インフィニットストラトス 〈THE GEMINI G MYSTER〉 作:ジャッジ
「初めての…転生者ですって⁉︎」
束の言葉を聞き、烈花は大きく目を見開いた。
別に、自分より先に転生者がいることはあり得ないことではない。だが、その事をルーシィが知らないのが問題なのだ。
ルーシィも覚えていない。いや、知らない転生者がいる。その事の方があり得なかった。
「そう、転生特典に初号機と完全記憶能力を貰って私は転生した。
いや、どちらかと言えば…憑依者と言った方が正しいのかな?」
そう言って、束はニヤッとしながらエピオンの投影式コンソールを操作した。
その瞬間、周りから銃撃音や斬撃音などの、ありとあらゆる戦いの音が消えた。
「なんだ、無人機が…?」
「全部…止まっただとぉ?」
戦線復帰していたカイトと信太郎もそれに気がついた。
いや、それよりもここで戦っていた機体のほとんどが、無人機だという事実の方が驚いた。
「隊長、無人機が…!」
「どういうこと…まさか提督に何か⁉︎」
「お前達も聞いていない事だと…?」
「一体、何がどうなってるんだ?」
数少ない有人機や、それと戦っていた千冬、金女も辺りの異変を感じ取っていた。
『これで、全ての準備は整った!』
不穏な空気が立ち込める中、束はそう宣言し空を仰ぎ見て声高く笑った。
そしてその時、エターナルでもある以上に気がついていた。
「IS学園地下に、強力なエネルギー反応が!
どんどん地上に上がってきています!」
「予想外過ぎる…一体、あそこで何が起こってるというのだ!」
その時、アリーナの中央部が開き、中から青紫色の機体が現れた。
それは手に紅蓮の槍を持ち、直立不動の姿勢のまま動きはしない。
だが、その機体には多くの者が覚えていた。
なぜなら、先の戦いでは『この機体』の暴走が原因で敵味方が一つになったのだから。
「エヴァ初号機…⁉︎」
「あ、あれは前の戦いで破壊したはずでは⁉︎」
「はんっ!何考えてるか知らねぇが!」
レジェンドアウトフレームの信太郎は、ビームジャベリンを片手にエヴァへと迫った。
高速で迫っているにも関わらず、初号機の方は身じろぎ一つせずただ棒立ちの状態だった。
ーー貰った!
撃破を確信した信太郎は、ジャベリンを振り下ろした。
だが。
「ヴォォォォォン!」
「なにぃ⁉︎」
咆哮と共に、その目をギラつかせた初号機は紅蓮の槍でジャベリンを受け止めた。
「ちっ、んのヤロォ!」
凄まじい程の槍術に、信太郎も後手後手に回っていた。
ストライカーを変える余裕すら与えられず、徐々に追い込まれていく。
そして、ついにエヴァの槍が信太郎の肩を捉えた。
「がっ…あぁぁぁぁぁ⁉︎⁉︎」
アウトフレームの白い装甲が、信太郎の血で赤く染まっていく。
それは即ち、SEが機能していない事を表していた。
「それ以上はさせないンダナ!」
それを見かねたエイラが、ヴァリアブルサイコライフルを放つ。
だが、初号機はA.T.フィールドを発生させて防がれてしまう。
ならば。と腕のユニットを展開し、初号機に肉薄する。
「さぁて、そろそろ仕事に戻って貰おうかな!」
束が言ったと同時に、まるで待っていたかのように無人機が一斉に攻撃を開始した。
その一撃が、左腕のバンカーユニットを貫いた。
「なんなの、いきなり動きが⁈」
「特殊な無人機システムのようです!急ぎましょう!」
「おおっと。残念ながら、君達は私と楽しく踊ってもらうよ!」
束のヒートロッドが二人の間を横切る。
烈花はすかさずビームライフルショーティーを連射するが。それを軽い動作で避けた束はビームソードを一閃、ショーティーを真っ二つに切った。
烈花は咄嗟にビームサーベルを構え束の斬撃をいなしていくが、剣術での格闘戦は束の方が勝っていた。
「それそれそれそれ!」
「くっ、きゃっ!」
ヒートロッドで足を掬われ、体勢を崩した所にビームソードが迫る。そこへ。
「行きなさいファンネル!」
セシリアが射出したフィンファンネルが束を阻み、烈花から引き離した。
立て直した烈花もまた、ビームライフルを呼び出して応戦する。
「何が目的なの、それだけの力を持ちながら、ここまでこの世界を弄ぶ理由はなに⁈」
「ふっふ〜ん。それはね…」
軽々と二人の射撃を避けながら、束はニヤニヤと顔を歪ませている。
余計に腹が立った烈花は、リニアスナイパーを取り出した。
素早く狙いを定め、トリガーを二度引く。
二発の音速弾が束に迫る。だがそれを臆する事なく、ビームソードでそれを切り裂いた。
その正確さに、烈花は思わず化け物…!と呟くほどだった。
「造作もないよ、例えば…こんなのとかさぁ!」
そう言うと束は、なんの迷いもなく後方に向けてヒートロッドを振るう。
「きゃあ!」
それは、後ろから迫っていたセシリアを弾き飛ばした。
どんな奇襲をかけようと、どんな攻撃をしようと全くと言っていいほど、攻撃が当たらないのだ。
そんな二人を嘲笑するかのように、束はほくそ笑んだ。
「ふふ、もうすぐ最後のピースが出揃う。
そしてこの世界は終わり、新しい世界への幕開けとなるのさ!」
「どういう事よそれは!」
烈花はビームピストル、セシリアはビームライフルを呼び出して応戦するが、予知していたかのようにかわされる。
「そもそも不思議に思わなかったの?
君がこの世界に来た時には、当たり前のようにガンダムが存在し、
それはどこから入ってきたと思う?」
「どこからって…そんなの、今はどうでも!」
しびれを切らした烈花は、ビームサーベルを携え束に斬りかかった。
「ふふっ、君は実にバカだな。」
素早く後ろに回り込み、エピオンのビームソードでテスタメントのディバインストライカーを破壊する。
続いてヒートロッドでHI-νストライカーの右ファンネルコンテナを破壊した。
「セシリア!」
「ぅぅ!ならば、どこから来たと言うのです!」
セシリアはビームライフルで反撃しようとするも、その前にバルカンでそれを破壊される。
「私がかき集めた技術なのさ。ありとあらゆる世界をから、何十年もかけてね。」
それを聞いて二人は言葉を失った。
いや、唖然とも言い換えられるだろう。
「世迷い言を!ISが生まれたのはほんの十年前、何十年もかかって集めたなど…
そもそも!あなたは織斑先生の幼なじみでしょう?ならば同い年のはずですわ!」
「…確かにその通り。けど、一つだけあるのよ。物理どころか、宇宙の法則すら超越する方法ならね。」
束の今までの言葉やこの世界にいるエースパイロット達、それら全てを繋ぎ合わせると、一つの答えが出てくる。
だが、それは本当に可能なのだろうか?それが唯一の疑問だ。けどそれも、目の前にいる女が話してくれるだろう。
「何度も世界を繰り返す。終わらさずにループさせる事。
どのタイミングで起こるか知らないけど、それ以外に考えられない。」
これが烈花の答え、付け加えるなら異世界同士を繋ぐなんらかの機械があるはずだ。
それを聞いた束は、またもニヤァと笑った。
「ピンポンピンポーン!大せーかい!
世界を繰り返しつつ、技術やエースパイロット達を集めて私の力にしていく。
それが答えさ、ゆくゆくは世界をこの手に掴むために…かな?」
馬鹿げてる。と烈花は思った。
一体それで何人の人生が狂った事か。そう考えると怒りがふつふつと湧いてきた。
と、その時。轟音をたてながら近くの校舎に何かが激突した。
土埃が舞う中から、所々血が滲んだ信太郎が姿を現した。
「信太郎⁉︎」
「バカヤロォ!さっさと離れろ!」
「え、ぐぅ!」
「お姉様!きゃあ!」
信太郎に続き、烈花とセシリアも何かに吹き飛ばされて校舎に激突する。
そのショックで、二人のベルトが外れてISが解除された。
「ゲホッ…一体、何が起こったのよ。」
「…あいつだ。」
壁に寄り添いつつ、信太郎は束の横を指差した。
そこにはまるで、騎士のように傅いているエヴァ初号機がいた。
「尋常じゃねぇスピードだ。追いつくどころか追うので精一杯だ…」
「それも当たり前。なんたってこの束さんが直々にカスタマイズした愛機なんだから。
それに、私はこの機体の恩恵を受けて世界をループさせる事が出来るんだよ。」
「なに?ループだぁ⁈」
烈花は信太郎に簡単な事情を話す。最初こそ半信半疑だったが、聞いていけばいくほど納得していった。
「最初はほんの偶然だった。セカンドシフトする一歩手前のエヴァにロンギヌスの槍が刺さった。
そして、私は興味本位でそれを抜いた。するとどうだい!気がついたら自分が転生したその時に戻ってたのさ!」
自慢げに過去の話をする束。しかし、その笑みはすぐに消えた。
「そんな最中だよ。君が…ううん、君たちが転生してきたのは。
それが一番のイレギュラーだったのさ、だから…消えろ。」
そして、初号機が動いた。左手に新たな槍を装備し、烈花に向けて投擲する。
「お姉様ぁぁぁぁ!」
「間に合えぇ!」
セシリアと信太郎は急いで駆け寄ろうとした。だが、ISを展開していないのは大きかった。
既に槍は烈花の近くにまで迫っていた。逃げる間すら与えてくれない。
そして、床に真っ赤な大輪の花が咲いた。
第三十七話完
傷つき倒れた仲間、矛盾を承知しつつも戦う戦闘狂。
全てのカードが出揃った。そして、ここに一つの物語が完結する。
次回
インフィニットストラトス
〈THE GEMINI G MYSTER〉
最終回
「未来へ届け」
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