Final FantasyⅦ 歴史の音色、星の詩   作:子鈴

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前回のあらすじ
ナナキ達の前に現れた人物はシェーン・アンライバルドと名乗り、自分はタークスだと伝えた。彼と一緒に来た赤ん坊をジェルミナルと名付けた後、ナナキの提案で町へと移動する。


第三話 カームまでの道中

ナナキの背中に乗ったシェーンは久しぶりに心地よい風と豊かな大地の匂いを感じていた。

仕事柄血生臭い事と謀略と狡猾が当たり前の世界に生きてきたため澄んだ空気は彼を癒していく。

油断してしまうと眠ってしまい、ナナキの背中から落ちてしまいそうだ。

 

頭が落ち着くようになってきた時に、それと同時にさっき見たミッドガルの風景に疑問が湧き上がってきた。

どう見ても人が離れて十年、二十年どころじゃない。森の中に埋もれるには最低でも百年は必要。まだ幼獣であるナナキが成獣に成長していて、しかも孫までいる。もしかしてここは自分の知っているようで知らない世界なのか。

 

次々と浮かび上がってくる疑問に耐えられなくなりナナキに質問した。

 

「そういやぁ、なんでミッドガルがあんな風に遺跡化になっているんだ?」

「一番の原因は『メテオ災害』の仕業だからなんだ」

 

シェーンの知らない単語が出てきたので鸚鵡返しをした。

 

「メテオ災害?メテオ災害って何?」

「メテオ災害を知らないのかっ!?」

「知らないも何も始めて聞いたんだから」

 

これにはラニとハウオリも反応した。何故ならメテオ災害は『ジェノバ戦役』に関わる重要なキーワードだからだ。誰もがジェノバ戦役の話は必ず一度は耳にした事があるので当然メテオ災害の事も知っている。まだ幼獣のハウオリでさえ知っている事なのにシェーンは全く知らないなんておかしいのである。

 

「……本当に知らないの……」

「知らないって。知っていたら耳に入っているし、本社のお膝元だから救助活動に借り出されているよ。けどそんな出来事は全くなかった(・・・・・・)んだ」

(どうゆう事……)

 

嘘を付いている様にも見えないしその様子だと本当に知らないようだ。タークスであるのにメテオ災害を知らないなんてナナキの中で疑問が沸いたけれども、これ以上は話が平行線になりそうだったので一先ず置いといて、今度はこちらから質問した。

 

「ジェルミナルの両親は如何した?」

 

ナナキの質問にシェーンは顔を俯いて沈黙した。しばらくして「……分からない……」と答えて、ポツリポツリと自分の気持ちを口に出していった。

 

「……あの人達にはいますぐにでも逃げて欲しい……自分達の楽観さが……自分自身の首を絞めているか……さっさと気づいて欲しい……一箇所での生活が……綱渡り状態だって事に……目を覚まして欲しい……逃げて逃げての生活してくれたほうが……まだ……マシかもしれない……」

 

自分の鬣を掴む手が強くなっているのを感じたナナキ。彼が感じている悲憤慷慨の悔しさがこちらにも伝わってきている。シェーンはここに来るまで一体何があったんだろうかと同情すら覚えた。

何かを思い返したらしく暫くはシェーンの無言が続いた。

 

無口となったシェーンに不思議に思ったハウオリが話しかけると苦笑した。

 

「シェーンさんはその人たちの無事を祈っているの?優しいんだね」

「優しいのかな……僕って。そうじゃないよ、ただあの人は取り返しの付かない過ちを犯したんだ。頭ではこれ以上攻めるなと分かっているけど心のほうがね……。だってそのせいで僕は八年もの間、大切な人をずっと探してるんだ。」

「大切な人?」

「うん……たった一人の家族なんだ。ある時僕の仕事の関係で偶然の再会してね、三ヶ月の間一緒に一つ屋根の下で暮らしていた」

「どうして三ヶ月なんだい?」

 

聞いていたラニがシェーンとハウオリの会話に挿んできた。

 

「僕の任務がね、三ヶ月と言う期限付きだったから。それ以降その人とは会ってないんだ。連絡はトップシークレットに関わっているためすることも出来ないし。でも僕にはその人のやっている事が最初っから嫌な予感でしかなかったんだ……。」

「嫌な予感?」

 

今度はナナキが聞いてきた。

 

「みんな変だったんだ……。まるで何かに取り付いて必死に完成させようとしていた……関係者は誰一人不気味な異様さに気づいていなかった……けど中にはそんなの関係ないと言わんばかりのやつもいたのも事実……。僕のたった一人の家族もそれに関わっていたんだ……。ただ……その人の場合は他にも事情があったみたいなんだ」

 

シェーンはその人の事情を分かっていたがあえて話さなかった。

 

「で、まともだったのが先輩だけだったんだ。あの時の僕にとってはただ一人尊敬と信頼が出来る人なんだ。先輩にその人の事をお願いしたんだけどたぶん失敗したんだと思うんだよな……。だけど三ヶ月の短い期間だからこれしか方法がなかったんだ。二年の月日が過ぎた時に唯一尊敬する先輩と同時期に死んだと伝えられてもどうしても信じられなかったんだ。その人に関連する情報なら小さな手がかりでも欲しくて会社に内緒で独自捜索していたのさ。ようやく当時の関係者の一人だったあの人の現代の居場所が分かって話を聞くために仕事を抜け出して会いに行ったわけ。そしたらさ……家族を作っていたんだ。心の底から顔面を殴りたいと思った。でもやめた……殴っても元に戻るわけじゃないからね」

 

ハハハと乾いた笑い声がシェーンの口から出てきた。

 

「そんな話おいら達にしゃべっていいの?」

「ナナキ君達は口が固い気がするから。」

 

彼がナナキ達にこの話をする事に決めたのは己の利発さと勘と経験だけじゃない。決定的なのがあるカラクリ(・・・・・)を備わっていたからだ。

 

「安心しろ、俺は誰にも話さないぜ」

「ハーも。おじいちゃんは?」

「誰にも言わないよ、シェーン」

 

それを聞いてシェーンは「ありがとう」って礼を言って微笑んだ。

 

「あっ」

 

明るさを取り戻したシェーンは前方にあるものに気が付いた。

 

「あれがそうかい?」

「そうだ。あれはカームだ」

「ええ~~~~っ!?あれがカーム!?」

 

ナナキの言葉に驚くシェーン。なぜならカームは町が城壁に囲まれたほのぼのとした小さな町が彼が知っているカームの姿。

しかし目の前にあるカームと言われた町はそんな雰囲気はなく完全に大都市だったからだ。自分の知るカームとは似ても似つかぬ姿なのでパニックを起こしかけたが今はそれ所じゃない。

 

「ナナキ君悪いけどスピード上げてくれない?急いでジェルミナルのためにミルクとオムツをゲットしたい」

 

眠っているうちに買い物を済ませたいのはナナキも同じなのでそのリクエストに答えて走る速度を上げてカームに向かった。

 

 




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今回は会話中心でした。

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