司書長とマテリアルズ   作:空の狐

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『司書長と星光の殲滅者』の続きです。


ファーストキスは嫉妬とともに(ユノシュテ)

 その日、司書長室にマテリアルたちが遊びにが来ていた。

 

「鼬男、先日のデータ感謝するぞ」

 

「あ、いいよ気にしなくて」

 

 ディアーチェのお礼に対してユーノはそう答えるが、心の中ではディアーチェの発言の原因であろう友人である真っ黒クロ助を締める算段を立て始めていた。

 

「いえ、謙遜しないでください。師匠のデータは貴重です。本当に助かりました」

 

 シュテルがそう言うが、ユーノにとってそれは謙遜なんかじゃなかった。

 本当に大したことしていない。エルトリア再生のための資料をシュテルに渡しただけ。それを実際に形にしたのはシュテルたちだから、すごいのはシュテルたちだとユーノは思っていたが、同時に自分が役にたてていたなら素直に嬉しいとも思っている。

 

「そうだ、他になんか欲しい資料あるかな? よければ今日この後暇だから書庫内を案内したりできるけど」

 

 まだエルトリアからこちらに来るのは簡単にできることではなく、連絡もなかなか難しい。彼女たちがこっちに居られる間にできる限り資料を渡そうと思って提案したのだが、

 

「うーん、でも、僕、書庫よりも楽しい場所に行きたいな!」

 

「へっ? うーん、どこがいいかな?」

 

 レヴィのお願いにユーノは考える。

 楽しい場所ね。なんかいい場所ないかなとユーノは思案する。しかし、残念ながらユーノも多忙のためにあまり外に出ることはない。

 

「こら、レヴィ、我儘を言っては師匠に迷惑ですよ!」

 

 シュテルがレヴィを嗜める。

 

「いや、構わないよシュテル。どうせ今日は暇だから」

 

 無限書庫はユーノのような人種にとっては仕事がなければ楽園だが、そうではないレヴィにとっては退屈な場所だろう。

 せっかくこっちに来たんだし、どこか遊べる場所のほうがいいかなと結論する。

 

「いいのですか?」

 

「構わないよ。友達なんだから」

 

 そう言ったら、なんかシュテルが不満そうな顔になった。

 そのシュテルになんか変なこといったかなとユーノは首を捻る。

 

「友達、ですか……」

 

 シュテルがなんか呟くけど、ユーノはよく聞き取れなかった。

 

「うん、僕たち友達なんだねユーノ!」

 

 レヴィはユーノの手を掴んで上下に振る。なぜそこまで喜ぶのかとちょっとだけユーノは戸惑う。

 

「ふん、王たる我に戯言を。だが、良いだろう。我らを救う助力をした貴様を友と認めてやろう」

 

 喜ぶレヴィに対してディアーチェは尊大な態度でユーノの友人発言を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしながら、ユーノが知る場所は美術館とか書庫とあまり変わらない場所だったため、簡単なミッドチルダ観光となった。

 

「ここが、ミッドチルダ中央駅広場で、あそこにあるのが名物忠犬ザッフィー像」

 

 ザッフィー像は目立つために待ち合わせの目印としてミッドチルダ市民から親しまれている。

 

「どことなく守護騎士の守護獣に似てますね」

 

 シュテルの呟き通りにその像はザフィーラそっくりである。だが、偶然らしい。かつての主が作ったのかと思ってユーノたちは聞いてみたが、本人は完全否定していた。

 そして、大通りに出るとレヴィが目を輝かせた。

 

「人が一杯いる!」

 

「一応今日は休日だからね」

 

 こちらにいた期間が短く、エルトリアも人が少ないため、人混みと言うのは知識でしか知らないレヴィには新鮮な光景だった。

 

「おお、あそこ楽しそうだぞ! あそこ行こうあそこ!」

 

「うわ!」

 

 ユーノはレヴィに引っ張られる。それをシュテルは睨み、ディアーチェはそんな臣下たちにため息をついた。

 

 

 

 

 

 

『You win!!』

 

「また負けたー、ユーノ強すぎる」

 

「僕はそんなに強くないんだけどなあ……」

 

 現在、四人はゲームセンターで遊んでいた。

 結構こういったゲームが好きらしいレヴィはさっそく対戦だー! とユーノに挑み、見事に連敗記録を作っていた。

 ユーノは十年ぶりに対戦ゲームをやるため、いい勝負ができるだろうと思っていたが、意外とやれるものである。余談だがワザと負けたらレヴィが怒ったため手加減はしていない。

 

「ようし、敵はとってやるぞレヴィ!」

 

 そして、ディアーチェに変わる。ディアーチェが選んだのは陰陽術師。それに対しユーノは彪貌の巨漢を選ぶ。そして、対戦が始まり……

 

『You win!!』

 

 必殺技を喰らい、ディアーチェは負けた。

 

「ぐあああああああ!!」

 

「王様、僕より倒されるの早いよ」

 

 じとーっとレヴィはディアーチェを見つめる。

 それに耐えられなかったのか、ディアーチェはユーノと席を変えて、レヴィと対戦しだした。

 そんな二人を微笑ましくユーノは見守っていたのだが……突然上がった歓声に振り向く。

 

「すげえ! この姉ちゃん二十人抜きしたぞ!!」

 

「あんたがナンバーワン!!」

 

 やんややんやと褒めたたえられてるのは……なんか仏頂面でゲームをプレイしているシュテルだった。

 連勝しているのにどこか不機嫌なシュテルはその日、一日でナンバーワンプレイヤーに昇り詰める偉業を成し遂げた。

 

 

 

 

 

 

「あー楽しかった」

 

「所詮は座興の一環だが、なかなかどうして面白かったぞ」

 

 レヴィはご機嫌そうに笑う。ディアーチェも尊大に楽しかったことを認める。

 だが、シュテルは不機嫌なままだった。

 

「じゃあ、今日はありがとうねユーノ!」

 

「褒めてやるぞ鼬男」

 

「うん、楽しんでくれたなら僕も嬉しいよ」

 

 だいぶ遅くなったからそろそろホテルに戻るということで、ユーノは見送ろうとしたのだが、

 

「すみません王、少々師匠と話したいことがあるので、先に戻っていただきたいのですが」

 

「そうなのか? なら、我らは先にホテルに戻ろう」

 

 と、ディアーチェは頷いてから、シュテルに何やら耳打ちをし、途端にシュテルは顔が真っ赤になった。

 

 

 

 

 

 

 

 シュテルは二人を見送ってからユーノの手を引く。

 そして、適当な物陰に隠れると、きっとユーノを睨んだ。

 

「えっと、シュテルどうしたの?」

 

「師匠、私との約束を覚えていますか?」

 

「う、うん覚えてるよ。結婚を前提に付き合う、だよね」

 

 女の子からの告白を忘れるなんてできないよとユーノは笑う。

 

「だ、だから、その、いいですよね?」

 

 なにがとユーノが問う前に口が塞がれた。シュテルの唇によって。

 突然のことに混乱する。ただ、ユーノにとって一番衝撃的だったのは、シュテルの唇だった。

 柔らかくて、でもプリプリと弾力があって、暖かくて、甘くて……とにかく説明しきれない情報が一瞬でユーノの頭の中を駆け廻る。

 少ししてシュテルが唇を離す。ただ唇を触れさせるだけのソフトなキス。それにユーノは困惑する。これだけでこんなになってしまうとは……

 

「シュテル、なんでいきなり……」

 

 それでも、ユーノはなんとか彼女になんで突然こんなことをしたのか問いかける。

 

「し、師匠が悪いんです。私よりレヴィやディアーチェと仲良くして……」

 

 シュテルの発言に流石のユーノも理解した。シュテルは二人に対して嫉妬していたのだ。

 再びシュテルが体を押し付けるようにしながらユーノと唇を重ねる。

 シュテルの身体がユーノの身体にくっつき、むにゅっとシュテルの豊かな乳房がユーノの胸板に押し潰されて形を変える。

 シュテルは背中に手を回してきて、それにユーノもおずおずと彼女の背と肩に手を回す。

 

 ユーノは密着したシュテルの身体の柔らかさにすごいと感動する。

 キスも、密着したからか自然と変わった。唇になにか柔らかいものが割って入ってきたのにユーノは気づき、それがすぐなんなのかわかった。シュテルの舌だ。

 それをユーノも受け入れて舌を伸ばす。舌を絡めさせて、吸って、甘噛みして、シュテルの口の中に溜まっていた唾を飲んで、逆に彼女に飲まれて、情熱的で、互いを貪るようなキスになっていく。

 

 ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅぷっと踊る舌が、水音のBGMを奏でる。

 そして、お互いに息が苦しくなって、やっと口を離した。それでも名残惜しそうに伸びた互いの舌から唾液でできた銀色のアーチが伸びて、切れた。

 もしも、息が永遠に続くならずっとしていたかもなどと考えるほど、ユーノはキスに夢中になっていた。

 

「し、師匠、だからお子様なレヴィにはできないことをしたんですが……」

 

 レヴィにできないこと。確かに今みたいなキスはレヴィはできなさそうだ。なんとなくほっぺにチューまでならまだイメージ湧く。

 

「そ、その嫌でしたか? ご、ごめんなさい、ついかっとなって」

 

 おずおずとシュテルはユーノに謝る。

 そんな彼女がいじらしくてユーノはその頭をそっとなでる。

 

「ううん、ごめんねシュテルのことちゃんと見てあげられなくて」

 

「い、いえ、私こそ、も、もっとちゃんとした状況でこういうことはしたかったのに……ううう」

 

 頬を真っ赤にして悶えるシュテルがとても愛おしくなり、今度はユーノの方から唇を奪うのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、今頃は奴らは……くっくっく、うまくやれよシュテル」

 

 夜景を見ながら、どこか邪悪に笑うディアーチェ、だが、がちゃっとドアが開き、シュテルが入ってきた。

 

「ただいま戻りました」

 

 それにあっけに取られるディアーチェ。そして……

 

「あんの鼬男があ! どこまで草食系だというのだ?! 貴様も貴様だシュテル! こちらが気を利かせたのだから押し倒すくらいせぬかあ!!」

 

 シュテルはディアーチェの理不尽な怒りに自分に何か落ち度があったのだろうかと悩むのだった。

 そして、そんな二人を楽しそうに見ていたレヴィはふと一人足りないことに気づいた。

 

「あれ、そういえばまだユーリ帰ってきてないのかな?」

 

 

 

 

 

 

「トーマ、あーん」

 

「トーマ、はいあーん」

 

 リリィとユーリが手作り料理を差したフォークをトーマに対して突き出す。

 

「あ、あの、リリィ、ユーリ、なんか目が怖いんだけど……」

 

 何故かバチバチと目の前で火花を散らせる友人二人にトーマは戸惑うしかなかったのであった。

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