幕間 現状確認
母との穏やかな1日を過ごした深夜。ルーカスは執務室でタブレットを操作し、Alphaとの接続を確立した。彼の脳裏には、新大陸で確認された30フィート級ゴーレムの映像が焼き付いていた。
「Alpha、現段階での戦力状況を報告しろ。兵器群の配備と性能について、簡潔にまとめろ」
『肯定』
Alphaの無機質な声が響く。
『まず、
ルーカスは頷きながらカップに注がれたコーヒーを飲む。
『簡易生産型は、従来の装甲を凌駕する防御力と、兵士の筋力を5倍に増幅するパワーアシストを備えています。これにより、通常のヒューム兵士でも数百ポンドの装備を携行し、一日数十マイルを走破可能になりました。その機動力は、重装備の兵士が軽装の偵察兵並みの速度で移動できるほどで、長距離の行軍や迅速な陣地展開に貢献します。現在、全歩兵部隊への配備が完了し、初期運用データも順調に収集されています。主に偵察、強行偵察、および限定的な戦闘において、兵士の生存性と行動範囲を格段に向上させています。兵器名は「スケルトン」と呼称します』
『次に、重装甲型です。こちらは、既存の技術と魔導工学をさらに高次元で融合させた、量産型モデルの集大成と言えます。装甲は簡易生産型の約1.5倍の防御力を持ち、パワーアシストは10倍に強化されています。これにより、兵士は1000ポンドを超える物体を単独で持ち上げることが可能となり、移動速度も通常のヒュームの数倍に達します。そのパワーは、小型の障害物を単独で排除したり、重機関銃を片手で運用したりするレベルに達しており、歩兵部隊の火力と突破力を飛躍的に向上させます。稼働時間は簡易型の約1.2倍に延長されていますが、高温多湿環境下での冷却効率の最適化が喫緊の課題です。兵器名は「ゴーレム」と呼称します』
『そして、限定的な少数生産版として、「正規型」の開発計画が進行中です。このモデルは、「着用する装甲車」と呼ぶにふさわしい性能を目指しています。
全長は約7フィートから7.5フィートを想定。極めて高い防御力と火力、そして限定的な飛翔能力を主目標とします。エネルギー変換による装甲防御は、重機関銃弾を数十発受け止めるレベルを目標とし、背面からはフレキシブルアームで展開するシールドを搭載、対戦車ミサイルの直撃に数発耐える防御力を持たせる予定です。武装は、着用者が片手で機関銃を扱えるほどのパワーアシストに加え、将来的な拡張性としてレールガン、パルスライフル、レーザーガトリングといった、貴方の知る未来の兵器を統合することを視野に入れています。現在、この「正規型」の基礎理論構築と、高出力魔力炉の小型化に関する研究が進められています』
「別邸で細々と息をしてた頃には考えられなかったオモチャだ。おかげでこの世界の兵器技術は飛躍的に進化した、と。…まったく、俺もずいぶん物騒な影響を与えたもんだな。特に『着る装甲車』なんて代物が、本当に必要に迫られるなんてな」
ルーカスは頷いた。兵士個々の戦闘力向上が第一だ。
『次に、携行火器と支援火器です。歩兵の基幹となるライフル系は、7.62mm弾を使用し、射程500ヤード、装弾数120発のRS-4E2ライフルを標準とし、1000ヤード以上の長射程を求める場合にはRS-S40セミオートスナイパーライフル。
1800ヤードの精密狙撃には8.6mm弾を使用するRS-S21Bボルトアクションスナイパーライフルを配備しています。
RS-S16Dマークスマンライフルはレギュレーターにより強装薬弾も使用可能で、射程800ヤード、装弾数80発です。
RS-A36オートマチックライフルは300発の装弾数で面制圧を可能にし、RS-M7汎用機関銃は7.62mm弾を使用し、射程約1000ヤード、装弾数600発と、火力支援の中核を担います』
「特殊用途はどうか?」
次のモニターを見ながら聞く。
『RS-G10アドオングレネードランチャーは40mm榴弾を使用し、対人から発煙、照明、催涙弾まで対応。RS-SG3アドオンショットガンは近距離戦闘を補完します。
RS-C5サブマシンガンは4.3mm弾を使用し、装弾数200発、射程200ヤード。憲兵用には互換性の高いRS-P5ハンドガン(4.3mm弾を使用し、装弾数80発、射程20ヤード)を、主力としてはRS-P22ピストル(11.43mm弾を使用し、装弾数30発、射程15ヤード)と、9mm弾50発のRS-P25ピストルを配備済みです』
「携行品は?」
『破片、衝撃、閃光、焼夷の各種手榴弾。そして発煙筒兼用の白燐弾と、赤・黄・緑・白の発煙手榴弾。対人・対戦車用の地雷が複数種用意されています』
「MGL-40と、対戦車・防空ミサイル系、迫撃砲群は?」
『MGL-40は6連グレネードランチャーで、多目的榴弾、エアバースト、対装甲弾頭を装填可能。重火器兵装備として、FGM―083野戦誘導対戦車ミサイル、LAW―066軽量強襲火器、LAM‐072軽量対戦車弾薬(130mmロケットランチャー)を配備。個人野戦防空にはFIM‐021個人野戦防空用ミサイルがあります。HMG‐50重機関銃は拠点防衛や車両搭載に。小隊支援用のIG-60、中隊支援にIG―81、HW-120迫撃砲は、各部隊の火力支援を担います』
「我ながら、よくこれだけの物騒なモンを揃えられたものだ。これで平和になるなんて、馬鹿でも言わねえ。だが、王立学園に招集された俺が王国の槍になるには、これくらいの準備は必要ってことか。皮肉なもんだ」
『次に、装甲戦闘車両です。AFV‐3戦車は90mm滑腔砲と同軸7.62mm機銃、CROWS .50BMGを備え、装弾数150発。装薬の無い四角形加工の弾頭により高い空間充填率を実現。スモークディスチャージャーとカウンターミサイルを装備。魔力転換装甲は魔力を流すことで密度を向上させ、38トンと軽量ながら高い抗弾性を誇ります。ただし、連続被弾による魔力消費で防御力が低下する安全機構があります。愛称は「タイタン」です』
『歩兵戦闘車IFV‐2は3名で操作し、上部の全周砲塔に30mm機関砲と7.62mm機関銃、連装対戦車ミサイルを搭載。兵員7~9名を輸送可能です。IFVの重量は、機動性と防御力のバランスを考慮し、重量は25トン前後。これにより、既存のAFV-3主力戦車の38トンよりも軽量で、不整地走破性や戦略的輸送能力に優れ、多様な地形での運用が可能となります。愛称は「レイダー」です』
『騎兵戦闘車IFV‐3は3名操作で、30mm機関砲と連装対戦車ミサイル×2、偵察要員2~3名と偵察バイク1両を搭載。
愛称は「グリフィン」です』
『防空戦闘車IFV‐4は4名操作で、30mm機関砲と7.62mm機関銃、4連装近接防空ミサイル×2、有効射程約3マイル、または、有効射程3〜10マイルの連装短距離防空ミサイルはや連装対戦車ミサイルへの換装も可能です』
「多連装ロケット砲は?」
『多連装ロケット砲IFV‐5は6連装多目的ロケットランチャー2基を装備。ロケット弾の射程は約20マイル、子爆弾644個内蔵。または慣性誘導で有効射程約100マイル、子爆弾950個、加害面積約0.2平方マイルの長距離ミサイルも搭載可能です。指揮型のC、回収型のRも派生として存在します』
『重突撃経路開拓型ABVは、戦車を基礎とした車重45トンの特殊車両です。全長約40フィート、高出力の魔導機関で稼働し、50口径重機関銃で武装。3トン程度の爆発物を携行し、車体前面の幅約15フィートの鋤で地雷原を開拓。MICLIC地雷除去導爆線により、ロケットで爆薬を最高100~150ヤード前方へ曳航し、安全な距離から隠蔽された爆発物を起爆させ、兵員と車両の安全な通過を確保します』
『現在の主要装甲戦力である、装甲偵察車アイギスRAV‐25A2は各種偵察用センサーを備え、基本型A型は25mm機関砲、同軸7.62mm機銃、12.7mm機関銃で武装し、8連装スモークディスチャージャーを2基搭載。兵員6名、操作兵員3名。全長約21フィート、全幅約8フィート、全高約9フィート、重量12.80トン。機動力は整地時約75マイル/時、不整地時約50マイル/時です』
『派生型として、Type B機動歩兵搭載型は重装甲強化服着用兵員4名輸送し、武装は同様です。
Type M後装式120mm迫撃砲搭載型は、必要に応じて、81mm迫撃砲を格納・展開可能。Type MLは対地対空両用で、70mm低誘導ロケット24連装を2基と12.7mm機関砲を搭載。
Type ATは4連装対戦車ミサイル型、
Type ADは4連対空ミサイル2基と25mm3砲身ガトリング砲を装備。
Type GRは105mm無反動砲型、
Type C2は指揮車両、
Type Lは輸送型、Type Rは回収車、
Type FMは野戦救急型でベッド2~4台を格納し、AED、酸素吸入器等の応急処置機材を備えます』
『軽装甲高機動車LAVは、ATVよりも堅牢で汎用性が高いプラットフォームです。人員輸送、小型兵器の搭載が可能で対空ミサイル、対戦車ミサイル、貨物輸送用のキャビン延長、連絡任務など、様々な派生型があり、軽装甲車両として部隊の迅速な展開を支えます』
『水陸両用車EFV-4遠征戦闘車は全長約35フィート、重量34.5トン。3名操作で兵員17名または貨物4.5トンを輸送。30mm機関砲と7.62mm機関銃で武装。地上速度約45マイル/時、水上航行速度約30マイル/時。指揮型C、回収突撃型Rも存在します』
『
「MULEか。俺が人間のラバじゃなくて、こいつを使う側で良かったぜ。あの酔っ払い王子は、俺がこんな物騒な兵器を準備していることを知っても、まだ『利用できる』なんて甘いことを考えるんだろうな。新大陸の連中も、あいつらと同じで、どうせ碌でもない連中なんだろうさ」
『輸送車は、MTVR中型輸送トラックとLVSR大型輸送トラック、そしてMUTTが配備されています』
『自走砲は、HIMARS六連装多目的ロケットトラックと、105mm装軌式自走砲、155mm自走榴弾砲トラックが用意されています』
『また、戦車輸送車両として、HEMTT A4重装備輸送車を導入予定です。これはAFV-3戦車やABVなどの重量級車両を安全かつ迅速に輸送するための専用車両であり、戦略的機動力を飛躍的に向上させます』
『最後に、航空機です。
AH―4A攻撃ヘリは2名乗員、全長約58フィート。25mmガトリング砲、対戦車ミサイル16発、空対空ミサイル6発、70mmロケットランチャー19発×4基、127mmロケットランチャー4発×4基で武装。超過禁止速度約255マイル/時、戦闘行動半径約145マイル。愛称は「ヴァルキリー」です』
『AH‐24ラトルス攻撃ヘリは2名乗員、全長約73フィート、胴体約73フィート。胴体下部35mmチェーンガン、機首12.7mm機銃×2。胴体内爆弾槽にはロギア70mm低価格画像誘導ロケット、ヴォルケナパーム対戦車ミサイル、スティングレイ空対空ミサイル、各種対地ミサイル、5インチミサイル、無誘導爆弾を搭載可能。巡航速度約155マイル/時、航続距離約1100マイルです』
『汎用ヘリはUH―4を配備。愛称は「ポーター」です。重輸送ヘリはCH―67セントレアを配備』
「無人機として、RQ1コルニクス無人偵察機。そしてMQ12無人攻撃機は全長約26フィート、翼幅約56フィート、折り畳み時約30フィート、最大速度約510マイル/時、上昇限界高度約29,000フィート、4つのハードポイントを持ちます。小型偵察機UAVサイファーはデータリンクで地上の映像をリアルタイム表示可能です」
「空からのお届け物には、ずいぶん物騒な選択肢が増えたもんだ。これで『心ばかりの品ですが』とか言われたら、誰もが震え上がるだろうな」
『工兵型E、アイギスRAV‐25A2の派生はドーザー、ショベル、25t級の架橋装備のアタッチメントを選択可能です。また、重突撃経路開拓型ABVも主要な工兵車両として機能します』
『工兵作業は、現場の状況に応じて「スケルトン」や「ゴーレム」に特殊アタッチメントを装着して代用、あるいは専門車両と併用します。例えば、スケルトンには軽量多目的ブレードや掘削アーム、ポータブル溶接/切断ツールを装着させ、軽作業や緊急の障害物除去に当たらせます。ゴーレムは、その圧倒的なパワーを活かし、重ドーザーブレードや重掘削バケット/クローアーム、高出力切断/破壊ツールで大規模な障害物の排除や陣地構築を担います。これにより、柔軟かつ迅速な工兵作業が可能になります』
『追加の輸送車両として、
『また、
『最後に、鉄道網計画についてです。これは、領土内の主要拠点間の戦略的・経済的連結性を強化するための長期的なインフラプロジェクトです。具体的には、領都ヴェリタスを起点とし、商業都市ヴァルデシア、そして港湾都市ポートリオンを結ぶ鉄道網の構築を計画しています。これにより、大量の物資や兵員の迅速な輸送が可能となり、有事の際の展開能力向上と、平時における経済活動の活性化に大きく貢献します。現在は、測量と初期設計の段階にあります』
『…以上が、現在の戦力状況と各兵器の概況です。中距離ミサイルの開発は現在、基礎研究の段階であり、実戦配備には時間を要する見込みです』
Alphaの報告が終わる。ルーカスは思考を巡らせた。
「わかった。つまり、まだ完璧ではない、と。だが、この不完全な兵器と、さらに不完全な俺が、この世界の未来を切り開く。実に、壮大な茶番だな。さてはて、あの第二王子は、どんな見当違いの期待を抱いて、俺を待っていることやら」
これら全てが、未来への布石となる。しかし、道のりはまだ遠い。彼はタブレットを閉じ、静かに立ち上がった。次なるは、王都での戦いだ。