―九鬼財閥極東本部―
世界をまたにかける九鬼財閥、その極東本部の一室。そこに集うは川神の実力者たち。
「先ずは、この若輩者の呼びかけに応じて下さった事を感謝致します」
前口上を述べるのは一人の青年。
名を
「前口上は要らん、本題に入れ、赤子」
ヒューム・ヘルシング。九鬼家従者部隊零番。世界最強・・・・を争う老人。気性はかなり荒いが実力は確かなものだ。
「黙らんかヒューム、そのヒゲ引っこ抜くぞ」
東堂義政。白城組の幹部であり元九鬼家従者部隊七番。ヒュームと互角に張り合える実力者、どういう心境の変化で九鬼から白城組に来たか、いつかは聞いてみたいものである。
「ふぉっふぉっふぉっ、ヒュームも義政も血気盛んじゃのぉ」
川神鉄心。ヒューム、義政と共に武道家の時代を築き上げてきた実力者、武の総本山川神院の総代。
「全くです、少しは落ち着いて下さいヒューム」
クラウディオ・ネエロ。九鬼家従者部隊三番であり完璧執事と呼び称される執事の鑑。ヒュームに対して説教などをしたり出来るのも世界広しと言えど彼ぐらいなものだろう。
「そうですヨ、総代」
「ってかよ、何で俺まで呼ばれてんだ?」
ルー・イー、釈迦堂刑部。川神院の師範代と元師範代、互の実力は五分五分であり良きライバルといった感じの二人。
「釈迦堂さんは裏に顔が効きますんで呼ばせてもらいました」
そう言えば、改めて間を開けて。
「今回集まってもらったのは他でもありません、川神市内で最近出回り始めたドラッグについてです」
その言葉に、先ほどまでの弛緩していた空気が嘘のように張り詰める。
「これまでのドラッグとは違い興奮剤、とかそういう役割よりも攻撃衝動を強める働きがあるようなんですがね・・・・今のところウチでも取り締まってはいますが如何せん手が伸びきらないんです、そこで・・・・」
「成程、九鬼と川神院に協力を仰ぐ、と言う訳か」
ヒュームの言葉に、ゆっくりと肯く。
「何分、数年前の事でこっちもまとまりはしましたが実力のある連中が多く亡くなっています。力不足であることは否めないが故に助力を請いたく」
スっ、と床に両膝を付け、いわば土下座の体勢で頭を下げる。
「何卒」
その両肩を、ヒュームと鉄心がポン、と叩く。
「白城晴明、貴様は想像以上の赤子なようだな」
「あの白城京介の息子、どの程度とは思ったが想像以上じゃったの」
?と頭に疑問符を浮かべっぱなしな晴明。
「クラウディオ」
「ええ、既に戴宗(現従者部隊七番)に連絡しました、選抜部隊が裏に手をまわしております」
「こちらも川神院の僧たちに見回りを命じましタ」
「うむ」
「しゃあねぇなぁ・・・・ああ、竜平か、俺だ俺・・・・誰がオレオレ詐欺だ、ちょっと頼みがあってよぉ」
既に釈迦堂すら自らの出来る範囲内での動きを見せている。
「お主の気持ちは受け取ったぞ」
「赤子、では失礼だな。青二才と呼んでやろう」
「あのヒュームが人を褒めるとは、長生きするものですね」
「私も少々、驚いてますけどネ」
「俺もビックリだわ、いやマジで」
ヒラヒラと手を振りながら、晴明と義政を除く全員がこの場から足早に去っていく。
「えっと・・・・」
あまりの急展開についていけない晴明。
「認められたのですよ、若・・・・共に、川神を護る者として」
「・・・・そうか・・・・」
これは、物語の始まる少し前の、序章・・・・・・・・・・