少し変わった乙坂有宇   作:々々

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ここから数話重くなります。
ですが書きたい話はそこなので、お付き合いお願いします。








Fallin'

 僕は星の楽しみ方が分からない。

 歩未とは良く天体観測に来るが、僕は基本的に望遠鏡を使って星を見ない。その運搬役だ。暇だからと肉眼で夜空に浮かぶ星を見るにしても、星座なんて中学校の理科でやった程度しか知らないからただの眺めるだけだ。そこにはなんの感慨もない。

 ならどうして行くのか、そんなお願い断ったら良いじゃないかと尋ねられればその答えは決まっている。

 

 ここから見える星は近くの街の光のせいであまり見えない。どうせなら街の光を見てた方が面白いんじゃ無いかと思ってたら、後ろの方から草木のガサガサと揺れる音が聞こえた。

 振り返ると友利が立っていた。

 

「ここにいたんすか」

「僕がどこにいようが勝手だろ?」

「山んなかでいきなりいなくなられると、こちらとしては何処に行ったか気になるもんでしょうが」

「それは違いない」

 

 腰を掛けていた岩に友利も腰を掛ける。一人だと余裕がある程度の幅しかないのに、そこに友利も座るせいで狭くなる。シャンプーの匂いが鼻腔を擽る。

 

「高城から聞きました」

「僕がここにいるって?」

「冗談はやめてください。あなたに昔の事を語ったと聞きました」

 

 風呂上がりの時の話か。高城が怪しい機関に襲われそうになった所を友利に助けられた話。人道的でない事をやったそうだが、そこはぼんやりと流されてしまった。

 その話から分かったのは高城がどうして友利の行動に何も言わないのか。自分が犠牲になっても、それでも友利を()()()と決めたのかだ。

 

「あなたはどう思いましか。正直言って、あの時のあたしは今のあたしからしてもどん引きものなんですが」

「別になんとも」

 

 本心からの言葉だ。

 ()いて言うならそんなこと聞きたくなかった、だ。二人の過去を聞いてしまったからにはそれを漏らしてはいけないし、二人のその気持ちを尊重しなくちゃならない。

 知より無知の方が生きやすい。

 

「なんとも……ですか……」

「あぁ」

 

「あなたはどうして!」

「……どうしてそんなにも割り切れるんですか……あたしには分かりません」

 

 夜の森の静寂を切り裂く友利の声。今まで聞いたものです一番心のこもっている、熱い声だ。

 割り切っていると友利言った。そんなことは無いと僕は思っている。

 

「歩未ちゃんから聞きました。あなたは手の届く範囲の物を守るので精一杯だと」

「そんな高尚なもんじゃない。僕は僕のためにやってるんだ。歩未を大切にするのも、歩未から好かれたいからじゃない。歩未の笑顔を見ると僕が幸せになるからだ」

 

 僕が幸せになるのも一番ではない。誰かといつか交した約束を守るための手段でしかないのだ。

 

「それがあたしには分からないんです‼ あたしは手の届かない所でも、自分が動いて困っている人を助けたいんです‼ どんな手段を使ってでも」

 

 それは友利の覚悟だった。

 同級生に嫌われようと、全生徒に嫌われようと自分と知らないところで誰かが悲しんでいると思うだけで心が痛くなる。それはまるで自分(友利)の知らないところで、誰か()が苦しんだ経験があるからか。

 僕には分からない。

 

「でも気づいてしまったんです。歩未ちゃんからあなたの話を聞いて」

「僕の話?」

「あたしは助けて満足してるだけなんだって。兄に出来なかったことをしてあげてるって、満足してるだけなんだって」

「…………」

「その証拠がこの傷です。結果だけを求めたあたしへの罰です」

 

 例えば有働への脅し。黒羽妹を助ける際に最初に思いついた友利の作戦。自らを犠牲に、危険を顧みないその作戦は言われれば助けることにのみ焦点を当てたものだ。

 

「あたし分からなくなってしまいました。助けてもらってからずっと続けてきたこの活動が正しいのか、続けていいものなのか分からなく……なってしまいました」

 

 いつも真っ直ぐな友利の瞳からぽろぽろと、澄んだ大粒の涙が流れる。自分でも思いがけなかったようで、急いで裾で涙を拭うが涙は止まらない。

 

「すみまっ……せん。泣くつもりはなかったんですっ!でも、でもっ……」

 

 いつも強気で、己を曲げない彼女の涙に不謹慎だが見惚れてしまった。泣き顔を隠すように体育座りになり膝に顔を埋める。

 しくしくと泣く友利に何も出来ない。いつも憎まれ口を叩く仲だが、こんな時はそんなこと関係ない。友利の言葉を借りるなら、友利は既に僕の手の届く範囲で守るべき対象なのだ。

 

「友利! おいっ! 友利奈緒!!」

「なんですか……っ」

「お前の夢はなんだっ! 」

「あたしの……夢……」

「そうだ。もし能力者全員を助けたらやってみたいこと、お前なら持ってるだろ」

 

 その言葉で気が付いた。友利の泣く顔が見たくないんだと、こいつと軽口を言いあっていたいんだと。それなら慣れないことをやってもいいだろう。偶には慣れないことをするのも一興だろう。

 そんな風に自分に言い聞かせている事には気づかなかった。

 

「ZHIENDのPVを……撮ることです」

「ZHIEND?」

「あたしがいつも聞いてるバンドです。兄が好きなバンドでした。今は能力者のせこい行動を撮っていますが、いつか撮ってみたいんです」

 

 弁当を食べてる時も、生徒会室から出る時もいつもイヤホンを付けている。何を聞いてるのかと気になるときもあったが、そのバンドをずっと聞いていたんだな。

 

「いい夢だな」

「心にも思ってないことを言わないでください」

「なんだと」

 

 いつの間にか友利は顔を上げ笑っていた。そんな笑顔も出来るんじゃないか。

 

「あーあ、久々に泣いてしまいました。それもあなた何かに見られてしまうなんて」

「何だよその言い方は」

「ですがお陰でスッキリしました。自分の中でも踏ん切りがつきましたし」

 

 その何ともない言葉が心地が良い。

 

「なんで笑うんすか?」

「なんとなくな」

 

 やっぱり僕らはこんな感じなのが丁度良い。

 

 

 

 

---生徒会活動記録---

 

 あのときは本当にびっくりしてしまいました。自分でも抑えがつかなくなって乙坂有宇に……乙坂さんに当たってしまいました。

 自分がどうしてあんなになってしまったかは分かりませんが、自分の中でも踏ん切りがついたと言いますか、スッキリしました。これは乙坂さんには感謝しなくてはなりません。

 ……言葉にはしませんが。

 あの瞬間、乙坂さんが兄のように心強く思えてしまいました。まぁその一瞬だけで、次の瞬間からはいつもの憎たらしい同級生に戻っていましたがね。

 

 あれからしばらくは乙坂さんと話をしました。そこで、彼がどうしてあのような思想を持っているのか少しわかった気がします。理解はしませんし、その思想にあわせて行動させるなんてこともありません。

 でも、知ることが出来たと言うのはとても大事です。

 

 

 スーパーで買い物中に考えた、能力者を捕まえる手筈をもう一度確認しテントに戻ることになりました。その時にあたしは彼に音楽プレイヤーを渡しました。

 古くなったので買い替えたいのもありましたし、彼にZHIENDのことを知って欲しいと思う気持ちもありました。むしろ普及の方が目的なんですけどね。

 

 

 ちなみに能力者は翌日保護できました。

 

 

 

 

 

 

 




新たな評価と感想ありがとうございました。
最初はお気に入りが減って、すこし気も滅入りましたが感想とお気に入りの増加でやる気が上がりました。
これからもよろしくお願いします。
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