しばらくその風景に目を奪われていたベルは、ふと視界の端に奇妙なものが映っているのに気が付いて視線をそらした。
そこには、剣のようなものが地面に突き立てられていた。
地面との接合部分には灰などが積もっており、そのことからベルはその正体について一つの推察を立てる。
「…焚火、みたいなものかな?」
なるほど、そう思ってみれば焚火に見えなくもない。
しかし、そうなると今度はなぜ焚火に剣など刺さっているのか、という疑問がわいてくる。
興味を覚えたベルは、その剣を引き抜こうと近くによっていった。
そして、ベルがその剣に手をかざす形となった瞬間。
“ボッ”
何の前触れもなく、突然焚火に火がともった。
「うわっ!?」
ぎょっとして手を引っ込めたベルは、ともった火をまじまじと見つめる。
それは幻覚などではなく、手をかざせば暖かく、どこか心が安らいでいくかのような、そんな灯火だった。
直前の出来事で疲れていたこともあり、数舜迷った後ベルはその火のそばに腰を落ち着けた。
火の温かさが体中にしみわたっていき、また体調も幾分か良くなったことに驚きつつ、ベルは安堵のため息をついた。
この意味不明な状況に追い込まれてから、ベルが初めて得られた休息。
今まで張りつめていた心が唐突に弛み、ベルは崩れ落ちるかのように座り込んでしまった。
「だめだ…ここは安全じゃないの…に…」
今まで酷使した体が休息を求めるようにとても重くなり瞼は降りてくる。
ベルはまずいと思いながらも倒れこむように寝てしまった。
人影が見える
水辺に転がった亡者を剣で切りながら
『おかしいな。何度となく薪の王を倒す旅をさせられてきたがこんなことは1度もなかったぞ?』
と少しハスキーな女性の声が灰の墓所に響かせる。
『私以外にすでに何者かがここにいるのか?白霊を呼んだ覚えはないし一体どういうことだ?』
『まあ考えてもしょうがないか…進めばわかることだろう』
かなり楽観的に考えながらその声の主は進む。
『ここもか…普段ならクロスボウで狙撃されるんだが…そうだデカブツ倒さなきゃな』
そういいながら声の主は倒れた亡者を踏みしめ右の細い脇道に進む。
開けた場所に着き、そこには大きな水晶のようなものが張り付いた化物が眠っている。
『ここのは殺されてないのか。まあ肩慣らしのためにも死んでくれ』
そう言うが早いか、声の主はとてつもないスピードで化物に向かい走りながらどこからともなく、とてつもなく大きく無骨な剣を取り出しそして振りかぶり化物の頭に振り下ろす。
“ガキンッ”
とても生物にぶつかった音とは思えない音を響かせながら声の主は剣を振り切った。
化物は痛みと睡眠の邪魔をされたことに怒りを露わにしながら腕を振り下ろす。周辺からは鋭い形状の水晶が生え、さらに猛追してくる。声の主はそれを後ろにステップを踏み紙一重で躱しながら大きな剣のリーチを生かし的確に頭を攻撃していく。そのあまりの威力に化物はのけぞる。声の主はその隙を見逃さず化物に向かいステップを踏み、化物との距離を0にする。今まで握っていた剣はいつの間にか小振りなダガーに変わっている。そして無防備に晒された首元に突き刺す。するとダガーから燃え滾る炎が沸き起こり化物の首元から上を塵にした。頭のなくなった化物は崩れ落ち、溶けるかのように搔き消えその化物の一部と思わしき欠片のみが残された。
『勘は鈍ってないようだし楔石も手に入った。篝火に火を灯しに行くか』
声の主は何もなかったかのように来た道を戻り、篝火に向けて足を進める。
そして…
『…あいつか?この不可思議な現象の犯人は?』
出会うはずではなかった2人はここで出会う。