「……ここ?」
アイランが進んで行くままについていった先、町の大路を歩いている時からもしかして、と思っていたが、まさかここに来ることになるなんて思ってもいなかった。
「そう、……ごめんね。場所を教えたら逃げられるかと思って、……逃げられるっていうのもおかしいかな?」
なんと言ったらいいのか分からないのだろうか、首をかしげて悩んでいるアイランを横目
に、もう一度建物を見上げる。
どう見てもそこは城だった。
ここは〝都〟と呼ばれるところらしい。アイランが言うには、この城はこの世界をまとめ
る王のいる城らしい。この世界に王は一人しかいないと聞くので、その王の城だろう。
だとしても、こんなところにアイランの知り合いだという人が本当にいるのだろうか。
〝知ったら逃げられる〟
そうアイランは言っていた。
適切な表現の仕方ではなかったようだが、まちがってはいないであろう言い方に、なにか
ひっかかりを感じ、アイランを見上げる。
少しの時間、目が合う。
「……いこっか。」
どちらからともなくそう言って、二人同時に城門をくぐった。
***
真っ正面から入ったので誰かに見つからないかと思っていたが、誰にも会うことなく順調
に城のなかを歩いていく。
「ねえ、アイランはここに入ったことがあるの?」
沈黙に耐えられなくなり、気になっていたことを質問する。
「え?……うん。昔はよくここに来て、知り合いと遊んでいたの。」
「へぇ……じゃあ、みんなアイランのことを知っているの?」
「ええ。でも、三年前からきていないから、その間に入った人には分からないかな?」
「三年前?」
「ええ。三年前。……いろいろあってね、ここにはこなくなっちゃった。」
本当に『いろいろ』あったのだろう。
アイランの顔はどこか違うところをみているようだった。
「……ところで、アイランの言う知り合いって、ここにいる誰のこと?」
これ以上聞いてはいけない。
なぜかそんな気がして、話を変える。
「ん?……もう少しで分かるから、楽しみにしていて」
いつの間にか、花が咲き乱れる庭は終わり、城の扉が目の前に現れていた。
だが、扉は堅く閉ざされていて、とても開きそうにない。
「……どうするの?アイラン」
アイランは、こちらをみてから、扉の前を素通りし、その脇に設置されている電話らしきものをとった。
電話……なのだろうか?
無線機のような電話のような不思議な機械を持ち、どこかにかけた。
どうやらあれはインターフォンのようなものらしい。
何秒間かたった後、誰か――使用人だろうか――の声が聞こえてきた。
「はい。どちら様でしょうか。」
「すいませんが、この扉を開けてもらえないかしら?」
「……すいません。それにはお答えしかねます。」
「……ごめんなさい。なら、影華(えいか)さんをだしてくれないかしら。影華さん、いらっしゃる?」
「は……はい、影華さまならいらっしゃいますが……」
「なら、替わってもらえない?」
知らない言葉が飛び交っていて、おいて行かれた感がある……。
分かったことといえば、この電話に出た人がこの三年の間に来た人だということだ。
アイランのことを知らないようだし、なによりアイランが知らない人のようだからだ。
「ねぇ、アイラン。かげか……さんってだれ?」
聞いたところアイランが知っている人みたいだが……
「影華さんはね、わたしが子供の頃からお世話になっている人の一人なの。」
と、そこで影華さんであろう声が聞こえてきた。
「はい。かわりました。」
「お久しぶりです。影華さん。」
「」
「……影華さん?」
「お久しぶりです。話は……」
「中でしましょうか、……開けてくださる?」
「はい、もちろんです」
そんな会話が聞こえたと思ったら、扉が重厚な音をたてて開いた。
なにが起きたのか分からないまま突っ立っている私をみて、
「いきましょうか」
そういって、アイランは扉のなかへとはいっていった。
きりいいところで終わったら少なめになってしまった……
不定期更新はこれからも続きますが、どうぞよろしくお願い致します。