インフィニットストラトス 〈THE GEMINI G MYSTER〉   作:ジャッジ

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第三十話 「通りすがりと悪夢」

No side

 

夕方、香港基地近くの雑木林に簪とスコールがそれぞれのISを展開して待機していた。

 

『こちらも準備が出来た、日が沈むのと同時に攻撃を開始しろ。』

「了解…」

『いいか、今回の作戦の出来不出来はお前たちの奇襲にかかっている。

期待しているぞ、じゃあな。』

 

ルーシィからの通信が終了し、簪はふぅ。と一息ついた。

彼女の前には銃架に取り付けられたバスターランチャーに目を向ける。狙撃するためにわざわざ改造が加えられている。

 

「あら、もしかして緊張してる?」

「…そんなこと…ある。」

 

スコールはクスクスと笑ながらそう尋ねる。すると今度は簪が振り返って尋ねる。

 

「ねぇ、どうしてあなたはルーシィさん達に協力しようと思ったの?

あなたの掲げた理想と彼女の理想はかなり違うと思うけど?」

「そうねぇ…」

 

スコールは水平線に沈みかけている夕陽を見ながらふとどうしてだろうと考えた。

 

初めは裏切り者のドーヴァー・ベルマーレに復讐することだけだったが、他の八人と一緒に戦っている間に案外あの世界も悪くないと思い始めたから…か。と自己推測した。

 

「質問で返すようで悪いけど、あなたは何かあるのかしら?」

 

ちょっと意地悪を込めてあえてそう質問する。

すると簪は、少し困った顔をして答えた。

 

「…私のせいで姉さんはいなくなったから。

自分の弱さも、それに伴った悔しさも、臆病で意気地なしな所も全部。無我夢中で乗り越えたいから。

姉さんと一緒にいれば、乗り越えられるような気がしたから…」

「ふふ、なるほどね…そういうの嫌いじゃないわ。

さぁ、日が沈んだわ。ここからが始まりよ。」

「…了解っ」

 

簪はバスターランチャーの引き金を引く。瞬間、極太のビームが基地に向けて撃たれる。

 

そのビームは滑走路にいた輸送機の前を横切る。

コックピットにいた全員はそれが外れたと思い込みひと段落するが、もっと重要なことに気がついた。

 

「やられた…滑走路がめちゃくちゃだ!」

 

コックピットの中にいる誰かが叫んだと同時にミサイルが飛来する。

しかもただのミサイルではない、当たると同時に標的を燃やす焼夷弾だ。

 

それらが次々と基地中に降り注ぎ火災が起こり、一時パニックに陥る。

 

さっき破壊された滑走路にもミサイルが当たりもはや火が収まるまで使うことは出来ないだろう。

 

すぐにスクランブルを意味するサイレンが響き渡り無人機のクランシェが次々と発進する。

 

が、それは緑、赤、黄色の光を撒き散らしながら接近する機体に切り裂かれていく。

 

「スクランブル隊より先に格納庫を壊そう、そっちの方が手っ取り早いからな。」

「おうよ、さっさと終わらせるぞ!」

「っしゃあ!フルパワーでいくっすよ!」

 

ダブルオーザンライザーが緑のGN粒子を推進剤として使いながら、GNバスターソードIIIで二体のクランシェのビームサーベルと切り結ぶ。

 

「くっ、おおぉぉぉぉ!」

 

ヒビヤの咆哮と同時にスラスターが最大出力で噴射され二機とも吹き飛ばされる、そして。

 

「はぁ!」

 

X字に振られたバスターソードがクランシェを切り裂き、新たなる獲物に向けて手当たり次第に切り捨てていく。

 

一方の赤と黄色の粒子を煌めかせながらジンクスIIキャノンと火神鳴が格納庫を狙い撃ちしていく。

 

突然、そこに向けて放たれるピンク色のビームがジンクスのキャノンを貫いた。

 

「うお⁉︎」

「狙撃…あっちか!」

 

オータムはチェーンソーサーを連射しつつ狙撃手を探すが、辺りに光源がなく黒煙のせいで視界も悪い。

 

背後の森林に隠れていたスナイパーがガラ空きの背中に向けて二発目のビームが撃つ。

 

後ろからでは間に合うまい。と高を括っていたが、それは間に入った別の機体に防がれる。

 

「サンキュー、ティターニャ。」

「その名前で呼ばないでよ、私は如月貴音だってば!」

 

ビームシールドを用いてそれを防いだ貴音は辺りにビームガンを乱射する。

たまらずそのスナイパーは上空へと逃げるが、そこに待ち構えていたのは…

 

「計算…通り!」

「まさか⁉︎」

 

簪のショットランサーとスナイパー…ヘイデュナメスのビームサーベルと打ち合いになる。

 

「テメェ、ベルマーレ!」

「久しぶりねオータム。あなたがいると言うことは彼女もいるわよね?」

「ええ、もちろんよっ。」

 

火神鳴のチェーンソーサーと同時にヘイデュナメスに向けて丸鋸のような武器がスナイパーライフルを破壊する。

 

それはヴェルデバスターの新武装、スネークハンドによる攻撃だった。

 

「いろいろと因縁深い相手なのよ。だから、こいつは私達に任せてもらえるかしら?」

「らしいな、そいつは任せた!」

 

スコールは飛び去っていくヒビヤ達を横目で確認しながら両肩のメガランチャー、ビームライフルを放つ。

 

それを軽々とよけたベルマーレは腰のガナーウィザードからオルトロスビーム砲を放つ。

 

しかし、それは火神鳴の硬質残光によって防がれる。

 

「あなた達のコンビネーション…流石、と言った所かしらね。」

「テメェに褒められても何ら嬉しくもねぇんだよ。

第一、なんで裏切ったんだよオイ!」

「なに、今更そんな事を聞くの?愚問ね。」

 

ベルマーレはそう言いながら後ろに並んでいた有人機のクランシェに攻撃命令を出す。

 

「いつの時代だって、強い者についていた方が生き残れるわ。

あなた達といるよりもこっちにいる方がより生き延びやすいって、どうしてわからないのかしらねぇ?」

「自分だけ助かりゃいい…のか⁈」

「当たり前でしょう?だって、足手まといは不必要だわ。」

 

ドッズライフルの猛攻をかわし、防ぐ二人を見ながら嘲笑するかのような声色で言う。

 

アームストロンガーカノンを振り回しながらオータムは彼女の言葉を噛みしめる。

 

たったそれだけの事で、自分たちは裏切られたのか?

改めて見捨てられた悔しさとやり切れなさが彼女の胸に込み上げてくる。

 

「違う、彼女は…いいえ、彼女達は決して足手まといなんかじゃないわ!」

 

スコールはそう言うとビームトライデントを発振しヘイデュナメスのビームサーベルと斬り合う。

 

「何を今更、自分だけよけ助かればそれでいい…あなただってそうでしょう⁉︎」

「今まではね、けれど違う…ちゃんと周りを見て。

仲間を信じれば、きっと答えてくれるはずよ!」

「この…口を開ければペラペラと!ぐぅっ!」

 

スコールはトライデントを捻りらビームサーベルをはたき落とす。

しかし、その隙に無人機のクランシェがオータムとスコールを押さえつける。

 

「いいわ、ならあなたの目の前で彼女が傷つく姿を見なさい!」

「オータムッ!」

 

瞬間、火神鳴に放たれるオルトロス。直撃する……

 

と、思ったその時だった。バチバチもいう音を立てて一機のISが割って入り、オルトロスを防いだのだ。

 

「なっ…あ、あなたは…裏切るつもりなのっ⁈」

「そうだ、これからはこちら側に着くと宣言しよう。」

 

ベルマーレは驚いた声を出し、その機体を見つめる。機体とほぼおなじ大きさの盾、両肩のスラスターバインダー、長大なバズーカを持っているそいつを。

 

そして、その視線を一瞬だけスコールへと向ける。

 

「貴様の仲間を守り抜こうとする覚悟、見事だ。

このアナベル・ガトー、助太刀させてもらおうか。」

 

そう言ってGP02『サイサリス』を纏った男、アナベル・ガトーはその手にビームサーベルを構え、ヘイデュナメスに切りかかっていく。

 

 

 

 

 

一方、滑走路付近で輸送機に積まれているISを奪おうとしていたエイラ、シン、ルーシィ、ラウラ、フォンは無人機と交戦中だった。

 

それを指揮しているのは、かつては簪の専用機だった打鉄弐式の改造機、打鉄参式だった。

 

「ええい、しつこいんだよ!」

 

ルーシィがビームサーベルを参式に振り下ろす。それを薙刀で打ち返し、さらにビームライフルを打ち返す。

 

ルーシィは今日何回目になるかわからない舌打ちをして、さらにビームライフルを打ち込む。

 

「たかが打鉄一機、ゼータ本来の力ならば…!」

「武器出力やその他もろもろの性能は、全てガンダムと同じにしてある。

そんなデルタガンダムもどきで叶う相手ではない!」

「小癪な、ゼータガンダムは伊達じゃない!」

 

さっさと決着をつけて作戦に戻りたい。というのがルーシィの本音だったが、さっきから打鉄参式が邪魔をして突破することが出来ないでいた。

 

「(何か打開策は…もう一人いれば楽勝で倒せるのだが。

ええい、ルルーシュ達はなにをしているっ!」

「…途中から思考がただ漏れだけど?」

「なっ、それでは意味がないではないか…」

 

ビームライフルの連射もビームナギナタによって切り流される。

その間にもどうしようか、とルーシィは考えていた。

 

「要は二対一では負ける気しないのであろう?

だったら、この僕が手伝ってあげるのだよ。」

 

ヒュンヒュン!

空気を切る音が突如飛んできたビームダガーによって奏でられ、打鉄のミサイルポッドに突き刺さる。

 

「な、なんで…はっ!」

 

彼女は素早くミサイルポッドを切り離し誘爆を防ぎ、ダガーが放たれた方を見る。

 

そこには、ヒビヤと同じ緑の粒子を出しながら青い機体…ガンダムエクシアが佇んでいた。

 

「隊長…何をするんですか、裏切るおつもりですか!」

「いやいや、僕は自由を守るために戦うって言ったはずだよ?

彼女たちの方が自由を守ってる気がするからね、そうさせてもらうのさ。」

 

エクシアがそのGNソードを展開してナギナタに一閃、真ん中から切り落とす。

さらに左腕のシールドを荷電粒子砲に突き刺し、ビームバルカンをもう片方のに浴びせながら語る。

 

「君は防御の時、自分の身を守る事だけを考えているから、武器への注意が疎かになる。それが君の弱点さ。」

「さすが隊長…人の弱点を突くのが上手い。

そこに痺れるあこがれます…」

「憧れるのなら僕について来て欲しい物だね。

…スラスター類は傷つけてないからそのまま出ていけるはずだ、僕たちの陣営につきたいならさっさと別の機体に乗り換えたらどうだい?」

 

エクシアのパイロットに言われた彼女はトロトロとその場を去っていく。

そして、振り返った瞬間にルーシィからビームサーベルを向けられてしまう。

 

「…やっぱり、信じてもらえませんか。」

「当たり前だ。と言うよりどういうつもりだ、こちらに組みしても何の特にも成らないぞ。

それよりも、貴様は何者だ。」

「ただの通りすがりですよ。それに、特にこれと言って謝礼は望みません…よっと!」

 

よっとの所で、彼はビームライフルをルーシィの脇を通り抜けて後ろから迫っていたジンクスIIIのランスだけを狙い撃きさらに、後ろにいた無人機をGNソードで腰から真っ二つにする。

 

そして、改めてルーシィを見て手を横に広げて自嘲するように言った。

が、その間にはもうルーシィも戦闘を再開していて彼らなんか全く見ていなかった。

 

「はぁ、さっさと終わらせたいんですよ、こんなくだらないことをね。

何のために生まれたのか、少なくともこんな所で命を落とすためじゃないからね。」

「なるほどな、じゃああれは?」

「あれは…そうですね、因縁の敵との決着、だから見逃しましょう。」

 

ルーシィが言ったアレとは、そう遠くない場所で戦っているスコール達のことだ。

 

サイサリスが放ったビームバズーカはヘイデュナメスの急回避で装甲をかするだけになった。

 

逆に、デュナメスのGNミサイルがサイサリスを襲う。

 

「むぅ…!ぬぉぉぉぉぉ‼︎」

 

ガトーは両肩などの全てのバーニアを使いトップスピードで回避運動を行う。

次々とミサイル同士をぶつけ合い、バルカンで撃ち落としたりして全弾回避する。

 

はぁはぁ。と荒い息を整えつつ、ガトーはビームサーベルを引き抜き、その切っ先をまっすぐベルマーレに向ける。

 

「貴様の…いや、貴様らの愚かな行いが、どれほど地球に害を与えたか…それをわかっているのかっ‼︎」

「地球?害?そんな事、私には関係無いわ。

私はただ、自分さえ生きていければいいのよ、他のことなんてどうでもいいわ!

てか、こんな世界がどうなろうと私の人生には関係無いしね。」

「ぐっ!もはや説得は無意味か。」

「そうよ、彼女に何を言っても無駄。

日本のことわざで言うなら…糠に釘とでも言ったかしらね?」

 

ガトーの隣に並んだスコールは、ベルマーレの言葉を聞いて更に殺気を増す。

 

昔から自己中心的な考えを持っていた彼女だが、ここまでくると、怒りの一言だけでは済まされないほどだった。

 

スコールは右手にウイングゼロのツインバスターライフルに似たロングライフルを展開し、サイガフォンのミッションメモリーをセットする。

 

《Ready》

 

ヴェルデブラスターと呼ばれるそれは、ミッションメモリーをセットする事で使用できる。

その名の通りヴェルデバスター専用武器だ。

 

「オータム、ガトーさん。十秒でいいわ、あいつを引きつけて。」

「オーライ、やってやるぜ!」

「心得た!」

 

オータムはアームストロンガー・カノンを八分割し、背部コンテナからダイ・アームズを取り出し射撃用のダイ・ベータを撃ち、投擲用のダイ・デルタを投げつける。

 

ガトーもまた、背中のミサイルランチャーを放ってデュナメスの動きを封じる。

そしてその隙に…

 

《Exceed Charge》

 

キュインキュインキュイーン…

サイガフォンのEnterボタンを押し、ヴェルデブラスターのチャージが完了する。

 

「そんな物!」

 

デュナメスが腰貯めにガナーウィザードのオルトロスを構え、反撃に出る。

が、それはあらぬ方向から飛んできたビームによって破壊される。

 

撃ったのはクジャクを構えた貴音のX0だった。

 

「借りは返したわよ、スコール。」

「ええ、ありがとうティターニャ…いえ、貴音。」

 

そして、ピンク色の極太ビームが発射されてデュナメスを包み込んだ。

 

この時、デュナメスのSE(シールドエネルギー)はほぼゼロに近く、痛みはダイレクトにベルマーレへと繋がった。

 

「い、いやぁ…いやぁぁぁぁぁぁあ⁉︎

し、死にたくない…死にたくない!お願い助けて…助けてよぉ!」

「世界を愚弄し続けたあなたに、慈悲を上げる者がいると思って?

残念だけど、お別れよベルマーレ。」

「おのれ…おのれぇぇぇぇぇ!」

 

シールドが割れ、銃が破壊され、次々と黒い装甲が溶解していく。

そしてその臨界を超えて…………爆散した。

 

肉片と破片が飛び散りながら三人ともその様子をしばらく見ていた。

ようやく、オータムがため息をついたと同時に二人もまた、一安心していた。

 

「チッ、汚ねぇ花火だ。」

「あんたそれ、どこの王子のマネよ。

そんな事言うやついるかしらね、イマドキ。」

「るっせぇ!一度言ってみたかったんだよ。」

 

貴音はバスターガンをジンクスIIIに撃ちながら、首をすくめる。

 

その時、幾つかの光条が続けてジンクスを貫いていく。

箒のプロヴィデンスと大地の炎雷だった。

 

「貴音さん、助太刀に来ました!」

「ありがと大地くん。さて、さっさと終わらせて帰ろうかしら…⁈」

 

ビームザンバーを構えた瞬間、急に地響きと共に輸送機から爆煙が上がる。

誰かの流れ弾が当たったにしては規模が大き過ぎる。そして、その中から太いビームがラウラめがけて撃たれる。

 

「っ⁉︎ぐっ!」

「無事かラウラ!」

「ああ…だが、バズーカとキャノンが一門やられた。

それより、一体なにが…?」

 

煙が晴れ、徐々にその姿が露わになっていく。

 

その様子は少し離れた所に浮上してきたしているエターナルの望遠カメラも捉えていた。

 

「望遠カメラ、敵機を補足しました!モニターに出します!」

 

オペレーターの声に続いてモニターに煙の切れ目からチラチラと見える敵機が映し出される。

 

双眼の眼を持ちバイオレットの機体色をしたその機体を見て、ルルーシュは絶句した。

 

「え、エヴァ初号機…しかも、シグマシスライフル装備だと⁉︎」

 

爆煙が晴れてようやく姿を見せた初号機はガンダムAGE-3のシグマシスライフルを構え、更に右手にプログレッシブナイフを構える。

 

それを見た瞬間、全員…特にヒビヤは冷や汗を流していた。

もしかしたら、俺たちはここで死ぬのかもしれない…と。

 

第三十話完




久々の投稿です。ですから特に言うことは無し!
では次回予告。

エヴァとの戦闘を横目に、烈花は自分と貴音に似た二人、麗奈と風香に目をつけられてしまう。
意外にあっさり明かしてくれた正体は、決して軽いものじゃなかった。

次回
インフィニットストラトス
〈THE GEMINI G MYSTER〉
第三十一話
「妹達」

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