君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
昨日は24時間テレビでしたが、ブルゾン頑張ったなあ。でも、これ当日発表する意味あったんでしょうか?なんか、途中からいつも通りな気が…………
それでは、本編スタートです!
17時45分。瀧の指定した時間より早く二人は落ち合った。
「あら、早かったんですね。立花さん。」
「何か、気が急いてしまって。晩御飯、まだですよね。ご一緒にどうですか?」
「はい。ゆっくりでいいから何か一つでも思い出しましょう。立花さん。」
「奇遇ですね。俺もそう思ってたところなんですよ。宮水さん。」
二人とも何か説明のできない違和感を抱えながら、かつて瀧がバイトしていたというレストランに入る。辞めたのはつい先月なので、見知った顔が様々な場所から瀧と三葉をじろじろ観察している。店員の誰かに呼ばれたのか、料理を少し勉強していた瀧にまかないを作るついでに料理を教えていたシェフがわざわざ来てくれた。
「おお、瀧!元気にしてたか?そっちは彼女さんか?」
「今朝知り合ったばかりの友人です。途轍もなく馬が合うんでゆっくり話をしようと思って、ついでにシェフの料理が恋しくなったんで来ちゃいました。」
友人、と聞いた瞬間、三葉の心が不自然にざわついた。なぜ?それは分からないがなぜかざわついた。友人という関係がしっくりこない。何か、もっと深いところで瀧と繋がっていた気がする。
そんなことを三葉が考えている間に二人は窓際のテーブルに通された。二人ともコース料理を注文したところで三葉が口を開く。
「立花さん」
「何でしょう」
「変なことを言います」
「どうぞ」
「立花さん宮水さんっていう呼び方、しっくりこなくないですか?」
「確かにそうですね。そういえば敬語もしっくりこない。」
「そう…………よね。ちょっと私を名前で呼び捨てにしてくれ…ない?」
「…………三葉。」
瀧がそう言った瞬間、すごくしっくりきた。
「しっくりきた。」
「俺も言っててしっくり来た。」
「…………瀧……くん」
パズルのピースがはまる感じがした。昔はこう呼び合っていたのだろうか。だが、まだまだ思い出せない。
「三葉、無理に思い出そうとしなくていいよ。焦っても何も始まらない。」
すると、ワインを持った瀧と顔見知りの店員が三葉を観察しながら近づくのが見えた。時間的にもそろそろである。
「三葉はお酒はどれくらい飲めるの?」
「そんなには飲めないな。瀧くんは?」
「俺は結構飲む方かな。飲み会でも大体最後まで残ってるし。」
「そうなんだ。」
グラスにワインが注がれる。二人はグラスを持ち上げ、
「乾杯!」
と唱和した。
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「瀧くんって私より三つ下か〜」
「何か同級生な感じがするよな。」
「そうそう。瀧くん、出身は?」
「東京生まれの東京育ち。完全に都会っ子。田舎の長閑さに憧れるなぁ〜。三葉は?」
「瀧くんが多分憧れるような岐阜の町と呼ぶのもどうかと思うぐらいのど田舎にある町。でも田舎は田舎でやばいからね!コンビニは9時に閉まるし、カフェも本屋も病院もなくて、人の移動が少ないから人付き合いにはこっちより気を配らなきゃならなかったし。高校生のときは東京に憧れたなぁ〜。叫んだことあるもん。"来世は東京のイケメン男子にしてください"って。」
「あはははははは!でもそれってきっとあれだよ、諺であるだろ、ほら、えっと……」
「隣の花は赤い!」
「それだ!」
二人は笑い合う。適度なほろ酔い加減のなか、二人のまるで高校生がするような馬鹿話とワインのグラスは止まる気配を見せない。
「瀧くんは一人暮らし?」
「今親父が九州に出張してるからなぁ。実質そうだよ。母さんをちっちゃい頃に亡くしたから。」
「私もお母さんちっちゃい頃に亡くしたなぁ。私は高校生の妹と二人暮らし。」
少し三葉の目、とろんとしてきたな。瀧は三葉の白ワインを水にすり替え始める。
「妹いるんだ。」
「そ、ちょっと生意気盛りでねー。でもいい子なの。あの子は。」
「妹さんに連絡入れたの?今日のこと。」
「入れたよ。だから大丈夫。」
やべぇ、ちょっと三葉酔い過ぎかな?今の「だから」の発音、だいぶ「らから」に近かったぞ。あ、赤ワイン頼むな!
すり替えれないだろ!
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スマホの時計は夜11時過ぎを示している。三葉は完全に千鳥足になっていた。そんな三葉の肩を支え、瀧は夜道を歩いていた。白ワインをすり替え始めた時にはもう限界の酒量を超えていたのだろう。かなり酒に強い瀧に合わせてグラスを重ねればあまり酒に強くない三葉がこうなるのは目に見えていた。
でも、そんな注意をするのを忘れてしまうほど三葉との会話は楽しかった。そんな時間を1秒でも長く三葉と過ごしたいと思っていた。……そのツケが今の状況なのだろう。今の三葉は隙だらけだ。酔って上気した肌、少し熱めの体温。よろけるたびに横腹に当たる豊かな胸の膨らみ。さらに元が美人でスタイルも良く、性格も良さそうだ。
「俺じゃなかったら襲われてるぞ、三葉。」
瀧は三葉の酔いを少しでも醒ますため、近くにある公園のベンチに三葉を座らせた。その途端、三葉はそれまではぼやぼやしながらも意識はあったが、スースーと規則正しい寝息を立てて寝てしまった。瀧は三葉の隣に腰掛け、三葉の寝顔を見ながら今日1日をふりかえる。
通勤電車で偶然出会って、知らない街を駆け回り、互いの名を知って今までポカンと空いていた、心の穴を塞ぐ最初の1ピースを掴んだ。そして会社で狩野先輩に詰め寄られ、結局流れで人生相談。仕事が終わって再び三葉と合流し、夕食を一緒にとる中で色んな話をした。その時間は、夢のように楽しかった。
そして、俺は今、三葉を離したくないという感情に駆られている。絶対にもう見失ったりしない。そう心に決めた。多分、俺は三葉に恋をした。
三葉が少しぶるっと震えた。もう春とはいえ、まだ夜は冷える。ここで、瀧は本格的に彼女をこれからどうするか迷った。
明日も平日。三葉も瀧も仕事だ。翌日に酔いを残したくないので一刻も早く二人とも床につかねばならない。選択肢は二つ。
1.三葉の携帯を借用して同居しているという三葉の妹に迎えに来てもらう。もしくは家の場所を聞き出す。
2.自分の家に連れ帰って理性vs性欲の仁義なき戦いに身を投じる。
結論を言おう。こんなに無防備な三葉を目の前にしては理性を保てる自信は皆無だ。やってしまってからは遅い。よって答えは1しかない。1にしなければ俺は犯罪者になる!!
ここで壁になるのはいくら酔い潰れているとはいえ、うら若き乙女のスマホを勝手に見ていいのかという点である。後から抗議されたらたまったものではない。最悪ストーカー規制法違反でブタ箱行きもあり得る。悶々と考えていると、自分のものではない携帯の着信音が鳴った。三葉の鞄のなからスマホを取り出す。発信元は四葉。おそらくこれが三葉の妹の名前なのだろう。それにしても三葉の親が姉妹で繋がりのある名前をつけてくれたことに感謝だ。まさに棚からぼた餅と言える状況だ。瀧は少し逡巡したが電話を取った。
「ねーちゃん、いくら何でも遅いぞ。何しとるん?」
「申し訳ありません。三葉と一緒食事していた立花瀧という者ですが、三葉が酔い潰れてしまって、介抱しているところなのですが、三葉と同居されてるんですよね。」
「はっ!?も、申し訳ありません!うちの姉がご迷惑をお掛けしました!はい。三葉と同居している妹の四葉といいます。」
「すみません。お宅の最寄り駅を教えていただけますか?」
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20分後。瀧と瀧に負ぶわれた三葉は指定された北参道駅で降り、改札を出るとツインテールにした高校生と思しき女の子を見つけた。どことなく三葉と目鼻立ちが似ている。彼女が四葉で間違いないだろう。四葉と思しき女の子に近づくと、ねーちゃん!と呼びながら近づいてくる。どうやら正解だったようだ。炊事が得意だという四葉に二日酔いに効く食材や調理法を多少レクチャーした後、三葉を四葉に預けて、ついに家路に就いた。
長かった1日が、ついに終わる。もし三葉に会っていなければ、今日も俺は灰色の1日をただ過ごしていたかもしれない。俺は今日、そんな灰色の毎日を本来の極彩色に戻すジグソーパズルの、最初の、そして最重要の「宮水三葉」という1ピースを見つけた。これから、忘れてしまった何かを探す、長い長い旅が始まるのだろう。その記念すべき第一歩を記した今日という日を、そして三葉に恋心を抱いたこの日を、俺は決して、忘れることはないだろう。
<次回予告>波乱の邂逅初日が終了し、夜が明けた。既にお互いを気にし始め、これまでの暗さが消えた瀧と三葉を、観察者たちは見逃さなかった。
次回 第5話「見守る人々」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。