テイルズオブベルセリア~True Fighter~   作:ジャスサンド

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第3話 誠か嘘か…

赤と銀、そして金の三色のボディを持つ巨人はコッヴに迫り攻撃を仕掛ける。

右ストレートを腹部に決め、身を翻すと同時に跳ね左の踵で顔を蹴りつけた。

 

『クワァァァ』

人体でいう横顔に相当する部位を横一文字の軌道で蹴られたコッヴは鎌の左手でそこを抑え、鳴き声を上げる。

手応えを感じた巨人は続けざまにパンチからキック、キックから肘打ちとどんどん格闘技を決めていく。

しかしそういつまでも優位に進むはずはなく一本角から放たれたコッヴの光弾の直撃を受けて、巨人は胸から火花を散らして仰向けに地べたへ倒れこむ。

 

「ドワアア!」

 

怯んだ相手に容赦なく光弾の連射を行うコッヴ。

光弾の発射が止む頃には巨人は土に片膝を付き、小刻みに両肩を上下に揺らしていた。

その様子からダメージの入り具合を読み取ったコッヴは距離を詰め、両腕の鎌で巨人の首筋を挟む。

 

「ガアアァァ!」

 

両側から凄まじい力で首を締め付けられ悲鳴を上げる巨人。それに構わず、コッヴはその巨体を岩盤に押し込み脱出を封じる。

悶える巨人の胸にある青き結晶が赤く明滅し、警告であるかのように何度も何度もけたましく鳴り響く。

 

『クワァァァ』

 

勝ちを確信したコッヴは薄気味の悪い笑い声で宣言した。

だが

 

「ジャアァァ!」

 

そうは問屋が卸さないとでも言いたげに巨人はコッヴの鎌を鷲掴み首筋から引き剥がす。コッヴの腕力と力比べをし、皮膚から鎌が剥がれたところで腹部に思い切り脚を伸ばす。

結果としてコッヴの側から間合いを離してしまい、巨人はかろうじで危機を脱した。

コッヴは再び光弾による射撃を敢行するもそうはさせじと巨人は赤い光弾を角に命中させ、光弾の砲台を負傷させた。

 

「クワァァァァァ」

 

-よし今だ!

ここぞというチャンスを見逃してなるものかと巨人は必殺の一撃を決める。

 

「ジャ!…アアア」

 

まず両腕を左右に伸ばして、腰を下ろして上半身を前屈みにする。

腕を二つとも頭の先端部分を隠すように持っていくと尖った頭の先端には赤き光が満ちていく。

エネルギーが収束した瞬間背を後ろに曲げると光は鞭のようにしなり、巨人は体ごと重心を前面に押し出す。

 

「ジャアアアア!」

 

解き放たれた光の鞭はコッヴに到達するや早いが、その巨体を切り刻み頭から爆散させる。

四散したコッヴを見届けた巨人は心身共に疲れ果てたのか、胸にある結晶の明滅速度を早め片膝を地べたに打ちつけた。

そうしてしばらく佇んでいた巨人だがやがてその巨躯は透明に薄れていき、完全に姿を消失した。

 

 

 

--------

 

 

 

意識が覚醒したその時グランの頭にあらゆる情報が送り込まれた。

澄んだ青い空と白い雲、石造りのシンプルな町並みを見下ろさんばかりに巨大な王城、清らかな水を噴き出す円形状の噴水。

どれも彼にとって馴染み深い光景ばかりだ。

 

「ここは…ローグレス?どうして…」

 

余りの驚きにグランは唖然とする。

 

「僕はさっきまでブルナーク台地に…ウエストガンドにいたはずなのに…どうしてローグレスに…」

 

とても信じられない。

ブルナーク台地のあるウエストガンドとローグレスのあるミッドガンドは船でも三日以上はかかる位置関係にあるはずだ。

まさか二大陸間の物理的隔たりを、瞬時に越えてきたとでも言うのだろうか。

 

「こんなありえない…夢でもない限り船以外で大陸を行き来するなんて…夢?そうだ夢だ。でないと説明がつかない」

 

混乱からかグランは自分に言い聞かせるように()という単語を幾度か反復し、これまでの体験をその一言で片付ける。

遺跡で業魔の襲撃にあったのも、聖隷が自我を持っていたのも、自分が巨人になったのも、全てタチの悪い夢だったのだ。そう解釈したかった

 

「全部夢だったんだ…」

 

無理矢理にでもその説を自分自身に押し付けるグラン。

その彼の耳に噴水のベンチに座る若い男達の会話が聞こえる。

 

『おい聞いたかよ。さっき対魔士が話してたのを小耳に挟んだんだがレニードに向かったローグレスの対魔士様が何人も帰ってこないらしいぞ。本当だとしたらヤバいんじゃないか?』

 

『嘘に決まってんだろ。レニードに向かった対魔士の中には一等対魔士もいるんだぜ。業魔なんぞにそう簡単にやられるかっての。』

『いやその話、俺も聞いたがどうやら本当みたいだ。なんでも業魔退治に向かったものの、凶悪な業魔に返り討ちにあったって話だ。隊は全滅し一等対魔士まで何人か犠牲になったみたいだ』

 

『一等対魔士まで…マジかよ…一等対魔士ってのは対魔士の中でも一握りの人間しかなれない選りすぐりのエリートなんだろ?そんな馬鹿な…」

 

「にわかには信じられない話だけど先日レニードから戻ってきた救助隊が退治に行った一等対魔士の腕を持ちかえってきたって話もある』

 

『おいおい大丈夫か…?聖寮の一等対魔士を殺っちまう業魔なんか俺はお目にかかりたくないぜ』

 

男四人組の会話を聞いたガイアは戦慄した。

 

「…レニード…一等対魔士の腕…」

 

断片的な情報を拾い上げて繋ぎ合わせていくうちにガイアの声は上擦り、震えていく。

頭の中の作業に気をとられているそんな彼の正面を子連れの母親が横切る。

一拍遅れて彼女らの存在に気付いたグランは話を聞くため、女性の肩へと腕を伸ばして引き留める。

 

「あ、あの!すみません!」

 

 

しかし彼の指先は女性の肩をすり抜けて宙に浮かんだまま何も掴めはしなかった。まるで彼が霊体であるかのように

 

「え…」

 

ぎょっとして言葉に詰まったグランは進行を妨害するように女性の前に立つ。

だがそれすらも結果は同じで女性はグランの体を通り抜け、子を連れて城の方へと遠ざかっていく。

 

「そんな…一体全体何がどうなってるんだ…誰か、教えてくれ」

 

何もかも自分の理解の範疇を越えている。

普段なら軽口をぼやけたろうがそんな心のゆとりはグランにはなく、彼は衝動と恐怖に駆られたまま茫然と立ち尽くす。

その瞬間、景色が一変する。

青い空は豪勢な造りの天井に、石造りの町並みはいくつもの本が並べられた棚に、水を噴き出す噴水は木造の執務机に瞬きもしないうちに変化していた。

 

『レニードに派遣した隊は全滅か…手痛い損失だな』

 

執務机を真ん中に置いて相対する二人の男がいた。

アルトリウスとゼブブと名乗った大柄な男だ。

 

『一等・二等共に霊応力の高い者を選んだはずだが期待外れだったな』

 

『一等の二人なら可能性はあると踏んでいたのだが、必ずしも霊応力の高さに左右されるわけでもないということだろう…古文書を解読してもなおかの龍に関してはほとんどが謎のままだ』

 

『時間は限られているぞアルトリウス…わかっているな?』

 

『問題ない。既に四つの内二つは何者かに託されている。聖寮の勢力をもってすればその宿主の特定もそう遠くはない』

 

二人はグランの存在に気付いていないのか、目もくれずに淡々と何事かを話している。

 

『現状光は後回しでも支障はない。まずは優先すべきは喰魔の目覚め』

 

『そうは言うがそちらも簡単な話ではないぞ。八つの穢れを送るためにはその数だけ喰魔を揃える必要がある…まさか本当にタイタニアの喰魔に双方が質を求める気か?』

 

『あれはいずれ強い憎悪と絶望を生み出す。何ら問題はない』

 

『英雄らしからぬ発言だな。完全に情を捨てている』

 

『理想の世界を実現するため…理による世界を作るためにはくだらぬ感情など捨て去らなければならない』

 

-アルトリウス様は何を言ってるんだ

彼らが何を話しているのかまるで理解できない。

しかしアルトリウスから発せられる言葉の一つ一つには計り知れない重みがある。そして彼らが何かを企てていることにも

それだけはなんとなく感じることができた。

 

『この世から穢れを消す…彼らもそのための礎となったのだ』

 

『礎とはな…ものはいいようだな…しかし、どうせ死ぬ身であったならばせめて我々にとって有益な贄となってからにして欲しかったところだな』

 

-贄?

ゼブブのその言葉を皮切りにまた周囲の景色が一変する。

グランを待ち構えていたのは今度は建造物は一つもない、青と緑の二色が四方八方に広がる風景。

人の手では到底なし得ないまさに超常の力で構成されたような摩訶不思議な世界だ。

目の前の光景をグランは一度しか見たことがなかったが彼の記憶にはしっかりと焼き付いていた。

 

「これは…」

 

先から自らの身に降りかかる現象に息を飲んでいるグラン。

そんな彼は自らの身体が、超常の力で溢れる世界を身近に感じていたことを微かに気付いていた。

 

「この空間、前に来た時より不思議な感覚が強くなってる」

 

-キュアアア

 

 

ふとグランの背中に甲高い咆哮が浴びせられる。

それに過敏に反応したグランが振り向くと、九つ首を持つ青い龍が彼を見下ろしていた。

 

「君はあの時の…教えてくれ!君は一体何なんだ!?僕は一体どうなったんだ!?失った右腕が治ったのは君仕業なのか!?」

 

矢継ぎ早に語気を強めて龍に問い詰めるグラン。

目の前の存在が人語を発するとは風貌からして思えないが、それでもすがるしかない。

自分を巨人の姿に変化させた光を与えたのだから何かを知っているはずだ。

 

「君は何を知ってるんだ!頼む、答えてくれ!」

 

龍はまじまじとグランを見つめたまま口を閉ざす。

そのまま暫く時が過ぎた頃龍は虚しさを表したような声色の叫びを上げる。

 

 

-アアアアアア

 

 

するとグランの正面に青白い空間の歪みが発生した。

歪みを生み出したと思われる龍はグランを直視して、九つある内の一際大きな首を縦に振る。

グランがその行動に首を傾げ質問を口にしようとしたが、彼が声を出すより先に龍の体は次第に透けていく。。

 

「待って!うわっ!」

 

制止のために腕を伸ばして叫んだがもう遅い。

龍は完全に姿を消しグランの指先が触れたことで、龍の残した光の歪みは強烈な輝きを放つ。

光に潰された視界が回復し足元に柔らかい感触を感じたグランは恐る恐る目を開くと、晴れ渡った空と色とりどりの花が咲く草原があった。

他には人も町も何もない。

 

「何なんだよ…さっきから…夢なら夢って誰か言ってくれ…」

 

表情に悲壮感を帯びたグランの呟きはそよ風に拾われたまま何処かへ飛び去っていく。

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

ブルナーク台地のある一帯は酷い有り様であった。

遺跡の隠された山は半壊し遺跡の壁面部分の大多数が外気と月明かりに触れてしまっている。

おまけに遺跡自体もコッヴの攻撃を受けてしまい、第三者が見ればとても遺跡とは呼べる外観ではない。

 

「……はあ……うッ……」

 

その遺跡から這うように出てくる者がいた。

シャプレーだ。

全身の爪先に至るまでくまなく襲う痛みと大量の出血による目眩いと格闘しつつ、彼は地を大蛇のように進む。

 

-一刻も早くこの場を離れ、治療を受けなければ死んでしまう。こんなところで死にたくない

その思いだけが彼を突き動かしていた。

しかしその思いは無残にも儚く潰えてしまう。

 

「ガァッ!」

 

月夜に赤い血潮が舞い散る。

背中に深く斬り込みを刻まれたシャプレーは、ピクピクと弱々しく体を小刻みに動かして間もなく息絶えた。

物言わぬ骸となった彼の体から流れ出た血を手にした刀身に滴らせたその存在は、闇夜の中で左目に怪しい真っ赤な光を灯していた。

 

 

 

 




ジード見てアクロスマッシャーかっこええな!ってなりました。
変身シーンで思ったんですがやっぱりヒカリとコスモスの組み合わせって珍しいですよね。
同じ青トラマンとはいえこの二人のツーショットはなかなか見ないので斬新でした。
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