少し変わった乙坂有宇   作:々々

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地の文は友利→有宇→友利の順


夕食

「それはなんの為に」

「あなたのように力を悪用している奴らを脅すためです。あたしたちはそういう存在ですから」

「何が『貴方のように力を悪用している』だ。お前の方が暴力を振るうために能力使ってるじゃないか」

 

 乙坂有宇の真っ当すぎる正論に舌打ちを漏らす。

 

「まぁ、いいや。僕は協力するって言ってもどうすればいいんだ? まさかお前と一緒の学校に入れとかじゃないよな?」

「その通りです。星ノ海学園へ転校していただきます」

「その姿を消す能力で僕を観察してたなら分かるだろ? 僕ら兄妹はそんな金はない。何より歩未を一人置いていくわけにもいかない」

「知ってます。なので、入学金も授業料も引越し代諸々もこちらで支払います。中学校も学生寮も併設しているので一緒に来てください」

 

 『略奪』と呼ばれる能力が何を奪い取るのかまでは分からない。取り敢えずソレが分かるまでは私達の手元に置いておきたい。もしかたらと幾つか候補は上がっているが、まだ高城には話していない。

 乙坂有宇は腕を組み考え事をしている。

 

「分かった。お前らが安全な組織かは計画の穴から分かってるし」

「一言多いですが、協力感謝します。学校や親族への連絡はあたし達の方でするんで、あなたはポストに入っているはずのパンフレットを見て引っ越しの準備をしといてください」

 

 能力を発動して、乙坂有宇の視界から消える。これからアイツと活動をするのは骨が折れそうだ。ため息を吐いて足元を見る。足元の草を踏みつぶす、なるほどコレであいつはあたしの接近に気がついたわけだ。

 今後は気を付けて行動しなくてはならない。

 

「高城に乙坂有宇の家の郵便受けにパンフレットを入れておくように連絡しておかないと」

 

 

 

 

「とっても大きいのですぅ〜!」

「団地みたいだな」

 

 僕と歩未がそれぞれ付属の学生寮を見た時の感想だ。エントランスは広く、これは団地と称したのを謝らなければならない。

 光が多く取り込まれている明るいエントランスには、友利と学ランを着た奴が一人。引っ越しの手伝いをすると連絡があったが、手伝いをする人を連れて来るまでは想定してなかった。

 

「お久しぶりです」

「僕は会いたくなかったがな」

「あたしもですけどね」

 

 確信した。僕はコイツとは絶対にソリが合わない。

 

「まぁいいや。荷物自体は部屋まで運んでくれるから、食器とか小物を並べてくれ」

「……」

「わかりました! 任せてください!!」

 

 行くぞ歩未と言って、エレベーターに乗って部屋に行く。歩未は部屋が沢山あるのが面白いのか笑顔で廊下を渡っている。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃーん!」

 

 自分の部屋の設置を終えたころ、歩未の部屋から声が声がした。

 

「なんだ?」

 

 部屋に行くとまだダンボールから持ってきたものを取り出していた。高城と呼ばれた男子は台所辺りを片付けていて、友利は歩未の手伝いをしている。

 

「あゆみの部屋も手伝ってー」

「分かったよ」

「妹さんには優しいんすね」

 

 友利のいちいちうるさい一言は無視する。毎回毎回僕の発言に反応しなくていいのに。

 歩未が指をさした先には『望遠鏡』と書かれ丁寧に梱包された箱がある。せっせと取り出して組み立てる。毎回歩未にせがまれやっている内に簡単に組み立てられるようになっていった。

 

「すごいのです!!」

 

 終えると同時に歩未の声が耳に届いた。なんだと思ってそちらに目を遣ると、友利が歩未の周りをただ歩いている。一瞬何をしているのか意味が分からなかったが、能力を使っていたらあんな声を出すような感じにはなりそうだ。

 実際に「友利おねーちゃんが現れたり消えたりしてるのです!」なんてのが聞こえる。どうやら歩未には友利が見えていない時があるらしいが、僕には普通に見えている。

 

「遊ぶんだったら帰らせるぞ」

「お兄さん怖いね〜」

「手伝ってもらってるのにね〜」

 

 コイツ! 歩未を味方につけて僕に対抗するつもりだ。心が綺麗すぎる歩未にはコイツのどす黒さが分からないのか。僕も売り言葉に買い言葉だから本当にどす黒いかは知らない。

 まぁいい。

 

「友利。飲み物ってどこで買える?」

「一階のエレベーター前にありますが」

「そこだと2Lのやつがないだろ。コンビニとか、出来ればスーパーの方が安いから良いんだけど」

「それなら寮を出て左に数分歩けばスーパーがありますが」

「分かった。少し出掛けてくる」

「了解なのです!」

 

 あと少しで作業が終わりそうな割烹着を学ランの中に着込んでいた男にも、ひと声かけてからスーパーに向かう。寮の部屋は完璧に寮生が自炊する事を前提とした構造だから、スーパーも学生向けに安かったらいいのだが。

 

 

 

 

「これで終わりなのです!」

「歩未ちゃんお疲れ様」

「あゆみー! 手洗ってからテーブルの準備頼む」

「わかったー。友利おねーちゃんも一緒に行こっ」

 

 乙坂有宇は外から帰って来てから、台所で料理をしているようでした。途中「甘いカレーは大丈夫か」と尋ねられましたが、歩未ちゃんに合わせるなら分かります。てか、料理できたんすね。

 この一日で分かったことですが、乙坂有宇は妹の歩未ちゃんには甘過ぎる。シスコンと罵ってやっても嬉々として受け入れそうです。

 

「何か足りないものはあるか?」

「ないよー」

「私もありません」

「あたしもないっす」

「それじゃ食べてくれ」

 

 目の前に出されたのは普通のカレーでした。見た目は少し赤っぽく、質問とは反して辛い様に見えます。乙坂有宇と歩未ちゃんはパクパクと口に運んでいる。

 高城はと言うとあたしを見てくる。乙坂有宇はまだ、あたし達の味方か分からないから不用意な事をするなという私の命令に従っている。ここは二人同時に食べようとアイコンタクトで提案し、アイコンタクトで返答が帰ってくる。

 えいっ!

 

「「甘ぁぁぁぁい!」」

「やっぱり有宇お兄ちゃんはピザソースの使い方が上手だね」

「照れるじゃないか。ピザソースの上手い使い方はメインに持ってくんじゃなくて、あくまで隠し味として使うことだ」

「全然隠れてないじゃないっすか!!」

「僕達の家庭の味に文句つけるのか!?」

「カレーの味は家庭それぞれですが……」

「それにしてもこれは無い!!」

 

 ピザソースって甘いものじゃないのか? 赤いカレーは見た目を裏切り、甘い。ただひたすら甘い。

 

「じゃあ食うな。そして金を払え」

「勝手に食べさせておいてなんなんすか?」

「勝手にじゃないね。ちゃんと歩未に聞くように言ったからな」

 

 ワイワイと叫んでいるうちに時間は過ぎて行った。




有宇と友利の仲↓ ピザソースへの愛↑

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