千歌たちが東京から帰ってきて2日後の午前中、1隻の船が内浦へとやってきている。船の船首の方に鮮やかな赤い髪をなびかせている1人の女の人。そこにいるだけで気品さを感じとることが出来るほど美しい。よく分からないけどすごく有名な画家が描いた絵画のようだ。
船着き場に船が到着するやいなや、その女の人は颯爽と降り、大きな荷物を持って歩いていく。旅行の人かな?だったら十千万にでも泊まるのだろうか。それにしても大きい荷物だな〜。
まぁ、そんなこと考えてもなんにもならないけどね。ただあの横顔、どこかで見たような気がするんだよな〜。う〜ん…どこで見たんだろ。…まぁいいや、そろそろお店開けなきゃだし。
そう思い、ダイビングショップへ向けてウエットスーツを着た青い髪の少女は小型ボートで水飛沫を上げながら戻っていった。
*****
はぁ…アイツがそろそろ着いちまうな…。なんでこのタイミングなんだよ。明日から少しの間俺、居ねえのに。なるべく早く用事終わらせて帰ってくるしかねえか…。
数分後、ピンポーンとチャイムが鳴った。本当に来やがった。まぁ、来ちまったもんはしょうがねぇとゆっくりと腰を上げ玄関を開ける。
「来てあげたわよ」
「うるせー、別に呼んでねぇよ」
高校生のときから変わらない。真姫が上から目線で「〜してあげたわよ」と言い、一護がぶっきらぼうに「うるせー、〜ねぇよ」と返すこのやりとり。高校生のときならここでお互いムスッとして終わりなのだが、5年ぶりの再会という事で少し懐かしい気持ちになり、笑みがこぼれる。
「…久しぶりね、一護」
「あぁ…久しぶりだな、真姫」
〜〜〜〜〜
「とりあえず座ってゆっくりしろよ」
「えぇ、そうするわ」
もともと大人っぽい容姿だったけど、やっと年齢と容姿が同じぐらいになったって感じがするな。気品って言うのか?お嬢様感もマシマシだな。
「そういやまだ聞いてなかったけどよ、いつまでここにいんだ?」
「そうね…いつまでがいい?」
「なるべく短めがいいな。いや、なるべくっつーか短めがいい」
「なんでよ」
「なんでも何もおめー、一応元μ'sだろうが。未だにそれなりの認知度はあるっていう自覚あんのか?」
「まぁ、それなりには…ね」
「それに、あんましバレて欲しくねぇんだよ」
「あの子達が私たちμ'sに染まって欲しくないから?」
あぁ。それにバレちまったらアメリカから帰ってきたときみてぇになるぞ?と言うと、それは大変ね。と少し困った顔で返事をした。
「だったら名前変えた方がいいんじゃない?西木野真姫なんてそうそういないでしょ?」
「そうだな…名字と名前どっち変えるよ」
「どっちでもいいんじゃない?考えるのは大変だけど」
ほんとだよ…考える身にもなれよな。ったく…真姫、まき、まーき、う~ん…。
「あっ、───ってのはどうだ?」
「え…私は別にいいけど…一護はそれでいいの?」
「いいんじゃねぇの?別に勝手に名前使われたぐれえじゃ怒んねえよ。そんな器のちいせぇ人じゃねぇよ」
「いや、そういう事じゃないんだけど…。…本当にいいのね?」
「いいって言ってんだろ。何回も言わせんじゃねえよ」
ってか、明日の準備しねえと…何がいるんだけっけか。
「おい、明日の準備すっから手伝ってくれ」
「はいはい、しょうがないわね」
この日は真姫の荷物出しと片付け、俺の明日の準備で1日が終わった。昼飯んとき真姫が作るって言って作ったのはいいんだけどよ、相変わらず下手くそだった。昔よりはマシだったけどありゃねーぜ。チキンライスにケチャップ入れ過ぎなんだよ。どんだけトマト好きなんだよ。俺がいねえ間、誰かに飯作り頼んどくか…?
*****
翌朝、一護は出かけていった。どこへ行くかは言わなかったがお土産を買ってきてくれるみたい。期待はしないけど楽しみだわ。
昼時になると、青い髪のポニテ少女がやって来た。何か病気、というわけではなさそうね。一護に用かしら。
「あの…一護せんせに言われて来たんですけど」
ん?一護に言われて来た?私、何も聞いてないんだけど…。
「なんて言われたの?」
「えと…ご飯を作りに来いとだけ…」
後で連絡したところ、昼担当と夜担当がいるみたい。朝は簡単にインスタントか何かで済ませてなるべく料理をするなと言われてしまった。心外だわ全く。
「そう…ありがとう。…えっと、名前は?」
「すぐ隣のダイビングショップに住んでる、松浦 果南です」
「果南ちゃんね、よろしく」
「お姉さんのお名前はなんですか?」
「私は、西木野”真咲”って言うの。よろしくね」
〜オマケ〜
一護「ん?よくよく考えたら誰か人がいる時、真姫のこと真咲って呼ばなきゃいけねえのか?うわっ…きっちぃ…」
一心「なにボソボソ言ってんだ?早く学会行くぞ」
一護「うっせー!わーってるよ」
一心「学会が終われば酒〜♪飲み会〜♪」
一護「おいコラ、目的がもう変わってるぞ髭だるま」