君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
昨日で女子のグラチャンバレーが終了しました。結果は5位でしたが、長岡と古賀を欠いた中で世界の強豪と互角に渡り合ったのは素晴らしいと思います。特にアメリカ戦は本当にあと一歩でしたし、ロシア戦は勝てただけに勿体なかった気もします。
明日からは男子大会です。忙しくてあまり見れないと思いますが応援しています!
では、本編スタートです!
まだ桜の散りきらない4月中旬のとある土曜日。東京のとあるマンションの一室がまるで戦場のような騒ぎになっている。
「化粧、こんなんで大丈夫?もっと派手な方がいい?」
「声デカイ!ねえちゃんは元が美人やからそれくらいナチュラルでもいいの!……あ、この紺のワンピースなんかどう?白のカーディガンと合わせたらええと思うけど。」
「うぅ〜〜、ほんまに大丈夫かなぁ〜?」
「あたしが知るわけないやん!つべこべ言わんとこれ着て!!」
事の発端は、木曜日に遡る。
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木曜日。その日は少し仕事が長引き、会社を出たのは6時30分ごろになってしまった。今日は三葉の炊事当番だ。一刻も早く家に帰って夕飯を作る必要がある。四葉は平気だと言っていたが、あまり待たせるのも忍びない。
三葉は電車に駆け込み、ホッと一息つく。しばらく電車に揺られていると、最寄り駅が近づいてきた。四葉から何か連絡が来ていないか、満員3歩手前の混んだ車内で器用に鞄からスマホを取り出す。すると、瀧から新着メッセージが来ていた。ドキドキしながらメッセージボックスを開く。
<土曜日、もし予定が空いていればどこかに出掛けませんか?日曜は高校からの同級生と会う約束をしていて、そちらを優先しますので無理なんです。もしダメなら金曜日の夜でもお食事に行きませんか?>
(こ、こ、これって………でぇとのお誘いぃ〜〜!?)
三葉の頭の中でボフンという幻聴が鳴り響く。ドア窓に映る自分の顔は典型的な茹で蛸のように真っ赤になっている。
<もちろん、土曜日に是非お願いします!>
と返信する。やがて電車が駅に滑り込み、ドアが開く。三葉は家に向かって先ほどまでとは違う理由で全力疾走する。
(今、私、なんかのボタン押したら地球滅ぼせる必殺技が出る気がする!!)
四葉は、某アイドルユニットが芸能人ゲストと壁登りとかのゲームを繰り広げる番組を眺めながら三葉の帰りを待っていた。遠くからゴツゴツとヒールの足音が聞こえてくる。どうやら三葉がマンションの廊下をダッシュしてるようだ。程なくしてドアが凄い勢いで開く。
「ねえちゃん意外とはやかっ……ぅうわああぁ!!」
四葉はまるでタックルでもしそうな勢いで部屋に駆け込んでくる三葉をギリギリ回避する。三葉は靴を脱ぎ捨ててそのまま自室に直行し、後ろ手でバタンと扉を閉じてしまった。あまりにも突然の出来事で放心していたが、すぐに我に返った四葉は三葉の部屋の扉をゆっくり開いて中を覗く。すると、四葉の目に信じられない光景が飛び込んで来た。
ーーコレハイッタイナンダ?ホントウニミツハカ?ーー
密かに憧れの念を抱き、学校でもたまに自慢する、私の自慢のおねえちゃんが、なんと………
「〜〜〜〜むぅ〜〜〜フヒヒヒヒ!」
なんという事でしょう!いつもは凜とした三葉からは想像もできない奇声をあげながら、スマホを握り締めてベッドの上でくねくねとのたうち回っているではありませんか!
「ね………ねえちゃん………?」
「あはははは……………へぇ?」
三葉は呆然と立ち竦む四葉に気付く。部屋に微妙な空気と沈黙が降りた。その間に、四葉の眼光は驚愕から好奇の色へと変わっていく。
それを察した三葉が、パンッと手を叩いて立ち上がり、急に猫なで声を発する。
「四葉ゴメンね〜〜、遅くなったね〜〜。今からご飯にするからちょっと待っててね〜〜。」
そう言って三葉は四葉の傍を通り過ぎようとするが、がっちり腕を掴まれる。
「ねえちゃん?家に帰って来るなり夕飯を待つ可愛い妹を差し置いてベッドの上でくねくねするような嬉しいことがあったんだね〜〜。四葉もその話聞きたいなぁ〜。」
四葉悪魔モード発動だ。
「もう晩御飯はカップ麺でいいよお?じっくり聞いてあ、げ、る♡」
その日、三葉は四葉の猛攻に晒され続けるが、何とかかわし切った。四葉は不満そうだったが、この続きは意外にも早く到来することとなる。
次の日もニヤつきが止まらず、仕事にも集中できなきかった。仕事の進みの悪さに、体調不良を疑われる程だ。しかし、ここで完全に恋する乙女モードの三葉を救ったのは堀川であった。自分の仕事を早々と片付けると三葉のフォローに入り、なんとかノルマ達成まで持ってくることができた。堀川には感謝だ。
「構へん構へん。昼飯2回くらいで負けといたるわ。またおもろいもん見せてな〜〜。」
前言撤回。完全に面白がってるだけだ、こいつ。
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そして当日の朝、瀧に変に思われたくない三葉は土曜日に学校のない四葉を叩き起こして騒ぎながら勝負服を選んでいるのである。
そんなこんなで三葉は家を出る。集合は10時に北参道駅だ。駅に着いたのは9時40分だったが、もう瀧は来ていた。
「瀧く〜〜ん!」
「三葉!」
「今日はどこに連れてってくれるの?」
「少し時間できたし、この辺歩こっか。……ていうか実はノープランなんだ。」
「どうして?」
「どこかに出掛けて楽しむのもありだけど、俺は三葉と1秒でも長く話してたいな。」
「そうなんや。実は私もそう思ったったんよ。」
そう言って、三葉は自分が訛っていることに気付く。
「ゴメンね、ちょっと訛っちゃった。もう東京に出て来て8年も経つのに、なかなか抜けなくて」
「待って!」
「えっ?」
「その方言、すごく懐かしく感じる。」
「本当に?」
「逆に標準語の三葉の方が違和感があるくらい。」
「そう?……分かった。じゃ、行こ!」
二人は歩き出す。三葉は標準語を意識しなくなった。まるで高校生のようなバカ話に花が咲く。
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気が付けば、既に正午を回っていた。
「ね、瀧くん。お腹空かない?」
「そうだな。この近くにランチもやってるカフェがあるから、そこでお昼にしよう。」
「瀧くん、色んなとこ知ってるんやね。」
「高校生の頃はカフェ巡りが趣味だったからな。よく親友二人と色んなとこ行ったなぁ。」
「やっぱいいなぁ、東京。私の田舎なんかカフェなんて一軒もなかったんよ。ほんで友達が自販機をカフェ呼ばわりしてたまに缶コーヒー飲んだっけ。ま、最初に言われた時は期待しすぎてたから自販機って分かってめっちゃ怒ったこともあったな〜〜。」
「へぇ〜、本当に一軒もないんだ。………ここだよ。」
「また随分お洒落なカフェやね、こんなとこ初めて……」
「三葉?」
「何でやろ、すっごく懐かしい……。来たことないはずやのに。」
「えっ?」
「………やっぱ分からんわ。」
二人は店の中央付近のテーブルに誘導されて、席についた。それぞれ料理とコーヒーを注文して、一息つく。
やがて、料理が運ばれてきた。三葉はその味に不思議な懐かしさを感じながら瀧に質問する。
「そういえば瀧くんって何の仕事してるんやっけ?」
「建築デザイン扱ってるそんなに大きくない会社。」
「建築なんだ。私の友達も一人建築系の会社に勤めてるんやよ。さっき言ってた自販機をカフェ呼ばわりした男の子。」
「へぇ、そうなんだ。実はカフェ巡りも建築がらみ目的だったんだよなぁ。こういうお洒落な屋根裏の梁とか見て楽しんでた。」
「洒落てるな〜〜。瀧くんは社会人一年目やんね。」
「うん、毎日教育担当の先輩と上司に絞られてるけど、楽しいよ。特に教育担当の先輩が女性なんだけど、俺のヘマを面白がってる割に優しくて。三葉と初めて会った日にも相談に乗ってくれたんだ。そういう三葉は?」
誰でも一度は名前を聞いたことがあるくらいの有名アパレルチェーンの名前をしれっと言う。
「うわ〜、俺と違って超大企業だ〜。」
そういえば奥寺先輩もそこで働いてたような……そうだ、千葉支店にいるんだ。
「でも良いところなんよ。皆優しいし。私も同期に相談したんよ。瀧くんのこと。こき下ろしながらやけどちゃんと答えてくれて。おかげであの日に夕食に誘えたんやよ。」
「その同期って女性?」
「ううん、男。」
途端に瀧の顔が険しくなる。それに気づいた三葉は付け加える。
「大丈夫やよ、恋人おるみたいやし。たまにいちゃいちゃしたメールのやり取りしてんの目撃するから。」
瀧の表情が安堵に包まれる。あぁ、なんて愛しいのだろう。あまりにも可愛すぎて少し揶揄いたくなる。
「あら、瀧くんって意外と嫉妬深いんやね。私の事心配してくれてありがとうね。」
「な…………そ、そんなんじゃねーし!!」
そう反論する瀧の顔は三葉の予想通り、茹で蛸のように真っ赤だった。
<次回予告>デートを続行する2人はひょんな流れから三葉が瀧の家に上り込む展開に。そこで三葉が目にしたものとは。そして、二人の仲は進展するのか。
次回 9月18日月曜日午後9時3分投稿 第7話「デート襲来 後編」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。