少し変わった乙坂有宇   作:々々

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発火

「せっまい場所に揃いも揃ってうっぜぇな!」

 

 僕は知らない。先ほどまでほわほわしていた歩未の好きなアイドルが、荒くれた不良みたいになっているなんて僕は知らない。

 ましゅまろおいしい。歩未に買って帰ろうかな。

 

「ちっ!」

 

 おそらく美砂(?)が右手を掲げるとその手に火が灯った。その火は炎となり部屋中に広がり始める。友利はカメラ越しにそれを見て喜んでいる。

 他二人は先ほど蹴られた帽子男に抱きつき怖がっている。僕はと言えば、特に何もしていない。炎は美砂の向く方向、つまり自分が座っていない放たれている。近くの皿にマシュマロを載せて皿を近づけて焼きマシュマロを作ろう。

 

「うわ〜! すっごい能力!」

「落ち着いて美砂? それじゃ皆焼き殺されるから」

 

 だが流石にこちらまで火がやってきたので止めることにする。自分が焼かれるのは嫌だ。

 

「……そいつはセンスがないな」

 

 その一言を言って炎を消した。炎が消える際、周りの家具に少し移っていた火すらも一緒に消していた。範囲がどれくらいなのかは分からないが、支配下の火はすべて操れるのだろうか。

 だとすれば今まで見てきた能力の中でも、強い部類に入るのではないか。これまで見てきた能力は、コレとはっきり言えてしまう欠点が存在していた。

 

「『降霊』の能力は黒羽さん、どっちを言ってるのか分からないんで柚咲さんでいいですね。『降霊』は柚咲さんの物で、主導権は『発火』能力を持つ美砂にあるんですね」

「なんか文句あんのかよ!」

「そんなこと言ってないだろ!」

「アァ!?」

 

 さっきの言葉だけでここまで切れる必要も無いだろ。

 高城を見てみろよ。憧れのアイドルの顔でヤンキーみたいな事言ってるから、壁に頭を付けて現実逃避してるじゃないか。

 

「貴女とこの後ろの二人の関係は?」

「生きてた頃にやんちゃしてた私の仲間だ」

「じゃあどうしてお前らは黒羽……柚咲さんが追われているのを手伝っている?」

「私が連れて来て、説明した」

 

 いつから黒羽妹は『降霊』に目覚めたのか聞こうとするところで、友利が再び質問した。僕の質問はこの事件に大きく関わらないから別にいいが。

 

「それで、なぜ妹さんが追われているかご存知ですか?」

「こいつだ。どっかの現場で柚咲が間違えて持ち帰っちまったテレビ局の大物プロデューサーのもんだ。それにメールが届いて柚咲が読んじまった」

「妹はそこまで重く考えてないが、金の使い込みやばい連中との付き合い。サツに持っていけば間違いなくしょっぴかれる内容だ」

 

 なるほど、と言った友利が隣に座る。普通に()けるから押して来るな。

 

「今更スマホを返したところで無事では済まないし、警察に渡したとしても黒羽さんがそのプロデューサーを売ったことになり、芸能活動ができなくなる」

「私はそんなの嫌ですよ!」

「黙れ高城!」

「ならテレビ局ごと燃やしてやる」

「バカか!そんなことをしたら妹さんが逮捕されるわ!」

 

 僕はさっきからコントでも見ているのだろうか、やけにテンポがいい。

 

「てめぇ何様だ!? ああん!?」

「てめぇこそ妹さんを少年院送りにしてぇのか!」

「くっ……それはセンスがないな」

 

 女子がそんな顔でメンチを切るなよ……。

 しかし美砂からは何故か同じオーラを感じる。なんでだろうな。

 

「ならどうするってんだ?」

「プロデューサーに渡すしか無いだろうよ」

「それが難しいって話じゃないっすか。話聞いてましたか?」

「聞いてたよ。どうせお前のことだから『脅せばいいっすよ』なんて言うつもりなんだろ?」

「その通りですけど。あとモノマネがちょっと似てて苛つく」

 

 やっぱりな。コイツなら能力を使って脅すだろうなって事は簡単に予想出来てしまう。ましてや美砂の能力が強力なために、それを使おうとしていることさえ分かる。

 でもそんな所を見られでもしてみろ。友利が一番嫌う科学者に発見される可能性が高まるんだぞ。

 

「もう少し冷静になれ」

「貴方は逆に冷たすぎるんです!」

「……私はどうすればいい?」

「私達が考えるまで待機ということで」

「センスが無いが、まぁ仕方ないか」

 

 頭をだらんと下げると、ピリピリとした雰囲気からふわふわした雰囲気へと戻る。これで美砂から柚咲さんに戻った感じか。

 

「あれ? 今また私眠ってましたか?」

「お疲れなんですね。大丈夫っすよ」

「あっ! マシュマロが焼きたての焼きマシュマロになってる!」

 

 

「それで、どうするつもりなんですか?」

 

 黒羽との接し方が分からなくなって項垂れている高城を建物に置いてけぼりにして、僕と友利は外に出てこれからについて話をすることとなった。

 

「さっきのスマホをプロデューサーに渡す」

「だから今更それじゃ遅いって話なんですよ」

「その時に交渉する」

「交渉ぅ? それって私が考えてた脅しと何が違うんですか。あそこで止めたってことはそれなりの考えがあるんすよね?」

 

 友利の顔には「そんなこと出来るのか?」みたいなのがありありと浮かんでいる。

 

「まずはお前の考えを教えてくれ。そこから僕が手直しをしてそれなりのものにしてやる」

「何様のつもりなんですか?」

「カンニング魔だよ。人の考えを使うのは得意なんだ」

 

 

 今回の件のオチ。

 友利の案は僕らの能力と、あの二人に防火対策をとらせた上で美砂の能力を使って燃やしてプロデューサーを脅すというものだった。

 これはやらせないで良かった。なんと言っても僕に乗り移らせて、持っている武器で戦闘不能にさせるほどの攻撃をさせるつもりだったらしい。その痛みなど受けたくない。あの高城にやられた攻撃でさえ痛かったのだから。

 

 それだと悪目立ちして、目撃者の口止めが難しくなる。なので僕は高城を使ってプロデューサーだけを連れ出して、お話することを提案した。その場にはプロデューサーを連れて来た高城と柚咲に扮した美砂だけで、二人に交渉を任せることに。

 残りの僕らはやって来た付き人を倒す事にした。

 

 結果だけ言えば作戦は成功。黒羽は芸能界を辞める必要がなくなり、プロデューサーとの()()と上手く行ったいそうだ。

 だが、今回は前の有働の件とは違い能力者以外の関係者がいた。そのため、黒羽には星ノ海学園に転校してもらうこととなった。

 転校ということは彼ら二人ともう会えなくなることとなり、もう一度美砂と別れることを意味する。赤髪がそれならと美砂に想いを伝えることとなり、僕らは離れてその行方を見届けた。

 

 

 

 

 

 だが、今回の本題はそこではない。

 能力についての推察が進展した。

 友利は言った『特殊能力は思春期特有の病』だと。僕が尋ねると黒羽は言った『眠り病が始まる前、お姉ちゃんに助けを求めた』と。

 僕らはそれぞれ悩みや考えを持っている。僕は他人の視点から自分自身を見てみたいと、黒羽は姉に助けてもらいたいと。その悩みの具現化が能力なのではないか。

 それならば僕や友利みたいに完全でない能力と、美砂や有働の様に欠点のない能力が存在することの説明がつくのではないか。

 それはさらに他の人の意見を聞く必要がある。




少し私生活が忙しくて更新遅れてしまいました。
なので、少し終わりがあやふやになってしまいました。すみません。
ですが、取り敢えず脳内プロットではいい感じに最終回まで完成したのでエタらず頑張って行きたいと思います。




今回も誤字報告、感想、評価、お気に入り登録と沢山有り難うございました。これからも頑張るので、応援していただけると嬉しいです。
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