第八十三話:秘密の交信と未来への布石
セシル寮長は、各部屋の割り振りを告げると、案内役の教師に寮の設備を任せるのではなく、彼自身が、面倒くさそうに新入生をいくつかのグループに分けた。ルーカスは、一人部屋の鍵を受け取ると、セシルの案内の後をついていった。廊下を歩くたび、石造りの壁と古い木材の奥から、かすかな、しかし粘りつくような「湿気と有機物の複合臭」が鼻を掠めた。ルーカスは、顔には出さなかったが、無意識に呼吸を浅くした。
「それでは、まず食堂からご案内します」
ラスターバン寮の食堂は、他の寮の華やかな食堂とは異なり、石造りの簡素な空間だった。大きな暖炉がいくつか設けられ、その魔力的な熱で室内を暖めている。大理石の長テーブルと木製の椅子が並び、その上には、まだ湯気を立てるスープやパンが置かれていた。
「当寮の食堂は、他の寮のように豪華な装飾はありませんが、魔法で温められた料理を常に提供しています。生徒の健康と魔力効率を最大限に高めるため、日々の食事は専門の魔術師が監修しています」
ルーカスの脳内では、即座に食堂の設備が解析されていく。
(食品の劣化を防ぐ、単純な『保存の魔術』。温かさを保つための『加熱の魔術』。この規模の食事を維持するには、食材の大量保存と安定した流通が必要だ。その技術が、この世界ではまだ魔法的な方法に依存している。…まだまだ非効率的だ。俺が侯爵領で進めているサイクルと比べれば、冗長な手間が多い。――そして、その裏側で処理されるべき『廃棄物と排水のシステム』は、想像するだけで恐ろしいほどに非効率的だろう)
『提案。食堂の設備と食材の供給ルートを解析した結果、現行の魔力維持コストは、これまでに開発した超効率型冷蔵術式に比べ、平均35.8%の無駄な魔力を消費しています。また、排水管の劣化と詰まりの可能性は45%と算定されます。物理的、魔力的なコスト削減の余地が確認されました』
「あぁ、分かっているよ、Alpha。まるで慈善事業のようだ。今、俺が興味があるのは『非効率性』そのものだ。この世界の常識を示す、良い指標になる」
次に案内されたのは、研究室だった。
「ここは共同研究室です。魔道具や古代の文献を自由に閲覧、使用することができます。ただし、使用する際は許可申請が必要です」
研究室は、古い木製の机と棚が並ぶ埃っぽい部屋だった。棚には、動かなくなった魔道具の残骸や、古い羊皮紙に書かれた魔導書が並んでいる。奥には、ドヴェルクやホビットが小さな部品を製作したり、古めかしい魔道具を修理したりしていた。
ルーカスは、彼らが使う道具と、その思考の限界を見抜いた。
(彼らの技術は十分な水準だ。しかし、彼らが使うのはあくまで『道具』。魔力を『工学』として体系化する思想はない。この世界は、魔力をただの便利な力として利用する「魔」道具の段階に留まっている。研究室としても未成熟。これでは『技術遺物保管庫』だ。手先の技能は評価するが、彼らの製造プロセスには
案内を終えると、セシルはロビーに戻り、再び投影板を操作した。彼の顔には、この上なく面倒だという色が浮かんでいる。
「さて、最後に一つ。今夜は王立総合学園による歓迎パーティーがあります。王都の貴族たちの社交の場、つまりは『無駄な形式美』が求められる、実に退屈な時間です」
セシルは、ルーカスをちらりと見て、皮肉を込めて続けた。
「ドレスコードは厳格に守ってください。貴族、平民にかかわらず、自身の身分に見合った最良の装いをすることが求められています。トレンス侯爵のような特異な才能を持つ方は、その『特異さ』をどう表現するか、頭を悩ませる必要はないかもしれませんがね」
「この場で、貴方たちは将来の協力者や、あるいは敵を見定めることになります。そこで誰と話すか、何を語るか…」
セシルは、そこで言葉を切り、ため息をついた。
「…通常の貴族であれば、派閥、血筋、利益という三つの要素を基に戦略を練るべきでしょう。しかし、ラスターバン寮の諸君は、『知恵』と『才能』を最優先に考えなさい。それが、貴方たちがこの学園で生き残るための、唯一の方法です」
彼は、まるで教科書を読み上げるかのように事務的な口調で続けた。
「ただし、一つだけ守るべきルールがあります。それは、公の場で『無意味な諍いを起こさないこと』。特に、上位貴族への挑戦は、貴方たちの才能を摘み取る口実となります。トレンス侯爵殿、貴方にも言っておきます。どれだけその才能が奔放であろうと、王国の法と学園の規律の表層は、尊重するべきです」
ルーカスは、セシルの言葉を静かに聞いていた。彼にとって、セシルの提示した「社交の戦略」は、『支配者のための家畜の振り分けリスト』でしかなかった。
(派閥、血筋、利益? 無価値だ。俺の目的は、この場の人間関係を構築することではなく、この学園というシステムの歪みを調査し、有用な人材を見つけることだ。そして、俺の装いは、俺のメッセージそのものだ。俺は「お前たちの古いルールでは測れない」、と)
ルーカスは、セシルに冷たい視線を向け、軽く頷いた。
「ご忠告、感謝します。私は、『無意味な諍い』を起こすつもりはありません。しかし、『正当な反論』を避けるつもりもありません」
ルーカスは、セシルから視線を外さず、その言葉の裏にある「警告」と「庇護」の二重の感情を、冷徹に分析していた。
(俺の身を案じているつもりか?あるいは、彼の『保護すべき才能のリスト』に俺を加えているだけか。どちらにせよ、あんたの言葉は、この学園の『不文律』、つまり俺の行動に対する『レッドライン』を教えてくれたことになる。『才能を摘み取る口実』…ならば、俺はその口実を与えぬよう、常に法と規律の『表層』で武装し、奴らの土俵を『正当な反論』で破壊するまでだ。あんたの親切は受け取っておこう。だが、その意図通りに動くつもりはない)
セシルは、そのルーカスの言葉に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに諦めたように肩をすくめ、投影板を消した。
「勝手にしなさい。それでは、各自自室に戻り、パーティーの準備を。解散」
セシルは、早口でそう告げると、足早にロビーを去っていった。その背中からは、この場から一刻も早く逃げたいという気持ちが読み取れた。
ルーカスは、彼の異端性が学園に認められたことを確認すると、静かにその場を後にし、自室へと向かった。
・・・・・
・・・
寮の設備案内を終えた後、ルーカスはラスターバン寮の最上階に割り当てられた自室へと向かった。
ルーカスは、すぐに窓から外の景色を観察した。ラスターバン寮は、学園の敷地の北東に位置し、他の寮や主要な校舎から少し離れて建っている。その配置は、まるで主流から隔離されているかのようだった。
彼の部屋は、他の生徒の個室とは一線を画していた。通常の生徒の部屋が簡素な一人部屋であるのに対し、ルーカスの部屋は、中位貴族の別邸の一室に匹敵するほどの広さを持つ、執務室と寝室を兼ねた機能的な空間だった。
窓は大きく取られ、眼下には静かな学園の裏庭が広がる。内装は、古い石造りの壁がむき出しで、豪華な装飾は一切ない。しかし、部屋の中央には、トレンス領から持ち込まれたであろう巨大な木製の執務机が置かれ、その傍らには、魔道具を分解・組み立てするための作業台と、大量の魔導書を収めた鋼鉄製の棚が備え付けられていた。
この特例は、彼の「トレンス侯爵としての政務への配慮」と、「他の生徒の平穏を乱さないための隔離」という二重の意味を持っていた。そして、この部屋から、ルーカスは学園外の別邸への自由な行き来も許されている。
ルーカスは、重厚な扉を閉めると、制服のネクタイを緩め、堅苦しい襟元に溜息をついた。
彼は、部屋の隅に置かれた質素な革張りのソファに腰掛け、視線を部屋全体に投げた。
「Hmph. 執務室としては悪くない。だが、これが『学生の部屋』か」
ルーカスは、皮肉を込めて呟いた。彼の肉体はまだ13歳。前世での記憶と知恵を持つ彼にとって、「学生」という役割は、偽装工作以外の何物でもない。
「まるで、フェアモントのスイートだな。こんな場所で今更、俺が学生だと? 青春でも謳歌しろってか。冗談じゃねぇ。俺の青春は、すでに終わっている」
彼は、制服の上着を脱ぎ捨てると、冷静に思考を巡らせた。
まずは、自領から事前に運び込ませた荷物が全て揃っていることを目視で確認した。荷物リストと棚の内容を照合し、問題がないことを確認すると、彼は執務机の傍にある小型の棚に向かった。
ルーカスは、その棚の表面にある術式を起動させ、内部から磨き上げられた黒い金属製の機器を取り出した。それは、トレンス領で開発された、現代の全自動機にも匹敵する「超効率魔力式コーヒーメーカー」だった。彼は、その機器を机の上に設置すると、用意しておいた豆をセットし、起動させた。
重厚な石造りの部屋に、微かな魔力駆動音と、芳醇なコーヒーの香りが広がる。ルーカスは、ソファに深く座り、一瞬だけ目を閉じた。
(一息つく時間くらいは必要だ。この学園の空気は、予想以上に埃っぽい――いや、埃だけではない。この環境の『根本的な不潔さ』が、俺の生存本能を刺激している)
数分後、淹れたてのコーヒーが、静かに湯気を立てるマグカップに注がれた。ルーカスは、それを一口飲むと、張り詰めていた緊張がわずかに緩むのを感じた。
彼は、マグカップを片手に再び立ち上がり、冷静に思考を巡らせた。
「Alpha、この部屋の魔力監視、盗聴、あるいは『情報収集を目的とした魔力的な干渉』の可能性を洗い出せ。特に、セシル寮長が言及した『特異な才能』への配慮が、『監視の口実』でないか確認しろ」
『肯定。魔力監視システムを起動。この部屋には、学園の基本魔力回路以外の、外部からの特異な干渉は確認されません。ただし、寮内の壁構造には、音響魔術を応用した情報伝達の経路が残されています』
(やはり、構造的な欠陥は利用されているか)
「Alpha。即座に、『ホワイトノイズ発生回路』を起動せよ。単なる遮音ではなく、この部屋から発せられる特定の周波数帯の
『了解。ノイズ・マスキング・フィールド展開開始。持続的な音声情報の解読は、極めて困難になります』
「そして、もう一つ。この寮の『水と汚物処理のシステム』を、全寮の施設と合わせて解析しろ。特に、感染症のリスクファクターとなり得る、排水管の構造と処理プロセスに絞って、緊急監査を実行しろ」
『了解。衛生基盤緊急監査プロトコルを起動します』
ルーカスは、技術的な対策を完了させると、再び上着を羽織り、ネクタイを緩めたまま部屋を出た。向かう先は、寮の裏手にある中庭だ。
彼は、その前に、執務机の引き出しから、一対の白い革製の手袋を取り出した。これは、クライスが、ルーカスの要求を受けて即興で間に合わせた試作品だ。
「Alpha。これを装着する。パーティー会場での干渉と情報収集の準備を整えろ」
『肯定。
「分かっている。特にあのアマ──アイリスに関しては、対面での分析がほぼ不可能だった反省だ」
『補足。個体アイリスの魔力制御能力は極めて高度であり、この試作品の分析精度は40%程度に留まる見込みです。しかし、彼女のような高度な魔力制御を持つ個体への対策として、接触は不可欠です』
「Alpha。パーティー開始まであと数時間。俺の『装い』の準備を始めろ。今夜のターゲットは、王国財務長官の息子と、アカデミーの主任教授だ。彼らが『トレンス』を見て何を語るか、データとして記録する」
ルーカスは、手袋を嵌めると、その手を軽く握り締めた。彼の瞳に、静かな闘志が宿る。
・・・・・
・・・
中庭に入ると、そこは数人の生徒が談笑する、穏やかな空間になっていた。
ルーカスがその中庭を横切ろうとした、まさにその時、一際陽気な笑い声が聞こえた。声の主は、軽薄な笑みを浮かべたヴァイスだった。
彼は、二人の女子生徒に囲まれ、身振り手振りを交えながら話していた。
「いやぁ、本当に素晴らしいドレスでしたよ!特に、フリルのデザインが…」
彼は、女子生徒の一人—–おそらく低位貴族の娘—–に、王都の流行りの宝飾品について話していた。
「──そのブローチの細工は素晴らしい。王都のトレンドは、『個人の才能を最大限に輝かせる』ことにシフトしています。ノイエス様のその洗練されたスタイルは、まさに新時代の貴族の模範です。ご実家が貿易に注力されていると伺いましたが、その国際的なセンスが、装いにも現れていますね」
ヴァイスは、相手が中級以下の貴族であることを知っていながら、「王都のトレンド」や「国際的なセンス」といったキーワードで彼女たちの自尊心を巧みにくすぐっていた。低位貴族にとって、上位貴族から見下されがちな自らの地位を、ヴァイスが持ち上げてくれることは、非常に心地よいことだった。
「あら、ヴェクター様ったら、お上手ね。でも、そう言ってもらえると嬉しいわ」
女子生徒は、気分良さそうに頬を緩ませた。ヴァイスの会話のテンポと距離感は、彼が王都の裏社会や社交界で培った、プロの情報収集術そのものだった。
ヴァイスは、商家の次男という設定を完璧に演じながら、さりげなく女子生徒の情報を引き出している。彼の表情は、興味津々で、いかにも軟派な若者だ。この男が、19歳を超え、化粧と振る舞いで15歳の新入生を演じているとは、誰も気づかないだろう。
その様子を見たルーカスは、わずかに自嘲の笑みを浮かべた。
(笑えるな。あれだけサバを読んでも見事に溶け込んでいる。
まあ、滑稽なのは俺も同じか。この身体に、前世の記憶という『嘘』を上塗りし、この学園に潜入している。ヴァイスは実年齢を偽り、俺は人生の経験値を偽っている訳だ)
ヴァイスは、周囲に気配を悟らせることなく、ルーカスが近づいてくるのを視界の端で捉えると、談笑を突然打ち切った。
いかにも親愛の情に溢れた表情で、女子生徒たちに頭を下げた。
「おっと、マドモアゼル方、失礼。まさか、トレンス侯爵閣下にお目にかかれるとは!僕は、ウィルソン家の次男、ヴェクターと申します!」
ヴァイスは、大袈裟なジェスチャーでルーカスに近づいた。周囲の生徒たちは、侯爵家と商家の次男の珍しい組み合わせに、好奇の目を向けた。
ルーカスは、その芝居に乗るように、冷たい視線を返した。
「…ウィルソン、だったか。私は、他人と群れるのは好まない。申し訳ないが、一人で過ごさせてもらう」
ルーカスもまた、他の生徒への建前を装い、冷たく応じた。
ヴァイスは、ルーカスの言葉に少ししょげたような顔を作ったが、すぐに元の軽薄な笑みに戻した。
「はは、そうですか。いやぁ、さすが侯爵様。僕のような下っ端とは違う、孤高のオーラを感じますよ!実は、先日、侯爵様にご挨拶をと、お屋敷まで伺ったんですが、門前払いされてしまって。あれはいい経験になりました」
ヴァイスは、誰にも聞こえないように、しかしルーカスには明確に伝わる声で、付け加えた。
「古い木馬はよく揺れる…と、門番の方も、なかなか強情でしてね」
ルーカスの表情は変わらない。だが、彼の脳内では、ヴァイスの言葉が即座に合言葉として認識された。
ルーカスは、ヴァイスの言葉が「武器搬入成功」だと認識すると、わずかに口角を上げ、周囲の生徒に聞かせるように、軽口交じりに返した。
「…そうか。君は、セールスマンの顔を崩さないな。次は錆びた鎧でも売りつけるつもりか?」
ヴァイスは、その皮肉を真正面から受け止め、さらにその言葉に乗った。
「いやいや、まさか!錆びた鎧なんて、侯爵様には無粋すぎます!最高級の鞍でも用意してお待ちしておりますよ!」
「ならば新しい馬も用意しておくんだな。慣らしが終わるまで、手綱は離すなよ」
その言葉は、ヴァイスの耳にだけ、明確な「任務承認・継続」の指示として届いた。
(『新しい馬に変えろ』……了解。既存のシステムを改変し、情報収集を継続せよ、か)
ヴァイスは、ルーカスの言葉を完全に理解した。
「いやいや、馬は打たれ強いですから!侯爵様がこの学園にいる間に、僕ら商会も、きっと新しいビジネスチャンスを見つけ出しますよ!」
ヴァイスは、再び合言葉の応答を口にした。
彼らの会話は、外から見れば単なる無礼な商人の次男坊と、冷たい貴族のやり取りに過ぎない。しかし、その裏では、最高機密の任務の報告と確認が行われていた。
「では、侯爵様。また改めて、ご挨拶に伺います。同じ学園ですし、きっとどこかでまたお会いしますよね?」
ヴァイスは、そう言ってルーカスに深く頭を下げ、軽快な足取りでその場を去っていった。周囲の女子生徒たちは、ルーカスに視線を送りながらも、すぐにヴァイスの後を追って行った。
ヴァイスが去った直後、ルーカスは静かに内省した。
(あの調子なら、ブロードウェイでも通用するだろう。情報収集にそれほどのオーバーアクションは要らないのだがな。あいつにはプロとしてこの任務を任せたつもりだが。まさか、熱中しすぎて役者としても才を発揮するとはな)
その時、ルーカスに近づいてくる影があった。平民の制服を身につけた数人の生徒だった。
「あの、トレンス侯爵様でいらっしゃいますか?」
一人の少年、マティアス・ハルトマンと名乗った少年が、おずおずと声をかけてきた。
「僕、マティアス・ハルトマンと申します。故郷の村では、代々、魔道具の修理を家業としておりまして…その、もしよろしければ、侯爵様の庇護下で学ばせていただくことはできないでしょうか?」
ルーカスは、その背後に立つ、もう一人の少年を見た。僅かに尖った耳を持つ、アールブとの血筋を持つ者の証だ。
「そして、君は?」
ルーカスに名を問われ、その少年は、マティアスよりは落ち着いた様子で頭を下げた。
「リズベット・ド・フォンテンと申します。母方はアールブの血を引いております。僕は、この学園の魔法の体系が、あまりに非効率的で古いことに、疑問を抱いています。侯爵様の言う『結果』とは、この腐りかけた学術体系を打ち破ることですか?」
ルーカスは、その少年の鋭い目と、核心をつく質問に、わずかに興味を覚えた。
「ハルトマン。フォンテン。庇護は与えない。だが、機会は与えよう。お前たちに、才能と努力を証明する『機会』を。お前たちの才能が、この学園でどれだけの価値を持つか、証明してみろ。私は、結果だけを見る」
ルーカスは、そう言い残すと、彼らに背を向け、歩き去って行った。
その道中、ルーカスは、深く息を吐いた。
平民の才能……彼らが求めているのは、甘い庇護ではない。才能が旧態依然とした貴族社会で報われないことへの『不満』と、それを打ち破る『機会』だ。彼らを繋ぎ留めることで、俺は王国の『次世代の技術者と研究者』を囲い込むことができる
ルーカスは、静かな闘志を瞳に宿しながら、夜の歓迎パーティーに備え、身なりを整え始めた。彼の奇妙な学園生活が、今、始まろうとしていた。