デジモンストーリー オールドフレンド   作:Tomato.nit

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とりあえずバトルシーンが書きたかったので手っ取り早く進めてみました。

カブテリモンと一騎打ちです!


第二話 進化

第二話

 

 背後の木に体重を預け、疲れた体を休める。息も上がり呼吸もままならない。でも、僕のことは今はどうでもいい。

 

「メグ、大丈夫?」小脇に抱えたままのメグに声をかける。体のあちこちに傷が出来ていて痛々しい。致命傷というようなケガはないけど、僕を守って傷ついたメグの姿は、自分の弱さを痛感せずにはいられない。

 

「大丈夫だよ、ユウジ。このくらいの傷はへっちゃらだって」フンっと胸を張るメグだけどその足元は少し頼りなく揺れている。

 

「無理しなくていいよ、メグ。ここなら少しの間は安全そうだし、どうすればいいか、対策考えよう。」対策を考えるなら相手を知ることだ。僕たちに出来る唯一の手段は思い出すこと。

 

 

遡ること半日

 

 ひとしきり叫んですっきりした僕は改めてメグの話に耳を傾けることにした。さっき町がどうとか言っていたのでそこについて尋ねてみる。

 

「一ヶ月くらい前の話なんだけど、町で道場を開いてるティラノモンが急に暴れ出したんだ。」困った表情のままメグは続ける。

 

「それが始まりだったと思うんだけど、そのあと他のデジモン達も次々と暴れ出すようになっちゃたんだ。」

 

「大変みたいだね。原因は? 」メグは首を横に振って答える。原因が分かるならどうにかしているか。

 

「なら、僕は町のデジモンを正気に戻すために呼ばれたってことか」今度はメグが縦に首を振る。首というよりは体全体って感じなのでヘッドバンキングっぽいけど。

 

「ここでじっとしていても仕方ないし、町に行ってみようか」

 

 デジタルワールドに来ちゃったのはどうしようもない事実なんだし、今は出来ることをやるしかない。身支度といってもカバンも何にもないから立つだけだ。ついでに今の持ち物を確認してみる。基本的に部屋の片づけしていた格好のままだ。普通のジーンズに半そでのTシャツ。ベルトには当たり前みたいにデジヴァイスがぶら下がってる。

 

 ポケットの中には掃除のときに見つけて仕舞い込んでいたサバイバルナイフとスマホだけ。靴はなぜか律義に履かせてくれているけど、せめてカバンくらい付けてほしかった。

 これが今の僕の装備。デジモンがわんさかいるこの空間では心許ない。一応こっちにはメグがいるけど果たして成長期のデジモンはどこまで頼りになるのか。

 

「それじゃあ、ハノイの町までしゅっぱーつ」どこか気の抜けたメグの声が響く。

 

「随分楽しそうだね」テクテク歩き出したメグの後ろに付いていく

「うん!だってユージと一緒だもん」そりゃ僕も嬉しいけど。それだけじゃないのが悲しいところだね。

 

 川沿いを移動してかれこれ1時間位経った。今まで見つけたデジモンは葉っぱに噛り付いているクネモンや泳いでいるのか流されているのか怪しいラインのオタマモン、今しがた頭上を飛んで行ったテントモン。という具合に見事に成長期のデジモンばかりだ。

 

 メグ曰この辺りは強いデジモンも滅多にいないためこのような生態系なんだとか。のんびりしていていいじゃないか。強いデジモンといえば、メグの強さを聞いてみたところ、ムスっとしながら「ユージよりは強いと思うよ」とのこと。それはデジモン基準ではどうなのだろう。

 

 辺りが少し暗くなる。どうやらさっきまで晴れ渡っていた空に雲が出始めたようだ。歩いて行くにはこの方が都合がいいけれど。

「ユージ、注意して! 」前を歩くメグの語気が急に真剣味を帯びる。冗談ではないようだ。メグはその場に力強く構え、僕の後方を睨みつける。

つられて僕も同じ方向を振り返るが、視界には何も映らない。でも、僕の耳は異変を捉えていた。大気を震わせる低い唸るような音。

 

 ついさっきも似たような音を聞いた気がする。確かテントモンが頭上を飛んでいくとき。でも、テントモンの時と比べて明らかに音が重い。音が重いということは・・・

 

 木の陰から音の主が姿を表す。

 

 人の背丈を軽く超すほどの青い巨体とそれを支え飛行をも可能にする翅、発達した6本の脚が昆虫の印象をより凶暴なものへと変える。

 

カブテリモンだ。

 

「この辺りは成長期しかいない、って言ってなかったっけ」正体が分かっても不安そうなメグに声をかける。緊張状態を一向に解こうとしない。

 

「そのはずなんだけど。それに、あのカブテリモン様子がおかしいよ」言われてみれば、その飛行は随分とふらふらとした軌跡を描き、ともすれば周囲の木に激突しそうな程だ。

 

「あれは明らかにヤバいよね。メグ、とりあえずここを離れよう」でも、メグは動こうとしない。

 

「ユージ、この先には町があるんだ。このままカブテリモンが進んじゃったら・・・」そうしている間にもカブテリモンはどんどんこちらに近付いてくる。ふらふらしてはいるが、進行ルートは極めて直線的だ。

 

「分かった、せめて町には行かせないように、進む方向を変えさせよう」目的が決まれば手段はいくらでも転がってるはずだ。とりあえず気を引くだけなら。

 

「おーい、そこのカブテリモン!これでも食らえっ」石を拾って投げつけてみたけど全く意に介さない。

 

「次はボクの番だよ」メグは体に電気を纏わせながら前に躍り出る。

そのまま、必殺技

 

「電撃ビリリン!」

 

青白い稲妻がカブテリモンを襲う。だが、分厚い甲殻は電撃を受けても大きなダメージにはなっていない。とは言っても、倒すことが目的でないなら、これで十分なはず。

 

 その証拠に、カブテリモンは僕たちを認識したようで、その大顎を開き一声雄たけびを上げた後、こちらに飛んできた。ものすごい速度で

「カブテリモンめちゃくちゃ怒ってる気がするんだけど」言い終わるが早いかメグは僕の腕の中に飛び込んできて一言。

 

「ごめん。やり過ぎたみたい」 

 

 つまり・・・

 

「「逃げろ!!!」」

 

捕まったら即お陀仏な追いかけっこが幕を開けた。

 

基本的に巨体なカブテリモンは森の木を利用すれば、追い付かれずに逃げることはそこまで難しくない。だが、問題は直線に位置した時に襲ってくるメガブラスターによる射撃。直撃は言うに及ばす、回避したそれは物凄い勢いで地面を吹き飛ばし、その破片は容赦なく僕たちを襲う。

 

 爆風に紛れて何とか木の陰に隠れているのが今の状況だ。

 

「メグ、そろそろ僕の体力限界だ」まだ多少の距離を走るくらいの体力はあるけど、このまま続くと不味い。

 

 今まで立ち止まらずに走っただけに足取りが怪しい。

 

 ピョンっとメグが腕から飛び降りる。

 

「少しの間、ボクが時間を稼ぐよ。だから、少し休憩しよ」

 

 そういうとメグは口の中に前足を突っ込みゴソゴソと何かを引っ張り出す。

「はい、お水」それを飲めと?

 

 口の中から引っ張り出したのは透明なペットボトル。色々突っ込みたいことだらけだけど、背に腹は代えられない。

 水を一気に飲み干す。味は普通。喉が渇いているせいか普通より美味しい。

「あそこに洞穴があるからそこで合流しよう」意気揚々と飛び出していったメグだが、5分もしないうちに劣勢に追い込まれる。

 

 そうこうしている間にメグは洞穴に合流する。

 

 カブテリモンを引き連れたまま。

 

「ユージごめんね。撒くの失敗しちゃった。」カブテリモンは周囲の壁を破壊しながら迫ってくる。

 

「早く、こっち!」メグを抱きかかえ再びカブテリモンから逃げる。

 

 洞穴の先に光が見える。出口だ。発見すると同時に、背後の天井が崩壊を始める。

 出口から飛び出すと同時に洞穴は倒壊しカブテリモンは生き埋めとなる。

「何とかなったー。これで一安心か。」抱きかかえたメグを撫でまわす。

「危なかったね、ユウジ、もう少しでカブテリモンと一緒に生き埋めだったよ」二人で笑い合っていると背後からゴロゴロと音がする。

 

 安心するのは早かったみたいだ。そこには先ほどよりも怒りを露わにしたカブテリモンが。

 

 

 三度逃走を開始して、本格的に体力がまずい。

 

「ユージ頑張って!もう少し先にやり過ごせそうなところがあるから!」

腕の中のメグがエールを送ってくれる。

 

「分かった!」パートナーにかっこ悪い姿を見せるのも嫌だし。

 

だけど、現実はそんなに甘くは行かないようだ。

 

 迫りくる、都合30発目のメガブラスター。回避こそできたけど、大きな破片が直撃し思わず足元を掬われる。

 

 

「ヤバいっ」

 

 

 振り返るとそこには大口を開け、次の砲撃に向けて雷を練るカブテリモンの姿が。

 

 

 ここまでか。どじったな。

 

 せっかくメグに会えたのに。

 

 覚悟を決めそうになった瞬間

 

「ユージはボクが守る!」

 

僕とカブテリモンの間にメグが割って入る。

 

 

「だめだ!メグ!」

 

時は無情で待ってはくれない。僕の声を遮るようにカブテリモンはメガブラスターを放つ。

 

「電撃ビリリン フルパワー!」

 

 

 迫りくる電撃に対して、メグも渾身の一撃で迎え撃つ。

 二つの電撃がぶつかり合い、凄まじい閃光が放たれる。

 相殺されるかに思えた電撃は、勢いを失いながらも僕らに向かい、その矛先は割り込んできたメグを襲った。

 

 

 

 

 そのあと、ダメージを受けたメグを抱えて大木の中に逃げ込んだ。幸い、電撃の打ち合いの余波でカブテリモンはこちらを見失ったようで、今も外をブンブン飛び回っている。

 

 

 当初の目的である、別方向への誘導事体は成功したけどあの様子では、僕たちの事を簡単には諦めてくれそうにない。

 

 倒すか完全に見つからずに逃げ切るか。どちらも中々骨が折れそうだ。今、カブテリモンの弱点と言えるのは、閃光で目くらましができることくらい。決定打はないか。

 

「ユージはさっきカブテリモンと戦うときどんな気持ちだった?」メグが突然質問を投げてくる。

 

「どんな気持ちって言われても、逃げるのに必死だったし、強いて言うなら『どうやって生き延びるか』かな。」正直めちゃくちゃ怖かった。それに戦えない僕が情けなかった。

 

「ボクは『ユージを守らなきゃ』だったよ。ボクの命に代えても守るって」

 

「ありがとう」メグの勇気と優しさはさっき思い知った。

 

 命に代えても守る。その言葉には何の偽りもないし誇張もない。だからこそ、メグを守れない自分が口惜しい。

 

「ありがとう」

 

 もう一度のありがとうの言葉は拳を握りしめながらしか言えなかった。

 

「よし、ユージ、あのカブテリモン倒そう!」そんな僕を見かねたのか、急に無茶を言い出すメグ。

 

「どうやってさ。メグの必殺技も全然効果無かったじゃない」

 こればっかりはどうしようもない。

 

「『今』のボクじゃ勝てないと思う。でも、ユージがいる。だったらボクにも出来るはずだよ。」迷いの無いメグの瞳にはやはり僕の姿が写る。

 

 メグが何を考えているのか。

 

 分かる。

 

 それは僕がいるから。

 

 いや、僕たちだから出来るはずの事。

 

「やれる?」

 

 何が必要なのかは分からない。

 

「大丈夫。ユージがボクを信じてくれれば。絶対に大丈夫」力強く頷く。

 

 でも、今の僕たちはそれに賭けるしかない。

 

 ベットするのは僕とメグの命。

 

 目の前には 

 

 僕を信じてくれるパートナー

 

 僕が信じるのを待っているパートナー

 

 

 だったら僕は信じる。

 

「一緒に行こう、メグ。この先何があってもずっと一緒だ。」

 

 僕が突き出した拳にメグも前足を合わせる。

 

 触れ合った瞬間、カチリと心のピースがはまった気がした。

 

 何かは分からないけど、何かが、変わった。

 

 

 カブテリモンの居場所はその羽音で嫌でも分かる。今もそう遠くないところを徘徊しているみたいだ。

 カブテリモンの気配を追って森を進むと開けた場所にたどり着く。木々は中心にある大きな泉を取り囲むように生えており、さながらリングの様だ。

 

 遮るものが無い太陽は泉を照らし、水面はきらきらと光を返す。畔にカブテリモンはいた。

 

 僕たちが近づいたことに早速気付いたカブテリモンは翅を震わせその巨体を再び宙に浮きあがらせる。

 

「今度は負けない!!」力強く地を踏みメグが前に出る。

 

 

 このときはまだお互いに知らなかった進化のための条件。

 

 デジモンはデジタル生命体だ。経験を蓄積し、環境に適応し、生き残るために進化という手段を獲得した存在。そう、生物としては自己完結している存在だ。

 そこに人間のパートナーという異物はどのように機能するのか。

 

 1つ、経験の増幅。

 

 2つ、進化への外部からの補助。

 

 3つ、互いを思う心。

 

 お互いに心を通わせることで、想いは心を超えて力となる。

 

 

 信じる者と信じられる者、高め合う想いは奇跡を起こす。

 

 

 僕たちの心を具現化するかのようにデジヴァイスが輝く。

 

 何をすればいいのか。

 

 答えは

 

 もう

 

 知っている!

 

 

 

 

「「ベタモン進化ああああああ!!」」

 

 

 

デジヴァイスから伸びた光がメグの体を包む。ベタモンという種を構成するデータはすべて溶け合い新たなデータの素となる。デジモンをデジタル生命体とする根源のデジコアには、経験が、想いが、絆が刻まれる。

 

水の記憶と竜の記憶、ベタモンの遺伝子は新たな力を吐き出す

 

「シードラモン!!!! 」

 

光が薄れ、メグはその姿を表す。

 

 長い体躯は青い鱗に覆われ、所々赤い模様が入る。橙色の尻尾はどこかベタモンを思わせるが、その姿は正に海竜と呼ぶに相応しいものだ。

 

「成功だね!メグ!」進化したメグの姿に胸が熱くなる。

 

「ユージが信じてくれたからだよ。でも、感動の展開はあいつを倒すまでとっておいてね」

 

 そう言うとメグはカブテリモンに突進する。長い体躯はそのまま蛇のような移動を可能にし、体重を乗せた一撃はそれだけで十分な威力となる。

 

 対峙する二体の成熟期のデジモン。先ほどまでのワンサイドゲームは鳴りを潜め、カブテリモンは押され気味となる。地表近くでは分が悪いと判断したのか、カブテリモンは空中からメガブラスターを連射する。

 一発一発の威力を押さえることで連射することで致命傷ではなく蓄積ダメージを狙うジャブのような攻撃。

 頭上から雨のように降る電撃を躱しながらメグは泉に向かって疾駆する。すべてを躱す事はできず、数発がその鱗を削り飛ばす。

 痛みに耐えながらも、水面に到達したメグは反撃に転じる。

 

「チルブレインズ!!」

 

 メグは体を打ち付けることで水の壁を作り、瞬時に凍結させ氷壁を築く。

 迫る雷撃が氷の壁に次々と突き刺さり、大きな穴を穿つ。カブテリモンからは向こうが筒抜けとなるがそこにシードラモンの姿は無い。

 

 空中のカブテリモンに影が落ちる。氷壁を駆け上ったシードラモンは上空で体を捻る。サマーソルト。キックこそできないが重力と遠心力を得たその尻尾がカブテリモンに振り下ろされる。

 

 

 尻尾の一振りを受け、カブテリモンは水面に叩きつけられる。吹き飛ばしたカブテリモンを追い、メグは泉に突入する。

 

この環境は水棲のシードラモンには恰好の狩場。水を得た魚とはよく言ったものだ。

 

態勢を立て直し、敵の姿を水の下であると認識したカブテリモンは水上を低く飛ぶが、シードラモンとなったメグにとってこの構図は、千載一遇の機会だ。

 その長躯を活かし、尻尾と頭を巧みに使い分け、死角から攻撃を浴びせる。

 背後から尾の一撃を受け、振り返れば横から水の刃が襲いかかる。圧倒的に不利な状況を脱するため、カブテリモンはその場で回転しながら全周囲にメガブラスターをまき散らす。

 メグは回避に成功したものの、カブテリモンは上空に陣取ことに成功し、大出力のメガブラスターを放つためチャージを開始する。

 

 水面ではこれに対抗し、メグも必殺技の構を取る。

シードラモンの必殺技 アイスアロー

体内で生成する絶対零度の凍気をもって氷柱を作り出し之を放つ技。

 

 体からあふれ出した凍気は周囲の水をも凍りつかせ、泉の表面にはうっすらと氷が張られる。

 

「アイスアロー!!」

 

生成された極太の氷の矢はカブテリモンから放たれた雷撃を真っすぐに突き破りながら進む。

 雷を切り裂いた先には大技の反動で動けないカブテリモンの姿があるのみ。

 必殺の一撃を受けたカブテリモンはそのまま泉に落下、氷を突き破りながら水中に姿を消した。

 

激闘の末、泉に立ちこちらを見るシードラモン。その周囲は凍気によって氷結した大気中の水分が陽光を反射し、白く輝いている。

 

「勝ったよ、ユージ!」

 

 

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