少し変わった乙坂有宇   作:々々

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有宇→友利→有宇の順




末路

「有働とか言ったっけ。アイツを警察に突き出さなくて良いのかよ。まぁ警察に下着の念写とかどう説明すれば良いか分からないけどさ」

「寧ろその警察に捕まる前にアタシ達が向かう必要があるんです」

 

 有働にあれこれ友利が説明して活動は終わりとなった。行きと同じように三人で寮前まで移動した後で、友利に「報告書の書き方を教えるので付いて来てください」と言われた。こちらも聞きたいことがあった為、歩未に帰りが遅れると連絡して付いて行くことにした。

 書き方を教わり今回の件を友利の指導の元、書き終えた。その報告書の最後の欄に『能力者への対応』とあり、『生徒会長の友利奈緒が指導し様子見』と書いた。

 そして思った疑問を友利に投げかけた。

 

「どうしてだ?」

「……貴方にはあれこれ言うより、見せた方が早そうですね。これからまた時間をいただけますか」

「別にいいけど」

 

 前半何を言ったのかは聞き取らなかったが、そういった友利の顔は酷く暗かった。

 

 

 紐を引くと暖かくなる牛タン弁当は美味しいですね。アレはなかなか良い発明だと思います。隣のこいつは嫌そうな顔をしていましたが、あのピザソースで頭をやられたのでしょう。買っていたサンドイッチも食べてませんし。

 お腹も膨れていい感じに余裕が出てきました。少し話でもしましょうか。

 

「目的地に着くまでもう少しあります。なので少しお話しましょう」

「お前から話しかけてくるなんて珍しいな」

「別にいいじゃないですか。少し私も緊張しているんです。付き合ってくれてもいいじゃないですか」

 

 どうせ病院に行ってから伝えることになるんです。この人には伝えてしまいましょう。

 どうにも、こいつは能力に対しての危機感が少なすぎます。自分ではそれなりに対策をしているようですが、結構ザルですし。

 自分以外の能力者についての配慮は全く以て足りな過ぎて困っています。

 

「これから向かうのは私の兄の所です」

「兄がいたのか」

「はい。そして兄も私達と同じ能力者でした。

 兄も私も母に土下座をされ、とある学校に行くことになりました。そこで私は身体検査と称して様々なことを実験をされてました」

 

 あれから母とは会っていないが、初めて土下座をされた光景はまだ脳裏に鮮明に浮かび上がります。

 兄の能力に気づいた奴らの勧誘が無ければきっと今頃は……。くだらない妄想は今は要りませんね。

 

「それでも沢山の友達に囲まれて私は幸せだと()()()()()()()。不満だったことは兄に会うことが出来なかったことです。毎回友達が邪魔をしていたのです」

 

 今思えばどうして違和感に気付かなかったのか、ただそれだけです。もう少し早く行動に移せたなら何か変わっていたかもしれません。

 

「そんな生活をしていた時、ある人が私達を助けに来ました。その人は頼りになる方で、今もお世話になっています」

 

 隼翼さん。彼が私達を兄妹を助けてくれなければこの世は地獄のままだったしょう。

 

「お兄さんは……?」

「目的地に着いたみたいですね。降りますよ」

 

 隼翼さんが兄のために用意してくれた病院に着きました。隣に座る彼はここでも表情を変えず、いつもの世界に飽きているように冷たい目をしています。

 

 

「ここです」

 

 病室の前には『友利一希』と書かれている。

 話の流れから友利の兄の名前だろう。

 

「では行きますね」

 

 引き戸を開けると男性の叫び声が聞こえた。

 文字でもあらゆる物を使っても表現できないような叫び、そして一定のリズムで破られ叩かれる枕と布団。

 僕はその様子を呆然と見ていた。友利は表情を変えないで彼に近寄った。

 

「あーあ。また布団が駄目になった」

 

 そこにいつもの友利の姿はなく、ただ冷たかった。

 ナースコールを押し、鎮静剤を打たれた兄を連れて友利は外に出る。僕も付いていく。

 

「先ほどの行動は作曲なんです。唸って聞こえるのはメロディ、主旋律なんです」

「どうしてこんな事に」

「私達が行った学校は能力開発の科学者が運営している所でした。兄はそこで実験台をさせられていたのです。

 兄の能力は『楽器を介して空間を自由に振動させられる』ものでした。その能力を利用すれば通信をジャミングできるし電波ジャックも可能と科学者は考えた」

 

 室内を出て、敷地の裏側に出る。

 まだ歩みを止めない。

 

「その結果がこれです。能力者として価値のなくなった兄は捨てられましたが、今はこうして療養に努めています」

 

 だから能力者に対してあんなにも一生懸命だったのか。能力に対しての意見も変った、そして何よりも友利に対する理解が深まった。

 それでも、あの無理矢理解決させるのは如何なものかとも思っている。

 

「ここです」

「すごい」

「すごいっしょ」

 

 丘に建てられた病院の裏側。夕焼けが輝き、海がキラキラと光っている。でもそこには見惚れなかった。

 

「はぁ、やっぱり興味を示さない」

 

 友利の顔は夕焼けとは逆に暗い。

 しかし、その顔に僕は見惚れてしまった。

 

「科学者にとって能力者は乾電池のようなもの。それが切れたら別の能力者で実験すればいい。私達でも救えていない能力者は沢山いるんです。もしかしたら私達も、なんてこともあります」

「……」

「今日の用事はこれで終わりです」

 

 

 

 

「大変な思いをしていたんだな」

 

「同情っすか。やめてくださいよカンニング魔のくせに」

 

「そうだな確かに僕らしくもない。でも、明日は我が身になるのかと思うとな」

 

「歩未ちゃんのことですか?」

 

「あぁ」

 

「大丈夫っすよ。そうならないためにあたしを助けてくれた人も、そしてあたし達も活動しているんですから」

 

「だな。頼りにしている」

 

「……はい」

 

 

 

 

「むーーーーーーっ!! 遅いのです遅いのです遅いのです!!!」

「遅くなるって連絡したじゃないか」

「それにしても遅すぎるのです!」

 

 家に帰ると歩未がぷりぷり怒っている。可愛らしいその顔を一撫でし、落ち着かせる。部屋に移って学ランを脱いでラフな格好に着替えて、リビングに戻る。

 もう怒りを忘れニコニコした歩未が野菜ゴロゴロカレーを運んでくる。一口入れるだけで分かる、うまくピザソースの赤さを隠してはいるがピザソースらしさが残っている。旨い!

 

 

 ご飯を食べ終え色々として寝る時間となる。

 歩未はベランダで天体観測をしていた。

 

「日課だろうけど、明日も学校あるんだから早く寝なきゃダメだろ」

「今日は彗星が見れたので感無量で興奮しつつ寝付けますー!」

 

 興奮したら逆に寝れなく無いか?

 一緒に望遠鏡を中にしまい込む。

 

「でも本当に見たい彗星は別にあるのです!長期彗星なのですー! 100年に一度しか来ないんだー」

「そんな彗星があるのか」

 

 都会から離れた場所にあるため、澄んだ空には星々が輝いていた。




互いに何かしらの信念を持って行動している。対立すると酷く激しいが、同じ方向を向ける時はとても大きな力となる。
恋愛へのフラグとして少しばかり意識させてみたり、素直じゃない恋愛を書くのは楽しいが少しもどかしい感じ。すれ違いは苦手なのでありません。



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