剣と魔術とライフルと   作:あききし

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第八十一話  退屈な道具と新たな誘い

 

第八十一話:解析者の微笑み

 

 

レオナルドとの会合を終え、アークランド公爵邸の一室に戻ったアイリスは、窓の外に広がる王都の夜景を見つめていた。その瞳は、昼間の三者対話、そしてレオナルドとの密談を、頭の中で何度も反芻している。

 

「……フフ。随分と、手間をかけさせたようですわね、ルーカス・フォン・トレンス」

 

アイリスは、そう呟くと、机の上に置かれた、トレンス侯爵領の『個人識別情報端末』をじっと見つめた。それは、レオナルドが「情報収集のため」に配下に託して手に入れさせたものだったが、彼女の元に渡るまでには、多くの苦労があったと報告を受けている。

 

アイリスの魔力が端末に流れ込む。彼女の持つ特殊な魔力波形が、その波形を瞬時に解析していく。しかし、検出されるのは、極めて単純な魔力の受信波形のみ。

 

「この端末…魔力回路の組み方、素材の選定…すべてが、この世界の常識から逸脱している。まるで、一万年先の未来の技術のようですわ。……しかし、これ自体には、なんの機能もない。ただの受信機に過ぎない…」

 

アイリスは、この事実に、深い興味を抱いた。まるで、美しい宝石箱だが、中には空っぽの空間しかないようだ。もしこの端末が受信機であるならば、「情報をどこから受信しているのか」という、新たな『謎』が生じる。

 

そして、彼女の解析はさらに深い部分へと進む。すると、端末の魔力回路の中に、意図的に仕込まれた『破損術式』を発見した。それは、特定の魔力的な負荷がかかると、内部回路を自己破壊するように設計されていた。

 

「…なるほど。これは、貴方が意図的に、わたくしに渡した『無意味な欠陥品』ですわね。ただの受信機に見せかけ、解析を試みる者を嘲笑うための、悪意に満ちた仕掛け」

 

 

アイリスは、この端末を、自身を欺くためにルーカスが意図的に流出させた『偽物』だと断定した。

しかし、これはルーカスがトレンス領で実際に普及させているものと同一の本物である。ルーカスの真の目的は、この技術を王都に導入させることにあり、これはレオナルドが盗むことを予測して意図的に流出させた布石だった。

そして、アイリスが解析で検出できなかった『真の核心』は、この端末そのものには存在しない。ルーカスの通信技術のコアは、領地に設置された秘密のサーバーによって集中管理されており、この端末は、そのサーバーからの信号を受信するためだけの末端機器に過ぎない。

この世界の技術概念を遥かに超えた『クライアント・サーバー・システム』という構造は、アイリスの天才的な知性をもってしても、認識すらできない領域にあった。

 

 

アイリスは、全てのパズルが繋がったように、恍惚とした笑みを浮かべた。ルーカスは、この端末を解析しようとする者が現れることを予測していた。そして、それが自分自身、アイリス・ド・アークランドであることも。彼は、彼女の知性を試すための、最初の『ゲーム』を仕掛けてきたのだと確信した。

彼の行動の全ては、彼女がどこまで真実に近づき、そしてどれだけ狂喜するかを見極めるための、「試験」だった。

 

「面白い。貴方は、わたくしがこの端末の『無意味さ』と、それに仕込まれた『悪意』を、どこまで読み解くことができるか試している。…上等ですわ。その挑戦、喜んで受けましょう。わたくしの退屈を殺すのは、貴方だけですわ、ルーカス・フォン・トレンス」」

 

アイリスは、この日、ルーカスという存在が、彼女自身の知性を遥かに凌駕する「ゲームの設計者」であることを確信した。彼は、彼女が持つ全ての知性と、彼女の持つ「狂気」を、すべて計算に含めて行動している。

 

アイリスは、自身がこの数年間、レオナルドという「玩具」と遊んできた日々を思い返していた。彼の《最適化》というギフトは、確かに退屈な日々をいくらか面白くしてくれた。だが、彼の合理性は、あまりにも限定的で、予測可能だった。与えられた情報からしか答えを導き出せない、「閉じた論理」。そして、ルーカスという「新たな玩具」を得た今、もはやレオナルドには用がない。

 

「ですが、残念ですわ。あなたはこれまでわたくしを楽しませてくれましたが、もう退屈で仕方がありません」

彼女の言葉は、まるで独り言のようだった。その声には、冷たい嘲笑と、かつてのお気に入りを見捨てるかのような冷酷さが滲んでいた。

 

「あなたは、ご自身の『最適化』のギフトに酔いしれ、トレンス侯爵を単なる『効率的な駒』と見なしていらっしゃる。ですが、恨まないでいただきたい。貴方の合理化の行き着く先は、トレンス侯爵を王座に据えることで、初めて完成するのですから」

 

アイリスの瞳は、狂気に近い探求心に輝いた。彼女の目的は、もはや単なる「王国の最適化」ではない。それは、ルーカスという「未知の存在」を解き明かし、その圧倒的な『知』を、自身の支配下に置くことだった。彼女にとって、この世界の王位など、所詮は彼を操るための、単なる『道具』に過ぎなかった。

 

アイリスは、ルーカスの真の目的が、彼女が信じる「王国の支配」であると誤解していた。ルーカスは、その誤解を、自身の目的である「母の安全と領地の防衛」のために利用する。彼女の「王位への画策」は、結果的にルーカスの領地防衛のための布石となる。

 

互いの思惑が全く食い違っているにもかかわらず、二人の「ゲーム」は、あたかも連携しているかのように進んでいく。アイリスは、その「ゲーム」の先にある「勝利」を確信していた。彼女は、ルーカスが「王となる」という、彼女の知性が導き出した「最適解」が、必ず実現すると信じて疑わなかった。彼女の口元には、ルーカスを完璧に理解したと確信した、歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

翌日。ホーネリア王宮の一角にある、レオナルド第二王子派閥の深部会議室は、重厚な静寂に包まれていた。会議の議題は一つ。先日、王都入りしたルーカス・フォン・トレンス侯爵が持つ、異界の通信技術についてだ。

 

レオナルドは玉座のような椅子に深く腰掛け、鋭い眼光を側近たちに向けた。彼の隣には、アークランド公爵令嬢アイリスが控えている。彼女の表情は終始冷静で、前夜の独白とは裏腹に、まるで殿下の意志に忠実な影のように見えた。

 

「昨日の王室会議で、トレンス侯爵とアイリスの婚約は決まった。これで奴は王都の檻の中だ。問題は、あの侯爵領の通信技術をどう引き出すかだ」

 

と、レオナルドが口火を切った。

肥満した財務担当の老貴族が、切羽詰まった声で進言した。

 

「殿下、侯爵領の通信技術は、市場に流通する商品から見ても、我々の想像を絶します。あの端末を一つでも解析できれば、我が派閥の情報優位性は揺るぎないものになります!」

 

別の上級貴族が続く。

 

「しかし、直接要求するのは拙速かと。あの侯爵は、ただで技術を渡すような男ではございません。彼の異端な合理性は、常識が通用しない」

 

レオナルドは鼻で笑った。

 

「愚問だ。あの男の行動原理は、私と同じ『最適化』だ。彼は王位を望まぬ。代わりに、彼の望む『秩序』を王国に作り上げることこそが、彼の最適解。ならば、我々が、その秩序作りを手伝うと示せばよい」

 

レオナルドの傲慢な確信に、アイリスは内心で冷たい笑みを浮かべた。

 

(相変わらず、ご自身の小さな枠組みで、全てを理解したつもりでいらっしゃる。あなたの最適化は、彼にとってただの使い古した道具ですわ、殿下)

 

アイリスは、静かにグラスの水を一口含み、議論の潮目を変える発言をした。

 

「殿下の御見解に、わたくしも賛同いたします。トレンス侯爵は、間違いなく我々の情報優位性を高めるための『鍵』です。ですが、侯爵に、個人的な『私物』として端末を要求するのは、少々見苦しいかと」

 

レオナルドは訝しげにアイリスを見た。

 

「では、どうすると言うのだ、アイリス?」

 

アイリスは、美しい顔に知的な微笑を浮かべた。

 

「侯爵が学園に入学するということは、彼もまた『教育』という公的な枠組みに組み込まれたということです。ならば、我々は『公の利便性』という大義名分を用いるべきです」

 

彼女は、指で机を小さく叩きながら続けた。

 

「学園という、王国の中枢を担う子弟が集う場で、未だ連絡手段が伝令や伝書鳩に頼っているのは、極めて非効率的です。これは、殿下が目指す『王国の最適化』に反します」

 

アイリスの言葉は、レオナルドの最も得意とする論理を突いていた。

 

「そこで、殿下は侯爵に対し、彼の持つ通信技術を学園の仕組みを改革、あるいは新規の連絡網の構築として、導入することを提案していただくのです」

 

レオナルドの琥珀色の瞳が輝いた。

 

「なるほど…! 『侯爵の技術を王国の発展のために使う』という大義名分か。しかも、学園という最も監視しやすい場所から導入させれば、解析も容易だ」

 

「ええ。そして、侯爵は必ずや、その提案に乗りますわ」

 

アイリスは確信を持って断言した。

 

(彼は、あなたがその提案に乗ることを待っているのです。そして、あなたは、それを自分の合理性が導き出した結論だと信じ込む。彼の『不確実性を排除する戦略』と、あなたの『傲慢な合理性』が、今、完璧に共鳴しますわ)

 

アイリスの裏の思惑など知る由もないレオナルドは、満足げに頷いた。

 

「素晴らしい、アイリス。君の判断力にはいつも助けられる。直ちに侯爵へ連絡を取る。学園への通信技術の導入を、我が派閥から正式に要請すると」

 

彼の表情は、勝利への確信に満ちていた。しかしアイリスは知っていた。この一歩が、レオナルドの王位への道ではなく、ルーカスという「新しい王」の盤上を整える、最初の確実な一手になることを。

 

(さあ、ルーカス・フォン・トレンス。あなたの次の手を見せてごらんなさい。この退屈な世界に、どれほどの美しさと秩序をもたらすことができるのかを)

 

アイリスの瞳の奥で、知的な炎が燃え上がっていた。

 

 

 

・・・・・

・・・

 

 

 

王都別邸の執務室。東の窓から差し込む光が、磨き上げられた木製のデスクと、その上のタブレット端末を照らしていた。時刻は早朝。ルーカスは既に制服を完璧に着こなし、優雅に紅茶を傾けている。

彼の足元には、小型化されたクインが伏せていた。クインは、ルーカスが出かける準備をしていることを察し、その小さな体は、どこか不貞腐れたように微動だにしない。

 

コンコン。

 

ドアがノックされ、エレノアが静かに姿を現した。彼女は完璧な制服に身を包み、その手には、ルーカスの学園生活に必要なカバンを持っていた。

 

「ルーカス様。お早いお支度で。本日よりの学園生活、お荷物の準備は全てヒルダに確認させ、整っております」

 

「ご苦労。手続きも全て済ませた。クライスとマルセルの魔導具と備品の最終チェックは?」

 

「ご安心ください。クライス様が徹夜で調整を終えられました。クイン訓練兵の『フォーム・コントローラー』も安定稼働を確認済みです。また、マルセルからは、携帯用の高効率栄養食を預かっております」

 

ルーカスは、それに鼻で笑って応じた。

 

「Hmph。今回は『潜入任務』だ。余計なノイズは排除する。それに、クライスが徹夜だと?…リナという新しい『関心の対象』ができたおかげで、あいつにしてはまともな働きをしたものだ」

 

その時、エレノアの後ろから、一人の若いメイドが、真新しいルーカスの制服のジャケットを丁寧に抱えて現れた。彼女は、別邸でルーカスの身の回りの世話を担当するメイド、セリーヌだった。

セリーヌは緊張で顔を青ざめさせ、抱えるジャケットが微かに震える中で、貴族の作法に則り、丁重に着替えの補助を申し出た。

 

「ル、ルーカス様。わたくし、セリーヌと申します。登校前に、制服の最終確認と着付けの補助をさせていただきたく存じます」

 

ルーカスは、その申し出を一瞥した。

 

「セリーヌか。挨拶も不要だ。お前たちのプロフィールは把握している。職務に忠実な者は、俺は拒まない」

 

「だが、残念ながら。私は赤ん坊ではない。自分の着替えに他人の介入は不要だ。その制服は、その完璧な状態のまま、エレノアに渡せ」

 

ルーカス様の拒絶を受け、セリーヌはさらに顔色を失ったが、必死に言葉を絞り出した。

 

「それがわたくしの職務でございますので、どうかお許しください…」

 

(この男爵家出身の若いメイドが、これほどのプレッシャーの中で職務を全うしようとするのは、むしろ評価に値する)

 

「お前の、その職務への忠実さを、別の場所で発揮しろ」

「……は、はい。申し訳ございません」

 

エレノアは、セリーヌに下がらせると、ルーカスを見つめた。

「ベリルは?」

 

「今頃は、サルヴァトーレの『再教育』を施している頃かと。王都の裏路地も、これでようやく合理的な秩序を得ることができましょう」

 

ルーカスは、エレノアの揺るぎない態度に満足げに頷いた。

 

「OK。これで全て整った。エレノア。母上には、時々連絡を入れる。別邸の管理は貴様に一任する。お前達がこの別邸を完璧なセーフハウスとして維持することが、俺の任務成功の最大の基盤となる。頼むぞ」

エレノアは、深く頭を下げた。

 

 

ルーカスは、カバンを受け取ると、足元で不貞腐れているクインの小さな体を拾い上げ、優しく抱きしめた。

 

「クイン。お前は留守番だ。学園に目立ちすぎる大型犬は連れていけない。寂しがるな。すぐに帰ってくるさ」

 

クインは、ルーカスの胸に顔を擦り付け、「クゥン」と甘えるように、そして不満げに鳴いた。

 

「わがままを言うな。俺の代わりは、エレノアとベリルに、この家を護らせる。彼らはお前の群れの仲間だ。大人しく待っていろ。土産には、極上の肉骨粉を用意してやる」

ルーカスは、そう言ってクインをエレノアに渡し、自室の扉を開けた。

 

 

 

廊下に出ると、メイド長のヒルダが、使用人たちを率いて整列していた。この一週間で自動魔導具の利便性を体験したヒルダの顔には、困惑と、抑えきれない新たな期待が混じり合っていた。

 

「ルーカス様。門前までお見送りさせていただきます」

 

ヒルダは、メイド長としての義務感から毅然と頭を下げたが、その所作は長年の習慣と、ルーカスの改革を受け入れた新しい意識の間に挟まれ、今までの流れるような優雅さを欠き、わずかにぎこちなかった。

ルーカスは、立ち止まらずに冷たく言い放った。

 

「要らん。単に学園に入るだけだ。公的な儀式ではない。今後も私的な見送りは一切不要だ。 お前たちの職務は、この別邸を完璧に維持することだ」

 

ヒルダは、強烈な拒絶に言葉を失い、さらに深く頭を下げた。

その瞬間、エレノアが一歩前に進み出た。彼女は、ルーカス様の威厳を損なわないよう、控えめだが毅然とした口調で取り成した。

 

「ルーカス様。そう冷たくなさらなくてもよろしいのではないでしょうか」

 

ルーカスは、横に立つエレノアを一瞥した。

 

「彼らは、侯爵家への長年の忠誠から、ルーカス様の門出を祈っているのです。彼らの『品位』を保つための、一度限りの儀式としてお受け入れください。その上で、次からは職務に集中させればよろしいかと」

 

エレノアの言葉は、ルーカスの「効率」を否定せず、ヒルダの「感情と忠誠」を尊重するという、最も合理的な落としどころを示していた。

 

ルーカスは、しばらく無言でエレノアを見つめた。信頼するエレノアが、慣習という非効率な儀式を『一度だけ』容認するのには、それ相応の合理的理由があると即座に判断し、小さく鼻を鳴らした。その表情には、エレノアの諫言を受け入れた不機嫌さが滲んでいた。

 

「……Tsk.今回限りだ。勝手にしろ。だが、次からは改めろ。お前たちの価値は、効率化によって生み出された時間で、より重要な職務をこなすことにある」

 

ルーカスはそう言い残すと、ヒルダの隊列を一瞥し、不機嫌そうに答えず、さっさと歩き出した。

 

ヒルダは、ルーカスが去った後も、エレノアに救われた安堵と、ルーカス様の冷徹な言葉の重みに、ただ深々と頭を下げることしかできなかった。

 

ルーカスは、エレノアの目を見た。

 

「心配するな。俺は、誰の『ゴミ』にもならない。この世界を、母さんが安心して暮らせる場所へと変えるまでは、絶対に倒れるわけにはいかない」

 

彼の冷徹な言葉の裏にある、燃えるような行動原理を感じ取り、エレノアは深く頷いた。

 

ルーカスは、エレノアに目線を送り、静かに門へと向かった。学園へと向かう彼の背中には、この世界の誰も理解できない、静かな闘志が宿っていた。

 

 

 

 

 

ルーカスは、学園へと向かう道すがら、頭の中でAlphaに語りかけた。

 

「昨日のアイリス・ド・アークランドか。王都に技術を流すのは計画通りだったが、敵にあんな脅威がいたとは完全に想定外だ。あのいけ好かない酔っ払いとは比べ物にならん。身内ですらその本性を隠せるほど強かさと知性を持つ。計画を修正せねばならんな」

 

Alphaの無機質な声が響く。

 

『...個体アイリスの行動原理や思考の正確な分析データは、現在不足しています。彼女自身の卓越した魔力制御能力が、貴方の分析能力を上回っていたためです。流出した簡易端末が彼女の手に渡り、既に解析された可能性は極めて高いと推論されますが、王都にサーバーが存在しない現状では、流出端末の正確な位置と所有者を特定することは不可能です』

 

ルーカスは、わずかに眉根を寄せた。

 

「Hmph.昨日の接触で、彼女がレオナルドよりも遙かに危険な知性であることは把握できた。こんな事なら、トレンス領のサーバーを複製して、王都別邸にも早々に設置しておくべきだったか。レオナルドの分析は、奴が復興記念パーティーに来た際に得られたデータが基盤だ。だが、あの女は当時来ていなかった。この戦場で、最も予測不能な敵をノーマークで放置したことになる」

 

『データ不足は認めます。しかし、王都でのサーバー設置は、極めて高い技術的特異性を有するコア技術を、敵の監視圏内に置くことを意味します。現在のセキュリティ体制と王都の情報密度では、技術流出のリスクが許容範囲を超えます。現時点では、サーバーは領地での物理的隔離を維持するのが最適解です』

 

「...Tsk.コストとリスクのトレードオフか。理解した。奴の『画策』が、俺の防御ラインを広げる布石となるのなら、喜んで利用させてもらおう」

 

「だが、完全にノーマークでは困る。現在、上空待機している『高高度無人偵察機』のデータ送信機能を利用して、流出端末から発せられる微弱な魔力波形をキャッチし、位置だけは把握できるようにしろ。継続的な監視は無理でも、あのアマの次の行動を予測するための足がかりにはなる」

 

『実行可能です。偵察機は王都上空の魔力場に紛れており、流出端末の座標を特定することは可能です。直ちにタスクを最優先で設定します』

 

 

 

アイリスの瞳には、自身が導き出した「王座への最適解」という勝利の未来が輝いていた。一方、ルーカスの背中には、その未来とは全く異なる、母と領地を護るためだけに存在する、静かなる闘志が宿っていた。二人の「ゲーム」は、決定的な誤解の果てに、今、幕を開けた。

 

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