君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
きのうのプロ野球クライマックスシリーズの阪神対横浜、すんごいことになってましたね。
名付けて甲子園ガタリンピック!みたいな笑
では、本編スタートです!
前話から少し時間を戻して水曜日朝。三葉の部署に産休で抜ける社員に代わって千葉からやってきた女性社員が紹介される。
「奥寺ミキ君だ。まだ4年目ではあるが千葉支店で売り上げ成績トップを保ち続けた非常に優秀な社員だ。みんな仲良くな。ちなみに男性社員諸君、彼女には婚約者がいるらしいから手出しはしないように。」
男性陣からため息が漏れる。
「宮水君を釣り損ねた時点で負けだ。諦めて他のところから女引っ張ってこい。この甲斐性なしどもが!」
ガハハハと豪快に笑う上司の言葉に、男性陣は更に傷口を抉られたようだ。胸を押さえて意気消沈している。
「では、各自業務に戻りたまえ。宮水と堀川は奥寺君に色々説明してあげなさい。その3人で組むことが多くなるだろうから。」
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時は流れ、お昼時となった。堀川が外回りに出掛けたため、結果三葉はミキと2人で昼食をとることになった。三葉はミキを観察する。第一印象は掛け値無しの美人。少し垂れた目尻とふくよかな唇がミステリアスな雰囲気を醸し出している。午前中行動を共にしていても、何事につけてもテキパキしていて、要領もいい、デキる女だ。しかしさっきからの品定めするような目線は何なんだ?
「あなたが宮水三葉さんよね?」
「え、まあそうですけど……」
「何硬くなってんのよ。私たち同い年でしょ。」
「奥寺さんは婚約者がいるん……だよね。」
「まあね。あなたはどうなの?彼氏とかいるの?」
「うん。」
「どんな人?」
「優しくて、それでも頼もしくて、どこか懐かしくて、もう離したくない人。」
「そう。いい人に出会えたのね。」
「奥寺さんの彼氏はどんな人なの?」
「ミキでいいわよ。……そうね。優しい人。ちょっと頼りなかったりするけど、その頼りなさが私を大事に扱ってくれてる証拠って分かって、とっても安心できる人。」
「ミキさんひょっとして私のこと探ってません?」
「どうして?」
「そんな気がするだけなんだけど……」
「いい勘してるわね。実はね、私、瀧君の昔からの知り合いなの。」
「えっ」
「でね、たまたまこっち来ることになって、社員リスト見たら、あなたがいたのよ。これは昔からの友達の彼女がどんな女か興味持っちゃうじゃない?この前の日曜日に瀧君と飲んだんだけど、あんなに惚気た瀧君見るの初めてで……ちょっと嫉妬しちゃったな。一時期瀧君のこと好きだったから。」
「そうなんですか?」
「彼が高校生の時かな?なんかそれまでと違って急に女子力つけちゃってさ、可愛かったのよ、彼。で、一緒にちょっと遠出したことがあったんだけど、そこから帰ってきた瀧君は何か暗かった。ずっと遠くを見るようになって、本気で笑わなくなったのよ。まるで大切な何かを失ったような、そんな表情しかしなくなって……。
凄く心配したのよ。積極的にアプローチしたりもしたんだけどね、何か私のことなんか目に入ってなかった。ずっと何かを探していた。でも、あなたと出会って瀧君は間違いなく変わった。いえ、本当の自分を取り戻したのよ。だから、彼を変えたあなたと話がしたかったの。大切な1人の友人を預けるに足りる女かって。」
三葉はミキが信用できる人だと思った。ミキはちゃんと瀧を1人の人間として見ていた。こうやって自分の失恋話をしてくるのは、決して妬んでいるからではない。本気で瀧のことを心配していたからこそ、ミキは瀧の過去を明かしているのだ。
「そうだったんだ……。」
「大丈夫よ、瀧君はあなたしか見てないし、あなたも瀧君しか見てない。とってもお似合いだわ。だからね、2人で幸せになりなさいよ。ならなかったら許さないから。」
「うん。絶対になる。」
瀧くん、こんないい人に心配させたらいかんよ。三葉は心の中で瀧に抗議する。
「安心した。ところ三葉ちゃんさ、変な話なんだけど、どっかで会ったことない?」
「私もそんな気がしてたんだ。きっといい友達になれるよ。私たち。」
2人はお互いに笑いあった。ミキには、その三葉の笑顔がかつて自分の破れたエプロンに刺繍してくれた瀧の姿とかぶった。
(そんなわけないか……)
昼休みがまもなく終わる。新たに友人となった2人は笑顔で社屋に帰っていった。
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早耶香はその日も割とクタクタになって帰ってきた。高校生を、大人とも子供ともつかない思春期の微妙な時期の生徒を何十人と扱うのだ。
「はあ〜〜疲れた〜〜」
そう言ってソファーに倒れこんだ瞬間、朝に克彦が言っていたことを思い出す。
<ちょっと上手いこといったら客連れてくるかもしれへんから、晩飯
しかし一体誰だろう?怪訝に思いながらもかなり多めの夕食の用意をして待っていると、克彦が帰ってきた。
「早耶香、客連れてきたで〜〜。玄関までおいで〜〜。」
「はーい。」
早耶香は玄関へ向かい、客人の顔を見て絶句する。
「そ、そ、その人って………、みみみ三葉の……」
「せや、三葉の彼氏の立花瀧くんや。」
「初めまして。立花瀧です。」
「ま、ま、まあどうぞ上がってってください。」
「すみません、お邪魔します。」
早耶香は瀧をリビングに座らせて克彦を物陰に連れ込む。
「なんやの、私聞いてへんよ!」
「怒るなや。俺かて誘っても来てくれるかどうか分からんかったんや。それに見たかったやろ、三葉の彼氏。」
「そらそうやけど、寿命縮んだわ。それに今日、三葉も四葉ちゃんも来んのに、教えてないん?」
「言うてるわけないわ、教えたらおもろないやろ。」
「まあ、それは面白いやろうけど……」
そう、早耶香と克彦は日曜日のお返しをするためにこの日は三葉と四葉を自宅に招待していたのだ。さらに克彦は瀧と水曜日に話をすると分かった途端にこの場を次の日曜日からこの日に変更したのだ。もちろん、他の3人には理由は告げずに。だが、三葉と四葉が来るまでまだ少々時間がある。それまでに早耶香は瀧と話し込むことにした。
「早耶香さんは高校で教鞭をとられているそうですね。」
「克彦にもタメ口なんでしょ、私もええんよ。」
「じゃあ…………、さやちんは教師やってるんだよな。」
「そうなんよ、もう毎日クタクタ。生徒って教師によって態度変えるでしょ。だから気を抜けなくて……」
「大丈夫やって、早耶香。生徒はお前のこと好いとる。」
「ちょっと、何で克彦がそんなこと言えるんよ。」
「そんなん、高校生数人ひっ捕まえて聞いたら終いや。」
「ひ、人の職場で何やっとるんよ!」
「ええがな、別に。」
「そうだよさやちん。別に乗り込んだわけじゃないんだからさ……」
「乗り込んでんのと一緒やよ!」
早耶香はこの3人の会話に既視感を覚えた。瀧とは初対面であるはずなのに……。
すると、インターホンが押された。三葉と四葉の到着である。克彦が玄関に開いてるぞ、と呼びかけ、瀧をお茶を飲んでいたコップを持たせ自分の部屋に押し込む。早耶香も空気を読んで玄関に向かい、瀧の靴を靴箱に放り込む。聡い四葉なら気づくかもしれないからだ。そして何事もなかったかのように2人を出迎える。
「三葉、四葉ちゃん、いらっしゃい。」
「お邪魔しま〜〜す。」
「ごめんね、さやちん。お邪魔して。」
「三葉は気にせんでええんよ。こっちが招きたくて招いてるんやから。」
「それにしても何で今日なん?水曜日やのに。」
「それには深〜〜い訳があるんよ。ま、上がってってよ。」
そして早耶香は2人を座らせてお茶を出す。全てが整ったところで克彦が切り出す。
「さて、今日はこの場にスペシャルゲストが来ております!」
三葉と四葉は顔を見合わせる。誰だ?
「それではお越し下さい、どうぞ!」
克彦の部屋から瀧が現れる。四葉は目をまん丸にし、三葉に至っては化け物を見たかのような顔で半分腰を抜かしていた。
「な、な、な、何でたた瀧くんがこ、こんなとこにお、おんのよ……!」
「ごめん、三葉。俺もつい一時間前までは来る予定はなかったんだよ……。」
「瀧さん、先日はうちのアホ姉が粗相をいたしまして申し訳ありませんでした!なめこの味噌汁、美味しかったです。アホ姉の二日酔いにも効いたみたいで本当に助かりました!」
「あんた、人のことアホ呼ばわりしんとって!」
「何よ、完全に酔い潰れて負ぶわれて帰って来て。あれ、瀧さんやなかったら食べられてるで。」
「ぐ…………。」
「ま、まあ四葉ちゃんもその辺で矛を収めなよ。俺が止めなかったのが悪いんだ。」
「それは自分の酒量をわきまえへんかった三葉に全ての非があるっちゃうもんや。」
「そうそう、瀧君が紳士やっただけやよ、三葉。」
みんな三葉に言いたい放題である。
「もう、そこまで言わんでもええやん!」
「それなら私の未来のお義兄さんに感謝の意を伝えんと。」
「なっ………」
四葉の投げ込んだ最大級の爆弾が爆裂した。三葉と瀧は同時に茹で蛸になる。そんな2人を見て、他の3人は大爆笑する。
水曜日の夜空に、5人の笑い声が響き渡る。瀧くん、この借りは必ず倍にして返してやるんやからね! と心の中で息巻く三葉を尻目に、楽しい夜は更けていく……。
<次回予告>勅使河原夫妻と瀧に見事にサプライズを決められた三葉は、自分もサプライズを仕掛け返すために瀧と知り合いである奥寺ミキに協力を依頼する。そして、瀧の友人と三葉との邂逅が実現することとなるのだが。
次回 10月23日月曜日午後9時3分投稿 第12話「クロスする出会い 後編」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。