ロクでなし魔術講師と白き大罪の魔術師   作:灰ノ愚者

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皆様‼︎どうも‼︎ どうも‼︎ お久しぶりです‼︎
【デートア・ライブ】『■■■の精霊』の
『リメイク版』でご報告した通り投稿させて
もらいました‼︎


『豆腐メンタルな自分』なのでどうか【感想】や
【評価】更に【しおり】などの応援お願いします‼︎


【注意】

『表現に良くない内容』や『グロい内容』を多く
含まれています。それでも良いなら是非とも読んで
いってください‼︎


どのようなことがあってもこちらで責任は
取れませんのでよろしくお願いします‼︎


善悪の立ち位置と消えぬ■■

「■■■、■■■にとって『■■』はどういう

存在なの?」

 

 

少女は少年に笑顔で微笑みながら問い掛ける。

 

 

「■にとって■■は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ウィル……貴方、その姿……ッ‼︎」

 

 

 

システィは目の前にいるクラスメイトの姿を見て

言葉を失った。

 

 

 

何故なら目の前にいるクラスメイトであるウィルの

姿は『全身血塗れ』だったからだ。

 

 

 

「ウィル‼︎ お前‼︎」

 

 

 

グレンは目を見開き慌ててウィルに近づいて怪我が

ないか確認している。

 

 

 

「大丈夫ですよ。相変わらず心配し過ぎです

グレン先生はこの通り元気ですよ」

 

 

 

ウィルは光なき瞳と無表情でありながらも右手を

左肩に置いてぐるんぐるんと回して見せた。

 

 

 

「て、テメェ…‼︎ テメェは…‼︎ 」

 

 

 

そんな中、ジンはありえないといった青ざめた表情

をウィルに向けて必死に叫んでいた。

 

 

 

だって、テメェは血塗れの状態で二階から落ちて

死んだはずだろうが…ッ‼︎

 

 

 

 

ジンがウィルの血塗れの学生服の姿を見ながら

亡霊を見かの如く信じられないと言った表情を

浮かべていた。

 

 

 

「残念だったな……」

 

 

「ッ‼︎」

 

 

 

ジンはビクリ‼︎と肩を震わせながら怯えていた。

 

 

 

何故ならウィルが一歩また一歩と歩みを進めて

ジンの元へと進む姿を見て言葉では言い表せない

恐怖心が芽生えていた。

 

 

(ヤバイ‼︎ヤバイ‼︎ヤバイ‼︎ コイツはただの学生

なんかじゃない‼︎)

 

 

 

 

間違いない……コイツは──

 

 

 

 

「ジン=ガニス。先程、システィに自慢をしながら

教えていたよね?」

 

 

ウィルは無表情でジンに問い掛ける。

 

 

そう、【ライトニング・ピアス】を

 

 

 

「う、ウィル……?」

 

 

 

システィーナは今の状態を理解出来ないのか

恐る恐ると小さな声でウィルの名前を呼ぶ。

 

 

「だったらなんだよ‼︎ それともテメェ何か?

そこのガキに謝れってか? そんな──」

 

 

 

「うるさい……自分の立場を弁えろ。咎人」

 

 

 

「《貫け閃槍よ》」

 

 

 

ウィルはジンが言う前に小声で言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一体、どういうつもりだ……?)

 

 

グレンはウィルに『ある違和感』を感じていた。

 

 

何故なら

 

 

 

「ジン=ガニス。先程、システィに自慢をしながら

教えていたよね」

 

 

 

ウィルは無表情でジンに問い掛けている。

 

 

 

そう、それだけなのに何故こんなにも胸騒ぎが

するんだろうか……?

 

 

 

この胸騒ぎの原因は恐らく昨日セリカが俺に忠告

した時だろうか?

 

 

 

『ウィル=オリバー』がいるだろうと思うが

あいつには気をつけろ……

 

 

 

と言われたことか?

 

 

 

いや、違う。

 

 

 

それとも奴はあの『宮廷魔導士団』だと言われて

聞かされたことか?

 

 

 

いや、これも違う。

 

 

 

グレンは謎の違和感について考えていると

 

 

 

「う、ウィル……?」

 

 

 

グレンが声がする方へ視線を向けてみると

システィーナは今の状態を理解が出来ないのか

恐る恐ると小さな声でウィルの名前を呼んでいた。

 

 

 

「だったらなんだよ‼︎ それともテメェ何か?

そこのガキに謝れってか? そんなたもなーー」

 

 

 

「うるさい……自分の立場を弁えろ。咎人」

 

 

 

「《貫け閃槍よ》」

 

 

 

ウィルはジンに冷たい光なき瞳を向けながら

そう言った後、ジンはある違和感を感じた。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

なんだ、この違和感は……?

 

 

 

「う、うそ……」

 

 

 

さっきのあの女の表情が真っ青になっていや、

がるんだ?

 

 

 

べちゃりッ‼︎

 

 

 

特に左肩に違和感あるその自分自身の左肩と

べちゃりッ‼︎ 生々しいくて不愉快な音がする

方向へと恐る恐ると見ると

 

 

 

「う、ウソ…だろ……?」

 

 

 

ジンの左肩はピンポン玉ぐらいの大きさの穴が

空いて貫通していた。

 

 

 

「うっ‼︎ ウガァアアアアアアッ‼︎」

 

 

 

痛い、痛い‼︎痛い‼︎痛い‼︎痛い‼︎痛い‼︎痛い‼︎

イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎

イタイ‼︎いたイ‼︎イタい‼︎イタイ‼︎いたい‼︎

イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎イタイ‼︎

 

 

 

この目の前にいるこのクソガキがさっき放った

【ライトニング・ピアス】のせいで右肩が貫通して

【ライトニング・ピアス】一説詠唱どころか右腕

どころか右指すら動かす事すら出来ない‼︎

 

 

 

それどころか──

 

 

 

「騒ぐな……罪人」

 

 

 

「う、うぐッ‼︎」

 

 

嘘だ……嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎

こんなことがあってたまるかッ‼︎

 

 

 

オレがこんなクソガキごときにこんな屈辱的な

行いをされるなんて……こんな屈辱はないッ‼︎

 

 

 

ジンは顔を歪ませながらもウィルを睨みつける

ようにウィルはジンにそう言ってジンのバンダナを

雑に外して髪をガシッと乱暴に掴んで視線をウィル

に無理矢理向ける。

 

 

 

「ウィル‼︎ やめろ‼︎」

 

 

 

そんなウィルの行いに納得がいかなかったのか

グレンはウィルに今の酷くてまさに『尋問(拷問)』を

やめさせようとするが

 

 

 

「…………」

 

 

 

ウィルはグレンを一瞬見るが不愉快だったのか何も

答えず視線を続けてジンに向ける。

 

 

 

 

「て、テメェ……タダ者じゃねぇな……?」

 

 

 

「はぁ、今気付いたの? 察するのが遅過ぎるし

【ライトニング・ピアス】一説詠唱しか出来ない

なんてテロリストどころか魔術師に向いてないよ」

 

 

 

「ンだと‼︎ テ──」

 

 

 

「《誰が口を開いて良いと言った?》」

 

 

 

ウィルがジンにそう言って一説詠唱を唱えた瞬間、

 

 

 

「うぎゃぁぁああああああああ‼︎」

 

 

 

ジンが叫び声が部屋中に響き暴れ出す。

更にはジンが暴れるせいかウィルが風穴を開けた

左肩と腹部分からはドロドロと赤黒い血液が

流れ出してくる。

 

 

 

「ウィル‼︎ やめろって言っているだろうがッ‼︎」

 

 

グレンはウィルの非人道的な行いに我慢が

出来なかったのかジンに向けて右手の人差し指を

刺しているのに気が付いて急いで右腕をガシッと

握っていた。

 

 

 

「……なんのつもりですか? グレン先生?」

 

 

 

グレン先生は一体、なんのつもりだろうか?

そいつは天の智慧研究会、沢山の人間達を娯楽感覚

で無実の人を殺しているんですよ? 

 

 

なのに──

 

 

 

 

 

どうしてそんな『人殺しを庇うんですか?』

 

 

 

「──ッ‼︎」

 

 

 

 

グレンは掴んでいたウィルの右腕を無意識に

手放して帝国式軍隊格闘術の構えを取っていた。

 

 

「なんでだ……」

 

 

 

「何がですか?」

 

 

 

グレンが顔を俯かさせながらもウィルに聞くが

ウィルはグレンが自分に何を言いたいのか理解

出来ないという表情を浮かべていた。

 

 

 

「どうしてお前は何の躊躇いなく人を傷つける

ことが出来るんだ‼︎」

 

 

 

グレンにとってウィルの行いは許せなかった。

非人道的な悪人とはいえ身動きが取れない者を

ましてや軍用魔術の【ライトニング・ピアス】を

使って左肩と腹部を貫いている。

 

 

 

「いくら宮廷魔導士団のましてや『特務分室』

だからってやって良いこと悪いことがあるだろ‼︎」

 

 

 

「えっ? う、ウィルがと、特務、分室……?」

 

 

 

グレンがそう言う中、システィーナはウィルが

特務分室だという『真実』を信じられないと

言った表情でウィルを見ていた。

 

 

信じられなかった。自分と同じ学院の生徒である

ウィルがあのアルザーノ帝国国軍省管轄の、

帝国宮廷魔導士団の中でも魔術がらみの案件を

専門に対処する部署。『最大人員は22名』で、

それぞれに大アルカナにちなんだコードネームが

付けられているそのメンバーの一人だなんて

思わなかった。

 

 

 

更には室長は代々『イグナイト公爵家の者』が

務めるのが慣例となっている筈だ。

 

 

 

 

システィーナがそう考える中、グレンもウィルを

見て改めて思う。

 

 

 

もし自分が止めなければ自分より歳下のウィルは

『なんの躊躇いなど一切なく敵を殺してしまう』

と本能が言っているような胸騒ぎがした。

 

 

 

それに──

 

 

 

 

グレン‼︎

 

 

 

ウィルはどこか自分の名前を呼ぶノアに似ている。

むしろ面影があって似ているそんな奴に人殺しなんて

させたくない。

 

 

 

グレンはそう思ってウィルに問うが

 

 

 

「何を言っているんですかグレン先生?

ルミアが攫われたんですよ? 何事も一分一秒争う

そんな緊急で絶望的なそんな今の状況だというのに

『綺麗事』や『人間の道徳』などとそんな甘いこと

を言っていてルミアを誰かを命を守りそして救える

と思っているんですか?」

 

 

「──ッ‼︎ だ、だからって誰かをルミアを

救う為に他人を傷つけて良い理由にはならない

だろうが…ッ‼︎」

 

 

 

恐らくウィルがジンに【ライトニング・ピアス】を

使ったのは『ルミアの居場所』を聞き出す為にした

ことだろう。

 

 

理屈は分かる。だが──

 

 

 

「だからと言って『犠牲なしに平和を人を救うは

ことは出来ないですよ?』」

 

 

 

僕らは『メルガリウスの正義の魔法使い』では決してないのだから──

 

 

「ぐッ‼︎」

 

 

 

ウィルはグレンに無表情で淡々と言うとグレンは

『正義の魔法使い』という『キーワード』をノアと

瓜二つであるウィルが人を殺すことに何の一切の

躊躇いなくまるで冷たい機械のような彼に躊躇いを

感じてしまう。

 

 

(魔術が人殺しに特化したロクでもない技術だって

言うのは分かっている……だが‼︎)

 

 

 

いくらルミアを救う為とはいえ目の前にいるウィル

は宮廷魔導士団の特務分室とはいえまだ学院の

生徒だ。目の前にいる外道魔術師とはいえ人間だ。

 

 

 

「はぁ、全くもって話にすらなりません。これ以上、

僕の任務を邪魔すると言うなら職務妨害と見做して

グレン先生、貴方の身柄も捕縛しないといけない」

 

 

 

ウィルがグレンを見ながら無表情でそう言う。

そんな中、グレンは警戒を解こうとしない。

 

 

 

(こうなった、か……それに……)

 

 

 

グレンはシスティーナを見るとシスティーナは

顔色の真っ青にして身体を震わせて動かせずに

いた。

 

 

 

 

「……躊躇いなし、か。けっけっけっ、まさか

そんなにあっさりとするとはな……そこら辺の

ただのクソガキだと思っていたが……なんだ、

お前も俺達と同じコッチ側の人間だったのかよ……

クハハ……」

 

 

 

見れば、痛みに苦しんでいたジンが正気を

取り戻していた。

 

 

 

「……………」

 

 

 

「だんまりかよ? それに俺を殺さねーのか?

それとも大切な人達の前じゃ殺せねーかぁ?」

 

 

ジンがウィルを煽るがウィルは何も言わず

ただ黙り続けた。

 

 

 

「う、ウィルと貴方を一緒にしないで‼︎」

 

 

 

ジンの不愉快な言葉を聞いていられず、震えながら

もシスティーナが肩を怒らせて叫んだ。

 

 

 

 

「ウィルと貴方とは違うわ! 欲望を満たす為に

人をゴミのように殺せる貴方達とは──」

 

 

 

「く、くはは……! お前等、一体そいつの何を

知ってるんだ? そいつは最近やって来たばかりの

学院の生徒なんだろ?」

 

 

 

 

「そ、それは……」

 

 

 

 

思わず言葉に詰まった。確かにシスティーナは

この約十二日間ばかりのウィルしか知らない。

セリカが連れて来た謎の生徒。ウィルが過去に

何をやっていたなんて何一つ知らない。

 

 

 

「断言してやる。そいつは絶対、そこにいる講師

なんかよりもロクな奴じゃねえ。もう何人何十人

も殺ってきた……オレら同じ外道さ。そういう

人間だ。そういう目をしてやがる。オレには

わかるぜ」

 

 

 

 

システィーナはウィルは貴方とは違うと一言否定

してやりたかった。

 

 

だが、システィーナは何も言い返せなかった。

それは目の前で酷い光景を見てしまったせいで

ジンの言葉に何も言い出せずに限りなく肯定に

近い沈黙だった。

 

 

 

だが、『一人』を除いて……

 

 

 

 

 

「黙れ…ッ‼︎」

 

 

 

不愉快だった。自分だけの事ならばまだ良い。

でも、ウィルを……こいつを『ロクでもない人間』、

そして自分達と同じ『外道』と言っているのだ。

 

 

 

「グレン先生……‼︎」

 

 

 

システィーナは驚いていた。あのふざけてばかり

いるグレンがウィルのことでこんなにも怒りを

露にしているからだ。

 

 

 

「テメェが……こいつの何を知っていやがるッ‼︎」

 

 

 

グレンがそう言ってジンのガシッ‼︎と胸ぐらを

掴んでジンを睨みつける。

 

 

 

「なぁにを熱くなってやがるん、だよ……

ああ、なるほどなぁ……そうか……」

 

 

 

ジンはそう言ってニヤリと悪魔のような邪悪な

笑みを浮かべて「ケケケッ……」と笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『テメェはあのガキに『誰かの面影』を重ねて

いるんだろ?』

 

 

 

 

ブチッ、と

 

 

 

グレンの何かが切れる音が聞こえた。

 

 

 

「テメェ……歯を食いしばれ……」

 

 

 

グレンはジンの胸ぐら掴んだ状態でギリッ‼︎と

歯軋りしてジンに向けて握り拳を作る。

 

 

 

「ハッ‼︎ 非常勤講師のテメェが生徒達の前で

やれるもんならやってみな‼︎」

 

 

 

ジンがニヤリと笑いながらそう言うと、その時。

 

 

 

「グレン先生‼︎ 今すぐそいつから手を離して

ください‼︎ 早く‼︎」

 

 

 

ウィルが急かすようにグレンにそう言った瞬間、

偶然、場に魔力の共鳴音が響き渡ったかと思うと、

グレン達を取り囲む空間が波紋のように揺らいだ。

 

 

 

「何──ッ⁉︎」

 

 

 

「これは──ッ‼︎」

 

 

 

空間の揺らぎから何かが無数に出現する。

 

 

 

 

それらは骸骨だ。二本で立ち、剣や盾などで武装

している。その数本、いや、今もなお、その数は

どんどん増え続けている──

 

 

 

「やっとお出ましだぁ! ナイス! 

レイクの兄貴!」

 

 

 

歓声をあげるジン。

 

 

 

グレンとシスティーナとウィルはあっという間に、

大量の骸骨達に包囲されていた。

 

 

 

 

「せ、先生……これは──」

 

 

 

「くそ、ボーン・ゴーレムかよ⁉︎ しかも、

こいつら、竜の牙を素材に錬金術で錬成された

代物じゃねえか⁉︎ ずいぶんと大盤振る舞いだな、

おい⁉︎」

 

 

 

召喚【コール・ファミリア】。

本来は、小動物のような使い魔を読んで使役する

召喚魔術の基本術だが、この術者は自己作成した

ゴーレムを使い魔として、しかも遠隔連続召喚する

などという、恐ろしく高度なことをやっている。

しかもグレン達の前に現れたゴーレム達は

竜の牙製。

 

 

 

「どうやら術者はこのゴーレムの素材にかなり

拘っているみたいですね…」

 

 

 

それゆえに脅異的な膂力、運動能力頑強さ、三属性

を持っている。並みの戦士や魔術師では対処

できない危険な相手だ。

 

 

 

「てか、なんだこのふざけた数の多重起動は⁉︎

人間業じゃねーぞ⁉︎」

 

 

 

「グレン先生‼︎ そんなことを言っている場合

じゃないですよ‼︎」

 

 

 

術者の卓越した技量に驚愕する暇もない。

ボーン・ゴーレムの一体が剣を振りかざして、

システィーナに襲いかかった。

 

 

 

「きゃあ⁉︎」

 

 

 

「《貫け閃槍よ》––––《第二射(ツヴァイ)

第三射(ドライ)》!」

 

 

「ぐッ‼︎ グレン先生‼︎ 目の前のゴーレム達の

武器を落としました‼︎ 後はお願いします‼︎」 

 

 

 

「分かった! 下がってろ!」

 

 

 

だが、ウィルはシスティの前に立って

【ライトニング・ピアス】を詠唱して骸骨の

ゴーレムが武器を持っている右腕の関節部分を

狙って撃ち落としていく。グレンが間に割って

入る。

 

 

 

「くらえぇぇぇえええ‼︎」

 

 

 

グレンはチャンスだと思い全身のバネと共に渾身

の右ストレートをボーン・ゴーレムの頭部に叩き

込む──が。

 

 

「ち、硬ぇ⁉︎」

 

 

 

多少、のけぞらせたがそれだけだ。ひびの一つ

も入っていない。

 

 

 

体勢を立て直し背後にいたボーン・ゴーレムが、

再び剣で斬りかかって来る──

 

 

 

「こいつら牛乳飲み過ぎだろコンチクショウ⁉︎

炭酸水でも飲んどけ!」

 

 

 

竜の牙製のゴーレムに物理的な感情はほとんど

損害にならない。拳打のような打撃攻撃は

もちろん、攻性呪文の基本三属と呼ばれる、

『炎熱』、『冷気』、『電撃』も通用しない

 

 

 

このゴーレムを倒すならば、もっと直接的な

魔力干渉をしなさければならない

 

 

 

 

(【ウェポン・エンチャント】だ!

くそ、間に合うか⁉︎)

 

 

 

 

三節詠唱しか出来ないのは、こういう時ネックだ。

 

 

 

とっさの反応が非常に困難である。二回ほど刃を

身体で受ける覚悟を固めて、グレンは呪文を

唱えようとしていると

 

 

「グレン先生‼︎ 危ない‼︎ 後ろ‼︎」

 

 

ウィルがグレンに叫びながら言うとグレンは

ウィルの言う通り背後振り返ると竜の牙製の

ゴーレムいた。

 

 

 

「《その剣に光在れ》ッ!」

 

 

 

システィーナが一節詠唱で唱えた、

黒魔【ウェポン・エンチャント】が完成する。

 

 

 

グレンの拳が一瞬白く輝き、その拳に魔力が

付呪された。

 

 

 

 

「先生!」

 

 

 

 

「すまん、助かった!」

 

 

 

礼を言いながらグレンが素早くステップを踏んだ。

 

 

拳三閃。正面と左右から襲いかかってきた

ボーン・ゴーレムの頭蓋が今度こそ粉砕される。

 

 

 

「《大いなる風よ》!」

 

 

 

 

続いてシスティーナが黒魔【ゲイル・ブロウ】の

呪文を唱える。

 

 

 

猛烈な突風が吹き荒れ、出入り口の扉を塞いでいた

ゴーレム達を扉ごと吹き飛ばした。

 

 

 

ダメージは無に等しいだろうが、これで外までの

道が開けた。

 

 

 

「ナイスだ! 走れ、ウィル! 白猫!」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

「分かりました!」

 

 

 

システィーナとウィルが実験室の外へと続く道を

駆ける。

 

 

 

すかさず、左右のボーン・ゴーレム達が

システィーナに襲いかかる。

 

 

 

「させるかよ!」

 

 

 

システィーナの背後についていたグレンの拳と

足が、それらを薙ぎ倒し、振り払う。

 

 

「グレン先生‼︎ こっちです‼︎ 早く‼︎」

 

 

「ッ‼︎」

 

 

かろうじて実験室の外へと脱出に成功。

 

 

 

「ウィル、助かった‼︎」

 

 

「僕はただ当たり前のことをしただけです」

 

 

 

グレンとウィルがそう言いながらも休む暇も

一切なく、三人は廊下を駆け出した。

 

 

 

「先生、どこに逃げればいいの⁉︎」

 

 

「さあな⁉︎」

 

 

「二人とも無駄口は良いので一秒でも早く思考と

足を動かしてください‼︎」

 

 

 

と、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああ──ッ⁉︎」

 

 

 

背後の方から悲鳴が響いた。

 

 

 

「ま、待て⁉︎ な、なんで俺まで……

ぁああああああああああああ──ッ⁉︎」

 

 

 

悲痛な断末魔がそれにアンサンブルする。

システィーナは顔を青ざめさせ、気分が悪そうに

口元を押さえた。

 

 

 

「い、今のって……ま、まさ──「システィ」」

 

 

 

システィーナが恐る恐ると話そうとするウィルが

システィーナの名前を呼んでシスティーナの言葉を

遮る。

 

 

 

「気にする必要はない。それにシスティを襲って

犯そうとしていたんだからむしろ因果応報だよ」

 

 

 

「──ッ‼︎」

 

 

 

「それにルミアを攫ったんだ。多分、ルミア以外の

他の生徒達を拘束したのは実験台のモルモットと

して良い素材だとしか思っていないだろうね」

 

 

 

「そ、そんな…ッ⁉︎」

 

 

 

システィーナはウィルの顔を見て驚いていた。

自分と同じ学院の生徒なのに顔色を変えずに

平然と冷たい表情していたからだ。

 

 

 

「そうだな…助ける義理はないし、余裕もない」

 

 

 

そんなウィルの言葉を聞いてグレンはまるで自分に

言い聞かせるように、冷淡に言った。

 

 

 

「それよりも明日は我が身だ。来たぞ」

 

 

 

別の所から新しいゴーレム達が三人を追って

ぞろぞろとやって来る──

 

 

 

「──ふ!」

 

 

グレンの右ストレートが一閃する。

 

 

立ち塞がったボーン・ゴーレムの頭蓋が粉砕

される。

 

 

 

「《大いなる風よ》ッ!」

 

 

 

システィーナが【ゲイル・ブロウ】の呪文を

唱える。

 

 

両手から巻き起こる突風が背後に迫る

ボーン・ゴーレム達を吹き散らす。

 

 

 

「《貫け閃槍よ》ッ!」

 

 

ウィルがそう言って上を見上げて天井に向かって

【ライトニング・ピアス】を唱えると天井の瓦礫

ボロボロと雪崩れのように勢いよく崩れ落ちて

ボーン・ゴーレム達を飲み込んだ。

 

 

「こっちだ!」

 

 

「はい!」

 

 

「了解!」

 

 

 

廊下の端に到達し、続く階段を駆け上がる。

だが、瓦礫に埋もれても背後から先程以上の

大量のボーン・ゴーレムの群れが三人の後を追う。

 

 

 

「くそ、ジリ貧だな……」

 

 

 

強化されたグレンの拳闘で対応するには敵の数が

多過ぎる。システィーナの知る魔術では時間稼ぎ

にはなるが決定打は与えられない。

 

 

 

それゆえに、どうしても逃げるしかない。

 

 

 

システィーナとウィルの魔力も無限じゃない。

先ほどから間断なく魔術を行使し続けている。

 

 

 

それゆえに、どうしても逃げるしかない。

 

 

 

システィーナの魔力も無限じゃない。先ほどから

間違いなく魔術を行使続けている。気丈にも

表情には出さないが相当消耗しているはずだ。

 

 

 

魔術適正評価によればシスティーナの魔力容量は

生まれながらにずば抜けているが、連続行使は

辛いだろう。

 

 

 

 

「先生! ゴーレムはカテゴリー的には魔法生物

ですよね⁉︎」

 

 

 

グレンの後ろに続くシスティーナが息も絶え絶え

言った。

 

 

「先生のあの固有魔術でなんとかならない

んですか⁉︎」

 

 

 

「ならん!」

 

 

 

 

グレンは即答した。

 

 

 

「俺の【愚者の世界】は魔術の起動そのものを

シャットアウトするだけだ! すでに起動して

現象として成り立ってる魔術には意味がない!

例えば、あいつらみたいにな!」

 

 

 

グレンは背後からぞろぞろと迫って来る大量の

ボーン・ゴーレム達へ、忌々しそうに目を向ける。

 

 

 

「あいつらをなんとかしたかったら、むしろ

【ディスペル・フォース】──魔力相殺の魔術だ」

 

 

 

「それなら私が使えます!やってみましょうか⁉︎」

 

 

 

「ちょ⁉︎ できるのか⁉︎ かなりの高等呪文だぞ⁉︎」

 

 

 

「はい。学院じゃなくて、お父様から手習った

術ですけど………」

 

 

「いや、システィ。それは全く意味がないないから

やめといたほうが良いと思うよ」

 

 

「ど、どうして⁉︎」

 

 

システィーナがウィルに慌てて質問するとグレンは

「それはだなぁ…」と言って視線をシスティーナと

ウィルに向けるとシスティーナは視線をウィルから

グレンに向けた。

 

 

 

「あいつらをディスペルしていった所で、竜の牙

………素材に戻るだけだ。更に再び術者が魔術を

吹き込めばゴーレムとなってまた襲いかかって

来る。要するに魔力無駄遣いだ」

 

 

 

「──っ⁉︎」

 

 

 

「更に【ディスペル・フォース】に必要な魔力量は

対象物に潜在する魔力量に比例する。半自立行動の

ために魔力増幅経路が組み込まれているあの大量の

ゴーレム達を、いちいち【ディスペル・フォース】

をしようとすれば、システィの魔力が一気に枯渇

するよ? だから今のシスティの魔術の援護が必要

だし重要なんだよ」

 

 

 

「じ、じゃあ、まだ魔力に余裕がある先生が

【ディスペル・フォース】を──」

 

 

 

「俺がやったら余計無駄だ。散々長ったらしく呪文

唱えて、大量に魔力消費して、一時的に減らせる数

が一体じゃ意味がない。むしろ魔力強化された拳で

殴った方が手っ取り早い。再利用されるのを防ぐと

いう意味も含めてな!」

 

 

 

「でも、このままじゃ──」

 

 

 

三人は階段上がりきり、再び廊下に復帰する。

 

 

 

「先生⁉︎ この先は──」

 

 

 

「あぁ、こりゃあ……行き止まりだな……」

 

 

 

システィーナが察した通り、ここから先に延々と

一直線に続く廊下の先は袋小路だ。

 

 

 

「ど、どうする⁉︎」

 

 

 

「グレン先生」

 

 

 

ウィルがそう言ってグレンに視線を向ける。

グレンはウィルが何を言いたいのかを察したのか

グレンは「しょうがねぇな」と言いながら覚悟した

表情をしてギュッと力を込めて拳を握り締める。

 

 

 

「俺が……いや、俺達がここで食い止める。お前は

先に奥まで行って……即興で呪文を改変しろ」

 

 

 

「え⁉︎」

 

 

 

「改変する魔術はの内容はもちろんお前の得意な

【ゲイル・ブロウ】だ。威力を落として、広範囲

に、そして持続時間を長くなるように改変しろ。

完成したら俺達に合図しろ。後は俺がなんとか

してやる」

 

 

 

「で、でも……」

 

 

 

不安げにシスティーナが隣を走るグレンの横顔を

見上げる。

 

 

 

「わ、私にそんな高度な魔術の改変をすることが

できるかどうか……」

 

 

 

「大丈夫だ」

 

 

 

返ってくるグレンの言葉はどこか自信に満ちた物

だった。

 

 

 

「お前は生意気だが、確かに優秀だ。

生意気だがな」

 

 

 

「生意気を強調しないでください!」

 

 

 

システィーナが叫びながらグレンに抗議していた。

 

 

 

「大丈夫だよ。システィ」

 

 

二人が言い合って中、ウィルがシスティーナ

に声を掛ける。

 

 

 

そ、そうよね…ウィルも信じて──

 

 

 

 

 

「もし、システィが失敗しても僕とグレン先生が

あのボーン・ゴーレムの剣に串刺しになって死ぬ

だけだから」

 

 

 

「ッ‼︎」

 

 

 

システィはウィルの言葉を聞いて理解した。

 

 

 

彼は『自分自身の命を捨てることさえ厭わない

ただの道具』としか見ていないということに

 

 

 

そしてそれはまるで

 

 

 

 

自身を『捨て駒』のように扱っているように

見えた。

 

 

 

「……わ、わかりました。やってみます」

 

 

 

「よし、じゃあ、先に行け!」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

とにかく今はこの状態をどうにかしなければ‼︎

ウィルの言う通りグレン先生どころか私も此処で

あのボーン・ゴーレムで死んでしまう‼︎

 

 

 

システィーナは肩を振るわせながらグレンに返事

をしながら魔術の改変の準備をすると

 

 

「おい、白猫」

 

 

グレンがシスティーナにそう言ってシスティーナ

の肩にポンっと手を置く。

 

 

 

『自分らしさを忘れるなよ?』

 

 

 

「ッ‼︎ グレン、先生……ッ‼︎」

 

 

 

グレンがシスティにそう言った瞬間、システィーナ

は一瞬にして理解した。

 

 

 

「分かりました‼︎」

 

 

 

システィーナがグレンにそう言うと安心したのか

グレンはほっとした表情をして足を止めて踵を

返し、向かってくるボーン・ゴーレムの群れに

向き直る。

 

 

 

「グレン先生、僕はグレン先生の援護しますね」

 

 

 

「ああ、頼むぜ‼︎」

 

 

 

グレンはウィルにその言った後、

 

 

 

「おおおお──ッ!」

 

 

 

グレンの放った拳が先頭のボーン・ゴーレムを

粉砕した。

 

 

 

ボーン・ゴーレム達が怒涛の勢いでグレンに

襲いかかって来る。

 

 

 

(行ける。あのチンピラ男を先に襲ったことから

予想してだが、こいつらは自分に近い奴を優先的に

襲う単純な命令しか受けてない。なら、俺とウィル

がここで生きて踏ん張る限り白猫娘を襲おうとは

しない。壁は俺とウィルの二人でむしろ十分過ぎる

ぐらいだ‼︎)

 

 

 

ゴーレム達の無数の剣を、グレンは少しずつ後退

しながら体さばききれなかった刃がグレンの身体を

少しずつ刻んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下の最奥に到達した私は息を整えていた。

この時間、一秒も無駄にはできない。

 

 

 

廊下の向こうでグレン先生がゴーレム達を足止め

してくれているが、何しろ敵の数が多い。

長時間はきっと持たないだろう。

 

 

 

グレン先生とウィルに指示された通りに

【ゲイル・ブロウ】の魔術式と呪文を思い浮かべ、

呪文の改変に取りかかった。

 

 

 

遥か廊下の先ではグレンが獅子奮迅の戦いをして

その背後にはウィルがグレンの向けて一切の容赦

などなく剣を振り翳そうとしてくる大量の牙竜の

ボーン・ゴーレム腕の関節軽々と打ち抜く。

 

 

 

だが、

 

 

 

(う、うそ……)

 

 

 

 

システィーナはウィルの背後にいる二体の牙竜の

ボーン・ゴーレムがいることに驚いていた。

 

 

 

「ウィル‼︎ うし──「心配無用だよ」」

 

 

 

「《貫け閃槍よ》!」

 

 

 

ウィルが脇の間から人差し指を立てて一節詠唱を

すると一体目の牙竜のボーン・ゴーレムの膝を

打ち抜き

 

 

 

「《第二射(ツヴァイ)》ッ!」

 

 

 

と唱えるともう一体のボーン・ゴーレムが右手に

剣を持っているのを理解していたのか手首の関節を

貫いて

 

 

そして

 

 

      

「《その剣に光在れ》」

 

 

 

ガッ‼︎ ゴキッ‼︎

 

 

 

ウィルが黒魔【ウェポン・エンチャント】を詠唱

して一体目のボーン・ゴーレムは脇腹を粉砕して

二体目のボーン・ゴーレムは首を何の躊躇いもなく

勢いよく音をへし折るとゴキっ‼︎ と鈍い音が鳴り

ボーン・ゴーレム達を一瞬にして粉砕する。

 

 

 

「す、すごい……」

 

 

 

システィーナは驚いていた。

 

 

 

ボーン・ゴーレム達を一瞬にして倒したのも

そうだが一切の無駄のない正確で繊細な動きを

軽々と目の前でやってのけたのだから

 

 

 

「システィ、これぐらいの初歩的な技術で一々

驚いていないで早く【ゲイル・ブロウ】の改変を

してくれない?」

 

 

 

「ッ‼︎ そ、そうね……ッ‼︎」

 

 

 

そうだ。グレン先生とウィルはやるべきことを

したのに『自分だけ何も出来ていない……』

それどころか『自分だけ守られている』。

 

 

 

「《風──静かなる──》うんん、だめ。

これじゃ威力が──《嵐──奔放なる》──」

 

 

 

ルーンが引き起こす深層意識の変革結果を、

グレンに教わった魔術文法と魔術公式を使って

頭の中で演算しながら、望む呪文へと少しずつ

近づけていく。

 

 

 

一方、目の前ではグレンが少しずつ、少しずつ

刻まれていた。ぱっと朱が宙を舞うたびに、

システィーナの胸中は焦燥に焦がされる。

 

 

 

「システィ。思い出して、グレン先生が授業で

言っていたでしょ?」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

グレン先生が授業で言っていた内容……?

 

 

 

システィーナが言ったウィルの言葉を自身も

口にした瞬間、

 

 

 

思い出せ。

 

 

 

 

『では、魔術式とは何か?』

 

 

 

グレン先生が私達に教えてくれ『魔術』について

『魔術師』について

 

 

『それは世界に影響を与えるものではない。

人に影響を与えるものだ。人の深層意識を変革

させ、それに対応する世界法則に結果として介入

する、それが魔術式の正体だ』

 

 

 

難しく考えるな……ッ‼︎

 

 

 

『要するに魔術式ってのは超高度な自己暗示っつ

ーコトだ。だから、お前らが魔術は世界の真理を

求めて~なんてカッコイイことよく言うけど、

そりゃ間違いだ。魔術は人の心を突き詰める

もんなんだよ』

 

 

 

そして、何より……

 

 

 

『つまりルーン語とは最も効率良く、効果的

かつ普遍的に、自己暗示による深層意識変革

を起こせるよう、人間が長い歴史の中で編み

出した暗示特化専用言語に過ぎない』

 

 

 

私を信じてくれたグレン先生を私が裏切る

わけにはいかないッ‼︎

 

 

 

「《阻む風──拒む風──風の壁》?

持続時間を延ばすには───」

 

 

 

それでもグレンが敵に背を見せることはない。

少しでも長く時間を稼ぐために、右へ左へと身体

をさばき、敵の猛攻を受け流しつづけている。

そんな中、ウィルもグレンの負担少しでも減らそう

と【ライトニング・ピアス】の詠唱をしている

 

 

 

「詠唱速度は二十二に落として……テンションは

四十五とすれば……」

 

 

 

私はグレン先生やウィルのように強くない。

いつも名家の名に相応しくあるように強がって

いるだけで、本当は誰よりも臆病で弱い。

そのことは私でも自覚していた。

 

 

 

それでもシスティーナの心を動かしたのは

 

 

 

 

 

 

 

『ルミア』

 

 

 

脳裏に浮かんだ、今は離れている大事な親友。

 

 

 

彼女は恐ろしい敵を前にしても、一歩も

怯まなかった。怖かった筈だ、戸惑いも

あったろう。それでも、彼女は連れて行かれる

最後まで毅然とした態度を崩さないままだった。

 

 

 

今だけでいい……誰かを励ませるグレン先生や

冷静な判断出来るウィルみたいな……ルミア

みたいな強さを……ッ‼︎

 

 

 

私はルミアに、グレン先生に、そしてウィルに

救われた。

 

 

 

だから、今度は私が助ける!

 

 

 

システィーナはそう思った瞬間、カチリ、と

パズルのピースが嵌はまるように、最後のルーン

を選び、呪文改変が完成した。

 

 

 

「先生、ウィル、できた!」

 

 

 

待ってましたとばかりに踵を返し、グレン先生が

駆け寄ってくる。当然、ボーンゴーレム達も

追ってくる。

 

 

 

「何節詠唱だ⁉︎」

 

 

「三節です!」

 

 

 

「初めての魔術改変にしては上出来だよ。

システィ」

 

 

 

叫びながら発せられた問いかけに、私も叫んで

返す。

 

 

 

「よし! 俺の合図に合わせて唱え始めろ!

奴らにぶちかませ! ウィルはもしも時の為に

白猫の邪魔させないように軍用魔術の準備を

しろ‼︎」

 

 

「はい!」

 

 

「了解」

 

 

グレン先生がこちらを目掛けて走ってくる。

その後ろを追いかけて来るボーンゴーレム。

 

 

「今だ、やれ!」

 

 

 

「《拒み阻めよ・──」

 

 

 

合図と同時に開始した詠唱。

 

 

 

「《──嵐の壁よ・──」

 

 

 

グレン先生が私の横をスライディングして通り

抜けた瞬間。

 

 

 

「──その下肢に安らぎを》──ッ‼︎」

 

 

 

グレンとウィルが跳躍する。呪文が完成。

システィーナのかたわらを転がりながら通り過ぎる

その瞬間、呪文か完成。システィーナの両手から

爆発的な風が生まれた。

 

 

 

それは【ゲイル・ブロウ】のような局所に集中

する突風ではない。廊下全体を埋め尽くすような、

広範囲にわたって吹き抜ける指向性の嵐だった。

 

 

 

命名するならば、黒魔【ストーム・ウォール】。

システィーナから遥か廊下の彼方向かって駆け

流れる風の壁は迫り来るゴーレム達の進行速度は

目に見えて落ちていた。

 

 

 

いや、それだけではない。私が起こした風に

その動きを阻害している。

 

 

 

だが、即興ゆえに威力が足りなかったのか、完全

に足止めはできなかったようで。

 

 

 

「ごめんなさい、先生……ッ!」

 

 

 

即興ゆえ威力が足りなかったのか。ゴーレム達は

気流に逆らって少しずつにじり寄ってくる。

連中がここまで辿り着くのは時間の問題だ。

システィーナは脂汗を垂らした。

 

 

 

「いいや、上出来だ。よくやった、お前ら」

 

 

 

荒い息をつきながら先生が立ち上がった。

そして、ゴーレム達の前に向き直る。その手には

何か小さな結晶のようなものが握られていた。

 

 

 

その結晶をぴん、と親指で頭上に弾き飛ばし、

落ちてくるそれを横に薙ないだ手で掴み取る。

 

 

 

「俺が今からやる魔術何かの片手間に唱えるのは

無理なんでね……しばらくそのまま耐えてろ」

 

 

 

一呼吸置いて、グレンは目を閉じ、呪文を唱え

始めた。

 

 

 

 

「《我は神を斬獲せし者・───》」 

 

 

 

ゆっくりと

 

 

 

「《我は始原の祖と終を知る者・───》」

 

 

 

殊更にゆっくりと。

 

 

 

 

グレンは魔力を高めながら、意識を集中させ、

一句一句呪文を紡いでいく。

 

 

 

唱えた呪文に応じて、グレンの左拳を中心に、

リング状の宴法陣が三つ、縦、横、水平噛み合う

ように形成され、それぞれ徐々に速度を上げながら

回転を始めた。

 

 

 

「……え? 嘘……?」

 

 

 

システィーナはグレンが唱えようとしている

呪文の正体に気づいた。

 

 

 

「その術は……ッ‼︎」

 

 

 

《素は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須らく此処に散滅せよ・──」

 

 

そして。

 

 

 

グレンがあっけに取られるシスティーナの前

に踊り出る。

 

 

 

「──遙かな虚無の果てに》──ッ!」

 

 

 

都合七節にも渡って紡がれた、渾身の大呪文が

完成する。

 

 

「ええい!ぶっ飛べ、有象無象!

黒魔改【イクスティンクション・レイ】—ッ!」

 

 

グレンが前方に左拳を開いて突き出す。

 

 

 

左拳を中心に高回転していたリング状の円法陣が

前方に拡大しながら展開した。

 

 

 

次の瞬間、三つ並んだリングの中心を貫くように

発生した巨大な光の衝撃波が、前方に突き出された

グレンの左掌から放たれ、廊下の遥か向こうまで

一直線に駆け抜けた。

 

 

 

そして──殲滅。その射線状にあった物……

ボーン・ゴーレムの群れはおろか、天井や壁まで、

光の波動は抉り取るように全てを呑み込み、一瞬

で粉みじんに消滅させていた。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

あっけない幕切れシスティーナが忘我する。

天井は完全になくなり上階の天井が見える。

右手の壁も全て消滅し、外の風景が丸見えだ。

まるで長大な円柱を廊下から切り出したかのような

その光景だ。ただ、吹きさらしになった廊下に風が

吹いたいた。

 

 

 

「す、凄い……こんな、高等呪文……」

 

 

 

黒魔改【イクステクション・レイ】。対象を

問答無用で根源素にまで分解消滅させる術である。

個人で詠唱する中では最高峰の威力を誇る呪文

であり──二百年前の『魔道大戦』で、

セリカ=アルフォネアが邪神の眷属を殺すために

編み出した、限りなく固有魔術近い神殺しの術だ。

 

 

 

グレンはこの呪文を詠唱する際、何らか魔術触媒を

使ったようだが……それでも詠唱できるだけで

掛け値なしの賞賛と驚愕に値することである。

 

 

 

「システィ‼︎ 急いで‼︎ 早く‼︎」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

ウィルがシスティーナに来るように叫びながら

言うがシスティーナは訳が分からないと言った

表情をしながら急いで来ると

 

 

 

 

 

 

「い、いささかオーバーキルだが、俺にゃこれしか

ねーんだよな……ご、ほ……っ!」

 

 

 

「グレン先生‼︎」

 

 

 

当たり前だ……『あのセリカ=アルフォネア』という

魔術師(化物)だから出来る神殺しの魔術だ。

 

 

 

ウィルが叫ぶとグレンは更に血を吐いて頽れて

すらいる。

 

 

 

「先生⁉︎」

 

 

 

グレンの異変に、システィーナは慌ててグレンの

元へ駆け寄り、その全身に触れていた。この現象

から考えるからに、今の技は自らの命と引き換え

に振るう諸刃の剣だったみたいだ……

 

 

 

「まぁ……分不相応な術を、裏技で無理矢理

使っちまったからな……」

 

 

 

更にグレン先生は『第三階梯の魔術師』であり、

『世界最高峰である全知全能の灰塵の魔女』と

第七階梯(セプテンデ)の魔術師』である呼ばれた最強の

『セリカ=アルフォネア』ではないのだから……

 

 

 

「だ、大丈夫なんですか⁉︎」

 

 

 

「これが大丈夫に見えたら病院に行け……」

 

 

 

グレン先生が死んでしま、う……?

 

 

「ぐッ‼︎」

 

 

 

嫌、だ……いやだ、いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎

いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎

いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎いやだ‼︎

いやだ‼︎いやだ‼︎イヤだ‼︎イヤだ‼︎イヤだ‼︎

 

 

 

 

どうすれば良い? どうすれば助けられる……

どうすれば………そうだッ‼︎

 

 

 

 

 

「システィ‼︎ 早くッ‼︎ 急いでグレン先生に

【ライフ・アップ】の詠唱をッ‼︎」

 

 

 

「わ、分かったわッ‼︎」

 

 

 

 

システィーナは戸惑いながらも血を吐くグレン

に近寄る。

 

 

 

「《慈愛の天使よ・彼の者に安らぎを・

救いの御手を》‼︎」

 

 

システィーナは、怪我を治す白魔【ライフ・アップ】

の呪文でグレンの傷を癒そうとする。しかし、

どうやらシスティーナは運動やエネルギーを扱う

黒魔術や、物質と元素を扱う錬金術は得意だが、

【ライフ・アップ】のような肉体と魔力を精神を扱う

白魔術はそれほどでもないらしい。

 

 

 

「馬鹿、やってる場合か……」

 

 

 

グレンが口元を伝う血を拭って無理矢理立ち

上がった。しかし、その膝は笑っていた。

 

 

 

()()()‼︎ 貴方こそ黙っていてください‼︎」

 

 

 

「えっ? う、ウィル……?」

 

 

 

「ぐ、グレン……?」

 

 

 

自分でも何を言っているか分からなかった……

なんで『グレン先生』のことを『グレン』なんて

呼んだのか分からなかった……どうして……?

グレン先生とシスティとは初めて会ったばかり

なのに………

 

 

 

ウィルが戸惑いの表情を浮かべているとグレンは

冷静さを取り戻して

 

 

 

「そ、そんなことより今すぐ、ここを離れるぞ……

早くどこかに身を隠……」

 

 

 

言いかけて、グレンは苦い顔をした。

 

 

 

「んな呑気なことを許してくれるほど、

甘い相手のはずないよなぁ……くそ」

 

 

 

かつん、と。破壊の傷跡が刻まれた廊下に靴音が

響いた。

 

 

 

「【イクスティクション・レイ】まで使えると

はな。少々見くびっていたようだ」

 

 

 

(あいつは……)

 

 

 

廊下の向こう側から姿を現したのは──

ダークコートの男が立っておりかつん、と。

破壊の傷跡が刻まれた廊下に靴音が響いた。

更には『殺意の五本の剣』が浮いて剣の鋒を

グレン達に向けたこちらにいた。

 

 

 

 

 

最悪のタイミングだった。システィーナは息を

呑んで震えてグレン先生はすでに満身創痍の状態

である姿を見て僕は『ある覚悟』を決めた。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


次回は【新しいシリーズ】を作ろうと考えています‼︎


これからも応援などよろしくお願いします‼︎


これからも楽しみしていてください‼︎


オネガイシマス……_:(´ཀ`」 ∠):
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