君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
10人は京都駅に降り立った。そこから地下鉄烏丸線、阪急京都線を乗り継いで四条河原町エリアに到着する。駅を出てちょっと東へ歩くと鴨川に差し掛かる。
「うわー、えらい人。」
堀川が半ばげんなりしながら感想を述べた。三葉が周りを見渡して感想を述べる。
「外国人観光客が増えてるって聞いたけど、欧米の方より中国人が多い感じやね。」
「これは錦無理かもな〜」
「錦?錦市場のこと?あのよくテレビで見る?」
「もっかい戻らなあかんけど、5分くらい歩いたらつくで。」
「うー、行ってみたいなー」
「無理やな、この調子じゃあの狭い商店街の中やったら身動きもとれへん。」
「三葉、諦めよう。ところで堀川さん、どこ行くんですか?」
「八坂神社、その前に腹ごしらえ。」
鴨川を渡りきってしばらく歩くと、正面の大きな赤い鳥居が存在感を増してきた。京都では平安神宮に次ぐ規模を誇る八坂神社である。その少し手前、現在歩いている四条大路の北側に位置するビルにある中華料理屋で昼食を済ませ、ついに八坂神社に突入、と思いきや四条大路の南側に渡り、八坂神社を目前にしてある店舗に入ろうとしている。
「ちょいちょい、どこ行くんや?」
克彦がもっともな疑問を投げかける。
「ローソン」
「ローソン?青い看板なんかどこにもあらへんで」
その時、四葉があっと声を上げる。
「ローソンや、一瞬気付かんかった。」
そう、確かにローソンである。しかし京都の景観に合わせるために茶色などの景観に溶け込む色を用いて設計されているのだ。その中で堀川と狩野は意外なものを買った。
「そんなもの何に使うんですか?狩野先輩。」
狩野が籠に入れていたのは仏花とカップ酒である。こんなものがコンビニに置いてある理由もイマイチわからないが……
「墓参り。」
「今から行くのって八坂神社ですよね。」
「私と浩平はちょっと違うんだよね。」
「はあ。」
そして10人はようやく八坂神社に到着した。鳥居をくぐるといくつか屋台が出ている。その脇を奥に進むと視界が開け、本殿が見えた。
「いやはや、でかいな〜」
克彦が感心したように言う。
「そらそうや、天皇や上皇の行脚も数知れず、武家からの信仰も厚くて現存する社殿は江戸幕府4代将軍家綱の寄進で建てられたもんや。」
堀川が答える。そして一行は賽銭を投げ込み、お馴染みのニ礼ニ拍手一礼で参拝を済ませ、それぞれ御神籤を引いた。結果に一喜一憂したあと来た道を帰らずに奥に進む。そこには春は桜が綺麗なことで有名な円山公園があった。
「俺と百合子はまだちょっと先に進むけど、着いてこんでええからこの辺で立花と宮水いじり倒して待っといて〜」
「あら堀川君、どこ行くの?」
「ここを出てもうちょい登ったら大谷祖廟ってとこがあってな、狩野家の墓がそこにあるからちょっと墓参りしてくるわ。盆に行ったらえらい人でめんどくさいからな。」
「じゃ、お言葉に甘えて待ってまーす。」
ミキの返答を聞き、2人は先へ進んで行く。
「それにしても暑いな〜」
藤井はすでに参ってしまっているようだ。
「こういう盆地は湿気溜まるからの〜」
「糸守もそう、蒸し暑かったんよね〜。そういえば三葉、今日はあんまり瀧君とべったりやないんやね〜」
「そうよね〜、アツアツすぎて当てられちゃうかと思ってたのに。瀧君もえらく今日は消極的なんじゃない?」
「どうせみんな知ってんねんからお兄ちゃんもねえちゃんも照れることあらへんのに。普段通り惚気まくってええねんで。」
「な、な、何を言うとるんよ四葉!は、恥ずかしいやないの。」
「そ、そうだよ。」
そして2人は次の台詞を声を揃えて言い放った。
「
そう叫んで互いの顔を見合わせ、一気に顔を朱に染めた。それを見て一同は大爆笑する。司と高木がさらに砲火を集中させる。
「なんだ瀧!あんまりにも余所余所しいから心配してたのに、ラブラブじゃん!」
「心配して損した!で、どこまで進展してるんだ?」
「う……そ、その……まだ………」
高木が水を得た魚のように反応する。
「おっと瀧!まだなんだな!まだ初めて捨ててないんだな!いや、その点だけは安心した。良かった〜〜まだ先は越されてない!」
「な!うううるさい!そんな事で安心してねーでお前は彼女作れよ!それより司!何ゲラゲラ笑ってんだ!ラブラブのお前には関係ないだろ!!」
「あははは!いやあ、大いにあるなあ。宮水さん、大丈夫ですか?ひょっとしたら今日あたり襲われるかも知れませんよ?僕は瀧の友人として心配で。」
「だ、だ、大丈夫やよ。瀧君優しいし。そんな無茶な事せえへんよ。」
「なーによ姉ちゃん。今日も決めるつもりで渋谷で買った勝負下着持って来てるくせに!」
「四葉!なんで言うんよ!」
瀧も三葉も真っ赤になる。
「瀧、邪魔だけはしないから心配するな。もし司が覗きに行こうとでもしたら俺が押さえ込んどいてやる。」
「待て高木!何気に俺たちがやる前提で話進めんじゃねえ!」
「あれ、お兄ちゃんしないの?据え膳食わぬは男の恥やよ。ねえちゃんしたくてたまらんらしいからさ。」
「ふぁっ!?」
「四葉!どこでそんな言葉覚えたんよ!ていうかわたしが欲求不満みたいな言い方しな!」
「三葉ちゃん、こういう旅行とかの時がチャンスなのよ〜。瀧君も尻込みしちゃダメよ。」
「三葉が欲しいなら頑張ります!」
「やー!!みんなちょっと黙って〜!!」
三葉と瀧は地雷をいくつ仕掛けいるのだろうかと疑問になるくらい自分たちからボロを出していく。運の悪いことに彼らの周りの連中は瀧と三葉がこんなにガード甘々の状態でいじらないような人間たちではない。いじりは不可逆的にエスカレートしていく。
「瀧よ、何も心配することはない。三葉酒弱いから一杯飲ませるだけでコロッと酔っ払いよるからそこで仕留めるんや。なんならたっぷり飲ませてべろんべろんにしてからでも構へん。とにかくは決めることや!」
「何言うてんの克彦、そんなに飲ませたらせっかくの勝負下着が台無しやないの。」
「ほんまや、忘れとった。四葉、ちなみに何色なんや?」
「てっしー、何聞いとんの!?」
「ピンク!」
「四葉!」
ぎゃあぎゃあ言っているうちにいつの間にか30分が経過し、堀川と狩野が戻って来ていた。
「いや〜楽しそうで何よりやねんけど、ここからちょっと別れて行動しよか。」
「別れる?」
「そうや、ちょっと四葉ちゃんの合格祈願に北野天満宮いきたいと思ってんねんけど、そんなにあそこ広くないから迷惑と思ってな。ちなみにもう片方は俺と清水行くねんけど、百合子と四葉ちゃんと一緒に北野天満宮行きたい人!」
瀧と三葉だけが手を挙げた。
「まあこうなるわな。んじゃ俺と行くもんこっちこーい。だいぶ歩くぞ〜」
「じゃあ行こっか。」
こうして二組に分かれた。
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狩野に先導された瀧と三葉と四葉は歩いて来た道を戻る。タクシーを拾うために河原町まで戻るのかと思いきや、そうではないようだ。
「こっからそう歩かんでええとこに錦天神があるんや。そこも行こうかなと思って。やっぱり験はようさん担いどいた方がええやろ。」
「錦?錦市場の近くですか?」
「もう目と鼻の先やで。ていうか錦市場の端っこやな。」
「よかったじゃん三葉!錦市場入れるかもよ!」
「もう一個目的地があるから入れるけど、あんまり買い物はできないよ〜。なんせ時間ないからね。」
一行は四条大路を逆戻りし、さらに降りて来た河原町駅をやや超え、寺町通りを北向きに入って行く。その途中で狩野が足を止めた。
「ここの雑貨屋さんなかなかええよ。いろんな小物売ってんねんけどそこそこ安くて長持ちすんねん。」
狩野が向いた先には和風の雑貨が所狭しと並ぶ和風の佇まいの雑貨屋だった。
「10分か15分くらいあるからちょっと見て行き。」
4人は店の中に入る。中には手ぬぐいや風呂敷や、最近増えているポリエステル張りではない和紙が貼られている扇子、がま口財布、小物入れ、ポーチ、栞、箸、耳かきなど様々な日本らしい雑貨が売られている。
「うわー、このお箸ええやん!瀧くん、おそろで買お!」
「ねえちゃん、この髪留めどお?あとこがま口財布!」
「この素朴なデザインの扇子いいなー。」
結果的に三葉は瀧とお揃いの箸と箸置きに染物のストール、四葉はがま口財布と髪留めと栞、瀧は三葉と四葉の分を含めて3本の扇子を買った。ちなみに、扇子には瀧のものにはエビ、三葉のものには金魚、四葉のものには朝顔が描かれている。漆を塗っていない肌色の骨組みに香りの良い真っ白な和紙に輪郭を用いず描かれた素朴なデザインの扇子は、税抜き2000円ながらも各人がとても気に入ったことにより、長らく使用されることとなるのだが、それはまた別の話である。