「...はぁー.....はぁー.....」
地に降り立ち、肩で息をする。
今、勝利したのだ。あの絶望をそのまま形にしたような、彼に。
それだというのに、キリトとアートの顔は━━
「.....」
━━とても、そのような表情では無かった。
まるで、
「...すまねェ。俺があの時に倒していれば.....!」
「良いんだ。これは、俺自身が決めたんだ。.....こうなる事も。」
目の前には、色が無くなったシステムコンソール。
率直に言うと、この世界から出る為のモノ。
それの色が無くなったという事は、もう脱出が不可能になったという事。
...実は、ガブリエルと戦う前に、二人には菊岡からこのような通信が入っていたのだ。
『アート君、キリト君!よく聞いてくれッ!あと20分程でそっちの時間が元通りに.....いや、更に加速してしまう!そうなると脱出が出来なくなってしまう。それを分かっていてくれッ!!』
「分かった!」
「.....おう。」
そして、恐れていた事が起きてしまった。
アンダーワールド内の時間は現在、加速しており.....1分に10年を過ごす計算になっている。
あちらでは最速で直そうとしているらしいが.....恐らく20分はかかるだろう。
つまり、200年。そんな時間を生きる事など、人間には到底不可能だ。
そしてそれは、もう愛する人と会う事すら出来ないという、残酷な事象を見せつけられたと同じで━━
「そんな顔は君達らしくないよ?」
━━その声は、幻聴に聴こえたのも仕方がなかった。
声がした方に顔を向けると、其処には.....
「そうです。世界を救ったんですから、それらしい顔をしましょうよ。」
黒と白の剣士が愛した者達。アスナとランが居た。
「な、んで.....」
「行った筈じゃ.....」
それに彼等は戸惑う。
伝えていなかったのもあるかもしれないが、脱出する時間は思いの外あった筈。
それだというのに、彼女達は最後まで残っていたのだ。
「.....大切な人を置いていく訳ないじゃん。」
そう言って、キリトの前に座るアスナ。
.....その笑顔に、勇者はどれだけ救われた事だろう。
精神喪失状態だった彼を救ったのもまた、彼女だった。
そして、それを再度見れる事になるとは━━
「...ごめん.....ごめんよ.....!」
「謝らなくていいよ。.....よく頑張ったね。」
その言葉を境に、キリトは泣き崩れた。
アスナは彼を支えるように抱きしめた。
そして、一方では.....
「...ラン。」
「.....」
━━白鬼と舞姫が、改めて再会を果たしていた。
だが、感動ではない。.....アートは責任を感じているのだ。この事に巻き込んでしまった事に。
「...何で、どうして残ったんだよ.....」
歯軋りをして俯きながら、叫ぶように問う。
そんな彼に、ランは.....
「アートさん。」
━━優しく、そして力強く彼の名を呼んだ。
その言葉に後悔は微塵の欠片も含まれていない。
「そんなの決まってますよ。.....もう会えないと思ってた人に、会えたんですよ.....?
なら、こうしようって.....思っちゃうじゃないですか.....!」
段々と泣き声が混じっていく。
それを見たアートは、一瞬表情を歪ませるも、すぐに.....
「.....馬鹿だな、俺は。」
「うぁ.....?」
━━柔らかい笑みを浮かべ、彼女を優しく抱きしめた。
彼の言葉にも、もう後悔は残っていなかった。
「.....ただいま。」
「!.....アートさん.....もう、離れませんよね.....?」
「ああ。.....ずっと、一緒に居よう。」
「...はい.....!」
聞きたかった言葉をやっと受けると、ランは更に抱きしめる強さを上げる。
アートも同じように、満足そうに抱きしめた。
この日、アンダーワールド内戦は終了した。
後に、この世界を治める【星王】と【星王妃】。
そして、彼等を守る【姫騎士】、世界各地を旅して調査する【戦騎士】が誕生するのだが.....
それは別の機会に話そう。また、別の機会に。
コラボストーリーの日程が決まりました!
日程は8月16日です!