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「~♪」
少女は誰かを待っているらしい。背中に背負った
皮製カバンのベルトに手をかけ、機嫌良さそうに
ハミングしながら時間をつぶしている。
と、その時だった。
「……痛っ!」
背後から上がった苦痛の声に、何事かと少女が
振り返る。 すると、そこには指を押さえて顔を
しかめている一人の老人の姿があった。足元には
落ち葉や小枝が詰められた金属バケツ。そして、
火打石が落ちていた。
「ど、どうしたんですか? お爺さん」
見知らぬ老人ではあったが、少女は心配そうな
表情を浮かべ、迷わず老人の元へと駆け寄った。
「おや? いやぁ、ははは……お嬢ちゃんには
格好悪い所を見せてしまったのう」
心優しい少女を前に、老人は相好を崩し、
照れ臭そうに苦笑いする。
「実は片付けたこのごみを燃やそうと
したのじゃが、わしとしたことが、手元が狂って
火打石で指を打ってしまってのう……いやぁ、
歳は取りたくないわい」
見れば、老人の指が少し腫れて血が出ている。
かなり強く打ってしまったらしい。
特に大事はなさそうだが、それなりに
痛そうだった。
「やれやれ、帰ったら婆さんに薬草を出して
もらわんとな……」
少女は老人の指の様子を確認すると、周囲を
きょろきょろと見渡す。誰もいないことを確かめ、
老人にいたずらっぽく微笑みかけながら人差し指
を口元にあて、ウインクする。
「内緒ですよ? お爺さん」
「……ん? 」
首をかしげる老人の手を、少女は柔らかく取り、
ルーン語で呪文を唱えた。
「《天使の施しあれ》」
すると、老人の手を包む少女の手が淡く発光し、
光に包まれた老人の手の怪我がみるみるうちに
癒されていく。
白魔【ライフ・アップ】。
被術者の自己治癒能力を高めて傷を癒す
白魔術だ。
「……お、おぉ……!?」
老人はその様子を、目を丸くして見つめていた。
「うん、よし。それから……
《火の仔らよ・指先に小さき焔・灯すべし》」
少女は次に、黒魔【ファイア・トーチ】の呪文を
唱えた。すると少女の指先に小さな炎が灯る。
その小さな炎を金属のバケツの中に落とすと、
中に入っていたごみが、めらめらと燃え始めた。
「お嬢ちゃん……今の不思議な力……話に聞く
魔術ってやつかい?」
「はい。本当は学院外で魔術を使ったら罰則が
あるんですけど」
驚きながらも感心したような表情を浮かべる
老人に、少女はぺろっと小さく舌を出して
茶目っ気たっぷりに破顔した。
「そういえば、その服……あの奇妙な学院の
生徒達の制服じゃな。お嬢ちゃんのお友達は
皆、今みたいな不思議な術が使えるのかい?」
「はい。皆、私よりも上手で色々なことが
できますよ?」
「ほえぇ……便利なものじゃのう。
わしらもそんな不思議な術が使えたら色々と
楽になるんじゃがのう……」
「あはは、そうかもしれませんね。
ところでお爺さん、私が魔術を使ったことは、
その……できれば……」
「おうおう、内緒にしておけばいいんじゃろ?
わかっとるよ」
「はい、ありがとうございます」
「なんの、こちらこそ。
ありがとうな、お嬢ちゃん。助かったよ」
少女と老人が笑みを交わし合っていると。
「ルミア——っ! 遅くなってごめん——っ!」
遠くから駆け足の音が近づいてくる。
見れば、通りの向こうから少女と似たような
衣装に身を包んだ、もう一人の少女が駆け寄って
来ている。
「おや、あの子は……お嬢ちゃんのお友達かね?」
「はい。今、私がお世話になっている家の娘さん
で、私の親友です。それじゃあ、お爺さん。私、
そろそろ行きますね? ごきげんよう」
「おう、お勉強、頑張ってな」
最後に少女は会釈をして老人に別れを告げ、
駆け寄ってくる友人の元へ向かった。
早朝ゆえに閑散としたフェジテの表通り。
花崗岩で綺麗に舗装された道を、二人の少女は
並んで歩いていた。
「もう、ルミアったら律儀なんだから……
先に行っててって言ったのに……」
「うぅ、そんな……お嬢様を置いて行ったら、
しがない居候に過ぎない私は、旦那様と奥様に
お叱りを受けてしまいますわ……」
「馬鹿。冗談でもやめてよね、私達は家族
なんだから」
「あはは、ごめん、システィ」
「それにしても、珍しいね。
システィが忘れ物するなんて」
老人と別れ、友人と合流した少女——
ルミアは隣を歩く友人を不思議そうに見つめた。
「そのせいで屋敷まで往復することになって、
貴女まで待たせて……本当にごめん」
ルミアの隣で少し肩を落として、とぼとぼ歩く
少女——システィーナは憂鬱そうにため息を
ついていた。 システィーナは純銀を溶かし
流したような銀髪のロングヘアと、やや吊り気味
な翠玉色の瞳が特徴的な、ルミアと同い年くらい
の少女である。雪も欺く白い肌、彫像のように
硬く精緻に整った端麗な容姿はいかにも誇り高く
勝ち気そうで、まるで妖精のように凜々しく、
眩い。今、その表情はいささか消沈している
ものの、それでも涼やかながら凛とした覇気が、
その立ち振る舞いの端々から見てとれる——
そんな少女だ。
ルミア、そしてシスティーナ。二人の少女には
タイプこそ違うが、ただの町娘には決して
真似できない、生まれながらの美と気品——
華があった。着用している衣服こそ魔術学院の
生徒が着る制服だが、なんの変哲もないはずの
町の一角が、その二人がいる場所だけ社交界の
ように華やいでいるようだった。
「ひょっとして……システィ、
やっぱり……あのことが響いてる?」
ルミアが心配そうにシスティーナの顔を
のぞき込む。ルミアが知るシスティーナは、
忘れ物をしてしまうなどという隙とは
無縁の存在なのだ……基本的には。
「かも、……ね」
親友に心配かけまいと、システィーナは健気に
笑みを作って応じる。だが、どうにも消せない
憂鬱さが表情の端々に残っていた。
「やっぱり、残念でさ……ヒューイ先生、
なんで急に講師を辞めちゃったのかなぁ?」
「仕方ないよ。
先生にだって色々と都合があるもの」
「あぁ、惜しいなぁ……ヒューイ先生の授業は
凄くわかりやすくて、質問にもちゃんと答えて
くれて……凄くためになったのに……」
「それに凄く格好良い人だったもんね?」
「ばっ! 何を言ってるの!
格好良さなんて関係ないでしょ!?」
からかうようなルミアの言葉に、
システィーナはぱっと頬を赤らめていた。
「私は誇り高き魔術の名門フィーベル家の
次期当主として、魔術の勉強のために学院に
通っているの! 講師に求めるものなんて
授業の質だけよ!」
だが、システィーナのまくし立てに、
ルミアは訳知り顔でくすくすと笑うだけだ。
「あ、そうそう、システィ。話は変わるけど、
今日、代わりの人が非常勤講師としてやって
来るみたいだよ?」
「……知ってるわ」
いかにも興味なさそうにシスティーナは応じた。
「せめてヒューイ先生の半分くらいは良い授業
してくれるといいんだけど」
「そうだよね。ヒューイ先生の授業に
慣れちゃうと、他の講師の方の授業じゃちょっと
物足りない気がするよね」
二人がそんな会話を交えながら、十字路に
差しかかった時だ。
「うぉおおおおおおお⁉︎
遅刻、遅刻ぅうううううううううッ⁉︎」
目を血走らせ、修羅のような表情で口にパンを
くわえた不審極まりない男が、右手の通路から
二人を目掛けて猛然と走って来た。
「……え?」
「きゃあっ⁉︎」
「な、何ィいいいッ⁉︎
ちょ、そこ退けガキ共ぉおおおお——ッ!」
勢いのついた物体は急には止まれない。
そんな古典物理法則を正しく踏襲し、男が二人
のいたいけな少女を轢き飛ばそうとしていた
——その時。
「お、《大いなる風よ》——ッ!」
システィーナがとっさに一節詠唱で、
黒魔【ゲイル・ブロウ】の呪文を唱えた。
瞬時にその手から巻き起こる猛烈な突風が
男の身体を殴りつけるようにかっさらい、
そして——
「あれ——ッ⁉︎
俺、空飛んでるよ——ッ⁉︎」
首の角度を上に傾けなければ捕捉できないほど、
男の身体は天高く空を舞い——放物線を描いて——
通りの向こうにあった円形の噴水池の中へと落ちた。
遠くで盛大に上がる水柱を、二人の少女は
遠巻きに呆然と眺めるしかなかった。
「あの、システィ? ……やりすぎじゃない?」
「そ、そうね……あはは……つい。どうしよう?」
二人の注視を受けながら男は無言で立ち上がり、
ばしゃばしゃと水を蹴りながら噴水池から
這い出る。そして、つかつかと二人の前まで
歩み寄って、そして言った。
「ふっ、大丈夫かい? お嬢さん達」
「いや、貴方が大丈夫?」
男は爽やかな笑みを浮かべて精一杯決めている
つもりなのだろうが、哀しいくらいに決まって
いなかった。
妙な男だった。システィーナ達よりも、
幾ばくか年上の青年だ。黒髪黒瞳、長身痩躯。
容姿そのものに特筆する所はないが、問題は
その出で立ちだ。仕立ての良いホワイトシャツ
に、クラバット、黒のスラックス。かなり洒落た
衣装に身を包んでいる。だが、この男はこの服を
着るのがどれほど面倒臭かったのか、徹底的に
だらしなく着崩していた。服を選んだ人と、
着用する本人が別人であったことが素人目に
見ても明らかであった。
「あはは、道を急に飛び出したら危ないから
気をつけた方がいいよ?」
「いや……急に飛び出して来たのは貴方だった
ような……」
思わずシスティーナが突っ込んだ、その時だ。
「だ、だめよ、システィ!」
金髪のショートボブの女の子ルミアが
システィーナにそう言って更に注意していく
「この人ばっかり責められないよ! システィ
だっていきなり人に向かって魔術を撃つなんて…
一歩間違ったら怪我じゃすまなかったんだよ?」
「う……ごめんなさい」
「全く‼︎ 親の顔が見てみたいね! 一体、お前は
どんな教育受けてんだ‼︎ あ⁉︎」
「……こっちが下手に出れば、途端にこの態度
……なんなの? この人」
「まー完全にお前らが100%一方的に悪いのは
明白なんだが俺は優しいから何か礼になるもん
でもありゃ許してやらんでも…」
「す 、すみません私からも謝ります…」
もう一人の女の子が男に謝ると何故か
その女の子の顔をずっと見続けていた。
(……………?)
【むにっ】
その後、男はもう一人の女の子の頬を優しく
ひねり更には体をいきなり触りだし確認していく
「うーーん」
「キャ…」
その男はその女の子の額を指で突きながら
「お前どっかで……」
「アンタ、何やっとるかぁあああーッ⁉︎」
システィーナと言う銀色の髪の女の子は男に
怒りの上段回し蹴りが男の延髄を見事に捉え、
吹き飛ばした。
「ズギャァアアアアアアアアアアーッ⁉︎」
情けない悲鳴を上げて男は転がって下ろしたて
だったであろう男の衣服はずぶ濡れの上に、
擦り切れて汚れて、もはや洒落た原形の見る影
もなかった。
「不注意でぶつかって来るはまだいいとして、
何よ今のは⁉︎ 女の子に無遠慮に触るなんて
信じられないッ! 最ッ低!」
「ちょと待て、落ち着け⁉︎ 俺はただ、学者の
端くれとして、純然たる好奇心と探究心でだな⁉︎
やましい考えは多分、ちょとしかないッ!」
「なお悪いわッ!」
「ごぼほぉっ‼︎」
システィーナの拳が脇腹に良い角度で刺さり、
男は悶絶していた。
「ルミア、警備官の詰所に連絡。
この男を突き出すわよ。やっぱりただの変態だわ」
「え⁉︎ ちょ、勘弁してください⁉︎
もし仕事の初日からそんなんなったらセリカに
殺される!マジごめんなさい! 許してください!
調子乗ってすんませんでしたッ!」
僕がそう思っているとがルミアがシスティーナに
かなり甘い提案をしていた。
「あの…反省はしているみたいだし
許してあげようよ」
「はぁ? 本気? 貴方って本当に甘いわね、
ルミア……」
「ありがとうございます! このご恩は一生
忘れません!ありがとうございます!」
男は立ち上がり居丈高に二人に言った。
「さて、お前達。その制服は魔術学院の
生徒だろう? こんな所で何やってる?」
「許してもらえるとなった途端に、これよ……
なんなの? この人」
「あ、あはは……」
もはや呆れるしかなかった二人だった。
「今、何時だと思っている?
急がないと遅刻だぞ?わかっているのか?
おぉ…今の俺、なんかスゲェ教師っぽい」
男が自分の台詞に陶酔しているのをよそに、
少女達は顔を見合わせて首をかしげた。
「……遅刻? ですか?」
「嘘よ、そんなの。
まだ余裕で間に合う時間帯じゃない?」
「んなわけねーだろ!
もう、八時半過ぎてるじゃねーか!」
男が懐中時計をシスティーナの眼前に突き出す。
「その時計、ひょっとして針が進んでませんか?
ほら」
システィーナも負けじと懐中時計を取り出し、
男の前に突きつける。
時計の針が指すのは八時だ。ちなみに本日の
授業開始時間は八時四十分である。
「…………」
しばらくの間、不思議な沈黙が両者を包み込む。
そして。
「撤収!」
「逃げた──ッ⁉︎」
出会った時と同様、男は猛然とした勢いで二人の前
から走り去っていく。
更に男は「チクショーッ!あの女、時計ズラし
やがったなぁ⁉︎」など意味不明なことを叫び
ながら遠ざかるその背中を、二人の少女は
見送るしかなかった。
「な……なんなの? あの人」
「……」
「ルミア…?」
「え、えーと、何だっけ…システィ?」
「だからさっきの男の話だったでしょ?
ルミア…大丈夫…?」
「……うん。
でも、なんだか面白い人だったね?」
「面白いを通り越して、だめ過ぎるわよ、
アレは」
相も変わらず親友の感覚のズレっぷりに
システィーナは嘆息する。
「私はああいう手合いにはもう二度と会いたく
ないわね。見ててイライラするのよ、あんな
情けないダメ男は!やっぱり容赦なく警備官に
引き渡すべきだったかしら?」
あいまいに笑うルミアを伴い、システィーナは
学院への道を再び歩き始める。そして、そのまま
あの奇妙な変態男のことを忘れるように努めた。
魔術師にとって記憶整理は基礎中の基礎だ。
事実、システィーナの頭の中からその男の存在は
見事に抹消された。 もっとも——後にその存在は
再び強烈に記憶へ焼き直されることになるのだが。
「さてと、今日も一日頑張りましょう?
「うん」
やがて歩く二人の前に、その敷地を鉄柵で
囲まれた魔術学院校舎の壮麗な威容がいつもの
ように現れるのであった——
「実に興味深い…」
ウィルはそう言って石段に座って読んでいた本を
パタンと音を立てながら閉じて更に言葉を紡ぐ。
「彼女は貴重なサンプルデータと判断した…」
ウィルはそう言った後、虚ろな瞳でアルザーノ学院
を見て
「故に検証及び任務を開始する……」
ウィルはそう言って立ち上がりながら
アルザーノ学院に向かって行った。
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