FGOの世界にTS転生 作:イザベラ
アーチャー・エミヤとの対面も終わり、私は無事カルデアの一員となった。
他の職員にはDr.ロマンから通達などがなくとも、私がランサーのサーヴァントだと広まっていった。たまにカルデアの中をうろうろ歩いている、どうみても職員じゃない美人さんの噂はすぐに広まり、自然と私のことが知れ渡った。
召喚されてから数日間、私は特にやることがなくて散歩するのが日課だったからね。なんというか暇を持て余してたし、ありていに言えば私は役立たずだった。
カルデアが今求めているのは専門職だ。医療系にしろ機械系にしろ魔術系にしろ、全て必要なのは専門職。肉体労働ならと私も手伝おうとしたが、カルデア職員のほとんどは魔術師だ。本当に邪魔なガレキ撤去なぞ魔術で行う。
わざわざ気を遣う必要のある英霊に手伝ってもらう作業などはなかったのだ。
ならばマスターや同僚と絆を深めたり、戦闘訓練をすればいいと考えたが、これまた無理だった。マスターの立香くんは本物の一般家庭出身なので、人類最後のマスターとして教育を受けていて暇がなかった。
マシュちゃんはデミ・サーヴァントになる前から成績優秀なエリートなだけはあり、彼女の実直な性格も相まってか、引く手あまたで忙しそうだった。白衣姿で走り回る姿をよく見かけた。
そして一番私にかまってくれそうなアーチャーだが、当然彼も忙しかった。解析魔術の腕が一流の機械にも精通した人材は貴重! とダ・ヴィンチちゃんの率いる技術班と共に頑張っていた。まぁそれでも私を見かけたら毎回ちゃんと顔を合わせてくれるし、食事の心配をしてくれたりもした。
サーヴァントは魔力だけで生存できるので、余裕がない今はご飯を食べないと断ったら驚いていたっけ。姿同様大人になったのだなとか呟いていた。嫌味な感じじゃなく親愛を籠めて。
私に対する態度もそうだけど、ダ・ヴィンチちゃんにこき使われててもどこか楽しそうだった。アーチャーって、あんなに前向きだったろうか?
う~んと、アーチャーのことをさらに考える。
あぁそうか。グランドオーダーは、彼が普段呼ばれていた主義主張の違う人間の争いの後始末ではない。今回の戦いは全人類を背負った戦いで、人理焼却を行うような相手は人にとって絶対の悪だ。相手にどんな主張があろうとも悪であり、私達カルデアが善だ。
正しく正義であるから、あんなに前向きなのかもしれない。あとはもしかしたら私がいるからかも? アルトリアさんとの邂逅を喜んでいるのかも。
でもそうすると頭が痛い問題だ。アルトリアさんを演じてサーヴァントの役目を頑張ると決めたが、私はどうしたって偽者だ。ロンゴミニアドは応えてくれたが、偽者に間違いない。自分で保証できてしまう。
アーチャーをだましていると思うと心苦しくなる。あんなに好意を寄せてくれている人に嘘を吐くのはきつい。嘘でもサーヴァントの役目を果たせば問題ないだろう他の人達とは違う。
じゃあバラしてしまおうか?
それは凄く怖い。悩みは一つ解決するだろうが、もっと大問題が私を襲うこと請け合いだ。好意がひっくり返り嫌われたら、私はカルデアでサーヴァントをやれる自信がない。今でも自信はないしね。それになにより、アーチャーに嫌われたくないと思っている。恋する乙女のような思考だが、そう思っている。
嘘を吐くのは嫌でも、真実を言う勇気もない。英霊アルトリアさんとして頑張ると決めたはずなのに、もう揺らいでいる。
「……散歩にでも行こう」
ぐるぐる回って解決できない悩みを放棄して、暇だから考えてしまうんだと部屋を出て散歩を始める。そして立香くんとマシュちゃんを見かけたらほんわかし、アーチャーを見つけては喜び悩む。
次の特異点へのレイシフト実行日まで、私の日常は実に平和だった。
『それじゃあ、観測された特異点へのレイシフトを開始する。皆、覚悟はいいかな』
中央管制室に居るDr.ロマンの声が、コフィンの中で今か今かと待つ私の耳によく聞こえた。レイシフト寸前で覚悟も何もないとは思うけどね。
『――――3、2、1、0』
オペレーターさんのカウントダウンが終わると、体に浮遊感を感じ召喚された時のような青い光に包まれる。それから全ての感覚が薄れていき、眠るように意識を失った。
「――――ランサーさん、起きてください。ランサーさん」
女の子の綺麗な声が聞こえる。呼びかけられるのと同時に体を揺すられて、眠っていた私の意識は徐々に目覚めていく。
「うっ、マシュ……」
素の自分に戻りマシュちゃんと言いそうになったが、礼装に身を包んだサーヴァント姿の彼女を見て口をつぐんだ。
それからすぐに何が起こったのか思い出した。レイシフトが行われ、最中に私は気を失ったのだ。上半身を起こし周りを見れば、すでに立香くんとアーチャーも目覚めていた。立香くんは時計みたいな道具から浮かぶホログラフ上のDr.ロマンと打ち合わせをしているようだ。
私が最後に目覚めるのは、精神的な強さとか鑑みて順当な気がするが、ただの人間な立香くんよりも後とは……。ぐぬぬ。
起き上がらせようと伸ばしたアーチャーの手を少し戸惑いながら取り、凹んだ気持ちを意識的に忘却して立ち上がった。今の私は英霊アルトリア。凹んでなんていられない。
周りを見渡すと、背の低い草の絨毯がどこまでも広がっていた。時折花や木々、小高い丘や山影が彩を添えて見てて飽きない景色だ。
立香くんとマシュちゃんは、Dr.ロマンと色々と話していた。おそらく1431年だろうとか、中世のフランス云々とか、戦争休止期間ってなんぞやとか、現状確認をしているようだ。歴史の授業のような講義をするマシュちゃんと、聞いている立香くんは微笑ましかった。
そんな彼らを放置して、私は空を見上げていた。
サーヴァントの目だからかはっきりを見える。尋常の現象ではない、上空に浮かぶ光輝く巨大な輪が。魔術王ソロモン、その中に潜む者達が使う忌むべき宝具。確かアルス・アル……アリ? んと、サージェスじゃないよね。
上空を見ていた私の様子にアーチャーが気付き、遅れて立香くんとマシュちゃんも気づいた。映像を送られたDr.ロマンも驚き、人理焼却に関係するものに違いないと断定し解析を進めると言っている。
目に見える異変を確認した私達に、改めてDr.ロマンから人理修復について話があった。
『敵は人類のターニングポイントとなった時代を破壊し、人類史を焼却するのが狙いだ。そんなこと普通ならできないが、究極の宝具ともいえる聖杯を使い行っている。だから僕達人理継続保障機関・カルデアは、特異点と化したその時代にある聖杯を回収することが目的だ』
ここで一旦言葉を止める。何やら躊躇したようだが、彼らしくないキリッとした表情になり続きを話し始めた。
『本当は無理をするなと言いたいけど、無理をしてでも頑張ってくれ。君たちがやらなければ後なんてないんだ。たとえ命を失ったとしてもやり遂げてくれ』
さすがにこの物言いには皆が黙り込んだ。わかっていたことでも、こうして言葉に出して言われると重たい。最高責任者として言わねばならないことだろうが、私の知っているDr.ロマンらしくない台詞だった。が、彼はやっぱり私の知る甘っちょろいDr.ロマンだった。
『でもだからこそあえて言うよ。絶対に無事にやり遂げること。誰一人欠けることなくね。じゃないとさ、ほら、僕が喜べないからね』
はははと笑って誤魔化すDr.ロマン。いい人だなぁ。言うべきことは言うけど気遣いもちゃんとする。立香くんやマシュちゃんの見本になる、立派な大人だった。
Dr.ロマンの思わぬ一面を目の当たりにして、柄にもなく私も言ってしまった。
「大丈夫です。ロマニ・アーキマン。マスターとマシュの命は私やアーチャーが守ります。私達はやられてもそちらで再召喚すればよいのですから」
やられたら言葉通りに死ぬほど痛かったり、再召喚で私が私でいられないかも。覚悟を決めてそういった事柄を飲み込んでの台詞ではない。
Dr.ロマンの見事な大人らしさとカッコ良さに感化されて言ったのだ。ヲタクならイベントとかでたまにやってしまう、場に流されてやっちゃうアレに過ぎない。
えてして、そんな覚悟のない発言はしっぺ返しを受けるものだ。
『ランサー、君の気持ちはわかった。でも僕としてはせっかく座から来てくれたんだし、君自身も大切にしてほしい』
Dr.ロマンの言葉に引っかかりを覚えた。まるで私と立香くんたちを同じように扱っているような? 続く彼の言葉に、格好つけた状態でギチリと体が硬直した。
『君がやられた後に英霊を召喚しても、再び君を呼び出せるとは限らないからね』
やられた英霊を再召喚できない? 固まって表情を変えないままツーと冷や汗が流れる。それでも冷静にDr.ロマンに問うた。
「私達の霊基はカルデアに登録され、いつでも再召喚できるのでは?」
『うん、霊基パターンは登録してあるね。でもそれはレイシフトを行うのに必要なことで、再召喚を行う前提のものではないね。せいぜい君たちの維持魔力削減の効率化に使うくらいかな』
「……省エネ用ですか」
『いや、そういう使い方もできるのかなぁってだけ。実際に維持魔力削減の大部分は、わかってると思うけど召喚時に疑似的に受肉させて済ませてるしね』
あ、そうなんですか。私達受肉してるんですね。知らなかった。そういえばゲームでサーヴァントの皆様、ずっと実体化してカルデアに居たよね。霊体になってマスターの消費魔力を減らすとかしてなかったね。そもそも霊体になれるのかな。
人道的にあまりしたくはなかったが、考えていた最終手段がダメになり、かなりのショックを受けた。あの英霊には申し訳なかったが、とても有効なやり方だったのに。ステラ戦法は使えない、か。
そりゃそうだよね。やられても次の戦闘に出せるなら、ダ・ヴィンチちゃんの事件で皆があれほど悲しまなかったはずだ。ショップに行って見た映像は忘れられない。
ゲームの時のことを思いだして、今の自分が『死んだら終わり』と言われた事実に蓋をする。そこと真剣に向き合えば、私はあまりいいことにはならないだろう。
「そうでしたか。思い違いで話の途中に要らぬ邪魔をしてしまいました。申し訳ありません」
茶々を入れてしまった形の責任を取り、話の締めにそれだけ言って後ろに下がった。調子に乗ったツケはなかなか厳しい結果となった。得た情報は有意義ではあるのだが。
こうして、初めてのレイシフトでの特異点への侵入は、衝撃の事実から始まった。
サッ、サッと力強く生える草を踏みしめ歩く。私たちは気持ちよい風が吹く草原を、ゆっくりと進んでいた。
カルデアとの通信を強化するための起点設置に優れたレイポイント探しや、この時代の特異点化の原因究明のための情報取得や、拠点になりそうな町などを探して歩いている訳ですが……。
「景色、かわらないなぁ」
立香くんが疲れた感じではぁとため息をついた。
現代日本のように、ちょっと行けば人工物がありまくりなんてことはなく、見渡しても自然しかない。たかだか500年ちょい前なのに、自然豊かすぎる景色が延々と続く。
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。まだまだいける」
マシュちゃんの質問にしっかり答える立香くんだけど、人理修復の重圧と目的地がいつ見つかるかも不明な状態で1時間は歩き通しだ。サーヴァントの私達と違って、疲労の色は隠せなかった。
彼を見て、今こそ私の知識を生かし、道案内をパパッとして人理焼却もまるっと解決だ! それこそ私が召喚された理由だろう! なんて思ったりはしているんだけどさ。
ふ、ふふ、空の光輪を見た時にわかったんだ。自分が色々と覚えていないってことが。あの宝具の名前を思い出せなかった。宝具だけならいいが、細かいストーリーもさっぱり思い出せなかった。
大筋は覚えているのだ。大筋は。ただどこでどんなサーヴァントが出て何をしたか等、いちいち細かくは覚えていない。
だって仕方ないじゃないですか。日々お仕事でいっぱいいっぱいだったのだ。楽しんだ記憶はあるけれど、三日前のご飯の内容すら思い出せない私が、一年以上前に読んだテキストを覚えている訳がない。外伝的なイベントの方がインパクトがあって、意外と覚えているのが余計に救えない。
「はぁ」
「先輩……」
「フォーゥ……」
ため息が増えていく立香くんを心配する少女と獣が一匹。カルデアでは見かけなかったフォウさんが、立香くんの足元で心配そうに鳴いていた。こっそりレイシフトに紛れていたようだ。
召喚されてから色々考えなきゃいけなくて、フォウさんの存在自体忘れていたんだよね。アーチャーに会ってから、彼のことばかり考えちゃったりしてて。そう思ってチラリとアーチャーを見たら、彼は周囲の警戒をしながら歩いているようだった。
さすができる男。なんて感心して私が見ているのに気づくと、こちらを向いた。目を合わせる前にサッと顔を逸らす。見てたのがバレたら恥ずかしいよね。これはただそれだけのことだ。なぜ恥ずかしいかは知らない。
それよりもマスターの立香くんのことだ。あんな調子ではいざという時に困ってしまう。体力は可能な限り温存するべきだ。獣なフォウさんを見て思い出した。我がもとに居るべき獣を。そう、私はアルトリア・ペンドラゴン・ランサーなのだ。
「マスター、少しお待ちを」
私が声をかけたら全員が止まった。視線を私に向けて。注目されるとやりにくいです。ランサーなのにやりにく……いえ、なんでもありません。
注目に耐えられないので、ちょっと離れて皆に背を向けてから槍を手に持った。ロンゴミニアドを実体化させる必要はないんだけど、注目されたせいでそれなりの演出が必要だと思ったのだ。
私の中で馬と言えばZeroの征服王。色々な意味で征服王は凄かった。小説を読んで、真名を自ら名乗ったシーンで一気にファンになった。懐かしいなぁ。
参考にする場面での呼び出しは馬ではなく戦車だったが問題ないだろう。覇道を志すマケドニアの王とアーサー王は違うので、台詞は変えなくては。……急にカッコイイ台詞とか浮かばない。
「騎士王、アルトリア・ペンドラゴンの呼び声に応えなさい!」
考えても浮かばなかったので、妥当だけど面白みのない台詞になった。言葉と同時に槍を縦に振ると、穂先が滑った空間にヒビが入る。それっぽい動作をしただけで、空間にヒビが入るとは思わなかったのでびっくりだ。
振り下ろしてすぐに割れた裂け目から黒い蒸気が溢れ出し、力強い嘶きと共に黒い馬身が出現した。
「応えてくれてありがとう。ラムレイ」
近づいてきて顔を私に擦り付けるラムレイ号にお礼を言った。首を丁寧に撫でながら心からのお礼を。アーサー王の愛馬である彼が、私の声に応えてきてくれたのは本当に嬉しかったから。
準備が整ったので後ろを振り向き、疲れている立香くんに聞いてみた。
「マスター、乗馬の心得はありますか?」
立香くんの表情は、とても複雑そうで芳しくなかった。
ポクポク、或いはパカラパカラと牧羊的な音を奏でて進む愛馬ラムレイ。
サーヴァントと違って歩き疲れてしまうマスターの立香くんに乗ってもらおうと呼び出したラムレイの背には、立香くんだけではなく私も一緒に乗っていた。
日本の一般家庭で育った立香くんは乗馬経験がなかった。日本での乗馬は一般的というほど普及していないから、立香くんに乗馬経験がなくても仕方がない。そして経験ゼロの人が一人で馬に乗るのは危ないってことは、誰でもわかる。なので私も乗り、後ろに立香くんがくっついているのが今の状態だ。
私も乗馬経験なんて当然ない。子供時代に動物園かどこかで少し乗ったが、それを経験ありとは言えない。だがこの身に宿る騎乗スキルの恩恵で問題なく乗騎できていた。
さすが本家セイバーさんが、騎乗スキルがあるので飛行機も動かせると言っていただけはある。自分でも惚れ惚れする安定感で乗れている。ちょっと楽しい。
マスターの立香くんが乗騎して徒歩ではなくなったので、何かしらの手がかりを見つけるために、私たちは移動速度を上げていた。
アーチャーはもちろん、マシュちゃんも盾を担ぎながら軽快に走っている。馬に慣れてない立香くんが耐えられそうな速度なので余裕そうだ。
と、後ろの立香くんがズルリと落馬しかけた。
素早く左手を後ろに回して彼を支え、落ちないようにしたままゆっくり止まる。立香くんが姿勢を整え、私の腰に手を回したら移動再開。
それから間もなく立香くんが再びずり落ちる。それを支え、止まり、姿勢を整え再スタート。ちょくちょくとそんなことを数回繰り返した。
なんだろう。普通の徒歩より馬の方が移動が速いはずなのに、移動が遅くなっている気がしてしまう。実際には歩くより早く移動できているのだが、いちいち止まるのがいただけない。
私の鎧が竜の鱗を表しているのか、手触りつるつるで細かくトゲトゲだから掴みにくいのかもしれない。移動速度と引き換えに立香くんの身が危険にさらされている気がして、何度目かの落下しかけで彼を支えるのではなく、襟首を持ち上げ自分の前にストンと座らせた。
「へ?」
「後ろよりも前の方がフォローしやすく安全です」
「あ、ありがとう……」
普段は着けている鎧の前部分を霊体化させ、手綱をしっかり握らせ鐙に足をかけさせ座らせた。私も彼の背後から手綱を握っているので、ラムレイの操作は問題ない。鐙はなくてもなんとかなりそうだ。
手綱と鐙を使えるようになった立香くんは、後ろに居た時よりも大分安定はした。のだが、時折激しく揺れると相変わらず落ちそうになる。それというのも、やや前方に屈んで体を丸めて姿勢が悪いせいだ。
なぜ彼がそんなことをしているかはよくわかる。体が私に当たらないようにしているのだ。
私の鎧の胸部分は衝角のように尖っている。それを着たままでは立香くんを前に乗せられなかった。だから霊体化させた。すると露になるわけだ。二つの大きなたわわが。
これが前に座るのが立香くんではなく、もっと助べえな人だったり中年以上の年齢ならば、開き直ってしまいそうなものなのだが。
きっちり私に気を使って肌が触れないようにする、レディファーストな彼には好感がもてる。未来において、数々の女性サーヴァントと親しくなっても、誰一人不幸にさせない少年だけはある。そんなあるかもしれない可能性は置いといて。
「マスター、背筋を伸ばし胸を張ってください。怖がって体を丸めると危険です。まずはラムレイの走るリズムに体を合わせましょう」
走りながら彼の背中を軽くパシッと叩き伸ばさせ、手を重ね手綱をしっかり肩幅で握らせた。最初は背中を気にしていたようだったが、人類最後のマスターなのは伊達ではないのか、すぐに集中して揺れに合わせて乗れるようになっていった。
彼が落馬しないくらいになったので、手綱からそっと手を放してギリギリまで後ろに下がった。私は未来ある青少年をからかって遊ぶ趣味はないのです。だからといって彼は初心者なので、もしものために降りたりはしないが。
立香くんは乗馬に必死で気づいてなかったようだけど、移動中にマシュちゃんがチラチラこちらを見ていた。必要だと思ったからとはいえ、ちょっと立香くんの世話を焼き過ぎたかもしれない。心の中でマシュちゃんにごめんと謝り反省する。
でも私って、こんなに他人の面倒をみる性格だったろうか?
「先輩、今日は何も見つかりませんでしたが、気を落とさずに明日頑張りましょう」
「うん、そうだね。明日こそ何か見つけよう。ただ、何もなかったのに今日は凄く疲れたなぁ」
「フォウ、フォウフォーウ」
「疲れたならしっかり休むんだって、フォウさんが心配しています」
「はは、ありがと」
食事が終わり、焚火にあたりながら立香くんとマシュちゃんと、おまけの一匹は雑談をしていた。アーチャーと私はあえて口を挟まずに彼らを見守っている。
今日は立香くんたちの言う通りたいした物は見つからず、夕方には移動をやめてキャンプとなった。
完全に何も見つけられなかったわけじゃなくて、日が落ちる前に道を発見した。日本でイメージする道とは全然違う、草がない砂地が見える線って感じの道を。それを発見したら、今日は早めに休もうとアーチャーが提案したのだ。
道があるということはその先に村ないし町があるはずだ。少なくとも人の営みがな。ならば今日は早めに休み英気を養い、明日に備えるべきだ。だそうだ。
私なんかは道を見つけたのだから頑張って人里まで行こう、まだ明るいしと思いました。それに比べアーチャーは見知らぬ土地で無理をする愚を立香くんとマシュちゃんに教え、焚火を作るコツや野営の時の経験談を話し、調理も担当しておりました。
道からずれて、ちょっとした林で野営することになったのですが、焚火をつけた後にアーチャーが「少し待っていてくれ」と言って、野鳥を獲ってきたのとか感心しすぎてポカンとしてしまいました。
カルデアから持ってこれた食料が少ないから、無駄遣いしないための現地調達。世界を一人で回り、正義の味方をやっていた彼のバイタリティは凄いですね。
私なんて野営したのは、修学旅行のキャンプとも言えないキャンプが精々だ。こんなことならアウトドアな趣味でもやっておくんだった。
「ふあぁ~」
アーチャーに比べて私って……と黄昏ていたら、大きなあくびが聞こえた。立香くんが眠くなったようだ。第一特異点へのレイシフト初日で凄く疲れているんだろう。お腹も膨れたろうし。
「先輩、そろそろ眠ったほうがいいと思います」
「ん、あぁ、そうだね……」
眠たそうな立香くんと、彼の隣に座るマシュちゃんが微笑ましい。仲良き彼らに、数少ない自分が役立てそうな提案を行う。
「眠らずに番をしますから、遠慮なく安心して寝てください」
「そうですよ。先輩。私たちが朝まで守りますから、しっかり寝てください」
「マシュ、あなたも休んだほうがいい」
「えっ? ですが」
「自分一人だけ眠ってしまうのでは、優しいマスターは心苦しく思ってしまう。マスターが安眠できるように共に眠る者が必要です」
マシュちゃんは少し悩むそぶりを見せたが、寝ようと横になった立香くんを見て頷いた。それから手早く立香くんの頭を軽く持ち上げ宝具の盾を枕代わりになるようにし、横になった立香くんのそばに自らも横になった。
私の会話からマシュちゃんの甲斐甲斐しいお世話まで、全てを平然と受け入れた立香くん。意外と図太い。マシュちゃんと近距離で顔を見合わせてお休みと言う余裕もある。大物だ。
何を思ったかフォウさんが二人の間に入ってクルンと丸まった。私的には微笑ましいだけだったが、フォウさん的には二人が接近して寝るのは早かったのかな。マシュちゃんへの昼間のお詫びも兼ねて『共に』を強調して提案したんだけど。
二人と一匹がすやすやと眠る光景は、それはそれでよかった。ビーストなフォウさんは寝てるかよくわからないが、立香くんとマシュちゃんが穏やかな寝息を立て寝入ったのを見て安心した。
立香くんはただの人間なので当たり前だけど、デミ・サーヴァントのマシュちゃんも休める時には休んだほうがいい。サーヴァント並みの頑強さはあるが、彼女にはちゃんと人間らしい部分が残っているのだから。
さっき皆で食事はしたが、サーヴァントである私にとって食事はただの娯楽だった。ちびっと魔力補填される実用的な効果はあるが、マスターからの供給に比べたら本当に微々たるものだ。
睡眠もそうだ。暇なのでカルデアでは寝たが、あれは人だった頃の習慣の名残が大きかった。二日もすれば睡眠は必須というよりも趣味のような感覚になっていた。
サーヴァントの体は魔力供給さえあれば不眠不休で動ける。汗や涙も出るが、体が何かで汚れたとしても時間が経てば勝手に召喚時の綺麗な状態に戻る。
人としての生理現象なんてあってないようなものだった。食事、睡眠、お風呂などは『全て趣味』の領域だ。
そんなサーヴァントの特性のおかげで、女性の体になったというのに不便はなかった。トイレやお風呂が必要なく、服も普段は胸をガッチリ隠せる鎧で十分。むしろ主観では、仕事でクタクタだった体が健康的になってプラスなんじゃなかろうか。
サーヴァントの肉体の特性は素晴らしいと思う。でもそれでも、だ。
パチンと焚火が爆ぜた。いつの間にか焚火を見ていたらしい。夜の闇にゆらゆらと揺れる炎は幻想的で、引き込まれそうな不思議な感覚になる。その焚火を見ていたせいだろうか、柄にもないことを考えていた。今の私は一体何なんだろう。なんてね。よくないな。気分転換に深呼吸しよう。
「すぅ~、はぁ~」
「む……」
気分転換に息を思いきり吸って吐いたら、こちらを見たアーチャーとバッチリ目が合った。食事後に、彼も微笑ましく静かに立香くんとマシュちゃんを見守っていたが、今はちょっと驚いた顔をしています。
急に思い切り深呼吸する変な奴って思われたかな。恥ずかしい。普通に恥ずかしい。静寂の夜に焚火のぱちぱちと鳴る音が響く。先ほどまでと同じ環境のはずなのに落ち着かない。
少しして、朝まで続くのかと思われた沈黙を破り、ぼそりとアーチャーが話しかけてきた。
「……君は、相変わらず一度決めると容赦がないな」
「相変わらず、ですか?」
沈黙に耐えかねていた私は彼の話に即応した。
「ああ。マスターが馬に乗っていた時、恥ずかしがっているのを気付いていただろう?」
「ええ」
「だというのに君は、マスターを降ろす気配が微塵もなかった」
「それはそうでしょう。降ろして歩かせるより、馬に乗っていたほうが体力が温存できる」
合理的な判断だと思う。皆も同じ認識だったと私は思っていたのですが、違ったのでしょうか? ちゃんと乗せる前に立香くんだって同意した。乗ってからも本当に嫌なら、立香くんは降ろしてほしいと言ったはずだ。
私はそう考えていたが、アーチャーは違ったらしい。
「相変わらずと言ったのはそれだ」
「はい?」
「一度君に物事を頼むと、こちらの言い訳も許さずに容赦がない」
「何の話ですか」
なんとなくムッとして、少しだけ棘のある言い方をした。アーチャーが楽しそうに話すので、不機嫌になりますよのポーズなだけだけどね。彼と話すのは私も楽しかったから。
「俺が鍛えてほしいと頼んだら、一切の容赦なく叩きのめされた。今だからこそ思うが、英霊としては少々大人げなかったのではないかね?」
「あれはサーヴァントに立ち向かう無謀を教えようと思ったのに、何度倒れてもあなたが立ち上がるからつい」
「ほらみろ、容赦がない上に大人げないじゃないか」
アーチャーは英霊エミヤというよりも、衛宮士郎のように笑う。表面上は怒った振りをしているが、私もつられて楽しくなった。
シロウが笑ってくれるなら、私もあの時の気持ちを白状した甲斐がある。そう自然と、自分の思い出として話していたと自覚してドキリとした。私は知識としてじゃなく、自分が思ったことを言ったと感じている?
「今回のマスターのこともそうだ。少しやりすぎだ。男として言わせてもらうが、君は少々自分の魅力を過小しすぎだ」
「なっ!?」
容赦なさすぎと責めてたかと思えば、一転して魅力があると褒められて動揺してしまう。勝手に赤面してしまう恥ずかしさで、寸前の怖い考えを振り払った。
一方でニヤニヤしているアーチャー見て、違う感情が生まれてきた。今度は本気でちょっとだけ怒って、ジト目でアーチャーを見て文句を言う。
「シロウ、からかいましたね?」
「すまない。君の反応があまりにも面白かったのでね。出来心だ」
ちっともすまなそうにしていない。反省なんてこれっぽっちもない風だ。人が赤くなったりする様を見て楽しむとは。ヒドイよ、アーチャーめ。なんて思いもしたが、からかわれたのに悪い気はしなかった。
楽しい雰囲気のまま、お互いに言葉が止まった。パチリパチリと火の粉が舞い、落ち着いた空気に戻るとアーチャーがまた話しかけてきてくれた。
「君は、変わったな」
首を傾け、何が? と動作だけで返事をする。それに対してアーチャーは、ふっと笑った。少し寂しそうに。
「差し入れをもっていって断られた」
「……私だって、カルデアの状況を考えれば自重くらいします」
これは私だからって訳じゃないはずだ。いくら腹ペコキャラの本物セイバーさんだって、あのカルデアの状況でご飯を進んで食べるはずがない。……ないよね?
寂しそうに笑い雰囲気を出したくせに、まだからかう気かと呆れてしまう。こういう感じの方が話しやすくていいんだけどさ。
「それにクラスもだ。まさかランサーで召喚されるとは思わなかった。おまけにランサーだというのに、愛馬を呼び出すなど、まるでライダーだ」
これには苦笑するしかない。ランサーなのに常時馬に騎乗が、FGOのアルトリア・ランサーの仕様だ。見た目だけならライダーにしか見えない。それだけじゃない。アルトリアさん、オルタとはいえ、ちゃんとライダーまでやっている。
アルトリアさんが様々なクラスで実装されたのはFGOプレイヤーなら常識だ。だからランサーだと思わず、さらにライダーじゃないのかって言われて、こう答えた。
「そうですね。私は色々なクラスに適性があるのかもしれませんね」
いつかは全てのクラスのアルトリアが実装されるのかな。なんて思って言ったセリフだ。それを聞いたアーチャーは。
「彼女は剣に特……いや、やはり君は」
何か言っていたが小声で聞こえなかった。なんて言ったのですか、と聞くのは気恥ずかしかったので、気になりつつも黙った。アーチャーも黙ってしまい、また沈黙の時間が続く。
それなりの時間が経過して、唐突にアーチャーがため息を吐いてから立ち上がった。
「大丈夫だとは思うが念の為、周囲の警戒にでる。何かあればすぐに戻るが、マスター達の警護は頼んだ」
「あ、はい。あなたもお気をつけて」
シュパッと素早くいってしまったので、それだけ言うのが精いっぱいだった。
アーチャーは警戒に出て、立香くんとマシュちゃんにフォウさんは寝ている。見知らぬ土地での夜に話し相手もいなくなり、一人で焚火に枯れ木をくべた。
ふと上を見上げると、木々の隙間に見たこともないくらい星が浮かんでいた。それだけならよかったのだが、畏怖を感じる巨大な光輪も浮かんでいて嫌でも目に入る。
ここは第一特異点。偽りのジャンヌ・ダルクを生み出した狂ったキャスター、ジル・ド・レェが首魁のエリア。彼らは私の知識通りに本当にいるのだろうか。居たとして倒せるのだろうか。
重圧すら感じる静かな夜に、私の疑問に答える相手は誰もいなかった。
翌朝、私たちは田舎道を歩いていた。
今日も立香くんをラムレイに乗せようと思ったがやんわりと断られたし、アーチャーとの会話もあって断念した。乗った方が疲れると言われては諦めるしかない。マスターや仲間が歩いているのに私だけ乗馬するというわけにもいかず、私も一緒に歩いていた。
トコトコ平和に歩き、今日も何もなかったら困るなと心配していたが、残念ながら杞憂に終わる。残念といった理由は明確だ。
一番早く異変に気付いたアーチャーが報告してくれた。
「前方で何か争っているな。あれは……竜……か? 小型だが多数の飛竜が人間を襲っている。軍のようにも見えるが、武装していない人間も多くいるな」
聞いた全員に緊張が走る。丁度聞いていたのかDr.ロマンの声が続いた。
『その時代のフランスに、小型でも飛竜なんてモノがいるはずがない。絶対に人理焼却に関わる何かだ』
状況がわかったところで、サーヴァントの視線が立香くんに集まる。
「助けよう」
全員の視線を真っ直ぐ受けて、彼は迷いなく頷き言い切った。さすが我らがマスター。誰かの為なら勝てない相手でも、躊躇するが挑む人物。その選択に否はない。
細かい指示をと、次の言葉を待っていたがなかなか立香くんは喋らなかった。そこでふと理由に思い当たる。カルデアで戦闘訓練をしていない私とアーチャーの能力を、彼は把握していないのか。
レフ教授のやってくれたことの皺寄せが、こんなところにまで出るなんて。マスターとして敬意と期待があって待っていたが、人が襲われていると聞いて焦っていたのもあり、この場限りは私が指示を出すことにした。
「私が先行して彼らを助けます。マスターは後詰を。マシュはマスターの守りを。アーチャーもマスターの守りを。それと他に敵がいないか周囲の警戒と、可能ならば援護をお願いします」
リーダーの前に盾キャラを置き、遠距離からチクチクして、近接キャラを突っ込ませる。ゲームでありがちな構成だが間違ってはいないはずだ。アーチャーにだけ注文が多いが、彼なら問題ないでしょう。
言ってすぐに私は走り出した。走りながらラムレイを呼ぶと影の中から現れた。並走するラムレイの揺れる手綱に手をかけ、勢いを殺さずに背に飛び乗った。
私が見も知らぬ人たちを助けたいと思うのは、正義感でも英雄思考でもない。例えば誰だって前を歩く人がハンカチでも落としたら、拾って落としましたよと声をかけるだろう。
自分に助けられる力があるのなら助けたい。そんな誰もが当たり前に思う気持ちにすぎない。
元の自分なら助けにはいけないが、今の我が身はサーヴァント。それもアルトリア・ペンドラゴン・オルタ。ならば竜に襲われる人を助けるのは当然の行動。
アーチャーにしか確認できないような距離を走破するため、ラムレイは私の意思に従って突き進む。黒い魔力を吹き出し、ただの獣にはありえぬ速さで大地を駆ける。
まさにあっという間に視認できる距離まで進み、戦う為に槍を実体化させ右手に持った。ラムレイと同様に私も魔力を滾らせ、全力の戦闘態勢に移行する。
全力を意識したのは怖いからだ。助けたいけど戦うのはやはり怖い。だから気負って我が身に宿る力の威を借り、恐怖を忘れるためだった。
ほどなく、飛竜と人が争う場に辿り着く。
鎧に身を包んだ兵士だけじゃなく、武器を持たぬ民間人っぽい人も多数いた。列をなす数台の荷馬車を守っているようだったが、すでに犠牲者は多く出ているようだ。
「その人を離しなさい!」
惨状を目にして、急いで手近に居た竜に襲われている人を助けようと大声を上げた。それから槍を振り上げ、目前の飛竜に突き刺そうとしたのだが。
刺す前にバサリバサリと飛竜は上空に飛び上がった。それだけならば良かったのだが、襲われていた兵士が大声で叫んだ内容が捨て置けない。
「りゅ、竜の魔女だ! 血の気のない肌に黒い化け物馬に乗っている! 間違いない、竜の魔女だぁぁ!」
錯乱したかのように大声で叫び散らし逃げ走っていった。思わず呆気にとられてしまう。竜の魔女とは、この特異点の黒幕の一人、ジャンヌ・ダルク・オルタのはずだ。そこまでは冷静に考えられたが、周りの状況がそれ以上の思考を許してくれなかった。
「魔女だ! 魔女が直接俺たちを殺しに来たんだ!」
「助け、助けて、あぁぁあ」
「ひぃぃぃぁぁぁああ」
言葉を話すならまだましで、私を見て絶叫する人が多数いた。予想外の事態だったが、私にしては頑張ったと思う。混乱しながらも竜に襲われている民間人っぽい人を助けようと、襲っている飛竜に向かって行ったのだから。
だがそれが決定的にまずかった。
「やめなさい!」
私が一喝すると飛竜は襲うのをやめて離れたのだ。それだけじゃなく、人々を襲っていた飛竜が私の周りに集まりだした。私を襲うそぶりを見せず顔を人間に向け牙見せ敵意を表したまま、まるで『私を守るように』だ。
戦意ある兵士たちは、飛竜に向けるのと同じかそれ以上の敵意を私に向け始めた。乱戦となっていた戦場は、私の周囲に集まる飛竜と、対面に並ぶ兵士の構図へと変化する。
今残る兵士と飛竜たちが戦っても人側に勝ち目がない。直感的にそう思った。対面する彼ら自身そう感じていそうだ。彼らの顔には悲壮感が漂っていた。
私は助けに来たのに敵意を向けられる状況に動けずにいた。
二つに分かれた勢力。人と飛竜。睨み合ったまま、低く轟く竜の呼吸音が徐々に荒くなり、今まさに両者がぶつかりそうなところで、はっきりとよく通る女性の声が戦場に響いた。
「ここは私が抑えます! あなたたちは急いで近くの森へ。木々が密集した場所なら飛竜の機動力は使えません!」
兵士たちの背後から一足飛びで彼らを飛び越え、金髪の女性が飛竜の群れに立ち塞がった。たった一人の援軍。普通なら意味をなさないはずだ。だが彼女のあまりにも泰然とした姿は兵士たちに希望を抱かせた。
彼女を見て兵士たちからは悲壮感がほとんどなくなり、目を見開き喜びの声を上げるものさえいた。
「そんな、あなたが、そんな……」
「我々を、あなたが我々を助けてくださると……」
一部の兵士は信じられないものを見る目ではあったが、それでも彼らは活力が戻ったようだ。彼女の指示に従い森に向かい逃げ始めた。
飛竜の前に整然と立つ彼女の背には、共に戦おうと決死の覚悟を決めたであろう兵士たちが残っていた。たった一人で竜の集団に挑む彼女を見捨てぬように。それがわかっているのか、彼女はさらに言葉を重ねた。
「祖国のために戦う同胞たちよ。ここで命を散らしてはなりません、さぁおいきなさい!」
手に持つ戦旗を大地に突き、旗を風に靡かせて残った兵士たちに号令をかける。彼女の不退転の決意を見た兵士たちは、躊躇しつつも遅れて森へと走っていった。
けれど竜たちも黙っていない。彼女の発する圧力に気圧されていたようだが、残った人間は逃がすまいと数匹が襲い掛かる。
「させません!」
言わずもがな、竜たちの牙は兵士たちに届かなかった。女性は戦旗を槍のごとく使い、瞬く間に命を絶つ。それからそのままの勢いで竜の集団へと駆け込んで、襲い来る竜を物ともせずに中心へと向かってきた。即ち、私へと。
跳躍し、私目がけて戦旗を振り下ろしてくる金髪の女性。
咄嗟に槍で受けたが、彼女は戦旗に体重を乗せ鍔迫り合う槍ごと私を叩き潰さんとした。槍を横振りし、それを力で無理やり吹き飛ばす。
飛ばされた彼女は空中でくるりと回り、綺麗に地面へと着地した。
たった一合で疲弊した私と違い平然としている彼女は、戦旗の穂先をこちらに真っ直ぐ向けた。そればかりか、射殺さんばかりの目で私を見やり、こう告げた。
「ようやく見つけました。竜の魔女! 祖国フランスを破壊し尽くさんとするあなたは、ここで討ちます! さぁ、覚悟なさい!」
ポール・バニヤンが良い子で可愛かった~!
そして2017年水着イベントで最も気になるのが……!
礼装のアストルフォ君、女性用水着を着てませんか?
教えて偉い人\(◎o◎)/
今回のお話、ちょっと文章量が多すぎた気がします。
この文字数だと毎日更新は無理でした。げふ。
それと誤字脱字報告をして下さった方々。
大変助かっておりますので、この場にてお礼申し上げます。
m(__)mありがとうございます。
SS書いてるとわかると思いますが、こっそり誤字脱字教えてくれると凄いありがたいのです。