テイルズオブベルセリア~True Fighter~   作:ジャスサンド

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いよいよ原作に入ります。

ところで皆さんはフュージョンファイトカプセルユーゴー1弾やってますか?自分は数回やったのですが面白いですよね。結果はあんまりですが…ソリッドバーニング欲しい!


第一章 違う軌道の惑星(ものたち)
第5話 極寒の地に立つ


雪と寒気が支配する極寒の大陸ノースガンドにある街ヘラヴィーサ。

街中にも雪が降り積もり辺り一面、白一色に飲み込まれている。

幻想的とさえ思えるそんな空間を興味無さげに歩む男がいた。

青い色の後ろ髪を両側にツンとはねらせた男は水色と黒色が入り混ざったコートを冷風に靡かせ、一切の無駄を感じさせない所作で街中を進む。

 

 

「まさか業魔になるとはとんでもないことをしでかしてくれたよダイルの奴は、あいつのせいで商船組合の活動が制限されちまった」

 

「密輸の罪を擦りつけたはいいもののこのままだと俺達に疑いの目が向けられるのも時間の問題だ。早いとこ聖寮にダイルを始末してもらわなければ俺達まで捕まっちまう」

 

 

建物の隅で隠れるように商船組合の組員らがひそひそ声を潜めて囁き合っているが、男はまるで興味を示さずその前を歩いた。

おおよそ聞き捨てならない内容であるにも関わらず男は歩みを止めず素通りしていく。

宿の曲がり角を目前にした時、小さな悲鳴と共に足元に鈍い衝撃が伝わる。

 

 

「きゃっ!」

 

 

曲がり角を飛び出して来た少女は冷たい雪の上に尻餅を付き、手に持つ紙袋から紫の果実ナップルが溢れ落ちた。

ひんやりとした路面に落ちたそれを男は拾い上げると、付着した雪の滓を払う。

そして少女に力を貸す素振りを微塵も見せず自力で立ち上がるの待った男はナップルを少女へ投げ渡す。

 

 

「あ、ありがとう!」

 

「ディアナ!もう、一人で先に行かないの迷子になっても知らないわよ!」

 

 

危なげながらもナップルをキャッチした少女の後方から母親と思われる女性が駆け寄る。

 

 

「聖寮からお知らせがあったでしょう。今は業魔がいて危ないから家で大人しくしているようにって」

 

寒冷地だと言うのに大胆に豊満な胸元を露出させた挑戦的な格好をしたその女性は、男に気づくと謝罪を口にする。

 

 

「すみませんこの子が迷惑をかけたみたいで、お召し物は大丈夫ですか?」

 

「親なら子供から目を離すな」

 

 

それだけ伝えた男は親子の元を去る。

同時に聖堂のある方角より刃の交じり合う音と悲鳴のような叫びが飛んできた。

それを皮切りに穏やかな空気は消息を絶ち、外にいた住人達は弾かれたように屋内へ避難する。

状況を把握するために男は建物に吊り下げられた梯子を登り屋根上から聖堂を見下ろす。

そして彼は無造作な髪型のの女と異国風の衣装をした男が対魔士に取り囲まれながらも、剣と二刀小太刀を振り回し刃向かう光景を目にする。

 

 

「対魔士共がたかが二人の人間に遅れを取るとはな…そうかあれが聖寮が釣り上げようとした獲物か」

 

 

あの二人が先の母親が言っていた業魔だろう。

それに数刻前業魔の侵入を手引きした魔女を処刑すると御触れが出ていたのを彼は知っている。

おおかたその魔女を餌に使いあの二体の業魔を誘き出したというところだろう。それ自体は策としては何ら問題はない。

しかしだからこそ這いつくばる対魔士の有り様が滑稽に感じる。

せっかく餌を用意してまで釣り上げた獲物に痛手を受けているのだから。

 

 

「まんまと言い様にあしらわれているな」

 

 

数で勝るにも関わらずてこずる対魔士を眺める男の視線に気付くことなく、黒髪の男女と彼らの仲間らしき奇抜な服装の女は障害を片付け港を目指す。

その後しばらくして彼女らの進行方向にある港からゆらゆらと火が燃え広がり、ヘラヴィーサの白き雪雲に黒煙が昇る。

 

おそらく人為的に引き起こされたであろう。

二等対魔士を指揮していた金髪の対魔士も業魔の後を追ったために聖堂の前にはもう人の影はない。

喧騒から一転無音となった聖堂を暫し見据えた男は興味が失せたのか、踵を返し飛び降りようとする。

だがふと目の色を変えて港を振り返る。

 

 

海面から何の音沙汰もなく丸っこい蛸に似た容貌巨大な生物が出現したのだ。

その生物は火の手を上げて燃え盛る近場の倉庫を短くも太い腕で破砕している。

突如として現れ港破壊する怪物を恐れた船乗り達がごった返すのを見向きもせず、彼の視点はただ怪物にのみ注がれていた。

 

 

「こんな街中に現れるとはな…業魔共が暴れ回った影響か」

 

 

憎々し気に舌打ちを打った男はそこで始めて眼下に広がる街を意識して視線を向ける。

がそれも束の間赤い光の奔流が彼の視界に割り込む。

 

 

「あれは」

 

 

真下の街を一瞥した後彼は捉えた。

陸に迫り来る蛸の怪物の真後ろに赤い巨人の姿を。

その存在を認識した男の口元が崩れ、彼は歓喜の笑みを表した。

 

 

「ようやく現れたか、お手並み拝見といこうか…」

 

 

 

--------

 

 

 

「な、なんなのです!?あれは!」

 

 

エレノア・ヒュームは純粋な困惑の中にいた。

親しい者全てを業魔に奪われ、業魔を心の奥底から憎んだ彼女はオスカーの後押しもあって幼なじみが希望した巡察官の任についた。

対魔士として業魔と、近頃出没し始めた怪獣の脅威から人々を守る。

その決意を胸に秘めた彼女はオスカーの義姉テレサ・リナレスと並んで、ヘラヴィーサに混乱を招いた業魔を相手にしていた。

しかしその最中のこと。

いきなり倉庫から火が吹き出し、ほどなくして海上には蛸の成りをした奇怪な怪物が出没しヘラヴィーサの街を壊し出したのだ。

 

 

「なんじゃなんじゃ!あの珍妙な蛸は!あれも主らの作戦かいな!?」

 

「あたしに聞かれても困るわよ!」

 

 

戦闘に参加せず外から叫ぶ魔女-マギルゥに黒髪の女業魔ベルベット・クラウは横目もくれず、そう返事を寄越す。

 

倉庫の火事は彼女達の仕業だが蛸の怪物とは無縁だ。

そもそも存在すら知らなかったような生き物だ。

 

 

「対魔士もあの様子ならあれは聖寮の兵器でもなさそうだな。何にせよ、今の内に逃げたほうがよさそうだ」

 

「そうね」

 

 

二刀小太刀を両の手に収めた業魔-ロクロウの意見にベルベットは同意し、脱出準備に取りかかる船に乗り込もうとする。

それに意識を戻されたテレサは断じて逃すまいと自らの聖隷に非情な指示を下す。

 

 

「一等対魔士テレサの名において命じます。やりなさい二号!あなたの全魔力をもって身体もろとも業魔を吹き飛ばせ!」

 

 

身綺麗な体を装おっているが特攻しろという意味合いを誤魔化すことはできない。

しかし聖隷二号はそんな非人道的な指令をすんなり受け入れ船に乗りかかったベルベットへと突撃する。

 

 

「そやつ自爆する気じゃぞ!」

 

 

真っ先に二号の行動の意図を看破したマギルゥが警告するも、巻き添えにするだけの魔力は充分溜まり距離も後十数歩ぐらいまでに縮めた。

 

二号がベルベットらを船ごと吹き飛ばす

 

が結果としてそれは阻まれた。

 

上空から赤い光が舞い降り海面に届く手前で人の形へ変化を遂げていく。

光は蛸の怪物と同等かもしくはそれ以上の身長まである体躯の巨人となり、落下速度を緩やかに落として海に降り立つ。

その際に生じた地響きが波を荒らし、巻き上がった高波が二号を覆う。

収束した魔力が霧散し、走りが止まりかける二号。

 

 

「そのまま飛びなさい!」

 

 

そのまま全身を波に浚われるかと直感した二号に誰かが命令を告げる。

誰が下した命令なのか判別する間もなく二号は指示通り跳ぶ。

波に船体を刺激されながら誰かが宙を浮かぶ二号の腕を掴み、手元に引き寄せた。

 

 

 

「待ちなさい!」

 

「テレサ前に進んでは危険です!」

 

 

二号を連れ去り脱出を謀るベルベット達にテレサはただならぬ敵意を投げつけるが、彼女とエレノアにも波が迫り二人揃って塩水を被る。

 

 

「…業魔…!」

 

「あれではもう対処のしようがありません。それより今はあの怪獣を」

 

 

遠ざかる船にテレサは唇を噛み締める。

彼女より一足先にエレノアの注意は蛸の怪物と巨人に切り替わった。

巨人は蛸の怪物の尾を海水から掬い上げ港から引き剥がし、相手の目を自らに釘付けにさせていた。

 

 

 

--------

 

 

 

赤き光の巨人ガイアはまず人的被害を抑えるべく蛸の怪物-タッコングを陸地から引き離しにかかった。

抗うタッコングの尾を綱引きのように無理矢理引っ張る。

陸から離れたところで尻尾を手放し水飛沫を上げて跳躍するガイア。

ヘラヴィーサの盾になれる位置に立ったガイアの回し蹴りがタッコングに打ち付けられる。

軟体生物特有のふにゃりとした感覚のせいでダメージが通っているのかわかりかねるが、仰け反っているのか分かりかねるが効いていないはずはない。

気にせずガイアは拳を振り上げ、キックを決め込みタッコングを追いやる。

だがタッコングもやられてばかりではいられない。

手も足も出ずいたぶられるタッコングの口から吹き出したオイルがガイアの目を奪う。

 

 

「ドアアア!」

 

 

間近で浴びたガイアは攻撃の手を中断してしまう。

そこに突け込んだタッコングが体ごと体当たりをかましガイアを弾き飛ばす。

直撃をもらったせいで頭まで海水に浸かったものの、おかげでオイルが流し取られガイアの視界が回復する。

目元を抑えながら体を起こしたガイアをタッコングの張り手が襲い、また海水に飛び込む羽目になってしまった。

 

 

『ギュアア、ギュアア』

 

 

ガイアを足蹴にしながらタッコングは今度は身体中からオイルを噴射し、広範囲に撒き散る。

オイルはヘラヴィーサの倉庫を包む炎にのしかかり、火の手はより一層勢いを強めていた。

 

 

「ハッ…」

 

 

海面でもみくちゃにされるガイアの視界の端に火災の悪化から逃げ惑う人々が映り込む。

いつまでも手間取っていてはヘラヴィーサの街は壊滅的打撃を被ることだろう。

 

 

「ムゥゥ、デュア!」

 

 

タッコングの猛攻を受けながらガイアは全身に力を込め、その体から白く目映い輝きを放つ。

今度は自分が視界を潰される番となったタッコングは目を塞ぎ、無防備になった隙にガイアはその場から離脱し間合いを置く。

そして間髪入れずに必殺技の体勢に移る。

両拳を固く握り締めたまま両腕を左右に伸ばし、赤い光が頭部の先端部に収束したと同時に身を屈めた。

 

 

「ハアア、デュアアアアア!」

 

 

掛け声と共に解き放たれた鞭と化した赤い光の刃がしなり、空気を削り、タッコングに直進する。

ガイアの必殺技フォトンエッジがヒットし、タッコングはその身を爆散させていなくなった。

倒すべき敵を倒したガイアは胸の結晶体を赤く明滅するのも構わず両手より水流を放射。

滝水のように流れた水は倉庫を焦がす炎を鎮火し、ヘラヴィーサの街はどうにかことなきを得た。

 

 

「ジュア!」

 

 

完全に火の手が収まったのを確認したガイアは赤い球体に変化すると、ベルベット達の船が去ったのと同じ方角へ飛び去った。

 

 

 

 

--------

 

 

騒動の収まったヘラヴィーサの聖堂でテレサは沸き立つ苛立ちを止められずにいた。

 

 

「まさか業魔を取り逃がすなんて、その上二号を奪われた挙げ句ヘラヴィーサの被害も甚大になってしまった…」

 

 

表情こそどうにか平静を装おっている体を保っているが、テレサの心中には今までにない程怒りと困惑があった。

 

 

「それにあの巨人…あのような存在聖寮で聞いたことがない。あれらは何なのですか…?」

 

「気になるか?あの巨人が」

 

 

テレサただ一人しかいない聖堂内に男の声が響いた。

辺りを見ると微かに半開きになった窓があり、声はそこから入り込んでいると思われる。

 

 

「誰です!?」

 

「そこを動くな。こちらの言う通りにすればあんたの知りたがっていることを喋ってやる」

 

「くっ…」

 

 

まがいなりにも一等対魔士でありその中でもゼロナンバーという対魔士の中でも上位にあたるテレサに対する男の物言いに、彼女は苛立っていたのもあって顔をしかめる。

けれども一時の感情に身を任せては情報を聞けず何の収穫もないままに失態の上乗りをするだけだと、合理的な判断が働いたテレサは嫌々ながらも従う。

 

 

「では聞きますが、あの巨人はどのような存在なのですか?」

 

「あれは光だ。お前達人類を裁くためのな」

 

「私達人間を裁く…?聞き捨てなりませんね、どういう意味でしょうか」

 

「言葉通りの意味だ。いずれお前を含めた人間達は滅びる。巨人の手によって、そしてこの星の意思によってな」

 

 

理解できないとテレサは男の正気を疑うが彼女は続けて男に訊ね聞いた。

 

 

「仮にあなたの言うように巨人の目的が私達人間を滅ぼすことなのだとしたら先の巨人の行動は妙ではありませんか。私にはあの巨人は私達を助けたように見えましたが」

 

「人間を救うのと自然を救うのは同意義ではない。いつまでも自分達が自然の支配者でいるなどと思わないことだ」

 

「私は自分が支配者であるなどと思ったことは一度足りともありません」

 

「どうだかな…まあ精々人類が破滅の時を迎えるその時まで自分達の愚かさというものを噛み締めるがいい」

 

 

声はそれっきり聞こえなくなる。

声が途絶えた途端テレサは扉を開け、出所と思われる窓のあるところに回り込む。

しかしそこには既に誰もおらず降り積もった雪には足跡すら残されていなかった。

 

 

「一体…何だと言うのですか…!あの業魔も、あの巨人も、あの男も…!」

 

 

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