ロクでなし魔術講師と白き大罪の魔術師   作:灰ノ愚者

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皆さまお久しぶりです‼︎


11月20日のロクでなし魔術講師【最新巻】の
発売を記念して早めに投稿させて頂きました。
お話はかなりのボリューミーにたくさん書かせて
頂きましたので出来れば楽しんで読んでもらえたら
嬉しいですね‼︎



後、『他の作品』も読んでもらえると嬉しいです‼︎


後、【お気に入り】や【投票】、【しおり】
更には『意見』や『感想』などありましたら
是非、よろしくお願します‼︎


魔術の真理と動き出す悪意

ルミアと別れた後、ウィルは大きな屋敷の中に

入っていくと

 

 

 

「「「「お帰りなさいませ」」」」

 

 

 

ロビーでは沢山のメイド達がウィルを出迎えて

ウィルが持っていた鞄などの荷物を受け取って

 

 

 

 

「お着替えはお部屋にありますので…」

 

 

 

 

「ありがとうございます…」

 

 

 

ウィルがメイド達に丁寧に挨拶すると

 

 

 

「ようやく帰ってきたわね。ウィル」

 

 

 

 

 

ウィルがロビーの奥の階段の方から声がする方に

視線を向けるとイヴがいた。

 

 

 

 

 

「お父様が貴方の事を探してたわよ。

早くお父様の所に行きなさい……」

 

 

 

 

 

「分かりました。では、今すぐにでも

『イグナイト公爵』のいる部屋に向かいます。

ありがとうございます。イヴ様」

 

 

 

 

 

ウィルがそう言うとイヴはロビーの階段をゆっくり

と降りてウィルに近づいて

 

 

 

 

「ウィル、貴方の宮廷魔道士団特務分室として

そして駒としての最近の任務などの功績はしっかり

聞いたわ。実に素晴らしい。むしろ予想以上だわ。

これからも己が果たすべき任務と責務を忘れずに

勤めなさい」

 

 

 

イヴが右手をウィルの肩に乗せて満足そうな

表情で言うがその表情は一瞬にして消える。

 

 

 

「イヴ様……」

 

 

 

「何かしら…?」

 

 

 

 

イヴがウィルにそう言うとウィルは今日、今迄に

感じた事がなかった不思議な感覚に疑問を感じて

ウィルはイヴに思った事を質問する。

 

 

 

 

「『グレン……グレン=レーダス』っていう

人物の名前を知ってますか?」

 

 

 

 

「‼︎ どうしてそんな事を聞くの…?」

 

 

 

 

イヴはグレンの名前を聞いて不安と焦燥感が

止まらなかった。

 

 

 

 

 

何故、今になってかつて自分の元で働いていた

部下で『メルガリウスの魔法使い』に出てくる

『正義の魔法使い』なんて夢物語みたいなに

絵空事に憧れて宮廷魔導師団特務分室に入って

夢みた元同僚であるグレンの名前を?

 

 

 

「今日の非常勤講師の名前が『グレン=レーダス』

って言う名前だったので….それにその名前を聞くと

何故かで聞いた事がある様な…『忘れなさい』」

 

 

 

ウィルが話しているとイヴは途中でウィルの

話しを一瞬にして遮った。

 

 

 

「 今、貴方の違和感は気の所為だから

その記憶の違和感は忘れなさい…良いわね?」

 

 

 

不快だわ。あの男の名前を聞いただけで

実に不愉快だわ……

 

 

イヴがそう言うがウィルはイヴの話しに納得が

いかないと言う表情を浮かべて

 

 

 

「しかし…「しかしも何も無いわよ‼︎

貴方は余計な事を考えずにただ私の指示に

従って任務を遂行をしていれば良いのよ‼︎」

 

 

 

イライラした表情で自分の指の爪をガリガリと

噛んでヒステリックに叫びながらウィルに

そう言うと

 

 

 

「……分かりました。イヴ様」

 

 

 

イヴの言葉を聞いた後、ウィルは忠実な犬の様に

イヴに頭を下げてそう答えて「失礼します」と

言うとイヴは安心した表情をして

 

 

 

(まさか……あのアルザーノ学院にグレンがいる

なんてね……今のウィルの反応を見るからに

まだ気づいていないみたいだけど…『セラ』を

失ってどこまで行っても貴方は私の前に立って

『正義の魔法使い』であり続けるのね……グレン)

 

 

 

イヴはグレンやセラ、そしてウィル事、ノアの事を

思い出し更には特務分室の執行官の《正義》事、

ジャティス=ロファンが起こしたエンジェルダスト

事件について考えていた。その表情はまるで何かを

後悔しているような表情だった。

 

 

「……私、馬鹿みたいじゃない…」

 

 

 

イヴは誰もいない部屋でそう呟いてその場を

後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…どこ…?」

 

 

 

ウィルは辺りを見回す。だが、いくら周りを確認

してもあるのは真っ白な部屋の空間だけだった。

 

 

 

すると

 

 

 

 

 

「素晴らしい‼︎」

 

 

 

ウィルの背後から声が聞こえて振り返ると

『白衣を着た老人達』がまるで子供の様に

声を出していた。

 

 

 

「これは…なんなんだ…あ、頭が痛い……」

 

 

 

頭を抑えながらウィルも驚いていた。何故なら、

ぼやけていたせいで見えなかったが『白い人の影

の姿』が白い椅子に座っていたいたからだ。

 

 

 

「これ程までとは…ッ‼︎」

 

 

 

「もっとこの崇高で名誉な研究を続ければ

素晴らしい結果だけじゃない‼︎ 最強の兵器として

世界の覇権すら握る事だって夢じゃない‼︎」

 

 

 

「彼は『裁く者』として…いや、それどころか

『白き聖杯』があれば『我らが理想の神』を

作る事すら出来る可能性だって‼︎」

 

 

 

白衣を着た研究者達は邪悪な笑みを浮かべながら

座っていた白い人影を見て怪しい薬が入っていた。

 

 

 

注射器などの道具を手に持って右腕に注入される

途中でと白い人影はこちらを見てゆっくりとした

口調だが何かを伝えようと口を動かしていた。

 

 

 

「…■■■■■■■…■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■…」

 

 

 

 

(えっ…? 何を言っているの……?)

 

 

ウィルは頭痛を我慢しながら理解出来ないといった

表情を浮かべていると科学者達は白い人影に薬を

注射器でゆっくりと注入するとウィルの意識が

少しずつ途切れていき瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‼︎ 今のは一体……?夢?」

 

 

ウィルがそう言うと更に頭の痛みが増していた。

 

 

 

「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼︎

イタイイタイイタイいたいイタいいたイ‼︎」

 

 

 

 

先程の真っ白な世界の記憶のせいだろか頭痛の

せいで正常な判断が出来ず更には右手で胸を

押さえて「はあ、はあ…」と荒くなっていた

必死に呼吸を整えようとする。

 

 

 

(どうして…こんなに痛いの……?)

 

 

 

ウィルは感じた事のない頭痛に苦しみながらも

必死になって近くにあった頭痛の薬を飲んで

なんとか抑える事が出来た。

 

 

 

だが、ウィルの右手は震えていた。

それは自分が感じた事のない未知の感覚で

更にはどうすれば良いのかすら分からなかった。

 

 

 

『何故なら、誰も教えてくれなかったから……』

 

 

 

「誰か、助けて………」

 

 

 

ウィルは誰もいなくて誰も聞いているはずのない

暗い部屋の中で無意識のうちに小声で呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、授業の予鈴前。

 

 

隣で熱心に授業の予習を行うルミアを尻目に、

システィーナは窓の外、フェジテの空に浮かぶ

『メルガリウスの天空城』を頬杖つきながら、

ぼんやりと 眺めていた。

 

 

フェジテを象徴する空の城。どうしてそこに

あるのか。いつからそこにあったのか。

誰も知り得ない謎と不思議に満ちた幻の城。

授業開始前に余裕があれば、それを遠望し、

その神秘に思いを馳せるのがシスティーナの

密かな日課だった。

 

 

……。

 

…………。

 

 

『ごらん、わしの可愛いシスティーナ。

あれがメルガリウスの天空城だよ』

 

 

昨日、無神経な講師に偉大なる祖父を間接的に

侮辱されたからだろうか。

 

 

ふと、システィーナの脳裏に懐かしい祖父の言葉

が思い浮かんだ。

 

 

 

『どうじゃ? 綺麗じゃろう? あの城は気が

遠くなるほど昔から、フェジテの空にあのように

浮かんでいたのだよ。そう、何百年も……何千年

も……ずっと、ずっと長い間……』

 

 

 

天空の城を語る祖父の目はいつだって、

きらきらと輝いていたのを覚えている。

 

 

『ははは、皆がわしのことを、偉大な功績を

残した魔術師だのなんだのと煽てるが……実は

なんてことはない。わしが魔術を極めんとした

理由はな……そう、たった一歩だけ、あの城に足を

踏み入れたかった。あの荘厳なる全容を間近で

一目だけ見てみたかった。何千年もの間、誰にも

解けなかった空の城の謎を解き明かしたかった。

それだけなのだよ』

 

 

その顔は幾ら歳を経て貫禄を得ても、

まるで夢見る少年のようで――

 

 

『なにしろ、あの城は遥か太古に滅んでしまった

魔法文明の残滓とも、母なる神がお創りたもうた

神の御座とも、言われておる。伝説によれば、

この世界の全ての叡智が眠っているとも。

もし、それが真実ならば、一体誰が作ったのか、

なぜあそこに存在しているのか……わしの頭上

にはいつだってこの世で極上の不思議があった

のだよ。思うだけで胸躍るこの浪漫……

一魔術師として、この謎、挑んでみたくない

わけなかろうて』

 

 

システィーナは天空城に関する祖父の考察や

仮説、研究成果を聞くのが大好きだった。

 

 

だが……晩年、足腰が弱り、身体の調子の

良くなかった祖父は、この話をする時、

少しだけ寂しそうだった。

 

 

足を踏み入れてみたかった、一目だけ見て

みたかった。語られる夢はみんな過去形で。

実体の無い、ただそこに見えるだけのまやかし

の城。

 

 

魔術で空を飛んでそこへ至ろうにも、寄れば

夢幻と消えてしまう蜃気楼の城。それは、

なまじ目の前にある分だけ、とても残酷な夢だ。

恐らく、晩年の祖父は悟っていたのだろう――

もう、自分があの城に至ることはないのだ――と。

 

 

――お爺様は夢を諦めてしまったの?

 

 

いつだったか、システィーナはたまらなくなって、

祖父にそう聞いたことがある。今思えばそれは

とても残酷な質問だったかもしれない。

 

 

『……残念ながら、この世にはままならんことが

多々あるものなのだよ……わしの父も、祖父も、

曾祖父もな、皆、そうだった……あの城に至る

糸口すらつかめずに……な』

 

 

だが、祖父はただ、優しくシスティーナの

頭をなでた。

 

 

『本当に……残念なことじゃ……』

 

 

そう言って。遠く懐かしく、眩い物を見るかの

ように、祖父は再び空の城に目を向ける。天気は

明朗、抜けるような青空に煌々と降り注ぐ陽光、

半透明の城はとてもよく映えた。

 

 

その時。その燦爛たる城と、それを望む祖父の

姿が、システィーナの魂を捕えた。その祖父の

背中が、眼差しが、あまりにも切なかったから――

その空に浮かぶ幻影の城の姿があまりにも眩く、

綺麗だったから――だから、その日、その時から、

祖父の夢はシスティーナの夢になったのだ。

 

 

――だったら、私がやる――

 

 

――私が、お爺様以上に立派な魔術師になって――

 

 

――私が、お爺様の代わりに

『メルガリウスの天空城』の謎を解いてみせるわ――

 

 

 

…………。

 

……。

 

 

 

 

「おい、白猫」

 

 

 

頭上から突然、ぶっきらぼうな言葉が降って来る。

システィーナの背中がびくりと震え、その意識が

現実に立ち返る。目を向けずともわかる。

 

 

いつのまにか自分のかたわらに立っている

その男は、あの憎き非常勤講師と転校生だ。

 

 

「おい、聞いてんのか、白猫。返事しろ」

 

 

「先生、多分頭を撫でたり顎をゴロゴロを

してあげないと多分反応しませんよ?」

 

 

「し、白猫? 白猫って私のこと……?

な、何よ、それ⁉︎」

 

 

がたん、とシスティーナは肩を怒らせて

席を立ち、グレンとウィルをにらみつけた。

 

 

 

「人を動物扱いして頭を撫でないで下さい⁉︎

私にはシスティーナっていう名前が――」

 

 

 

 

「先生が余計な事を言うからですよ?」

 

 

 

 

「うるさい、話を聞け。昨日のことでお前に

一言、言いたいことがある」

 

 

 

「な、何よ⁉︎ 昨日の続き⁉︎」

 

 

システィーナは身構え、敵意に満ちた視線を

グレンとウィルに送った。

 

 

「そこまでして私を論破したいの⁉︎

魔術が下らないものだって決めつけたいの⁉︎

だったら私は――」

 

 

弁舌はグレンやウィル達の方が上手だ。口論に

なれば勝てないだろう。だが、それでも、退く

わけにはいかない。自分は祖父の夢を背負っている

のだ。システィーナは無様をさらすことになろう

とも徹底抗戦の決意を固めて――

 

 

「……昨日は、すまんかった」

 

 

「え?」

 

 

そして、最も予想だにしてなかった言葉に、

システィーナは硬直した。

 

 

「まぁ、その、なんだ……大事な物は人それぞれ

……だよな? 俺は魔術が大嫌いだが……その、

お前のことをどうこう言うのは、筋が違うっつー

か、やり過ぎっつーか、大人げねえっつーか、

その……まぁ、ええと、結局、なんだ、あれだ、

……悪かった」

 

 

グレンは気まずそうなしかめっ面で、目を

そらしながら、しどろもどろと謝罪のような

言葉をつぶやき、ほんのわずかな角度だけ頭を

下げた。

 

 

ひょっとして、それは謝っているつもり

なのだろうか?

 

 

「…………はぁ?」

 

 

「本当に素直じゃないですね。グレン先生は」

 

 

「う、うるせぇ‼︎」

 

 

グレンとウィルが話しをしている中、二人の真意

を量りかねて戸惑うシスティーナの前で、話は

これで終わりだと言わんばかりにグレンは踵を

返し、教壇の方へと向かっていく。そもそも、

グレンは何しにここにやってきたのだろうか。

まだ授業開始時間前だ。グレンが遅刻せずに

教室にやってくるなんて……何かおかしい。

 

 

「なんだよ……? 何が起きてるんだよ……?」

 

 

「なぁ、カイ? ありゃ一体、

どういう風の吹き回しなんだ?」

 

 

「お、俺が知るかよ……」

 

 

それはクラスの生徒達も同様で、あのグレンが

授業開始前に教室に姿を現したことに困惑を

隠せないようだった。

 

 

 

「その……僕も、昨日は……言い過ぎた……

ご、ごめんなさい……」

 

 

「は、はぁ………」

 

 

 

ウィルも昨日の会話の事でルミアにアドバイス

を貰っていたがあまり慣れておらず小声で

システィーナに謝るとシスティーナはウィルが

謝ろうとしてる事だけは分かった。

 

 

 

「おいおい、ウィル君。テメェも随分と

恥ずかしそうにしてまるで乙女みたいに随分と

顔を赤く染めて素直じゃねーじゃん?」

 

 

 

「せ、先生には言われたくありません‼︎

今すぐ乙女みたいだっていう言葉を撤回して

下さい‼︎」

 

 

「へーんだ‼︎ 本当のことだから撤回する必要

ないだろうが‼︎」

 

 

グレンとウィルがキャンキャンと言い合ってる中、

システィーナはどういうつもり? と言わんばかり

の露骨な敵意に満ちた視線をグレンとウィルに

送った。だが、当のグレンは腕組みをして黒板に

背を預けて眼を閉じ、自身に集まるクラス中の

猜疑の視線に完全無視を決め込んで更にウィルは

ルミアに手を引かれて隣の席に座っていた。

やがて予鈴が鳴る。

 

 

どうせ遅刻せずには来たけど立ったまま

寝ているんだろ、との大方の予想を見事に

裏切ってグレンは目を開き、教壇に立った。

 

 

そして信じられないことを言った。

 

 

「じゃ、授業を始める」

 

 

どよめきがうねりとなって教室中を支配した。

誰もが顔を見合わせる。

 

 

「さて……と。これが呪文学の教科書……

だったっけ?」

 

 

グレンが教科書を開いてぱらぱらとページを

めくっていく。めくるごとにその顔が苦い物に

なっていく。やがて、グレンは露骨にため息を

ついて教科書を閉じた。

 

 

何事かと構える生徒達の前で、グレンは窓際へと

ずかずか歩み寄り、窓を開き……

 

 

「そぉい!」

 

 

窓の外へとその教科書を投げ捨てていた。

 

 

そしてクラスの全員はそんなグレンの姿を

目にして呆れていた。ああ、やっぱりいつもの

グレンだ。もうすっかり見慣れたグレンの奇行に、

生徒達は失望のため息と共に各々自分の好きな

教科書を開いた。今日も自習の時間が始まるのだ。

 

 

だが。

 

 

 

「さて、授業を始める前にお前らに一言

言っておくことがある」

 

 

 

再び教壇に立ったグレンは一呼吸置いて――

 

 

 

「お前らって本当に馬鹿だよな」

 

 

 

なんかとんでもない暴言を吐いた。

 

 

 

今、まさに羽ペンを手に教科書を開き、

魔術式の書き取りを行おうとしていた

生徒達が硬直する。

 

 

「【ショック・ボルト】程度の一節詠唱も

できない三流魔術師に言われたくないね」

 

 

誰が言ったか。しん、と教室が静まり返る。

そして、あちらこちらからクスクスと

押し殺すような侮蔑の笑いが上がった。

 

 

「ま、正直、それを言われると耳が痛い」

 

 

「って言うか、先生がそうやって子供みたいに

もったいぶってアホな事をするからみんなに馬鹿

にされるんですよ?」

 

 

ウィルに正論を言われるとふて腐れたように

グレンは慌ててそっぽを向きながら小指で

ホジホジと耳をほじる。

 

 

「ぐっ‼︎ た、確かに……残念ながら、俺は男に

生まれたわりには魔力操作の感覚と、後、

略式詠唱のセンスが致命的なまでになくてね。

学生時代は大分苦労したぜ。だがな……誰か

知らんが今、【ショック・ボルト】『程度』とか

言った奴。残念ながらお前やっぱ馬鹿だわ。

ははっ、自分で証明してやんの」

 

 

 

教室中に、あっと言う間に苛立ちが

蔓延していく。

 

 

 

「まぁ、いい。じゃ、今日はその件の

【ショック・ボルト】の呪文について話そうか。

お前らのレベルならこれでちょうど良いだろ」

 

 

あまりにもひどい侮辱にクラスが騒然となった。

 

 

「今さら、【ショック・ボルト】なんて初等魔術

を説明されても……」

 

 

「やれやれ、僕達は【ショック・ボルト】なんて

とっくの昔に極めているんですが?」

 

 

「はいはーい、これが、黒魔【ショック・ボルト】

の呪文書でーす。ご覧下さい、なんか思春期の

恥ずかしい詩みたいな文章や、数式や幾何学図形が

ルーン語でみっしり書いてありますねー、

これ魔術式って言います」

 

 

 

生徒達の不平不満を完全無視してグレンは本を

掲げて話し始めた。

 

 

「お前ら、コイツの一節詠唱ができるくらい

だから、基礎的な魔力操作や発声術、呼吸法、

マナ・バイオリズム調節に精神制御、記憶術……

魔術の基本技能は一通りできると前提するぞ? 

魔力容量(キャパシティ)意識容量(メモリ)も魔術師として問題ない水準にあると仮定する。てなわけで、この術式を完璧に

暗記して、そして設定された呪文を唱えれば、

あら不思議。魔術が発動しちゃいまーす。

これが、あれです。俗に言う『呪文を覚えた』

っていう奴でーす」

 

 

 

そして、グレンは壁を向いて左指を指し、

呪文を唱えた。

 

 

 

《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》

 

 

 

グレンの指先から紫電が迸り、壁を叩いた。

相変わらずの三節詠唱に軽蔑の視線が集まるが、

グレンは気にする素振りを見せない。たった今、

自分が唱えた呪文を ルーン語で黒板にスラスラ

と書き表していく。

 

 

 

「さて、これが【ショック・ボルト】の基本的な

詠唱呪文だ。魔力を操るセンスに長けた奴なら

《雷精の紫電よ》の一節でも詠唱可能なのは……

まぁ、ご存知の通り。じゃ、問題な」

 

 

 

グレンはチョークで黒板に書いた呪文の節を

切った。

 

 

 

 

《雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ》

 

 

 

 

すると三節の呪文が四節になった。

 

 

 

「さて、これを唱えると何が起こる?

当ててみな」

 

 

 

クラス中が沈黙する。

 

 

 

何が起こるかわからないというより、

なぜそんなことを聞くのかという困惑の沈黙だ。

そんな中、ウィルだけがグレンの問題の内容を 

理解していた。 

 

 

 

 

 

 

「詠唱条件は……そうだな。

速度二十四、音程三階半、テンション五十、

マナ・バイオリズムはニュートラル状態……

まぁ、最も基本的な唱え方で勘弁してやるか。

さ、誰かわかる奴は?」

 

 

 

沈黙が教室を続いて支配していた。答えられる者

は誰一人いなかった。

 

 

 

優等生で知られるシスティーナすら、額に脂汗を

浮かべて悔しそうに押し黙っている。

 

 

 

「これはひどい。まさか全滅か?」

 

 

 

「そんなこと言ったって、そんな所で節を

区切った呪文なんてあるはずありませんわ!」

 

 

 

クラスの生徒の一人、ツインテールの少女――

ウェンディがたまらず声を張り上げ、机を叩いて

立ち上がる。

 

 

 

「ぎゃ――はははははッ⁉︎ ちょ、お前、

マジで言ってんのかははははははっ!」

 

 

 

返ってきたのは下品極まりない嘲笑だった。

 

 

 

 

「その呪文はマトモに起動しませんよ。

必ずなんらかの形で失敗しますね」

 

 

 

クラスではシスティーナに次ぐ成績を持つ

男子生徒――ギイブルが立ち上がり、

眼鏡を押し上げながら負けじと応戦する。

 

 

 

「必ずなんらかの形で失敗します、だってよ⁉︎

ぷぎゃ――ははははははははっ!」

 

 

 

「な――」

 

 

 

「あのなぁ、あえて完成された呪文を違えて

んだから失敗するのは当たり前だろ⁉︎

俺が聞いてんのは、その失敗がどういう形で

現れるのかって話だよ?」

 

 

 

打ちひしがれたようにうつむくギイブルを

尻目に、

 

 

 

「何が起きるかなんてわかるわけありませんわ! 

結果はランダムです!」

 

 

 

ウェンディはさらに負けじと吠え立てるが――

 

 

 

「ラ ン ダ ム⁉︎ お、お前、このクソ簡単

な術式捕まえて、ここまで詳細な条件を

与えられておいて、ランダム⁉︎ お前らこの術、

極めたんじゃないの⁉︎ 俺の腹の皮をよじり殺す

気かぎゃははははははははははっ! 

やめて苦しい助けてママ!」

 

 

 

ひたすらグレンは人を小馬鹿にするように

大笑いし続ける。この時点でクラスの苛立ちは

最高潮に達していた。

 

 

 

「さてと、次は…ウィル。この問題を解いてみろ」

 

 

「え? えーと……これは…グレン先生……

この【ショック・ボルト】の改変の問題の答えを

言えば良いんですか?」

 

 

 

「おう、そうだ。この【ショック・ボルト】の

四節の答えられるだろ?」

 

 

 

 

グレンは悪役みたいなゲスい表情をしながら

ウィルを煽る様にそう言うと

 

 

 

 

「無理に決まっているぜ……」

 

 

 

「全く、これだから階級の低い低級の第三階梯(トレデ)

の三流魔術師は困りますわ……」

 

 

 

 

「こんな出鱈目な詠唱の問題がある筈がないし、

解ける筈がない」

 

 

 

 

カッシュ、ウェンディ、そしてギイブルなどの

生徒達がヒソヒソとグレンの愚痴を話していると

ウィルはつまらなそうに教科書をペラペラと

めくってそして教科書を閉じて席を立つと

 

 

 

 

 

 

「ふむ、分かりました……答えは……右に曲がる

ですか?」

 

 

 

 

「「「「え?」」 」」

 

 

 

(えっ? どうしてクラスのみんなはこんな簡単な

答えに驚いているんだろう?)

 

 

 

ウィルが能面の様に平然とした表情して答えると

クラスの全員はすっとぼけた声を出していてウィル

はクラスのみんなの反応に頭を傾げていた。

どうやらこの展開はグレン以外、誰も予想は

出来なかったみたいだった。

 

 

「? グレン先生これでいいんですか?

それともどこか間違っていますか?」

 

 

「あぁ、正解だ。じゃあ、今から手本で

呪文を四節にして唱えますね〜」

 

 

グレンは四節になった呪文を唱えるとウィルは

元の席に座っていた。そしてグレンの宣言通り、

狙った場所へ直進するはずの力線は大きく弧を

描くように右に曲がって壁へと着弾した。

 

 

 

「さらにだな……」

 

 

 

《雷・精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ》

 

 

 

さらにチョークで節を切る。

 

 

 

「加えて射程が三分の一くらいになるかな」

 

 

 

これも宣言通りになった。

 

 

「で、こんなことをすると……」

 

 

 

《雷精よ・紫電  以て・撃ち倒せ》

 

 

今度は節を元に戻し、呪文の一部を消す。

 

 

 

「出力が物凄く落ちる」

 

 

 

グレンはいきなり生徒の一人に向けて呪文を

撃った。だが、撃たれた生徒は何も感じなかった

ようで目を白黒させる。

 

 

 

「ま、極めたっつーなら、これくらいは

できねーとな?」

 

 

 

(なるほど……流石はセリカ=アルフォネアが

押すだけの人物ではある……)

 

 

 

ウィルは指先でチョークをくるくる回転させ、

見事なまでのどや顔のグレンを見ていた。

 

 

腹立たしいことこの上ないが、クラスの誰も

何も言い返せない。このグレンという三流

魔術師には術式や呪文について、自分達には

見えていない何かが確かに見えているからだ。

 

 

 

(しかし…この程度も理解出来ずに初歩の

凡庸魔術の【ショック・ボルト】を極めた

と言うとは……)

 

 

ウィルが黙ってしまったシスティ達を見て

そう思う中、グレンはシスティ達に更に話し

を続ける。

 

 

「そもそもさ。お前ら、なんでこんな意味不明な

本を覚えて、変な言葉を口にしただけで不思議

現象が起こるかわかってんの? だって常識で

考えておかしいだろ?」

 

 

「そ、それは術式が世界の法則に干渉をして――」

 

 

とっさにこぼれたギイブルのそんな発言を、

グレンは即座に拾う。

 

 

「とか言うんだろ? わかってる。

じゃ、魔術式ってなんだ? 式ってのは人が

理解できる、人が作った言葉や数式や記号の羅列

なんだぜ? 魔術式が仮に世界の法則に干渉する

として、なんでそんなものが世界の法則に干渉

できるんだ? おまけになんでそれを覚えないと

いけないんだ? で、魔術式とは一見なんの関係

もない呪文を唱えただけで魔術が起動するのは

なんでだ? おかしいと思ったことはねーのか? 

ま、ねーんだろうな。それがこの世界の当たり前

だからな」

 

 

これはまさにグレンの指摘どおりで、

生徒達の誰もが――システィーナすらも、

そういうものだと勝手に流してしまっていた

ことだった。なにしろ、そんなことを考え

なくても術式と呪文を一生懸命覚えれば使える

魔術はどんどん増えていく。魔術の勉強で浮かぶ

疑問と言えば習得や実践法に関することばかりで、

根本的な理屈に関しては二の次だった。

 

 

そして、習得することそれ自体が楽しくて

誇らしくて、皆、覚えた呪文の数ばかりを

競ってきた。習得した呪文の数が優秀さの証

だった。そういう根本的なことを突き詰めて

考える余裕は生徒達にはなかったのだ。

 

 

「つーわけで、今日、俺はお前らに、

【ショック・ボルト】の呪文を教材にした

術式構造と呪文のド基礎を教えてやるよ。

ま、興味ない奴は寝てな」

 

 

しかし、今この教室内において欠片でも

眠気を抱いている生徒は誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレンはまず魔術の二大法則の一つ

『等価対応の法則』の復習から始めた。

 

 

大宇宙すなわち世界は、小宇宙すなわち人と等価

に対応しているという古典魔術理論である。世界

の変化は人に、人の変化は世界に影響を与える

というものだ。

 

 

「占星術なんてまさに等価対応の賜物だよな。

星の動きを観察して、人の運命を読む。つまり、

世界の影響が人に及ぼす影響を計算する術だ。

魔術ってのはその逆なわけだ」

 

 

では、魔術式とは何か?

それは世界に影響を与えるものではない。

人に影響を与えるものだ。人の深層意識を変革

させ、それに対応する世界法則に結果として

介入する、それが魔術式の正体だ。

 

 

「要するに魔術式ってのは超高度な自己暗示

っつーコトだ。だから、お前らが魔術は世界の

真理を求めて~なんてカッコイイことよく言うけど、

そりゃ間違いだ。魔術は人の心を突き詰める

もんなんだよ」

 

 

つまりルーン語とは最も効率良く、効果的かつ

普遍的に、自己暗示による深層意識変革を

起こせるよう、人間が長い歴史の中で編み出した

暗示特化専用言語に過ぎない。

 

 

「何? たかが言葉ごときに人の深層意識を

変えるほどの力があるのが信じられないだって? 

……ったく、あー言えばこう言う奴らだな

……おい、そこの白猫」

 

 

「だから私は猫じゃありません!

私にはシスティーナって名前が――」

 

 

「……愛している。

実は一目見たときから俺はお前に惚れていた」

 

 

「は? ……な、……な、なななな、

貴方、何を言って――ッ⁉︎」

 

 

「ルミア。どうしてシスティの顔色が

あんなに真っ赤になってるの?」

 

 

「あ、あはは……それはねぇ……」

 

 

グレンの言葉に真っ赤になっているシスティーナ

の今の症状を見てウィルはルミアに質問するが

ルミアはどう答えていいか分からず悩んでると

グレンは平然と更に話しを続ける。

 

 

「はい、注目ー。白猫の顔が真っ赤に

なりましたねー? 見事に言葉ごときが意識に

なんらかの影響を与えましたねー? 比較的理性

による制御のたやすい表層意識ですらこの有様な

わけだから理性のきかない深層意識なんて――

ぐわぁっ⁉︎ ちょ、この馬鹿! 教科書投げんなッ⁉︎」

 

 

「馬鹿はアンタよッ! 

この馬鹿馬鹿馬鹿――ッ!」

 

 

(この状況は非常に興味深い……)

 

 

ウィルが二人の会話や行動を観察して一騒動の後、

顔を真っ赤に腫らしたグレンは術式と呪文の関係

について話し始める。

 

 

「核心を先に言っちまえば、やっぱ文法と公式

みたいなのがあるんだよ。深層意識を自分が望む

形に変革させるためのな」

 

 

そして、グレンは呪文とは深層意識に

覚え込ませた術式を有効にするキーワードと

説明する。このキーワードを唱えることで、

術式が深層意識を変革させる。

 

 

「ま、要は連想ゲームだわな。例えば、そこの

白猫娘と聞けば白髪、と誰もが連想するように

呪文と術式の関係も同じだ。ルーンで呪文を

括ることで相互――痛ぇッ⁉︎ ちょ、頼むから

教科書投げないでぉおぶはぁッ⁉︎」

 

 

(うわぁ…痛そう……)

 

 

ウィルは両手で顔を触りながらグレンを

見るとグレンの顔に、さらに本の痕がつく。

 

 

「要するに、呪文と術式に関する魔術則……

文法の理解と公式の算出方法こそが魔術師に

とっては最重要なわけだ。なのにお前らと来たら、

この部分を平気ですっとばして書き取りだの

翻訳だの、覚えることばっか優先しやがって。

教科書も『細かいことはいいんだよ、とにかく

覚えろ』と言わんばかりの論調だしな」

 

 

 

生徒達も今度こそ、ぐうの音も出ない。

 

 

 

「要するに、だ。呪文や術式を分かりやすく翻訳

して覚えやすくすること、これがお前らの受けて

きた『分かりやすい授業』であり、ガリガリ書き

取りして覚えること、これがお前らの『お勉強』

だったんだろ? もうね、アホかと」

 

 

グレンは肩をすくめて、呆れ返ったように

鼻を鳴らした。

 

 

「で、その問題の魔術文法と魔術公式なんだが……

実は全部理解しようとしたら、寿命が足らん……

いや、怒るな。こればっかりはマジだ。

いや、本当に」

 

 

 

ここまで持ち上げておいてなんだと、

非難めいた視線がグレンに集まる。

 

 

 

「だーかーら、ド基礎を教えるっつったろ? 

これを知らなきゃより上位の文法公式は理解不可能、

なんていう骨子みたいなもんがやっぱあるんだよ。

ま、これから俺が説明することが理解できれば……

んーと」

 

 

少しの間、グレンはこめかみを小突きながら

考え込んで。

 

 

「《まぁ・とにかく・痺れろ》」

 

 

三節のルーンで変な呪文をゆっくり唱えた。

すると、驚くことに【ショック・ボルト】の

魔術が起動した。生徒達は目を丸くした。

 

 

「あら? 威力が思ったより弱いな……

まぁいい…次にウィル、お前もやってみろ?」

 

 

グレンがそう言うとウィルが頭を傾げて

 

 

「は、はぁ……でも、どうして僕なんですか?」

 

 

「そりゃ…お前がここにいる生徒達よりも俺の

言いたい事を理解しているみたいだからなぁ?」

 

 

グレンがニヤニヤしながらそう言うと

ウィルにそう言うとウィルは溜息を出して

 

 

 

《稲妻よ・ビリビリ・流れろ》

 

 

 

ウィルが三節のルーンを唱えるとグレンよりも

威力が凄い【ショック・ボルト】が発動した。

それを見たグレンや生徒達はポカーンとしていた。

 

 

(こいつマジかよ……)

 

 

グレンはウィルを見てそう考えていると

 

 

「先生? グレン先生‼︎」

 

 

 

「お、おう…ど、どうした?」

 

 

ウィルはグレンに声を掛けるとグレンは

ウィルの声に驚いていた。

 

 

「こんな感じでいいんですか?」

 

 

「あ、あぁ……そうだな…こんな風に即興で

この程度の呪文なら改変することくらいは

できるようになるか? まぁ、普通なら

大抵精度落ちるからお勧めしないが」

 

 

 

グレンが説明している中、ウィルは自分の席に

戻って見ると生徒達はここに来て、ようやく

グレンを見る目が変わってくる。

 

 

「流石、グレン先生だね‼︎」

 

 

「そうだね…それにルミア、なんだかとっても

嬉しそうだね?」

 

 

ルミアが嬉しそうにそう言うとウィルは

分からないと言った表情を浮かべていた。

 

 

「だってみんなグレン先生を最初見た時は

あまり関係が良くなかったのに今ではみんなが

仲良くなってくれているからね?」

 

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

そんな嬉しそうなルミアの顔を見てウィルは

理解出来ずに考え込んでいるとグレンが

 

 

「じゃ、これからいよいよ基礎的な文法と公式を

解説すんぞ。ま、興味ない奴は寝てな。正直マジで

退屈な話だから」

 

 

グレンがそう言って魔術の基礎についての

方程式を黒板に書いて更に本格的に授業を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――。

 

 

――同時刻。フェジテの某所にて。

 

 

『計画は順調か?』

 

 

「ええ、順調ですよ?」

 

 

一筋の光も差さぬ真っ暗闇の中、その男は柔和な

笑みを浮かべながら、耳元に当てた半割りの宝石

から響いてきた声の質問に答えた。

 

 

『で? その講師……ヒューイ=ルイセンは

今、どこに?』

 

 

 

「はは、『彼』ですか? 

もちろん『消えました』」

 

 

 

『ふっ、はははっ、そうか『消えた』か』

 

 

 

「……はい。問題は『彼』の後釜に入ってきた方

なのですが」

 

 

『グレン=レーダス、か。講師の補充は想定内

だが、まさかここまで早いとはな。どうもあの

魔女の差し金らしい』

 

 

 

「はは、万事が上手くいくというわけは

ありませんから」

 

 

 

男は肩をすくめて、おどけてみせる。

 

 

「しかし、あのアルフォネア教授が直々に

連れて来た魔術師……大丈夫なのでしょうか?」

 

 

『グレンが我々の計画の障害となるか否かに

ついてだが、私は問題ないと判断した』

 

 

「そうなのですか?」

 

 

『ああ。このグレンという男。

あの魔女が連れて来た魔術師ということで

警戒して調べてみれば……なんてことはない。

第三階梯(トレデ)止まりの三流魔術師。

我々の敵ではない』

 

 

「となるとやはり……」

 

 

『ああ、計画実行予定日はやはり、件の魔術学会

開催の日だ。その日、学院の主要な教授、講師格

の魔術師達は全員魔術学院を出払う。そして、

その日は『あの』クラスの生徒達だけが、魔術学院

に来ることになる。まさに絶好の日だ』

 

 

 

「……目標がなんらかの事情で学院の授業を欠席

した場合はどうしますか?」

 

 

 

『計画を破棄すればいいだけの話。元よりあの組織

にとって今回の作戦、そして我々の価値など所詮は

その程度だ』

 

 

「はは、難儀な組織に忠誠を誓ったものですね、

我々も」

 

 

『構わん。あの組織は私に全てを与えてくれる』

 

 

「お互い様、というわけですか?」

 

 

『ああ』

 

 

 

「ふふ、では計画の成功を祈りましょう。

『天なる智慧に栄光あれ――』」

 




読んでいただきありがとうございます。
今は新しい作品も書いたり、現実の用事があって
投稿が難しいですが頑張って書いていますので
出来れば皆さまの応援をしてくれると自分としては
嬉しいですし、ありがたいです
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