そこは雪山のとある村。
白く綿のような雪が、まるで村を覆うように深々とつもっている、しかし村の中は温泉が引かれ人は少なくとも活気ある。
村の中を、一人の少女が歩いていた。手にはこの村のアイテム屋から買ったであろう荷物が抱えられている。服装は村の住人同様防寒性に優れたマフモフ装備で固められ、頭装備からはこの辺りでは珍しい青い髪が覗いていた。
村内はどことなくいつもより賑やかだ。
「今日は何か祭ごとでもあるんですか?」
少女が言う。
「なんだSeymourちゃん知らないのかい、今日は流星群が見れるのさ」
鍛冶屋が言うには今日の夜流星群が見られるらしい。そのためにはるばる街から遠出をしてきた人も多いそうだ。
「cyacyeと見に行ってみたらどうだい、別にクエストも入って無いんだろう?」
「別に、星ならいつも見てる」
「そう言わずに誘ってみな、なんならMIHARU嬢さんに話してみるといいんじゃないか」
「…分かった、話してみる」
鍛冶屋の言葉通りMIHARUに話をしてみよう。
「今日はいきなりどうしたの?Seymourちゃん」
黒髪の可愛らしい女性が聞いた。
「ちょっと、話があって」
Seymourと呼ばれた青髪の少女が答える。
「さっき、鍛冶屋で聞いたんだけど。今日の夜、流星群が見られるって。別に、星なんていつも見てるから…でもMIHARUに話してみろっておじさんが」
「そうなんだ、Seymourちゃんは流星群は見たことある?」
MIHARUと呼ばれた女性が微笑みながら答える。Seymourは首を横に振りながら、
「無いよ。でも、流れ星と一緒でしょ。それなら、雪山でいつも見てる、それに」
「それに?」
「cyacyeが…まだクエストから帰ってきてない」
「そっか、でも今日帰ってくる予定なんでしょ?」
「村までの道が荒れてて、明日までポポは出せないじゃないかって、村長が」
そう言い終わるころには、Seymourは目線を下へ落としてしまっていた。
「お嬢様、お友達のようすが変でしたが。何かございましたか?」
「大丈夫、そういえば今日流星群が見れるそうね」
「はい、村中賑わっております」
「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」
「ご主人どうかしたかニャ?」
一匹のアイルーが心配そうにたずねる。
「何でもない」
そう言うSeymourはいつもより幾分か声のトーンが落ちている。誰から見ても「何でもない」とは感じられない。
「あったかい飲み物でも持ってくるニャ!」
「ありがとう、アーサー」
アーサーと呼ばれたアイルーは勢いよくキッチンへと姿を消した。
「…ふぅ」
アーサーが居なくなった後、ボスッとベットへ体を預けた。別に流星群を見たい訳ではなかった、cyacyeが居ないことも別に珍しいことじゃなかった、どちらもハンターをやっている身だクエストの関係で長い間会えないことだって何回もあった。
「兄さん…」
「ご主人!ご主人!起きるニャ!」
うるさい、この声は…アーサー?
「…んう、どうしたの?」
「これを見るニャ!いつのまにかテーブルに置いてあったニャ」
アーサーから渡された物は四つ折りにされた紙切れだった。中には書きなぐったような文字で「今日の夜訓練場前に集合!」と書かれていた。
「この字は、Gulenか」
Seymourは呆れとも疲れともとれるような溜息を吐き、マフモフ装備を整えた。
紙に書かれた通りに訓練場の前までやってきたら見覚えのある二人組を見つけた。
「お、来たな!」
賑わう村の中でもひときわ目立つ金色が大声を出した。
「Gulen、うるさい」
「Seymourちゃん、こっちこっち」
MIHARUがにこにこと笑いながら手を振っている、相変わらずいい笑顔だ。
「いきなり何の用?今日は人が多いから、あんまり外に出たくないんだけど」
「あぁ、ちょっと俺らも流星群見ようと思ってな」
「私は別に見たいなんて言ってない、それにさっきも言ったけど人が賑わうときはあんまり外出したくないから」
「大丈夫大丈夫、そういうと思って教官には話しつけてあっからさ!今日だけ訓練場の建物貸してくれるってよ。貸し切りだぜ貸し切り」
Gulenに腕を掴まれ引っ張られる。袖が伸びる!
「ちょっと、だから私は別に!」
「いーから、来いって」
Glenに引っ張られているなかMIHARUがいつもとは違う、なにかイタズラに成功したようなニコニコとした顔で追ってきた。目が合うと、ふふっと面白そうに笑う。この二人は私に内緒でなにかを企んでいるようだ。
「着いたぜ!」
前が急に止まるから鼻をぶつけそうになった、あぶない。
「ここなら髪のこと気にする必要ないだろ?」とGulenに背中を押される形になって前へ出た。確かにここなら普通の人はまず来ないし、さっき話していた通り貸し切り状態で中は暗い。教官も今日は出払っているようだ。とりあえず、中に入ってみることにした。さすがずっと外にいるのは寒いし、何よりさここに来るまで走るように急いで来たため鼻先が風に当たって少し痛い。
「本当、用意するの大変だったんだからな。ちゃんと感謝しろよ?」
「別に頼んでない」
いつものように私が喧嘩腰になってると、後ろからMIHARUがやってきて苦笑いしながらいつものように仲介に入った。
「まぁまぁ、とりあえず中入ろう?みんな本当に頑張ったんだし」
「…分かった、ありがとうMIHARU」
「なんだよその俺との態度の違いは!」
中に入ると明かりがついてないせいかやはり真っ暗だ、村からの明かりも今はとても遠く感じる。
「やっぱ暗いな」
「でも目を慣らさないと星見にくいよ?」
だんだん目が慣れてきた。部屋の中にある家具のシルエットがぼんやりとだが見えてきた。よく見ると窓際にもう一人人が立っているように見える。目が慣れていくとともに空の雲も晴れてきたみたいだ、月明かりが山沿いに広がっていくのが見える。
月明かりが訓練場までやってくるころには立っている人物が誰かが分かった、Seymourは考えるより早く自分の足が動き出しているのを驚きで働かなくなった頭の隅で感じ取っいた。
「兄さん!」
私の声に振りかえる兄さんの髪が月明りに照らされていつもより輝いているように見えた。
「ただいま、Seymour」
「おかえり…でもどうしてここに?今日は帰れないじゃないかって村長が…!」
「今日の昼にいきなり電報が届いて、無理やり帰って来たんだ」
あの二人が企んでいたことはこの事だったのか、いつものようにクエストから帰ってきただけなのになぜか無性に泣きたくなった。もうそんな年でもないのになぜだろうか。
「泣きたいなら、泣けばいい」
兄さんにそう言われた私は年甲斐もなく泣いてしまった。それは数秒にも感じたしもっと長くも感じたけど今の私にはそんなこと関係なかった。
「中々世話焼かせるよな、あの兄弟も」
微笑ましい兄弟のやり取りを見ながらGulenが言った
「今まで人に甘えるなんてしてこなかったからかな、もっと頼ってくれてもいいのにね」
「まぁ、兄貴がああだからな。仕方ないのかもな」
二人は人に甘えることの知らない兄弟を見ながら胸が暖まるのをなんとなく感じていた。
「お、光った!」
「え、どこどこ!?」
「ほら雪山の方!」
「キレーイ!まるで星が降ってくるみたい」
「スゲーな流れ星とは違うんだな、やっぱ」
「そうだね」
「流星群、見てみてどうだ?」
「…綺麗」
「またいつか、一緒に来よう」
「うん」
「おいお前らもこっち来いよ!MIHARUが暖かいものいれてくれるってさ!」
「あぁ、今いく」
「行こうか」
「うん」
私は差し出してくれた兄の手をとった