「貴様の相手をしている暇はない。そこをどけぇ!」

 

「むんっ!」

 

 

エレノアに執着する一等対魔士にアイゼンの拳が直撃し、彼の体は宙に浮く。

慣性に従って空中に浮かんだまま対魔士は壁に衝突すると、気絶しぐったりと体の力が抜けていた。

 

 

「業火刃!」

 

「ジルクラッカー!」

 

 

戦う相手のないアイゼンが見渡して見ると、ベルベットもライフィセットも襲いかかる対魔士を倒していく。

その刃で、その術で、反撃を許さず圧倒する様は格の違いを見せる戦いぶりだ。

 

 

「ご、業魔め、これ以上好きにはさせん!」

 

「はあっ!」

 

「ぐわああぁ!!」

 

ベルベットの業魔手の餌食になった対魔士が地べたにひれ伏す。

 

 

「終わったようだな」

 

「まだよ」

 

 

皆が皆同じ一方向に目を移す。

まだエレノアが戦っていたからだ。

 

 

「このぉ!舐めるな!」

 

 

幾重にも刃を交えるもすべからくエレノアに弾かれ女対魔士はよろめく。

体勢を崩したところに一矢加えることも可能なのにそうしない。

-手を抜かれている

エレノアが全力を出し切っていないのを女対魔士は刃を通じて実感していた。

だからこそ腹ただしく屈辱を味あわされている。

 

「裏切り者の分際でぇ!」

 

 

沸き立つ全ての感情を込めた渾身の一撃を振り下ろす。

しかし軽く押し返され、即座に槍の穂先を突き付けられてしまう。

 

 

(これ以上は本当に…殺してしまう)

 

 

尚もとどめを迷うエレノア。

ほんの短い間でしかない迷いが生んだスキだがそれが、女対魔士が長槍を払いのけて反撃するだけの時間を与えてしまった。

 

 

「エレノア!」

 

 

ライフィセットの悲痛な叫びと共にエレノアは息が詰まり目を見開く。

彼女に死という形で処断が訪れようと凶刃が迫らんとした時、一陣の黒い疾風が駆け抜け剣を持ち主ごと斬り捨てた。

 

 

「がっ!?」

 

 

女対魔士の体が固い地面に投げ捨てられた。

二本の太刀筋が刻まれ清廉な対魔士の白き衣装が赤黒く染まり、体がピクリとも動かなくなる。

 

「借りは返したぞエレノア」

 

 

エレノアの助けに入ったのはロクロウ。いつもの軽い調子で告げた。

彼の手に握られた黒塗りの二刀小太刀がライフィセットの目に留まった。

 

 

「ロクロウ、刀が完成したんだね」

 

「ああ、後はシグレ(あいつ)を斬るだけだ」

 

「俺も見届ける」

 

 

ロクロウとクロガネ、各々の思いを持ってカドニクス港に足を向ける意思を告げる。

その傍らで横たわる対魔士を見つめているエレノアをベルベットが冷徹な眼差しで咎めた。

 

 

「今みたいな戦い方じゃ死ぬわよ。あんたが死んだらライフィセットの器がなくなる」

 

「わかっています」

 

 

目を合わせず素早く答えるエレノア。

少しばかりの沈黙に包まれる空間。その静寂を壊したのは対魔士の呻き声だった。

 

 

「う…ううっ…」

 

 

まだ息がある。

ベルベットは間髪入れずにどす黒い気を帯びた左腕を解放する。

背中越しながらもはっきり伝わった動きにエレノアは反応し、振り返る。

 

 

「やめろベルベット」

 

 

ベルベットの行為を否めたのはエレノアではなくアイゼンだった。

アイゼンの言葉にベルベットは気分を害した素振りは見せず彼と目を合わせた後、業魔としての左腕を下ろす。

 

 

「殺さない…のですね?」

 

「今はお腹が空いてないの…エレノア、対魔士とは死なないように戦いなさい」

 

「わかりました」

 

 

そう口では言ったもののエレノアの心境には未だに複雑さが残っていた。

次に対魔士と、これからシグレと戦う時に自分は迷いを断ち切り戦えるのだろうかと

そんな自問自答をしている彼女に呑気な調子の声が狭苦しい壁に反響して聞こえる。

 

 

「どうやら厄介者共は成敗できたようじゃな~」

 

 

クロガネの工房のある道からマギルゥが姿を見せた。

隣にはガイアとついでにビエンフーもいる。

 

 

「あんた達も準備はできてるわね」

 

「もちろんじゃ、儂は常にどんな奇想天外な事態にも対処できるよう万全な準備をしておるぞよ」

 

 

マギルゥの余計な口に飽き飽きしながら、ベルベット続けてガイアに視線を移す。

 

 

「問題ない。傷はライフィセットに治してもらったからな」

 

「そう、ならさっさとここを出るわよ」

 

 

仕切るベルベットに続いて皆がシグレの待つカドニクス港に出発する。

そんな中ガイアは踏み出した足を止め、ふと女対魔士の体に目がいく。

片膝をついて女対魔士の服を調べ始めたガイアに気付いたライフィセットは、ベルベット達から離れて彼の元に引き返した。

 

 

「何してるの?」

 

「シグレは港で待つと言っていたらしいな。ロクロウとの対決をするために。にも関わらず対魔士達はここにきた…シグレが命じたわけじゃないだろうしたぶんこの対魔士の独断だ。それだけの指揮権を持つ対魔士なら…」

 

 

対魔士の懐からガイアは細紐で筒状にくるめられた紙を抜き取ると腰を上げる。

 

 

「こんな風に聖寮の動向を探れる何かを持っているかもしれないと思ってな」

 

「その紙、何が書いてあるんだろう?」

 

「中身を見てみないことにはわからない。もしかしたら聖寮とは関係なくこの対魔士の私物の可能性もある…どのみちこれは古文書と一緒にバンエルティア号で見るしかない」

 

 

紙束を懐に仕舞うとガイアは意識を失っている対魔士達に視線を向ける。

五秒にも満たない時間だけその場で佇むとそれっきり振り返ることはなかった。

 

 

「待たせてごめんな。急いでベルベット達と合流しよう」

 

 

ガイアはライフィセットに声をかけベルベット達を追うように歩みを始めた。

不思議そうな目でライフィセットは彼と対魔士を交互に見た後、彼も遅れまいと急いで足を動かした。

 

 

 

 

 

洞穴の奥深くの扉を開け一歩足を踏み入れると、そこは既にカドニクス港の中。

洞穴を抜けてすぐ目的地に繋がっているとは、と驚きを口にする者はおらず、皆が覚えたのは港町の様子に対しての違和感だった。

 

 

「人が誰もいませんね」

 

「決闘の邪魔になると判断して外に出ないよう指示を出したんだろう」

 

「好都合よ。戦いの最中に大勢にうろちょろされたら面倒なのはこっちも同じ」

 

「人質が取れぬのは残念じゃがの~」

 

 

不気味な静けさを醸し出す町並みに思い通りの言葉を呟く。

 

 

「策はあるのか?」

 

 

宿の前に差し掛かったとけろでアイゼンがロクロウに聞く。

彼の言葉が発せられた瞬間に一行はピタリと止まり、ロクロウに視線を集中させて答えを待つ。

首を動かさず全員の顔を見渡す。

そして眉間にしわを寄せながらも口を開いた。

 

 

「策などない」

 

 

深刻な顔をしながらあまりにきっぱり言いのけてしまったロクロウに一部を除いて唖然とする。

 

 

「こりゃまた随分とあっさり言ってしもうたの…お主らしいと言えばらしいが」

 

「だがそれでもお前は俺の刀を手にここにきた。策はなくとも勝てる見込みはあるんだな?」

 

「子供の頃から十年、あいつの授業相手としてオレは剣を受け続けてきた。あいつの剣はオレが一番よく知ってる…恐怖を消せば可能性はある」

 

 

恐怖を消す。常人には成しえそうにもないことだが業魔のロクロウにはそれができるというのだろうか。

そんな疑問を持ったままガイアは一行に合わせて足を進めた。

 

 

 

 

奥へ奥へと船着き場を目指していると、見つけた。

船着き場の手前の広場のど真ん中、そこに複数人の対魔士を控えたシグレとムルジムの姿を

 

 

「来たな」

 

「ってことは出向いた対魔士達は皆返り討ちにあっちゃったのね」

 

「あの対魔士達はやはりお前の差し金じゃなかったんだな」

 

「俺はやめとけって言ったんだぜ。無駄だってな」

 

 

ガイアの投げかけにシグレはそう返す。

自分の部下が叩き潰されたというのに顔色は変わらず、むしろ笑っている。

 

 

「そんなことはいい…お前どんな刀を打った」

 

 

ガイアに興味はないのかシグレはロクロウに期待の眼差しを込める。

しかし当のロクロウはというと彼の言葉に応じず、超えるべき目の前の敵を見据えていた。

ロクロウの顔つきを見てかシグレは曇りのない微笑みで大太刀を握る手を強めた。

 

 

「ま、やってみればわかるな」

 

「あの対魔士達とは僕達が戦う。ロクロウはシグレに勝ってね」

 

「…頼む」

 

 

ロクロウはライフィセットの申し出を受けるや否や真っ先に飛び出してシグレに斬り込む。

その進行を阻止するべくシグレの両側に控えていた対魔士達がロクロウを狙うが、マギルゥの水流とライフィセットの火に妨害される。

 

シグレとロクロウの太刀が交錯がした。

最初の激突で散った火花が消えるより早くロクロウは二の技を仕掛ける。

 

二刀小太刀から繰り出される高速の剣技を披露するロクロウ。

常人には到底引き出せない早業をもってして迫るが、シグレは涼しい顔を保っている。

その表情を余裕と受け取ったロクロウは攻め方を変えて挑むことにした。

垂直に下ろされる大太刀を後方に引いて逃れ、地面を抉ったと同時に空へ躍り出る。

 

 

「これならどうだ!」

 

 

上空で身を捻りロクロウは小太刀を振るう。

左の刃は空を切り、空振りに終わったがそうなることはロクロウも承知していた。

本命は右の刃だ。

 

-懐刀

ランゲツ流に伝わる技であり二刀小太刀の利点を活かした技の一つだ。

 

が、シグレはその技をも軽々と防いでしまった。

 

 

「やはり当たらんか」

 

「そう簡単に終わるわけねぇだろ…どうした?こんなもんじゃないだろ?」

 

「言われずとも見せてやるさ!」

 

 

二人は言葉と刃を幾度も交える。

衝突の都度発生する甲高い音を聞き、ガイアはそちらに気を取られた。

ほんの少し、一瞬にしか過ぎぬ程短い間だったが対峙する相手から目を背けてしまった。

 

 

「もらった!」

 

「-っ!」

 

 

直進する危機に後方へ飛び退くが完璧にかわすことはできなかった。

上段から振るい下ろされた斬撃は衣服を切り、肩先から微量ながらも赤い血液が滲み出る。

 

 

「さすがに手強い…後少し回避が遅れてたら危なかった」

 

 

一人ごちるガイア。

気づくのが遅れていたら一大事だったかもしれないというのにどこか他人事のように感じられる。

そんな彼の背中にベルベットがやってきた。

彼女もまた聖隷術を主とする戦法を取る対魔士に間合いを詰められず攻めあぐねていたようで、一時距離をとるため後退してきたのだ。

 

 

「気になるなら行けば?」

 

「いやいい。助けに入ったところでかえってロクロウの気を損ねるだけだ…それにあいつが望んだ一騎討ち、なら尚更邪魔をしたくない」

 

 

お互い目もくれず正面の敵を見つめたまま口を動かす。

 

 

「バカね、それならいちいち気にする必要はないでしょ。変に余所見して自分の身を守れないんじゃ世話ないじゃない」

 

「最もな指摘だな…耳が痛い」

 

「そう思うならこれに懲りたら次は気をつけなさい。死にたくないならね」

「そうだな…なるべく治すようにはするが次で治せるか難しいところだな。なにせ俺も不器用な方だしな …だから素直に自分の気持ちを言葉(・ ・)にするのは苦手だ」

 

 

銃を握る手でベルベットの手を二回叩くガイア。

その感触を確かめたベルベットは目の端にちらりと彼を映した後、改めて対魔士へと向き直る。

 

「どいつもこいつも、ほんとバカよね。面倒くさいったらありゃしない」

 

「それは、悪かったな」

 

 

剣を持つ対魔士が踏み込んだのと詠唱された火球が飛んだのと、同じタイミングでベルベットとガイアは立ち位置を入れ替える。

垂直に下ろされた剣を下方から伸びたブレードが打ち払い、相当な威力が秘められているであろう火球は緑の光が形成するバリアに阻まれた。

 

 

「「な、なにぃ!?」」

 

 

二人の対魔士が唖然として口を開いたのも束の間、その時にはベルベットとガイアは次の行動に転じていた。

禍々しく黒き腕が対魔士の体を捕らえ地面に叩き付けられ沈黙に落とす。

銃口より出た紫の鞭がもう一人の対魔士の腕に絡み、引き寄せた対魔士の腹部に蹴りを入れ同じく撃沈に追いやる。

 

 

「やるならもっと上手くやりなさい。不自然すぎて違和感丸出しだったわよ」

 

「…手厳しい評価だな」

 

 

そう言いながら二人は戦況を確認するため視野を広げる。

どうやら一等対魔士の方は全て片付いているようで皆等しく地に倒れていた。

 

 

「うおおっ…!!」

 

 

-これで後はシグレのみ

そう思った矢先ロクロウがシグレに弾き飛ばされ、膝を付く姿が彼らの目に飛来してきた。

 

 

「くぅ…」

 

「お前の腕は悪くはねぇよ。だがせっかく業魔になったってのにただ出来のいいランゲツ流じゃねぇか。それじゃ当主の俺に勝てるはずねぇだろ」

 

「……なら見せてやるよ。俺の剣をな!」

 

 

言うが否やロクロウは片方の小太刀を乱雑に投げ捨てシグレへと突っ込む。

その最中ロクロウの右目、業魔の瞳が不気味に光りだす。

次の瞬間、ロクロウは奇策とも言える驚きの行動をとった。

 

 

「うおっ!?」

「もらった!」

 

なんとシグレが突き出した大太刀にロクロウは自らの左手を差し出したのだ。

痛みを諸ともせず柄本までしっかりと押し込んだ左手でシグレの剣を掴んだロクロウ。

これにはさしものシグレも目を見張らせ、その反応に確証を得たロクロウは小太刀を首元に突き刺す。

しかし、シグレは咄嗟にロクロウの背中の鞘から折れた大太刀を抜き、本来の半分にも満たないであろう刀身で小太刀を止めた。

 

 

「なっ!?」

 

「せいっ!」

 

決死の反撃もかわされ、シグレに凪ぎ払われるロクロウ。

尻餅を付き、悔しさから顔を歪ませる彼に対してシグレは嬉しそうに笑う。

 

 

「はっはっ!今のはよかったぜ、片手を捨てて首を狙うとはなぁ!気付くのが一瞬遅れてたら死んでたぜ。それでいいんだよ、それで!」

 

 

歓喜の微笑みと共にその言葉を送ったシグレは奪った大太刀をロクロウに投げ返すと、 気分良くロクロウと他の一行に告げた。

 

 

「よっし、今日はここまでだ。いいかてめえら!もっとすげえ刀を打って、もっと腕を磨いて俺を斬りにこい!」

 

「…斬ってやるさ。何百回負けようが、何百年かかろうがな」

 

 

揺るがない意志を持ってロクロウはそう返す。

その時見せた表情をシグレはこう評した。

 

 

「いい悪い顔になったな。うん、いい悪い顔だ!」

 

 

最後まで笑いを保つシグレ。

笑いながら去っていくシグレにエレノアが驚いていると、ムルジムが去り際に彼女へ言葉を残す。

 

 

「なんという人…」

 

「自分の心配をしたほうがいいんじゃない?あなたが裏切ったことは聖寮中に伝わってるわよ」

 

 

 

沈痛な面持ちのエレノアにそう言い残してムルジムも主の後を追っていった。

戦いが終わり再び静まりかえった空気の中でライフィセットが呟いた。

 

 

「あの人、強かったね。すごく強かった」

 

「ああ。奴は、奴らは強い」

 

「けど必要なら倒す。どんな手を使ってでも」

 

 

ベルベットが言い終えるとアイゼンの目に、バンエルティア号の船体が見えた。

 

 

「バンエルティア号が来たぞ」

 

「ここに長居すればまた戦闘になる可能性がある。さっさと出港してしまおう」

 

 

ガイアの言葉を皮切りに一行は停泊したバンエルティア号に乗り込む。

そこへ戦いを見守っていたクロガネがロクロウに頼み込んできた。

 

 

「俺も連れていってくれ…俺は必ず神剣を越える刀を打ってみせる。だが號嵐に勝つにはその刀を振るう神業を超える剣士が必要だ」

 

 

嘘偽りのないクロガネの意志を聞いたロクロウは傍らにいるアイゼンに問うた。

 

 

「アイゼン、船にこの鎧を乗せる場所はあるか?」

 

「なければ誰かに着せろ」

 

「はは、そいつはいい」

 

 

目を交わさずに返ってきた答えにシグレと似て異なる笑い声を出すロクロウ。

彼は改めてクロガネに言う。

 

 

「頼むぜ、クロガネ」

 

「任せろ」

 

 

同じ超えるべき存在を持つ業魔二人は互いの願いを託し合う。

 

 

 

 

 




次話は箸休め回となります。
これまでベルベット達は何かと忙しくゆったりする暇もなかったので次回では和んだ会話をしてもらおうと思います。最もこの時点で和んだ会話なんてそうそうできるはずもない…(関係性的に)

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