デジモンストーリー オールドフレンド   作:Tomato.nit

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デビモンとの決戦に向けて準備万端のユウジ一行。
修行を終えたデジモン達の成長と新たな出会いがこの先どんな物語を生むのか。


第十三話 花の島

「解析の結果だが現時点でデビモンのいる確率が最も高い場所が判明した」

 町に戻った僕たちを出迎えてくれたフライビーモンから朗報が告げられる。

「データの送信先はここから東にある孤島“フラワーランド”。その名の通り植物が生い茂る島で植物型のデジモンが多く生息している所だ」

「ふむ、フラワーランドか」

「ティラノモンは行ったことあるの?」

「ああ、アルケ二モンの一件あとは一人で長い間旅をしていてな。その時に訪れた場所の一つがフラワーランドだ」

「あるけにもん?なんのこと?」

 事情を知らないメグとグレイモンはきょとんとした顔をしている。無理もないか。

「その話は追々してやろう。今はデビモンが先だ。続きを頼む」

 ティラノモンが先を促し、メグはしぶしぶという様子で、フライビーモンの話に耳を傾ける。

「では。このフラワーランドだが、少し前から不穏な噂が流れているのだ。なんでも、植生が変化したため住み辛くなってしまった。そのような訴えをするデジモンが各地に移住しているそうだ」

「植生ってそんなに簡単に変化するものなの?」

「デジタルワールドの生き物は現実世界に比べれば環境適応は得意なものが多い。しかし、植生というレベルで変化するには大規模な気候変動などが起こらない限り有り得ないだろう。周辺でそのような事態は観測されていない以上、人為的なものだろうな。この場合の人為はデジモンの意思を指すが」

 そこまで、言われるとフライビーモンの言いたいことは概ね伝わる。

 要するに、何者かが、大規模な実験を行っているということ。

 そして、その何者かは言うまでもなくデビモンだろう。

 

「次の目的地は決まったということだな」

 指をバキバキならして既に臨戦態勢のグレイモン。相変わらず気が早い。

「それはそうとユウジ、預かっていたスマートフォンにいくつかアプリを追加しておいた。道中にでも確認してくれ。いずれ役に立つこともあろう」

 フライビーモンがスマホを手渡してくる。

 修行の前に「少し試したいことがあるから預からせてくれないか」と言われたので渡しておいたものだ。正直ちょっとした便利グッズ程度にしかならないから少しの間無くても全然平気だった。

 フラワーランドに向かうのは僕とメグとグレイモンにティラノモンの四人。なんかいちいち一人と三匹っていうのもめんどくさいし、数える時なんかは人単位でいい気がする。

 修行が終わって、町に帰ってきた時バードラモンやドリモゲモンといったクロックタワーで救出したデジモン達に出くわした。

 僕たちがクロックタワーから戻ってすぐの頃は傷の治療や体力の回復に専念するため、町の施設に収容されていたそうだ。

 山籠もりにの間に傷は大方癒えた様で、当分はリハビリなんだとか。

「オイラ達も一緒に戦いたいんだけど、今のままじゃ足手纏いだから町で大人しくしてるようにって先生に言われちゃったんだよ」

 ドリモゲモンは寂しそうな申し訳なさそうな声でそんなことを言う。

「みんなが悪い訳じゃないんだし気にしないでよ。それにデビモンはボクたちがぶっ飛ばすから」

 いつになくヤル気に満ちたメグ。デビモンのことになると少し熱くなるのは仕方のないことなのかな。

「戦闘には参加できないが、私にも一つ手伝えそうなことが」

「手伝い?」

「ああ、なにせ私はバードラモン。空を飛ぶのは得意でな、成熟期のデジモン程度なら運ぶことが出来る」

 ということは。

「メグがグレイモンかティラノモンを運んでくれるなら、大概の場所は空路で行くことが可能だ。力になれるだろうか」

 頼もしい提案だ。空路が使えるなら、移動時間は大幅に短縮できる。素早く移動できれば、それだけデビモンを追いつめることができる。

「えー、ボクが空飛ばないといけないのか。ボクは他のデジモンの上に乗って飛ぶのが好きなんだけどな」

「まったく。帰ってきたらどこにでも連れて行ってやる。だから行きは自分で飛べ」

「言ったね。どこでも連れて行ってくれるんだね。約束だよ!」

 グイグイとバードラモンに迫っていくメグ。

「ほんと、誰かに乗っけて貰うの好きだね」

「ユージもそのうちこれの魅力が分かってくるはずだよ」

「散々空は飛んだけど、病みつきになることはないんじゃないかな」

 ちょっと怖いし。

「うーん。じゃあ、今度僕のとっておきのスポットを紹介するよ。そしたらきっと好きになるはずだから」

「楽しみにしとくよ。病みつきになるかどうかは置いておくとして、とっておきのスポットはどんなものか見てみたいしね」

「楽しみにしててね。どうやって連れて行こっかなー。エアドラモンかなメガドラモンかな。悩む~」

「あれ、メグが連れて行ってくれるの?てっきり、他のデジモンに乗っていくのかと思ってたけど」

 するとメグは目を見開いて、「その手があったか」という顔をしている。

 連れて行くことで頭がいっぱいになっていたらしい。

 そんなやり取りを笑いながら見ていたバードラモンは

「では、出立の時は声を掛けてくれ。何処へでも送り届けよう」

 ドリモゲモンたちを連れて颯爽と去っていったのだった。

 

 クロックタワー事件の産物として、ボロボロになってしまったアンドロモンは現在も修理中だ。なんでも、必要な材料がなかなか揃わず、修理が難航しているらしい。

 そんな彼の見舞いも兼ねて訪問したところ、何と右腕を手渡された。手を手渡すっていうのはどういう状況なんだろうか。

「クロックタワーから町に来るまでの間、俺の腕を使っていただろう。そのことをフライビーモンに話したら、いっそのことそのまま使って貰えばいいのではないかという話になったのでな」

「いや、でもそれは流石にアンドロモン困るんじゃないの?腕無くなっちゃうわけだし」

「困らないことは無いが、修理が完了するまでは碌に動くこともできないのが現実なのだ。それならば、ユウジと共に一矢報いる手伝いをしてくれた方が右腕も本望だろう」

「そういうことなら有難く借りておくよ」

「ああ、そうしてくれると嬉しい。フライビーモンと共に少し改造してね。試しに腕に装着してみてくれ」

 ハンドパーツの内部は中空になっていて、丁度腕が差し込めるようになっている。

 早速腕を押し込んでみると、各部のシリンダーやアクチェーターが動き、がっちりと腕に固定される。

 昔のロボットアニメの合体シーンのような格好良さがある。

 ガシャガシャと音を立て、内部が腕にフィッティングされ、終わりを告げるように各部のスリットから蒸気が噴き出す。

 ヤバい。今の感動するくらいカッコいいぞ。

「その表情から察するに気に入ってくれたようだね」

「うん。これは正直めちゃくちゃカッコいいと思うよ。ね、メグもそう思うよね」

 すぐそばに居るメグの方を見てみると、びっくりするくらい目がキラキラしている。

「ユージ、もう一回。もう一回やって!」

 どうやらこちらにも大受けらしい。

「ウム。それを使うにはもう一つ必要な手順があってね。君のスマートフォンでアプリを起動し、そこのスロットに差し込んでくれ」

 丁度、二の腕辺りにスマホを差し込むためのスロットと思しきものがある。

 フライビーモンがインストールしてくれたアプリ。その中に、腕のアイコンがある。これを起動しろってことか。

 声に出すのは流石に恥ずかしいけど、心の中では叫んでみる。

「スロット イン!」

 カチリとスマホを差し込むと、アプリ上に様々な情報が表示されるとともに、ハンドパーツが自由に動くようになる。

 まるで自分の腕のように違和感なく動く。

 すごい!

「以前は私が制御していたのだが、旅に同行できないのでね。制御は内蔵のコンピューターと君のスマホにお願いすることにした。バッテリー駆動なので、充電は必要だがメグ君がいれば充電も問題ないだろう」

 腕をグーパーして感覚を確かめる。基本的な動作は自分の腕を使うのとまったく遜色なく行うことができる。

「これって、この前みたいにスパイラルソードも出せるの?」

「もちろんだ。操作系統が君に一任されているので以前よりも高出力での展開も可能だ。アプリにコードを打ち込めばロックが解除され、意のままに操ることができる。コードはSPSW。スパイラルソードの略称だ」

 アプリを操作するとコードの認証を要求される。

 S P S W

「コード認証、スパイラルソード展開可能」

 電子音が成功を告げ、ハンドパーツには青いエネルギーがうっすらと纏わられる。

 後は僕の意思で展開することができる。

 シュン

 腕を振り抜き、エネルギーを束ねた刀身を形成させる。

 確かに、思い通り。

 伸長も短縮も思いのままだ。

 これで僕も少しは戦える。

「ありがとうアンドロモン。これで僕もみんなと一緒に戦えるよ」

「ああ。しかし、無茶だけはするなよ。扱う力に飲まれてしまえばその先には破滅しかない。それに君の体はあくまで人間のものだ。それは肝に銘じておくことだ」

「うん。約束するよ」

 アンドロモンがほとんど動かない左腕を差し出してくる。

 僕はそれを右腕で握り返す。装着された機械の右腕を通して、確かに握り返してくる感覚が感じられる。

「健闘を祈る」

「うん。行ってくるね」

 また、負けられない理由ができた。

 この勝負は僕たちだけのものじゃない。この右腕はその一つ。僕らの双肩にはみんなの思いが乗っているんだ。

 

 出発の準備が整う頃には昼過ぎになっていた。

 

「なんだかんだでもうこんな時間だな。おい、グレイモン。貴様の方は準備は済んでいるのか」

「無論。俺は所詮山賊、この町に残すものなど無いのでな。まあ、こんな雰囲気も悪くはないし、どこか懐かしい気もしたな。」

「そうか。この町が気に入ってくれたのなら俺も嬉しいが」

「ああ、悪くない。少なくとも、ここに住むデジモン達がデビモンの餌食になるのは許せん。その程程には愛着が湧いた」

「ふっ。随分と気に入ってくれたようだな。共に戦うには心強い」

「背中ぐらいは預けさせてやるさ」

 二匹の恐竜は随分仲良くなったようだ。なんだかんだで、これまで一緒に死線を潜り抜けて来ただけのことはある。

 

「みんな。そろそろ行こうか。フラワーランドに」

 コクっと頷くデジモン達。

 

 バサバサと羽ばたく音が近づいてくる。

 熱い。

 これは、バードラモンか。

「出立の準備は整ったようだな。では、ティラノモンは私が運ぶとしようか。メグ、グレイモンは任せたぞ」

「ええー、仕方ないか。ベタモン進化!」

 渋々進化するメグ。交換条件もあることだし、今回は大人しく頑張ってくれると嬉しい。

 燃え盛る炎の翼と紫青の羽が空を覆う。

 近くで見ると二匹ともやっぱでかいな。あれだけの巨体を空に浮かべる二組の翼は力強く風を切り裂く。

 

「それじゃあ、出発だ!」

 相変わらず出発の音頭はメグが取るみたいだ。

 それを合図に空を舞うバードラモンとメガドラモン。僕はメガドラモンになったメグの肩に乗っかている。グレイモンは少し申し訳ないけど、尻尾で巻かれている。

「なあ、メグ。もう少し良い方法は無いのか。なんというか落ち着かんぞ」

「うっせえなあ。文句あんならどこでも勝手に掴まってろよ。腕が疲れて落ちても知らねえぞ。あ、地面に落ちたらそれこそ落ち着くかもしんねえな」

 上手いこと言ったと思っているんだろう。ドヤ顔のメグ。

 グレイモンは若干怒っている。額に青筋が浮かんでいる。

 そして僕たちの横ではバードラモンがプルプルしている。

「お、おい。バードラモンどうした。さっきから飛行が怪しいぞ。なんだか酔ってきたぞ」

「だって、お、落ち着くって、落ちたら、落ち着くって、ぷくく」

 あれ、もしかしてウケてる?

 バードラモン、ゲラだったのか。

 ふらふらと蛇行するバードラモンそのおかげで、ティラノモンの赤いはずの顔はみるみる青くなっていく。

 気の毒だ。

「バードラモン!頼む!落ち着くんだ。そうだ、深呼吸するんだ。ゆっくり、吸って、吐いて」

 必死になだめるティラノモン。

「す、すまない。もう大丈夫だ」

 何とか平静を取り戻したバードラモンだが、その表情は明らかに笑いを堪えている。それこそ、少しの刺激で破裂しそうな風船みたいに。

「そうだ、こんな話を知ってるか。俺も町で聞いただけだから詳しくは知らないんだけどよ、教会にガルダモン居るだろ。あいつずっと頭巾被ってるじゃねーか。なんでか知ってるか?」

「いや、聞いたことは無いな。あれはシスターの恰好だろう?教会だからあの姿なのではないのか」

 バードラモンが食いつく。だめだよ食いついちゃ。確かに僕もその話は気になるけど、確実にメグの罠だよ。

「いや、もちろんそれも理由の一つだ。でもな、もっと深い理由があるらしいんだよ」

 いったん間を開けるメグ。

 つられて、バードラモンが息を呑む。

「実はな、ガルダモン、頭の毛が禿てるらしい」

 ・・・・・・・

 あ、マズイ。バードラモンの顔が信号機みたいに色が変わってる。

「く、はっ」

 もはや呼吸もままならない様子。

「は、はげっ、はげて」

 とぎれとぎれの呼吸に言葉が混ぜっていく。

「く、あ、あははははっははははははははははh」

 遂に噴き出したバードラモンはティラノモンを道連れに真っ逆さまに落下していく。

「うあああああああああああああああああ、メグ!ゆるさんぞおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

 ティラノモンの断末魔が空に響く。

 流石に地面に激突することはなく、体勢を立て直したみたいだけど。

 ティラノモンはご立腹だ。

「ねえ、メグ、その話本当なの?」

「いや、適当にでっち上げただけだ。それにしても、バードラモン笑いの沸点低すぎんだろ」

「それに関しては全く否定できないんだけどさ。これ以上やったらティラノモンに怒られるよ」

「さっきので、既に恨み節が聞こえたけどな」

 確かに、許さんぞって叫んでたなあ。

「お、バードラモン戻ってきたな。」

 炎の翼をはためかせバードラモンが大空に舞い戻ってくる。

「おい、メグ。次にバードラモンを笑わせたら容赦せんぞ」

「悪かったよ。次は耐えられるくらいにすっから」

「笑わせるなと言ってるんだ!」

 途端に空が賑やかになる。やっぱり数が増えると旅は賑やかになるし、賑やかな方が楽しいかな。

 楽しんでいる場合じゃないんだろうけど、無事にこの件が終わったらみんなでのんびりした旅もいいかもしれない。

「さあ、フラワーランドが見えて来たぞ!」

 バードラモンに掴まれたままのティラノモンが発見の狼煙を上げる。

 空から見えるその島の全貌は小さな円と大きな円がくっついたひょうたんのような形をしており、島の中心には森が広がっている。

 空からでも分かる程、様々な色の花が咲き誇っていて、島全体がパレットのように優しい色に覆われている。

「綺麗だね」

 自然とそんな感想が漏れる。

「ああ、美しいな。しかし、話に聞いた通り以前とは様子が異なる」

「そうなの?」

「以前は今のように様々な色の花が綺麗に区画ごとに咲いていたのだ。まるで、島に模様でも描くかのようにな。今は、見ての通り斑に咲いているだろう。それに、島の中心の森はあそこまで規模は大きく無かったな。どうやら樹木の種類も異なる様だ」

 一目見ただけで、そこまで分かる程に変化しているのか。

 となると、デビモンのラボは真ん中の森にあると考えるのが妥当。

「バードラモン、島の端に着陸しよう。下手に上から近づくのは危ない気がするから」

「了解だ。丁度あそこなら問題なく下りられるだろう」

 僕らから見て、近い方の島、ひょうたんで言うところの下側に降り立つ。

 ここがフラワーランド。

 降り立った瞬間に花の甘い香りが鼻孔いっぱいに広がる。しかし、その香りに嫌味は無く、ともすれば甘ったるく感じる程のもののはずだが、様々な匂いが絶妙に合わさることで優しい香りになっている。

「いい香りだね。このまま昼寝でもしたら気持ちよさそうだけど。今はそんな場合じゃないか。みんな、このまま、島の中心を目指そう。バードラモンはどうする?」

「すまない。流石に、この距離の飛行は少々負担だったようだ。申し訳ないが私はここで、皆の帰りを待たせてもらう」

「無理させてごめんね。必ずみんなで帰ってくるからそれまではゆっくり休んでて」

「ああ、吉報を待っている」

 そう言ってバードラモンは翼を体に巻き付け、ゆっくりと寝息を立て始めた。

「じゃあ、先を急ごうよ。しゅっぱーつ!」

 いつの間にかベタモンに戻っていたメグが出発の号令をかける。

 

 フラワーランドでの冒険が今始まる。

 

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