君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
8月13日午後8時19分、東京郊外の墓地で墓参りを済ませ、瀧と龍一は夕食も終えて2人酒を酌み交わしていた。淡路島へ行った際の土産話や、普段の生活の話などで大いに親子二人で盛り上がっている。
「そうか、お前もなかなか充実した日々を送ってるようじゃないか。」
「まあまだまだペーペーなんだけどね。」
「だがあまり根は詰めすぎるなよ。そりゃ多少は頑張らなきゃならんがな。いわゆるライフワークバランスってやつだな。何やるにも程々が1番なんだよ。」
「ああ。ところで親父はいつまでこっちにいるつもりなんだ?」
「仕事は17からだから、まあ16日の午前中まではいれるかな。ところで三葉ちゃんはいつまで向こうにいるんだ?」
「それが本人もどうするか迷ったまんま行っちゃったんだよな。」
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「おい三葉、向こうにはいつ帰るんだ?」
俊樹が三葉にその問いを不意に投げかけたのは、8月13日午後8時46分、三葉が風呂から上がって髪の毛を乾かしている時であった。
「えっ……、あっ…………その………。」
「なんだ、随分キレの悪い返事じゃないか。」
そこへ着替えを持って今から風呂に入ろうと脱衣所に向かう四葉が横槍を入れた。
「さっさと帰って彼氏とイチャつきたいんやけど、せっかく里帰りしたのにお盆を待たずに帰るのもどうかな〜とか思ってんでしょ?」
「なっ…………。」
三葉は図星を突かれて顔を真っ赤に茹で上げる。
「なんだ、そういうことか。随分ラブラブなんだな。」
「わっ………あっ…………」
「私たちのことは気にしなくていい。明日にでも帰りなさい。」
「えっ………?」
「今度また10月にも来るんだろう?しかも彼氏も連れて。その時にゆっくりして行けばいい。」
「そうやよ。10月4日は火曜日やから前の土曜からぶち抜きで4泊5日で来るんやんか。」
「そ、そうやね………。」
「ただし、四葉はこっちに残っておけ。」
「えっ!?なんで私だけ!?」
「四葉は今年受験じゃないか。10月も正月も帰って来ることは許さん。しっかり勉強して、帝都大学東京の合格証書を持って帰って来なさい。このお盆休みが最後の休暇だと思って。三葉も正月は四葉をしっかり見張って、彼氏とゆっくりイチャついておきなさい。」
「一人で?」
「さっき聞いたんだが、勅使河原さんのところは16日の朝までいるらしい。私が頼んでおくから、一緒にくっついて帰りなさい。」
「ほーい。ということで姉ちゃん、さっさと帰ってた〜っぷり乳繰り合っときよ。」
「ち、乳繰り合うとかイチャつくとか言わんの!!」
三葉の叫びを背中に受けながら四葉は脱衣所に向かって駆けていった。居間には三葉と俊樹の二人が残される。
「ほんまにええの?せっかく仲直りできたとこやのに。」
三葉がなお渋って俊樹に疑問を投げかける。
「正直私も帰って欲しくはない。しかし、仲直りの原因を作ってくれたのは間違い無くお前の彼氏だ。直接謝意を伝えるのは10月にできるが、まあちょっとした礼代わりだ。」
「お父さん………。」
「さ、彼氏にメールでも送っておけ。せっかく早く帰ったのに出かけてていなかった、なんてことになったら目も当てられん。」
「うん、そうする。」
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8月14日午後5時24分、三葉は瀧のマンションの前に到着した。マンションの入り口の前では、瀧と龍一が三葉が到着するのを待ち構えていた。
「瀧くん!」
「三葉!」
2人は取り敢えず再会の嬉しさのあまりに抱き合った。
「急に帰ってくるなんて聞いてビックリしちゃったよ。」
「うん、だって瀧くんに会いたくなっちゃって。そしたらお父さんが行きなさいって言ってくれて。」
「そっか、ちゃんとお父さんと仲直りできたんだね。」
「うん、もう大丈夫やよ。」
「……………おーい、置いてけぼりにしないでくれるかな?しかも公衆の面前でイチャイチャしてくれちゃって……………。」
龍一のその一言に、熱い抱擁を交わしていた2人は顔を瞬間湯沸かし器のように赤らめて一旦距離をとった。
「ふ〜、本当に揶揄い甲斐のあるカップルだな。まあ取り敢えず上がりなさい。ご飯にしよう。」
苦笑してマンションに入っていった龍一に続いて、瀧と三葉も顔を見合わせて肩を竦めながら部屋へと戻った。
「んでれすね〜、瀧くんってば、すんごく優しいんれすよ〜。」
午後7時32分、瀧の制止も甲斐無く龍一に勧められるがままに酒を飲み、すっかり出来上がってしまっていた。
「おい親父、どうしてくれるつもりだ?三葉酒弱いって言ったじゃねーか。」
「たまにはいいぞ〜、普段は仕舞い込んでる本音が出てくることだってあるし、それにいい飲みっぷりだったからつい………。」
「"つい"じゃねーよ。ったく、何も知らねーくせに。」
三葉が酒に弱いのは言うまでもないが、何せ酔うと瀧を煽るかのように乱れるのである。
「たきく〜ん、怒っちゃらめれすよ〜。お父さん、もう一ぱ〜い。」
瀧の予想通りである。龍一に対して文句タラタラな瀧を見かねたのか、三葉は瀧の腕に絡みつきながら諌めようとしているようだが、上気した肌や上腕に当たって存在を主張する胸の膨らみは、瀧の理性を大きく揺さぶっていた。
「うは〜、顔真っ赤ににしちゃって〜。今日あたり貰っちゃいなよ。俺どっか他のとこ泊まるから。」
「うるせー!ぶっ殺すぞクソ親父!!三葉も頼むから離れてくれよ〜。」
「え〜、やだ!ムフフフ〜〜。」
「ほら三葉ちゃん、もう一杯。」
龍一は懲りずに三葉にウイスキーのロックを勧めようとするが、瀧がそのグラスを横から掻っ攫って飲み干した。三葉には水を飲ませてやる。
「おいおい、それは三葉ちゃんのお酒だぞ。」
「うるせー!飲まなきゃやってられるか!どうだ親父、ここは飲み比べでもしようじゃねーか。」
「三葉ちゃんはいいのか?」
「大丈夫だよ。多分もうすぐ寝る。」
瀧の予想通り、その後数分で瀧の腕にもたれかかったまま規則正しい寝息を立て始めた三葉をよそに、瀧と龍一は他愛のない話をしながら杯を重ねていった………。
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8月15日午前7時12分、三葉は二日酔いで痛む頭を起き上がらせた。どうやら昨日は瀧が止めるのも聞かずに龍一に勧められるがままについつい飲み過ぎてしまったらしい。覚えてる範囲でだけでも500mlの○ビスビールの缶を2本空け、ウイスキーのロックも2杯飲んだ。あたりを見回して自分が寝ていた場所が瀧のベッドであったことを確認する。フラつく体を必死に制御してリビングに出ると、意外な光景が広がっていた。
「あ〜あ、こんなとこで寝ちゃって………。」
リビングのテーブルにはからのウイスキーの瓶やビール缶が乱立していた。そしてそこには酔い潰れた屍が2つ机に突っ伏していた。もちろん瀧と龍一である。普段は潰れるまで飲むことのない瀧にしては珍しい光景に、三葉は不覚にも可愛いとか思ってしまう。そして勝手知ったる瀧の部屋のタンスからタオルケットを2枚取り出して2人に掛けてあげた。ついでに机の上も片付けておく。
それらが終わると三葉は浴室に向かい、シャワーを浴びた。そして朝ごはんを作る。二日酔いに効くなめこの味噌汁だ。そういえば、初めて夕食を共にした時もこんなことがあった。あの時は逆の立場であったが、酔い潰れた三葉のために瀧が四葉に二日酔いに効くレシピを教えていたんだっけ。そうこうしているうちに瀧がむくりと起き上がった。
「うっ………。頭痛ぇ………。」
「あっ、瀧くん起きた?」
「三葉か………。大丈夫?」
「明らかに瀧くんの方が大丈夫じゃなさそうやけど?」
「ついつい飲み過ぎた………。うぅ〜気持ち悪〜。」
「頼むからここで戻さんとってよ。もうすぐ朝ごはんできるし、ちょっと座っとって。」
瀧は取り敢えず席に戻った。するといつのまに起きていたのか、龍一が声をかける。
「もうお前三葉ちゃん無しじゃ生きていけないな。」
「そうかもな。」
そこへ三葉が作った朝食が運ばれてきた。
「うん、美味いな。このままじゃ俺も三葉ちゃんがいないと生きていけなくなりそうだ。九州に帰る気が失せてきた。」
「おい親父、うちに穀潰しは要らねえ。年金もらえるようになるまではな。」
「なんだ冷たいな〜。」
3人は顔を見合わせて笑いあった。
せり上がってくる吐き気を抑えながら………。