テイルズオブベルセリア~True Fighter~   作:ジャスサンド

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近日中と言いましたが意外に進めたので二日連続の投稿。
恐らくこの先滅多にない現象


第33話 世界の罪

「よく気付いたな」

 

イズルトで青い巨人に変身した男は岩陰から姿を現して開口一番にそう切り出した。

 

「ずっと前から後尾けてたよね。何のために?」

 

「見定めるためさ。君を」

 

「僕を…?」

 

どういう意味か、ガイアが二の句を告げようとする前に男からの言葉が返ってくる。

 

「君が与えられた力に値する者か、俺の仲間となるべき存在かこの目で確かめる。そのためさ…しかし正直言って失望したよ。何故奴らに肩入れする。何故人間や業魔などという生きているだけで世界を蝕む奴らと共にいる」

 

「業魔が、人間が世界を蝕む?…何を言ってるんだ」

 

言ってることの意味が理解できなかった。

業魔が世界を苦しめるというならまだわかる。

しかし人間にまでそこまで言うとは一体何故なのか、ガイアが問いただそうとするより早く男が口を開いた。

 

「そうか、君は何も知らないのか…なるほど納得がいったよ。どうやらミズノエノリュウには君に全てを説明するだけの余裕はなかったようだな」

 

一人納得したように言うと、男は両手をポケットにしまいながらゆったり距離を縮め、ガイアの目前で足を止める。

 

「話はまたの機会にしよう。あそこに行って確かめるといい。今君が最も知るべき真実の一端がある」

 

「君はあの中に何があるのか知っているのか?」

 

尋ねるガイア。すると男はフッと彼の言葉を嘲笑うように口角を上げる。

 

「世界の罪」

 

「罪?」

 

「業魔そして人間が自分たちの過ちに気付かずただ知らずのうのうと生きてきた。その結果の果て、それを体現したものがあそこにある。じっくりその目で見てくるといい。その時君は気付くはずだ。人間も業魔もこの世界に不要な存在だということが」

 

「…君は」

 

男の言葉を素直に聞くべきかガイアは僅かに迷ったが、ここでじっとしていても埒が明かないと身体を翻して聖殿に向かう。

 

「一つ言い忘れていた。俺の名はアグル。次に会う時を楽しみにしているよガイア。きっと俺の考えに理解を示してくれるだろうからな」

 

男-アグルの言葉にピタリと足を止め、振り返る。

不敵に笑いこちらを見るアグルにガイアは得体の知れない寒気を感じつつ、聖殿に踏みいった。

 

 

--------

 

 

「せあっ!」

 

「うわあああ!」

 

聖殿パラミデス内部ではベルベットらが警備の対魔士と遭遇し、戦いになっていた。

一等対魔士も中にはいたがてんで足留めにもならず、あっという間に掃討されてしまった。

 

「ふう、これで全部か」

 

ロクロウが小太刀を納め、周りを見渡す。

あちらこちらに対魔士や使役聖隷が倒れ伏し、音も神殿内を流れる水の音だけと戦闘中の騒ぎから一転、静かなものになっている。

 

「妙だな。警備の数が少なすぎやしないか?」

 

「同感だな。いくら辺境の地にある施設とはいえ喰魔を守護する警備にしては不足しているように思える」

 

村人から接収したといえども紛いなりにも聖寮の施設であり、喰魔を守護しているのならもっと対魔士の数が多くてもいいはずなのだが実際ロクロウたちが刃を交えたのは十人程度。

どうにもおかしいとロクロウだけでなくアイゼンも思っていた。

 

一方でライフィセットは彼らとは別の疑問を抱えていた

 

「また、戦うのかな。クワブトの時みたいに」

 

「ないとは言い切れませんね。ここの喰魔はクワブト程手強くないと助かるのですが」

 

ライフィセットとエレノアはクワブトとの戦いを振り返る。

最初に戦った喰魔であるクワブトは全員でかかってやっと鎮圧できた強敵だ。

そのクワブトと同種の敵となれば強さも同等かそれ以上の可能性は大いに考えられる。

 

「喰魔から力を得るってことはカノヌシはやっぱりとてつもない強さなんだよね。僕たちで勝てるのかな」

 

「大丈夫ですよ。皆で力を合わせればきっと何とかできます」

 

「いつになくやる気満々じゃのうお主ら。しかし果たして皆で力を合わせることができるかの?ここにおるのは所詮利害の一致だけで一緒に行動しておる程度の協調性しか持ち合わせておらん者たち。仲間なんて言葉に不釣り合いな集団じゃぞ。それにの」

 

「それに?」

 

「今の時点で一人欠けておるのに皆で力を合わせるのは無理だと思うのじゃが」

 

「一人欠けて?何を言って、あれ?」

 

マギルゥに指摘されてエレノアはそこでようやくあることに気付く。

 

「ガイアがいません。さっきまでいたはずなのに?」

 

「ああ、そういえば。あいつどこに行ったんだ?」

 

エレノアもロクロウも目を配るがガイアの姿はどこにも見当たらない。

ライフィセットは口にすべきか迷ってアイゼンを見やる。アイゼンは唇を重く閉ざして固い表情を保っている。

ガイアに関しては何も言うなということだろう。

 

「なんじゃ今更気付いたんかお主ら。さっきからずっとおらんかったじゃろうに」

 

「気付かなかったな。戦ってる時に何か足りないと思っていたんだが」

 

「どこに行ったにせよ子どもじゃないんだしそのうちあっちから来るわよ。そんなことより喰魔を-」

 

「あああああ!」

 

ベルベットの言葉を打ち消す形で悲鳴が奥から上がった。

 

「今の悲鳴は」

 

「奥からじゃな」

 

視線を奥に送るなり、皆それぞれのタイミングで走り出す。

そうして広い円状の空間に出た彼らを待ち受けていたのは地に這いつくばる対魔士や聖隷の亡骸と…それらの中心に立つ狼の業魔だ。

 

「業魔!こんなところにまで!」

 

「そうか、ここまで対魔士の数が少なかったのはこいつのせいか」

 

予期せぬ遭遇に驚きを露にするエレノアとは対照的にロクロウは落ち着いた様子で小太刀を握り直す。

他の面々も武器を構え交戦準備に入った時、マギルゥが業魔のある一点に目を引く。

 

「あの胸の紋章、あれは代々当代の巫女が先代から使命と共に受け継がれる代物のはず。それを身に付けているということは」

 

「そんな…あの業魔は行方知らずだった巫女!」

 

数日前にハリア村から姿を消した巫女。そしてその巫女の証たるアメノチの紋章を目前の業魔が持っている。

それが意味することがわからないエレノアではなかった。認めたくない事実であっても

 

「こいつが喰魔ってわけじゃなさそうね」

 

「早々に片付けるぞ」

 

「待ってください!この業魔は倒すというのですか!彼女は-」

 

「あれは業魔よ」

 

「っ、ですが!」

 

戦う姿勢を見せないエレノアの心に非情なまでに正しいベルベットの言葉が突き刺さる。

 

「ガァ!」

 

「来るぞ!」

 

こちらの事情などお構い無しに狼業魔が攻撃に打って出る。床を蹴り、人間を卓越した凄まじい速度で一直線にベルベットらに迫り、ギラリと鋭く光る爪を振りかざす。

これが並みの相手ならば反応が追い付かずにこの一撃で首筋の血管を抉り取られているだろうが、業魔はこちらにもいる。

 

「業魔になっただけあってなかなかの速さだな。だが、甘い!」

 

ロクロウは人の枠を越えた反射神経を発揮し前に出て、爪を二刀小太刀で防ぐ。

そして動きが止まった隙を突いて、爪を小太刀で受け止めたままもう一方の小太刀を胸元目掛けて振るいにかかる。

尖った切っ先が迫るのを視線で感じた狼業魔-マヒナは後ろに跳んで距離を取るも、小太刀は体表を掠め胸元の毛皮が赤く染まる。

 

「ロクロウ!」

 

「悪いなエレノア。気持ちはわかるが今回ばかりはお前の願いは聞いてやるのは無理そうだ。残念だがあれはもう業魔だ…いくらお前が戦いを拒んでもあっちはオレ達を仕留める気マンマンだ」

 

「戦わないなら下がってなさい。邪魔になるだけよ」

 

ベルベットは手甲から剣を抜きロクロウと並び立つ。

合図もなく二人は同時に前進し、マヒナと切り結ぶ。

躊躇なく剣を向ける二人を見てエレノアは自らが握る槍に目を落とす。

 

「業魔となってしまったらもう戦うしかない…でもあの人は」

 

「…っ!」

 

エレノアの様子を気遣うライフィセットの胸に痛みが走り、顔をしかめる。

 

(またこの痛みだ。前にもあったけどなんなんだろう)

 

針に刺されたような小さく、電撃のように一瞬の僅かな痛み。

その原因が分からず戸惑うライフィセットと迷うエレノア。

そんな二人をアイゼンは後ろで見つめる。

 

「炎牙昇竜脚!」

 

猛々しい炎を纏う蹴りを繰り出すベルベット。

勢いよく燃え盛る業火の一蹴りを狼の俊敏性を活かしてなんとかかわすマヒナだが、逃れた先にはロクロウが振るった刃が待っていた。

 

「グウゥ!」

 

咄嗟に腕を出したものの下方から切り上げられたせいで左腕に縦一文字の切り傷が刻まれ、そこから真っ赤な血潮が吹き出す。

血が滴り落ち使い物にならなくなった左腕をブラリと下ろしてもなお、マヒナの瞳に宿る闘志は消えない。

二度ベルベットへ真っ正面から突っ込む。

 

「そう何度もやったって!」

 

結果は同じ、それはベルベットだけてなくマヒナもわかっていた。理性か本能かのどちらか、あるいはその両方で

だからマヒナはベルベットの剣先が届くギリギリまで間合いを詰め、そこで高く跳躍した。

 

「何!?」

 

マヒナの胴体を裂くはずだったベルベットの剣は虚しく虚空を切り、そんな彼女と加えてロクロウの頭上を越えてマヒナは標的を変える。

そう、二人の後ろにいたライフィセットに

 

「しまった!」

 

戦う意識をしていなかったためにライフィセットは慌てて術の詠唱を始めるが、恐らく間に合わない。

 

「もう元には戻れないのなら、せめてこれで終わりに…!」

 

それを見抜いたエレノアはライフィセットの前に出て上へ飛ぶ。

爪と槍。リーチの差もあってマヒナの爪はエレノアに届かず、返り討ちに合う。

 

「ガッ!ァァ…」

 

胸元に刺さった槍を引き抜いたエレノアが着地。

直後マヒナも力を失ったように背面から地べたへ落ちる。

指先すらもピクリとも動かず、完全に沈黙していた。

 

「これでいいんです…これで、こうするしかもう」

 

「エレノア…」

 

そう、これでいいのだ。命を守るために業魔を殺す。

対魔士としてずっとやってきたこと。だから今更躊躇いも後悔もない…ないはずなのに

 

ないはずなのに胸が痛い。今にも引き裂かれそうな程自分の心が苦しみ、心の中がぐちゃぐちゃに掻き乱されているような感覚が離れない。

 

そんなエレノアを…

頬に付いた返り血に気付かず倒れるマヒナをじっと見つめるエレノアの姿を、ライフィセットは見ていることしかできなかった。

大丈夫、などと言葉をかけたところで今の彼女にはなんの気休めにもならないとわかっていたから。

 

 

マヒナとの戦いを終えて聖殿を進むベルベットたち。

奥まで足を運んだ彼女たちを待っていたのは巨木。

しかし巨木とはいってもその見かけは実際の木とは大きくかけ離れていた。

目と口があり、口以上中に子ども程の小さな緑色の肉体があるまるでお伽噺に出てくるような大樹だった。

 

「カアアアア」

 

「普通の業魔とは感じが違うな 。こいつが喰魔か」

 

「さっきより感覚が強くなった。感じた場所はここみたい」

 

「ってことはこいつが喰魔ってことでいいのね」

 

ロクロウの呟きを裏付けるライフィセットの言葉を耳に入れながらベルベットはブレードを抜き近付く。

一歩一歩とゆっくりと距離を縮めるベルベットへ喰魔はその見た目からは想像できない跳躍力で飛びかかるが、張られていた結界によって弾かれる。

 

「結界…間違いない」

 

これと同種の結界がローグレス離宮の地下とワァーグ樹林にあった。

そして結界の中には巨鳥と巨虫の業魔が閉じ込められており、巨虫の業魔-クワブトのいる結界の近くにはそれを守るように聖寮の対魔士がいた。

ベルベットたちがいる今の状況はまさにそれらと似通っていた。

 

目の前の業魔が喰魔だと確かな実感を得た。

 

「どうする?仕留める気か」

 

「生き死になんてどうでもいい。アルトリウスの目論見を壊せるならなんだって」

そうアイゼンに相づちを打つとベルベットはいち早く結界内に突入。鞭のようにしならせた根を避け、喰魔の肉体に斬りかかる。

 

「相変わらず目的がはっきりしたら一目散に突っ込んでいくのう。勢いがよいのは結構じゃがもう少し考えてから事を起こさんか」

 

「考えてる風で何も考えてない奴よりかはまだまともだと思うぞ」

 

猪突猛進気味なベルベットにやや呆れを露にするマギルゥと暗にお前が言うなと言葉をぶつけたロクロウも喰魔への攻撃を始める。

小太刀と炎の竜巻が喰魔に直撃し、反撃のために振り上げた根も風を纏ったベルベットの飛び蹴り-飛天翔駆に弾き落とされてしまう。

 

「霊槍・空旋!」

 

「ヒートレッド!」

 

「カアアァァ」

 

休む間もなく竜巻に動きを妨げられ、その暴風に乗って喰魔の身体の表面を焼き尽くす炎。

そこへ更に地面から突き出た土の槍が刺さり、喰魔は悲鳴を上げる。

術の詠唱をしながら一歩離れた場所で戦闘の様子を見守っていたアイゼンは違和感を覚えた。

 

「簡単すぎる…」

 

いくらこちらか数で勝っているとはいえ、喰魔がこうも歯が立たないものだろうか。

同じ喰魔のクワブトは全員でかかってやっと鎮圧に成功した程の強敵だったのに。

 

(同じ喰魔でも個体によってこうまで力に差があるのか。それともまだ実力を出していないだけか)

 

アイゼンが疑問を浮かべている内にも攻撃は続き、喰魔はもう自らが攻撃に移れぬ程に疲弊していた。

 

「こいつは小さくならないみたいだな」

 

クワブトの時のことを思い出すロクロウの横でベルベットは業魔手を解き放つ。

喰い殺すための準備に入ったのだ。

しかしそこへ背後から来た何かが彼女らの頭上を飛び越え、喰魔とベルベットたちの間に介入した。

 

「さっきの業魔!」

 

それは狼の業魔マヒナだった。

エレノアに穿たれた胸から血を垂らしているにも関わらず、マヒナは生きていたのだ。

業魔と化したその眼差しから執念のようなものを感じエレノアの心には哀れみが生まれた。

 

「今度こそ、終わりにします」

 

槍に力を込め切っ先をマヒナに向けるエレノア。

しかしマヒナが見せた行動はエレノアの予想を裏切った。

ゆらゆらと左右によろめきながらエレノアに背を向け、マヒナは喰魔に歩み寄る。

 

「何を…?」

 

マヒナの行動の意図が読み取れずエレノアは困惑する。

エレノアだけでなくその困惑はベルベットやライフィセットにも伝染していた。

 

マヒナは喰魔の体に抱き付くとそのマヒナの首筋に喰魔がかぶり付き、そのまま咀嚼していった 。

 

「ゴメンネェ、モッ、アナ」

 

 




幼なじみ、善良な小さな子の母親を手にかけ着々とメンタルがボロボロにさせられるエレノア様。
かわいそうだよね、辛いよね、だから一緒にメンタルボロボロになってくれる道連れを用意するね!!
そんな次回…

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